先日、新しいオーナーに所有権が移ったグラマン。その後も数日サンタモニカ空港の駐機スポットに置いてあった。この日はついに旅立ちの時、次のベースとなるトーランス空港へのフェリーフライトになる。エンジン始動やプリフライトなど、一通りの説明をした。説明することがあまり無いほど、この機体は単純だ。単純であることは性能の一つ。壊れるところが少ないのは信頼性につながる。この機体のいいところはいくつもあるが、始動性の高さもその一つ。プライム5回、電気燃料ポンプのスイッチを5秒くらいオンにした後にオフ、ミクスチャーリッチでスロットル1cmくらい入れ、Magneto Both、あとはスタータースイッチを押せば一瞬でエンジンに火が入る。誰がやっても同じ。コツなど要らない。
いよいよグラマンが飛び立つ時。気づけばこの機体のエンジンが回る生の姿、初めて見た気がする。いままで足掛け7年間、ずっとコクピットに座ってきたのだから当然だ。エンジン始動、タクシーして滑走路に向かう姿、想像していたより格好いい。お値段以上の佇まい。0-235を積んだ軽飛行機ながら、黄色く塗られたキャノピー式の機体は独特な雰囲気を醸し出す。ちょっとエキスペリメンタルの機体っぽさがある。Rwy21から滑走を始め、目の前を横切った後にローテーション、7年過ごしたサンタモニカ空港を去って空に舞っていった。自分が飛んでいる時も、こんな風に見えていたのかと思うと、 ”想像してたより格好いい” と嬉しくなった。
家族の間ではヒヨコと呼ばれていたグラマン。その小ささと黄色い機体からついたあだ名。愛嬌と格好良さのバランスが取れた、愛すべき小型機だったと思う。性能表だけみてもこの機体の良さは分からない。飛んでなんぼの機体だ。これからは次のオーナーのもと、ガンガンと空を舞い続けてもらいたいと願う。