若者の生活を圧迫する消費税の引き上げは百害あって一利なし
[第4回]藻谷浩介 「デフレの正体」著者
[[緊急インタビュー]もう経済復活は無理なのか 高橋洋一(嘉悦大教授)]
(日刊ゲンダイ)より
若者の生活を圧迫する消費税の引き上げは百害あって一利なし
50万部突破の大ベストセラー「デフレの正体」。これを読めば、借金増大と不況の根本原因がはっきりわかるが、著者の藻谷氏は消費税引き上げは「下策だ」と断じる。
デフレ不況の解決方法にはならない“絆(ばん)創(そう)膏(こう)”でしかないからだ。
「消費税増税は、イタリアみたいに国際金融市場から『NO』を突きつけられないためには、やむを得ないのかもしれない。
しかし、生産の現役世代や若者世代の負担を増やし、消費を冷やす下策です。
富裕高齢者のお金が若い人たちに回る制度、施策こそが必要なのです」 こう訴えている藻谷氏は、金融機関に籍を置きつつ、年300回以上の講演をこなしている。
ベストセラー「デフレの正体」に書かれている基本的な考え方はわかりやすい。
ズバリ、「経済は『人口の波』で動く」のだ。
景気(内需)を左右するのは、15歳から64歳の「生産年齢人口(現役世代)」になる、実際、ボリュームが厚い「戦中世代」や「団塊の世代」が現役世代だった戦後は、内需が拡大して経済は高度成長を続けた。
しかし、両世代が高齢者になると、それと時期を一にして、内需減少(デフレ)が続くことになった。
デフレは人口動態から必然なのである。
だとすると、その処方箋がさらに現役世代の消費を圧迫する消費税引き上げであるわけがない。
藻谷氏の“目玉政策”は「若者の所得増加(倍増)計画」だ。
現役世代の所得をまずは1・4倍、将来的には2倍にするというもので、人口減による内需縮小を1人当たりの所得増でカバーしようという発想だ。
これを実現するためには、さまざまなプランがあるという。
たとえば、若者の給料が高い企業をランク付けするNPO法人設立だ。
こうすれば、若者の可処分所得が上がり、現役世代の人口減による消費低迷をカバーできる。
それなのに消費税増税に踏み切ればどうなるか。
低所得に喘ぐ若者の生活はますます苦しくなり、内需縮小(デフレ加速)を招くだけだ。
増税分を価格転嫁しにくい企業は人件費削減などに走るだろうから、ますます若者の給与カットや雇用低迷を招くことになる。
つまり、百害あって一利なし。
野田首相は、高齢者激増による社会保障費増を消費税増税の理由としているが、藻谷氏は次のような代替案を示している。
「現役世代1人が高齢者1人を支える『肩車型社会』では、年金などの社会保障費を抑制する制度改革こそが最重要課題です。
年金制度を現行の『賦課方式』から『積み立て方式』に移行することが不可欠だと思います」
現役世代が高齢者を支える「賦課方式」(仕送り方式)は、受け取る側の高齢者が増えると、破綻する。
高齢者激増に対応するには自分の老後は自分で面倒を見る「積み立て方式」しかないだろうということだ。
これによって世代間格差は是正され、老後の不安が解消されれば、消費拡大も期待できる。
野田政権が高齢者優遇・若者冷遇の社会保障制度を改革せず、消費税増税を先行するのは、選挙目当てだろう。
若者は投票に行かないが、高齢者は投票に行くからだ。
藻谷氏は、「金融資産課税」や「年金デビットカード化(年金を使い残したら死後没収する)」も提唱している。
アイデアはいくらでもあるのに焼け石に水のような消費税引き上げにほとんど意味はない。
[第4回]藻谷浩介 「デフレの正体」著者
[[緊急インタビュー]もう経済復活は無理なのか 高橋洋一(嘉悦大教授)]
(日刊ゲンダイ)より
若者の生活を圧迫する消費税の引き上げは百害あって一利なし
50万部突破の大ベストセラー「デフレの正体」。これを読めば、借金増大と不況の根本原因がはっきりわかるが、著者の藻谷氏は消費税引き上げは「下策だ」と断じる。
デフレ不況の解決方法にはならない“絆(ばん)創(そう)膏(こう)”でしかないからだ。
「消費税増税は、イタリアみたいに国際金融市場から『NO』を突きつけられないためには、やむを得ないのかもしれない。
しかし、生産の現役世代や若者世代の負担を増やし、消費を冷やす下策です。
富裕高齢者のお金が若い人たちに回る制度、施策こそが必要なのです」 こう訴えている藻谷氏は、金融機関に籍を置きつつ、年300回以上の講演をこなしている。
ベストセラー「デフレの正体」に書かれている基本的な考え方はわかりやすい。
ズバリ、「経済は『人口の波』で動く」のだ。
景気(内需)を左右するのは、15歳から64歳の「生産年齢人口(現役世代)」になる、実際、ボリュームが厚い「戦中世代」や「団塊の世代」が現役世代だった戦後は、内需が拡大して経済は高度成長を続けた。
しかし、両世代が高齢者になると、それと時期を一にして、内需減少(デフレ)が続くことになった。
デフレは人口動態から必然なのである。
だとすると、その処方箋がさらに現役世代の消費を圧迫する消費税引き上げであるわけがない。
藻谷氏の“目玉政策”は「若者の所得増加(倍増)計画」だ。
現役世代の所得をまずは1・4倍、将来的には2倍にするというもので、人口減による内需縮小を1人当たりの所得増でカバーしようという発想だ。
これを実現するためには、さまざまなプランがあるという。
たとえば、若者の給料が高い企業をランク付けするNPO法人設立だ。
こうすれば、若者の可処分所得が上がり、現役世代の人口減による消費低迷をカバーできる。
それなのに消費税増税に踏み切ればどうなるか。
低所得に喘ぐ若者の生活はますます苦しくなり、内需縮小(デフレ加速)を招くだけだ。
増税分を価格転嫁しにくい企業は人件費削減などに走るだろうから、ますます若者の給与カットや雇用低迷を招くことになる。
つまり、百害あって一利なし。
野田首相は、高齢者激増による社会保障費増を消費税増税の理由としているが、藻谷氏は次のような代替案を示している。
「現役世代1人が高齢者1人を支える『肩車型社会』では、年金などの社会保障費を抑制する制度改革こそが最重要課題です。
年金制度を現行の『賦課方式』から『積み立て方式』に移行することが不可欠だと思います」
現役世代が高齢者を支える「賦課方式」(仕送り方式)は、受け取る側の高齢者が増えると、破綻する。
高齢者激増に対応するには自分の老後は自分で面倒を見る「積み立て方式」しかないだろうということだ。
これによって世代間格差は是正され、老後の不安が解消されれば、消費拡大も期待できる。
野田政権が高齢者優遇・若者冷遇の社会保障制度を改革せず、消費税増税を先行するのは、選挙目当てだろう。
若者は投票に行かないが、高齢者は投票に行くからだ。
藻谷氏は、「金融資産課税」や「年金デビットカード化(年金を使い残したら死後没収する)」も提唱している。
アイデアはいくらでもあるのに焼け石に水のような消費税引き上げにほとんど意味はない。