肩のこらない小説を読みたくてこれを選びました。火盗改与力の孫娘と町方隠密同心の謎解きと恋物語。火盗改と町方は犬猿の仲ですが、妻を亡くした同心が姉に預けている長男が仲を取り持ったりと楽しい読み物でした。
舞台である狸穴坂周辺は数年間、勤務場所が近くにあったのでよく散歩していたところであり、行きつけのトンカツ屋やひいきのそばやに通いました。坂をあがったところにあるロシア大使館(入ったことはありません。)、その裏にある会員制の東京アメリカンクラブ(数回招待で行きました。)、明治時代に作られた東京天文台の跡地でGPS(世界測地系)が全盛となる前まで日本の測量の基点であり、三角測量の開始点であった日本経緯度原点などがあります。そんなことを思い出しながら読みました。なお、フォン・シーボルトの娘であるおイネは、坂を上った大通りの反対側あたりが終焉の地です。
装画、挿絵とも大好きな村上豊さんです。