LOS ANGELES FLIGHT DIARY

愛機ビーチクラフトボナンザで南カリフォルニアの空を駆ける日本人飛行機乗りの日記。

フライトログ:いろいろな意味で感動した 愛機S35ボナンザ同乗訓練1 (動画)

2015-12-19 | Flight Log (飛行訓練)

ついにボナンザS35を取りに行く日が来た。購入手続きを終え、名義変更してから実に2週間。機体は前のオーナーのホーム空港、McClellan Airportのハンガーに保管されていた。ロサンゼルスからサクラメントまで通常のエアラインで飛び、サクラメント国際空港から車で30分くらい離れた元空軍基地のMcClellan Airportまで移動。空港横の元空軍寮を改築したモーテルに宿泊。翌日朝8時から愛機となったボナンザの受け渡しとなった。あいにくの雨。ちょうどStormがカリフォルニアを横切っていた。

今回売買を仲介してくれたLuxe Aviationのオフィスに到着。機体のログブックに目を通していると、プレゼントとしてFuel testerをくれた。なんという気のききかた。この雨の中、Fuel Drainは入念にしないといけない。引き続きハンガーを案内してもらう。驚いたのは、Piaggio P180が何機も停まっていたこと。飛べる機体、修理中の機体、部品取りになった機体、全部で7、8機あったと思う。そのほか、Falcon、King Air、Lear Jet、Baron、Mooney J、Piper Cub 水上機など、すごい大きなハンガーにとんでもない数の飛行機。1日中遊んでいられる。外にはBoeing 空中給油機のKC135と並んで、愛機となったボナンザS35がいた。

しばらく待っていると、この日ボナンザの同乗訓練をしてくれるMikeが到着。友人のF33 Debonairに乗って登場。保険会社から提示された条件で、American Bonanza Society公認のインストラクターから5時間同乗訓練を受けると、年間保険料が1200ドルくらい安くすることができる。どうせサクラメントからロサンゼルスまで2時間ほど飛んでいかないといけないし、その間にAirworkやタッチアンドゴーをすれば、1日で5時間くらい消化できる。そんな強行日程におつきあいしてくれるのがMikeだ。元TWAの機長で、飛行時間は3万時間、ボーイング707から767、MD80、TriStar、アメリカ製の旅客機なら何でも飛ばしてきたような飛行機野郎。ピストンエンジンの機体で国境越えのフェリーフライトから、自家用単発の訓練まで、ジェネアビとの関わりも深い。普段乗りはパイパーカブというのも渋い。

まずはグランドから始まった。プリフライトの注意事項、とくにWeight & Balanceについて時間を割いた。燃料を消費すると重心がどんどん後ろになっていくボナンザ。離陸時と着陸時のW&B計算以外に、Usabul Fuelを全部消費した時のW&Bも計算しておくように勧められた。

この日のMcClellan Airportは完全なIMC。雨が降っており、enrouteも1万ftくらいまで雲がある。Freezing levelは7000ftくらい。IFRで飛ばないといけないのは確実だが、自分のIFRプランとMikeのプランの差には愕然とした。Icingを起こした時の回避計画から、積乱雲を避けて航路を変更した時の高度処理とIcingの関わり、全てが考え抜かれていた。御歳79才のMikeだが、飛行機のこととなると頭の切れかたがすごい。というか、染み付いているのだろう。

計画として、McClellanからIFRで離陸、そままサンノゼを抜けてベーカーズフィールド上空を通過。更に南下してFilmore VORから海岸線を飛ぶ航路でSanta Monica Airport VOR-A Approachへと続き、そのまま着陸。ただ、途中VMCの空港があれば、そこでAirworkを行うというもの。AirworkのメニューはStall, Spiral descend unusual attitude, emergency gear extension, emergency door opening, steep turn, landing (full flap, no flap)とのこと。

