LOS ANGELES FLIGHT DIARY

愛機ビーチクラフトボナンザで南カリフォルニアの空を駆ける日本人飛行機乗りの日記。

フライトログ:緊急着陸

2011-10-17 | Flight Log (機長)

週末の午後、いつものように軽く飛ぶことにした。最近はVFRフライトばかりが続く。越を据えてIFRを飛ぶ時間がなかなかみつからない。サンタモニカ空港に到着、最初にオイルをチェック、6クオーツある。ランプ置きなのでしかたないが、機体の汚れが目立つ。時間があれば洗いたいのだが、最近は飛びっぱなしが多い。もちろん飛んだ後に機体仮面のオイルは拭き取るようにしているのだが、主翼やプロペラ、そしてノーズ回りの虫汚れなどが気のなる。

天気はかなりHazy。ただ、1500ft以上では視程もいい。あまり遅くなってしまうと、夕方頃には低い雲になりそうな感じだ。さっそく機体に乗り込んだ。目の前をCirrusが通過し、South East Run upに向っていった。こちらもそれに続く。そして2機並んでランナップ開始。ところが、隣のCirrusはやたらバックファイヤーを繰り返す。点火タイミングが狂ってんじゃないの?っていう感じだった。何度もマグニートクリーンナップを繰り返しているようだった。横から見ていてヒヤヒヤするほどエンジンの調子が良くない。これじゃ離陸しない方がいいだろう、、、と思っていた。案の定、10分くらい格闘の上、そのCirrusは駐機場所へと逆戻りしていった。賢明な選択だ。横から見ていても無理して飛ぶべきエンジンじゃなかった。

こちらは問題なくランナップ終了、Rwy21から離陸した。1700ftでレベルオフし、2500rpmで東に向って巡航。IASで100kt出ている。しばらくFwy10の上を飛び、ダウンタウンを目指す。ここで管制塔からトラフィックアラートが入り、2500ftくらいをKing Airが飛んでいるとのこと。すぐにトラフィック発見、Visual separationを保つ。ダウンタウンの上空でマニューバーをやっているようだが、ターボプロップでVFRのマニューバーというのも不思議な光景だった。そのままダウンタウンの横を飛び抜け、南に向って進路変更。トーランス空港を目指すことにした。コンプトン空港の上空を抜け、Good year fieldの上空からトーランス管制塔へコンタクト。いつもの女性管制官で、Right base Rwy29Rとの指示。そのまままっすぐにベースを目指すと、Rwy29R cleared to landとなった。そのままノーフラップで侵入、ノーズを目一杯上げて接地、そしてノーズアップのままTaxi way Cに入っていった。燃料が少なかったのでFuel Pitに向う。そして16gal程給油。ここで回転翼インストラクターのNさんと、固定翼インストラクターで最近マルチを飛ばしまくるNoriさんが登場。黄色い機体は皆の目にとまりやすいのか。

燃料も満タン、すぐに帰還することに。Nさんは生徒さんとロビンソンR22でクロカンに行くらしい。こちらも同じタイミングで離陸することになった。R22はRwy29L(もしくはTaxiway A)から離陸したようで、左眼下に離陸する姿が見える。こちらはRwy29Rから離陸、Right downwind departure。

そうこうしていると、機内で何か動くものがあった。最初は目が悪くなったのか?、飛蚊症かな?などと思っていたが、なんと蜂を発見。これはちょっと危ない!と思い、刺されないように注意する。キャノピーを開けて吹き飛ばそうとするが、むしろ機内が乱流になって蜂がブンブンと舞い危ない。あまりの乱流で何匹蜂がいるか分らない。機体後部のライフジャケットを取り出し応戦、腕を刺されないようにする。そうこうしていると、足下に蜂が紛れ込み、ズボンの裾の中に入った気がした。すぐにズボンを払う。これは危ないなと判断した。サンタモニカ空港までこうやって飛び続けられる訳が無く、何よりこれだけVFRトラフィックが低高度に集中する空域で、他のトラフィックを見ていることなどできない。蜂に刺されるのを覚悟で蜂との格闘を中断、眼下のコンプトン空港のファイナルに向って降下していった。緊急着陸だ。CTAFでトラフィックを確認し、緊急着陸すると宣言。ダウンウィンドに2機、そしてファイナルに1機いたが、ベースには誰もいない。すぐにファイナルの1機の後に続き、そしてRwy25Lに着陸、すぐにタクシーアウトし、目の前のハンガー間で停止、エンジンを止めて機外へ逃げた。

