現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

ダイビングキャッチ

2020-04-14 16:41:00 | 作品
 カーン。
 いきおいのよいゴロが、一塁ベースよりにきた。芳樹は、ダッシュしながらボールをキャッチしようとした。
(あっ!)
グローブを出すのが一瞬遅れて、ボールを大きくうしろにはじいてしまった。芳樹は、あわててボールの後を追いかけた。
「よっちゃん、あんまり突っ込んでくるな。あわてなくても、守備位置はセカンドなんだから、待ってても一塁は充分間に合うよ」
 ゴロをノックしてくれたおとうさんが、向こうで叫んでいる。
 今まで芳樹はサードを守っていたので、どうしても前にダッシュしてボールをキャッチしようとする癖が抜けきらない。一塁ベースから遠い三塁の守備位置からでは、そうしないと送球が間に合わなかった。
 芳樹は、勢いがゆるくなるようにワンバウンドさせて返球した。おとうさんはバットを右手に持ったまま、ボールを素手の左手でワンハンドキャッチした。
「もう一回、お願いしまーす」
 芳樹は、右手をあげてさけんだ。
 おとうさんが体を左に傾けながら、また速いゴロをノックしてくれた。
 今度は、正面にボールが来た。芳樹はボールが来るのを待ってから、慎重にキャッチした。そして、すばやく一塁に送球。
 ところが、今度は送球が左に大きくそれてしまった。
「うわーっ」
ファーストを守る兄の正樹のグラブをかすめて、ボールは公園の外に飛び出していく。
「あわてて投げすぎだよ。こんな近くでそんなに急いで投げるなよ」
 正樹はブツブツ文句をいいながら、道路におりてボールをひろいにいっている。
「よっちゃーん、リラックス、リラックス。キャッチしてから、少し待って投げるくらいでいいから」
 向こうで、おとうさんが手を上げている。
 芳樹は、緊張をほぐすために、右手をグルグルと大きくまわした。
「おーい、いくぞお」
 正樹が、道路の方から声をかけてきた。
 やまなりのボールが、こちらにむかって飛んできた。芳樹はそのボールをキャッチすると、すぐにおとうさんにワンバウンドで返球した。
「今度はしっかり投げろよ」
 正樹が、道路からかけあがってきた。
「うん、わかった」
 芳樹はグローブをポンポンとたたきながら、守備のかまえにはいった。
「いくぞお」
 おとうさんが、今度は一塁寄りに速いゴロを打ってきた。芳樹は、左にすばやく移動してキャッチ。
「にいちゃん」
 声をかけながら、ファーストにトスした。
「OK]
 今度は、正樹がしっかりと取ってくれた。

 今日から毎日、おとうさんが会社へ行く前に、近くの公園の広場で朝練をしてくれることになった。
 ウォーミングアップには、少しだけキャッチボールをする。その後で、おとうさんがゴロだけをノックしてくれた。だから、守備位置がセカンドに変わったばかりの芳樹にとっては、かっこうの練習になっている。 
 中一の兄の正樹も、気が向けば練習に付き合ってくれるといってくれた。正樹は左利きだったから、ファースト役にはもってこいだった。きちょうめんな性格の正樹は、地面に靴のつま先で、きちんとファーストベースを描いた。セカンドを守る芳樹との間も、実際のグランドと同じ距離に保っている。
「おーい、みんなあ。時間よお」
 公園の外から、おかあさんが声をかけてくれた。
「よし、今日はここまでにしよう」
 おとうさんは、バットを肩にかついで先に歩き出した。
「ほれ」
 追いついてきた正樹が、山なりのボールを芳樹にトスした。芳樹たちは、軽くボールを投げ合いながら家に戻り始めた。