いよいよフライト。Mikeのコース取りを選択し、Flight Service Stationのオンラインサービスを使ってIFR Flight Planを入れた:KMCC LIN V23 GMN V299 FIM VNY DARTS KSMO

機体の前でプリライト。メインギアのベアリングが可動性を確認、メインギアのスプリングを確認、ストラットのダンパー長を確認、ラダベーターのトリムのジョイントに可動性があるのを確認、エルロンを動かすジョイントの可動性を確認すること。これがキモらしい。

いよいよエンジン始動、ゆっくりとタクシー開始。McClellanはノンタワー空港だが、ランナップエリアからClearance deliveryをコールし、Santa MonicaへのIFR clearance をリクエストした。ランナップの後、すぐに離陸許可。この時、少し晴れ間がみえ始めた。ただ、南に向かうほど天気が悪くなる。IO520エンジンは快調で、心地よい加速をする。ラダベーターも思ったより反応がいい。最初はMEAの5000ftで飛行、アイシングを避ける。外気温は華氏で34から35度だった。最初は交換したシリンダーの慣らしで、75%出力で1時間、65%で1時間巡航。75%出力では5000ftでIAS165kt、GS170ktで巡航していた。速い!。

Scattered-Brokenの雲の合間を飛ぶボナンザ動画

途中、積乱雲を避けるためにコースから外れることに。Garmin530Wにはレーダー画面が映り、Storm Cellがはっきりと映し出される。5分程度遅れの情報なので、機体備え付けのレーダーには敵わない。ただ、頼りになるのは確かだ。それから、Mikeの気象の読みがすごい。7000ftに上がった時、外気温は氷点下となった。そして雨のなかを飛んだ時、機体にわずかながら着氷。目視とレーダーとGPSの情報を見ながら、雨雲を避けて着氷が進まないようにした。ここでMikeが、プロペラにも結構氷が付いているなと言っていた。なんでプロペラに着氷しているのがわかるのか、自分には理解不能。いろいろ質問しようと思ったが、お互い緊張のレグだったので、淡々とお互いの仕事をこなした。

雲から出ると、氷点下ながら徐々に氷が取れていった。そして、眼下にはベーカーズフィールドの平野、そして空港も見える。ここでAirworkをするか、もっと天気のいいところに行くか。Mikeはレーダーを見ながら、砂漠の方へ向かおうと決断。General Fox Airport WJFへと目的地変更。すぐにCenterにクリアランスをもらい、コース変更。サンタモニカに向かうにしても、砂漠に向かうにしても、ストームの中を通過する。しかも、シエラネバダの山脈のせいでMEAが1万ftを超える。雲の高さ、いろいろな気象情報を取りながら、着氷はないだろうとMikeの判断。着氷してもわずかなので、その時点でベーカーズフィールドに反転して降下しながら戻ればいいとのこと。そして雲の中に突入。Mikeや懐中電灯でフロントスクリーンを照らし、着氷の兆候を見逃さないようにしている。こちらは延々とナビゲーション画面を確認しながら雲の中を飛ぶ。Mikeがいなかったら飛べるような天気じゃない。

しばらくして、眼下には冠雪した山が見える。そしてJosua Approachにハンドオフされると、完全に雲から出た。テハチャピの風力発電の風車がグルグル回り、風が強いのがわかる。WJF Rwy24にはRight base entry。このボナンザ、操縦桿が1個しかないので、基本的には自分で下ろさないといけない。やばくなれば横から手をだすよ!とMike。Gust17kt、初めての機体、着陸は60点くらいの出来だった。

飛行時間は2.5時間、Actual IMCは1.5時間くらいだろう。流石に疲れたので、Mikeとカフェで食事をした。本当に頼もしい男だ。エアライン、ジェネアビ、全てに精通した凄腕だ。こんな飛行機野郎がいるのかと感動した。

ただ、本当に彼の凄さを目の当たりをするのは、Airworkを始めてからのことだった。その内容は、次の日記で。


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