最初はズボンを叩く。もしかしたらズボンの中に入ったかと思っていた。でも大丈夫だった。キャノピーが全開なので、蜂が飛んでいったかなと思って機内を覗いてみると、左席とセンターコンソールの間に1匹蜂発見。向うも乱流の中を飛んで疲れたのか、弱り果てていた。すぐにタオルでつかんで機外へ捨てた。何事かと思った地元パイロット達には、”機内に蜂がいて焦った”と正直に話す。皆爆笑していたが、事故るよりはマシ。ホーム空港のサンタモニカまで15ー20分のフライト、安全に飛び続けられたとは思えない。あと、仮にコンプトン空港に普通通り降りていたとしても、トラフィックパターンに入って通常通り着陸するには最低3、4分はかかっていたと思う。ものの1分で着陸して機外に脱出できた緊急着陸が正解だったと思う。

機内に蜂がいないのを厳重に確認し、そのままランナップエリアに向う。そして離陸、再びClass B Airspaceの下をくぐって北上した。途中ダウンタウンの南1マイルくらいの所で双発機とヘッドオン。向うは左旋回で回避、こちらも左旋回。位置的に左旋回での回避で正解。それにしても、蜂と格闘しながら飛んでなくてよかった。他のトラフィックを見ている事等できなかったはず。そのまま巡航、Fwy10の上、サンタモニカ空港から8.5nmの地点でサンタモニカ管制塔を呼ぶ、Straight in Rwy21とのこと。Modifiedをもらえなかったので、Blue Whaleを目指して飛ぶ。No2での着陸。フルフラップで良い感じの着陸だったと思う。

それにしても、まさか機内に蜂がいるとは思わなかった。もともと黄色い機体で、蜂やチョウチョなどを惹き付けるのは知っていた。ただ、機内に入るとは思ってなかった。暑い日はキャノピーを全開のまま駐機しておく癖がついていたが、これからは給油中もキャノピーを閉めておかないといけない。あと離陸前のコクピットの蜂チェックも必須だ。緊急着陸なんて大袈裟なという意見もあるが、シングルパイロットで飛行中、操縦に集中できなくなるような事態に陥れば、迷わす近場の空港への着陸を選択すべきだと考える。後で書類提出したりするのが面倒で、緊急着陸せずに上空で頑張ってしまうほうが危ない。この日はノンタワーの空港なのでFAAからの呼び出しや書類提出はなかったが、タワー空港だったとしても同様に緊急着陸していたと思う。事情を話せば紙一枚の説明書提出とFAAオフィサーとの数分の話し合いで済んだはず(過去に経験済み)。笑い話しに終わってよかった。

 

 


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3 コメント

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大変でしたね (Pon)
2011-10-21 10:16:22
表題を見て、すわ事故かと心配しましたが、大我無く良かったです。
しかし、蜂も同乗したかったのか、貴機に敵愾心を持ったのか(同じ色だし)、今の季節は蜂も凶暴ですので注意だ必要なのでしょうね(日本でも、学生が集団で蜂に刺されTVニュースになっていました)。
そういえば、車庫の近くに蜂の巣が有り、自分でも注意しなくてはと思いました(自動車は、停車すればOKですが、飛行機となると大変ですね)。
尚、当方は、東日本大震災の後、飛ぶ機会も少なくなり、フライトレビューも通らなくなりそうです(日本でも、そのうち、チェックシステムが出来るそうです)。
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Unknown (KOBA)
2011-10-21 11:40:59
私も同じような経験があります。
Hemetにいった帰りに、upwindでハチが機内を飛んでいるのを発見し、しばらくそのままTOAに向けて飛んでましたが、やっぱりちょっと怖くなり、HEMETに引き返した経験があります。

もしIFR中だったら、ATCにEMRGENCYを宣言でしょうか?
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Unknown (C2)
2011-10-22 23:14:52
>Ponさん
大袈裟な表題を付けてしまいましたね。震災で飛ぶ機会が減ったとのこと、大変お気の毒です。震災は色々な所に影響を及ぼしてますね。 今回の蜂騒動ですが、今の時期の蜂が凶暴というのは知りませんでした。刺されなくてよかったです。


>KOBAさん
流石飛びまくりのKobaさん、同じような経験があったんですね。もしIFRで飛んでいたら、管制官に理由を簡単に説明して近くの空港にダイバート、もしくは出発地へ帰還。"There are wasps in the cockpit, would like to divert to the nearest airport. not an emergency, but a distress situation"と言うと思います。
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