F老人の気ままな島暮らし日記

尾道市生口島で気ままな島暮らしの日々。

読書記録034「花の闇-隅田川御用帳02(藤原緋沙子)

2011年05月31日 23時00分27秒 | 読書記録

物語の重要な登場人物に、「楽翁」、隠居後の元老中松平定信がいます。人物は有名なので余分な説明は不要だと思いますが、「浴恩園」という立派な庭園を築きそこに住んでいました。この場所は、浜離宮の東側、すなわち、現在、築地市場がある場所にありました。1821年、明治維新の約45年前に焼失してしまいました。明治元年、ここには海軍省(手狭になったため明治15年芝公園に移転)、海軍兵学校(明治21年江田島に移転)海軍軍医学校(戦後国立がんセンターになる)、海軍経理学校(終戦時まで存続、現在の築地市場の厚生会館、立体駐車場の場所にあった。)があり、まさに、海軍誕生の地でした。現在のいい意味での猥雑さあふれるあの一角が海軍の聖地だったのです。浴恩園当時、賜山と呼ばれていた小山に海軍省の海軍大臣旗が掲揚されていたため「旗山」と称されていたそうです。

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台風後の澄んだ空気で見えた四国山地

2011年05月31日 21時28分33秒 | 日記・エッセイ・コラム

台風2号の雨はかなりひどく、別宅近くの直径10mぐらいの小さな池はあふれて道が冠水していました。今日、5月31日、ふと見るとはるか向こうに四国山地の山陰が見えていました。空気が澄んで、なおかつ上空をさえぎる霧の出る要因がないとこのような景色になります。

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撮影地点の真南が石鎚山です。多分、写真の一番高いところでしょう。四国山地を写真に撮りたいと思っていましたが、うっすらと見えることはあっても写真に残せる機会はそんなに多くありませんでした。いつまでもこの穏やかな景色が続きますように。


読書記録033「雁の宿-隅田川御用帳01(藤原緋沙子)

2011年05月30日 20時12分07秒 | 読書記録

隅田川御用帳は藤原緋沙子さんの最初のシリーズで、鎌倉の東慶寺、群馬の満徳寺と同じような幕府が認めた縁切り寺が深川にあったという設定で、主人公の塙十四郎は、門前で寺に入る女を受け入れ、事務手続きをする御用宿の情報収集係兼用心棒である。御用宿橘屋を切り盛りするのは美貌でしっかり者のお登勢で、未亡人である。

人身売買のように「嫁」として売られた女が駆け込んできた。売られなければならない理由、買った悪徳商人の実体・・十四郎の初仕事は渦に巻き込まれた多くに人を救う結果となった。

吉原の女郎だった女が盗賊の頭と手を組み、旗本家を乗っ取り、町奉行の手が出せない屋敷を博打と売春宿にしていく。その上、大店の普請をした大工を金と女で身動きできなくして家の間取りなどを聞き出し、押し込みを働く。全員捕縛し、女はだました旗本に切られて死ぬ。いったんは離縁した大工は死なせてくれと食を断つが、女房と子供が待っているというとようやく生きる希望を見出す。十四郎とお登勢は舟で蛍狩りをする。

江戸時代、大名などが献上物で不用のもの、使い切れなくて残ったものを「献残」といい、その払い下げを受けそれを商品にして行う商売を行う者を「献残屋」といった。特に将軍家の献残は一級品で入札によって買い取る仕組みになっているが、当然、担当する者と買い取る側には利権が生じる。十四郎たちは不正を働く輩を摘発するが、店をつぶされた献残屋の娘と使用人の悲恋、最後は心中となる。

地方の藩の江戸屋敷で商家と組んで不正を働く勝手の友の姦計にはまり、妻の不義を理由に果し合いで返り討ちにあった。不正を働く男は邪魔になった女を殺す卑劣な男でもあった。十四郎は悪を暴くとともに、妻、遺児に敵を討たせる。

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読書記録032「霧の路-見届け人秋月伊織事件帖04(藤原緋沙子)

2011年05月30日 10時44分13秒 | 読書記録

物語の設定が江戸末期、そこから約300年前の戦国末期に割れた隣同士の藩のいがみ合い。多くの人が死に、傷つき、不幸が広がる。言わば、義に生きると、過去を引きずり共栄共存できない武士の論理の一番悲劇的な部分があり、犠牲になるのは女性ばかり。伊織は、最後の一人を上方へ逃す。その男に苦界から引き上げられた女は霧の中で遠ざかる男の無事を祈る。

猩々とは、中国の架空の動物で、日本では古来、毛が赤い、酒に誘引されるものの代名詞とされてきた。生まれつき毛の赤い兄弟に舞を教え、「猩々の舞」として興行し、人気を取っている男は一人の女を不幸にし、死なせた負い目があった。それをつかれて恐喝に応じるが恐喝した側はそれ以上の悪事を多く働いていた。伊織たちは事件を解決し、赤毛の兄弟は能の修行のため京へ旅立つ。伊織は、お目付け役の兄夫婦に呼ばれ、子の無い兄の養子となり、妻を娶って跡を継ぐよう説得されるが・・お藤はそれを知らない。

盗っ人カマイタチを追って、功名心に走って殺されたとされる岡引の娘「お馬」が名誉復活のため一時的に見届け人となる。探索の結果、カマイタチはふるさと行徳で死の床にあった。そして岡引の死はご禁制の品を流していることを黙認し、葉茶問屋の内儀と密通を重ねる罪深い与力が命じたことと判明した。カマイタチの面倒を見、最期を看取ったお馬は父親の名誉を回復し、逢引中に捕えられ、縄をかけられた与力の縄尻を握っていた。

既刊4冊を読み終わった。伊織の今後が興味深いが、2009年2月以来、続編が発行されていない。

次は、藤原緋沙子さんの最初のシリーズ「隅田川御用帳」にします。

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読書記録031「暖鳥-見届け人秋月伊織事件帖03(藤原緋沙子)

2011年05月30日 08時42分51秒 | 読書記録

女すりに財布をすられたと気づかず茶漬屋に入り、無銭飲食を疑われた武士、いたぶられた後我慢できず理不尽な店の者を殺す。父親を信じる息子。伊織たちは裏に悪徳表坊主(江戸城の世話係)の暗躍を見抜き、死罪に問われようとした武士を最低限の咎で救い出す。

屋敷を出て長屋暮らしをはじめた伊織。長屋の女性たちに親切にされるが、お藤はやきもちを焼く。失業のあげく、風呂屋で窃盗を働くようになった大工2人。盗んだ上物の羽織は密輸をしている唐物屋のもので袂に割符が入っていた。伊織たちの探索で唐物屋一味は捕らえられるが、大工も罪に問われ、敲きを受ける。女房の前で一つ敲かれる度に再起を誓う。

笛の名手であるが女を誑かし、金を絞れるだけ絞り、なくなると女郎として売る。人と呼んでいい武士であったが、足袋職人の父を殺した男でもあった。その職人には二世を誓った女があり、敵討ちに人生をかけた男の暖鳥(ぬくめどり)となっていた。暖鳥とは、鷲とか鷹とか隼とかが、寒い夜に鳥を捕らえ、その鳥の体温で自分の足を暖めて寒さをふせぐのだが、その捕らえられた鳥のことをいい、食べずに離すらしい。本当のことかどうかわかりませんが、季語にもあります。伊織は職人が元武士であったことを確認し、敵を討たせた上で、罪に問われないように尽力する。その結果、無罪放免となり、地頭の預かりとなる。暖鳥であった女性は後を追う。

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