五年生になったばかりの芳樹は、最初からチームの中心選手だった。去年の秋に新チームを組んだときなどは、上級生たちをさしおいて、キャッチャーと二番手ピッチャーといった、要のポジションをまかされていたほどだ。
 去年の秋、新チームになってすぐの新人戦のころは、芳樹ははりきってプレーをしていた。
「しまっていこー!」
 毎回、守備位置についたとき、芳樹はキャッチャーマスクを頭の上にあげて大声で叫んだ。
「おーっ!」
 みんなが返事をしてくれると、自分がチームをひきいているみたいで、気持ちが良かった。
 しかし、その後、監督の方針で、新チームのキャプテン(六年生)に、チームをリードするキャッチャーの座をゆずることになってしまった。
 そのため、守備位置はファーストにまわることになった。
 ここでも、キャッチングに自信があった芳樹は、丈の長いファーストミットをうまくあやつって、無難にこなしていた。
 ところが、新学年になると、背が高いけれど不器用でサードを失格になった六年生のために、ファーストのポジションをゆずらなくてはならなくなった。ファーストは、高い球も取らなくてはならないので、背が高い子には向いているのだ。
 芳樹の守備位置は、今度はサードに変わった。
どうやら監督は、芳樹のことを、どこをやらせても器用にこなせる選手だと、思っていたみたいだった。
 そのため、チーム事情にあわせて、あちこちの守備位置をやらされるはめになってしまったのだ。
 芳樹は、キャッチングには自信があった。だから、本当は、キャッチャーかファーストをやりたかった。
 でも、そんな本人の希望は、六年生たちを一人前にするのにかかりきりの監督には、完全に無視されてしまった。
 そのためか、五年生になってから、芳樹は急激にやる気がなくなった。自主練をさぼるようになり、正式練習でも気合が入らなくっていた。
 でも、六年生たちで手一杯な監督やコーチたちは、そんな芳樹の様子に気づいていないようだった。
 練習の成果というのは、正直なものだ。監督の特訓でしだいに力をつけてきた六年生たちに、芳樹は実力でも追い抜かれ始めていた。
 そして、けっきょく二番手ピッチャーも、サードも、監督に失格の烙印を押されてしまったのだ。
 そして、郡大会を目前にして、今度はセカンドにまわされることになった。
 ところが、芳樹は、いつのまにか別人みたいに不器用になってしまっていた。そのため、セカンドの守備になかなか慣れることができなかった。
 今まで順調すぎるほどだった芳樹の野球人生において、初めて訪れた試練だったかもしれない。すっかり調子を落としてしまった芳樹を見かねて、おとうさんが朝錬をやってくれるようになったのだ。

次の土曜日、芳樹の入っている少年野球チーム、ヤングリーブスの練習の時だった。
監督が、シートノック(レギュラーが定位置に着いてやる守備練習)をしていた。
カーン。
速いゴロが、セカンドベース寄りに飛んだ。
芳樹はすばやく横に移動すると、逆シングルでボールをキャッチした。
体を反転させて、一塁へ送球。
「ナイスキャッチ。やっぱり、キャッチングは芳樹が一番だな」
監督が、大声で芳樹をほめた。
セカンドとしての体の動かし方が、ようやく身に付いてきた。さっそく、朝錬の成果が出たようだ。
「次、ショート」
 監督は、次の球をノックした。
 章吾が、三遊間寄りのゴロを素早くさばいて、ファーストに送球した。
「章吾、ナイス。次は、6、4、3な」
 監督が章吾にセカンドベース寄りのボールをノックした。
 章吾ががっちりキャッチすると、セカンドベースに入った芳樹にトス。
 芳樹はベースを踏みながら、ファーストへボールを投げた。
「よし、ダブルプレー成功」
 監督が機嫌よさそうに叫んだ。
 郡大会に向けて、チームの練習には熱が入っている。
「バッチ(バッターのこと)、こーい」
「バッチ、こーい」
 守備についていても、みんなから良く声が出ている。
 セカンドの芳樹が安定してきたので、ようやくレギュラーの守備位置が固まってきた。
外野の守備にはやや不安が残っていたが、内野はなかなか堅い守備を誇っていた。
サードは四年生の康平。肩も強いし、ボールをぜんぜん怖がらないので、強い打球にも逃げずに食らいついていた。
ショートは、同じく四年生の章吾。レギュラーでは一番の小柄だったが、一年生の時からチームに入っていた野球を良く知っている選手だった。
ファーストは、六年生の広斗。キャッチングには少し難があったが、長身なので高い球に強くファーストにはぴったりだった。
ピッチャーは、六年生の智美。監督ご自慢の郡でただ一人の女子エースだ。ピッチングだけでなくフィールディングもうまかった。
キャッチャーは、六年生でキャプテンの直輝。小柄で肩がやや弱かったが、ファイト満々でチームを引っ張っていた。
そして、セカンドを守るのが、ようやくこのポジションに慣れてきた五年生の芳樹だった。

 少年野球の郡大会が始まった。郡内の四町から十八チームが参加している。
 この大会で準々決勝に勝ってベストフォーに残れば、自動的に県大会に出場できた。
県大会は、いろいろなスポンサーが主催している四つの大会がある。だから、郡大会でベストフォーに残れば、県大会に出場できた。
 この一年間、ヤングリーブスは県大会出場を目指して、猛練習を続けてきた。いよいよその大会が始まるのだ。
 キャプテン会議での抽選の結果、ヤングリーブスは一回戦が不戦勝になり、二回戦からの出場になった。チームのくじ運はまあまあかもしれない。二回戦と準々決勝の二試合を勝てば県大会に出場できた。

