思い立ったらアリゾナはセドナに行ける!というのがカリフォルニアの飛行機乗りの特権。直接定期便が入っていないセドナに公共機関を使って旅行するのは大変だが、自家用機やチャーター便ならシングルエンジンで2時間半から4時間、マルチエンジンなら2時間から3時間、プライベート/ビジネスジェットなら1時間から1時間半で到着する。
この日は朝から霧が酷くIMCのトーランス空港だったが、10時くらいから霧が晴れ始め、11時頃にはVMCとなった。IFRで離陸待ちをしたり、Victor Wayをクネクネ曲がりながら飛ばされるのではなく、今回はVFRで最短距離を飛び短時間フライトを目指したいと思っていた。自家用操縦士細君と一路セドナを目指す。トーランス空港に到着し、給油トラックを呼んで両タンクとも満タンにした。そして車から機体へ荷物を移す。それからプリフライトに入る。Annual Inspectionを終えてから2-3時間しか飛んでいない機体なので、オイルも綺麗だし機体回りやエンジンも非常に綺麗。左エンジンから始動、かかりも良い。整備を終えても相変わらずなのは始動直後の機嫌の悪さ。始動後は1000rpmに設定とあるが、1200prmじゃないと安定しない。1000rpmだとElectric Fuel Pump Onとしないといけない。約5分ほどエンジンを回しておくとだいぶ調子がよくなるのだが、このあたりはこの機体の癖なのだろう。
トーランス空港 Rwy29Rまでタクシー、そしてランナップ。離陸待ちとランナップ0.3hr / Hobbsを費やす。これがIFRなら0.5時間くらいかかったかもしれない。トーランス空港からはStraight out departureで離陸、そのままCruise Climb 120-130ktで直線距離を稼ぎ、LAX Class B 5000ft floorに到達しないようにする。海上にはまだ霧/雲がかかっていた。Palos Verdes / Long Beach Practice Areaの上空を飛び、Socal ApproachにVFR Flight Followingをリクエストした。高度は11500ft、コース取りは
Seal Beach VOR / SLI -- Cajon Pass -- Hector VOR / HEC -- Needle VOR / EED -- Drake VOR / DRK -- Sedona Airport / SEZ
とした。HEC付近に連なるRestrict AreaがColdならば Cajon Pass から EEDまでのDirectというコース取りも可能。
Class Bを避ける為にノロノロ上昇をしていたのに気付いてくれたのか、Socal ApproachはすぐにVFR Class Bのクリアランスをくれた。ロングビーチ空港のはるか手前から11500ftまでClass B Airspaceを突っ切って上昇を開始。ただ、ロサンゼルス国際空港 / LAXへ下りる旅客機との関係からHeading 070を指定され、真東へと飛ぶことになった。これは少し遠回り。
途中オンタリオ空港の上くらいでCajon Passに向けて左旋回すると、まだHeading 070で飛んでくれ!とSocalからお願いされた。すでにLAX Class B Airspaceの上を飛んでいるのだが、LAXへ下りる旅客機と進路が交差するので、10000ftくらいの高度でオンタリオ空港の上を横切るのはやめて欲しいらしい。というか、そういう風に言われた。このあたり、現行法 / FARではLAX Terminal Area Chartの中を飛ぶトラフィックを捌ききれないのだなと感じる。
そんな感じで予定コースよりも完全にそれてしまい、Directにはほど遠い飛び方でタイムロスをしてしまった。Big Bear Lakeを越えたあたりからやっと北東へと進路を取れることになった。ここからはSocal ApproachからLA Centerの管制圏となった。さっそく管制官からRestrict Area COLD!との情報を得て、これでHEC-EEDではなく、Direct EEDのコース取りが可能となった。 エンルートでは10-15ktくらいの追い風を受け、11500ftをGS195ktで巡航。2500rpm/35inchの設定で時間26galくらいの燃料消費。80%くらいの出力にしようかなとも考えたが、30gal / hrという燃料消費はいただけない。時間短縮の為に考えたのは、良い追い風なので13500ftまで上がり、もっと速い追い風を捕まえようということ。ただ、何故かこの日は拍動性頭痛を感じ、判断力に影響はないが低酸素の身体症状が出ている。考えてみれば、普段10000ft以上を飛ぶ時に必ず服用する消炎鎮痛剤を飲んでいなかった。先を急ぐ気持ちを抑え、ここは11500ftを延々と飛行。
動画:カリフォルニアからアリゾナまで、砂漠の上空11500ftを延々と飛ぶセネカIIのコクピット
http://www.youtube.com/watch?v=2xEKxnVL9x4
オートパイロットを入れてしまえばやることなし。腕組みして計器チェック、20分に一回くらいのFrequency Changeのみという平和な機内。セドナまで50マイルの所から巡航降下開始、11500ftから7500ftまでの降下。ここでGS200-210ktでカッ飛ぶつもりでいたが、強烈なタービュランスで減速を強いられた。予定は未定、理想通りの高度/速度マネージメントができきなかった。
セドナは強烈な春風が吹いていていた。AWOSを取ると、Wind 090 at 12 Gust 17とのこと。さらに高台にある空港は乱流だらけ。実際にWind Sockを見ると、Rwy21 endは右クロスウィンド、Rwy真ん中は右真横という風。Rwy3に下りることになったが、ショートファイナルではWind Shear気味の風でリフトを失い機体は大きくゆれ、ランディングギアを守るために高めのラウンドアウトを強いられた。ゴーアラウンドも考えたが、5000ftの上りRwyなので500ftマーカーくらいを目指して再降下、着陸となった。
動画: かなり気流が乱れるセドナ空港Rwy3にセネカ IIで着陸
http://www.youtube.com/watch?v=UgRz7FY9HCw
着陸後はマーシャルカーに指示され、"Make left at A6, taxi straight, park next to the CJ3!"、2機ならぶサイテーションの隣に陣取るセネカII。気分が良い。
通常の駐機スポットにはCessna 400とMooney Acclaim Sの2機が並んで駐機してあった。シングルエンジン最速のタイトルを争う2機だ。240kt巡航が可能で、機体価格も60万ドルを越える高級な機体だが、セスナ172などと同じスポットに駐機させられる。市場価格的には遥かに安いセネカIIだが、こういう時には”重くて押せない”というだけの理由でビジネスジェットやターボプロップの列の中に入れるのが気持ち良い。
昼頃にトーランスを出たというのに、午後3時前にはレンタカーに乗ってセドナ観光開始。このあたりの機動力はGeneral Aviationじゃないと無理。結局フライト時間は2時間ちょっと。セネカIIの機動力は偉大だと思う。
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