読後感がさわやかですっきりした気持ちになるのが山本一力さんの小説でしたが近作はそうでもありません。この小説も全体的にバランスの悪い疑問の残る一作でした。と、素人が言うのも気が引けるのですが、ジグソーパズルにたとえれば何が書かれているのかは分かるのですが端のほうが欠けているような感じです。かって、プレゼンテーションの指導を受けた時、言及するのであれば最後まできちっと言うし、中途半端に終わらせるのであれば最初から言及しないようにと言われました。
五十両入った財布を拾ったことから物語は発展するのですが、途中で出てくる人とエピソードが中途半端に終わり、同じような場面がだらだらと続いて退屈。そのため、最後の花火でもめたお金を昇華し、ピークに達するところも霞んで感じました。この内容であれば、こんなに長く引っ張らなくてもよかった。
F老人は著者で手にする本を決めるのですが、もうこの著者のものは無条件では買わないでしょう。