 二回戦の対戦相手は、相模湖イーグルスだった。去年の練習試合では、10対1で楽勝している。もっとも、その時は、芳樹の兄の正樹たちが六年生だった時の、去年のチーム同士だったのでぜんぜん参考にならない。去年のヤングリーブスはレギュラーが全員六年生だったので、今年のチームの選手は誰も出場していなかった。
 一回の表、先攻のヤングリーブスは、相手ピッチャーの制球難と守備陣の乱れをついて、早々と四点を先行した。今日は六番に入っている芳樹も、相手のエラーで出塁し、二盗、三盗を決めて、足で相手チームをかき回している。
 その裏、ヤングリーブスの守りが始まった。
ピッチャーの智美が振りかぶった。
「ストライークッ!」
第一球は、低めに速球が決まった。上々の立ち上がりだ。
 ガッ。
 いきなりセカンドゴロがきた。
 芳樹は、じっくりボールを待ってしっかりキャッチした。ファーストの広斗へ送球する。
「アウト」
 一塁の審判が叫んだ。
 芳樹は、最初の打球を無事に処理して、ホッとしていた。
 その後も、試合はヤングリーブスペースで進んだ。着々と得点を重ねてリードを広げている。
 ピッチャーの智美も、打たせて取るピッチングがさえている。バックの守備陣もがっちり守って相手の得点を最小に抑えている。
 けっきょく、ヤングリーブスが9対3で快勝した。これで、来週の準々決勝に勝てば、県大会出場が決まる。
 セカンドの芳樹も、ゴロ三つフライ一つをノーエラーでさばいて、無事に責任を果たした。ショートの章吾とのコンビで、ダブルプレーもひとつ決めている。

 イーグルスとの試合が終わるとすぐに、ホームグラウンドの校庭に戻った。来週の準々決勝に備えて、さっそく練習をするためだ。
こんな時、大会が地元若葉町の横山グラウンドで行われているので、すぐに練習に戻れて有利だ。監督にいわせると、これもホームタウンアドバンテージ(地元のチームが有利)のひとつだということになる。それ以外にも、近いので応援団が多いなどいろいろな利点があった。
 来週の土曜日の準々決勝の対戦相手は、同じ町の城山ジャガーズだった。チームのレギュラーは六年生ばかりで強打で有名だ。
先月行われた町の春季大会では、外野のうしろにボカスカ打たれて、13対0で四回コールド負けをきっしている。その大会の優勝もジャガーズだった。
 練習の前のミーティングの時に、監督がいった。
「ジャガーズ戦だけ、芳樹を外野にコンバート(守備位置変更)しようと思う。今日から、その守備位置で練習をやろう」
 芳樹の外野へのコンバージョンは、強打のジャガーズ対策の秘密兵器だった。ジャガーズ戦では、外野への飛球が圧倒的に多い。芳樹は足も速いし、キャッチングもうまい。その芳樹を外野にコンバージョンして、ジャガーズの強打線の打球に備えようというのだ。
 センターにはすでにチーム一の俊足で、六年生の徹がいた。徹は守備範囲も広いし、肩も強かった。だから、芳樹が守るとしたらレフトかライトだ。
 そこに、もうひとつの秘策ともいうべき監督のアイデアがあった。
 さっそく、芳樹を外野に入れた守備位置での秘密練習が始まった。
 
「また、守備位置が変わったんだ」
その日の夕食の時に、芳樹がいうと、
「えっ、今度はどこ?」
 おとうさんは、びっくりしたような声を出していた。
「外野」
「えっ、そうなの。やっとセカンドに慣れてきたのに」
 おとうさんの声が心配そうになる。
「うん。でも、セカンドがだめだってわけじゃないんだ。次の試合だけの戦術的なコンバートなんだって」
「戦術的コンバート?」
「うん、監督がそういってた。ぼくの足の速さとキャッチングのうまさをいかしたいんだって」
「で、外野のどこを守るんだ?」
「レフトとライト」
「えっ、どういう意味?」
「右バッターの時はレフトで、左バッターの時はライトなんだって」
 これが対ジャガーズ戦用の監督の秘策だった。ジャガーズの打線は強打者揃いなので、ヤングリーブスのピッチャーの智美の球速では必ず引っ張られて、右バッターはレフト方向へ、左バッターはライト方向へ大きな打球が飛ぶのだ。
「ええーっ!」
 この秘策というよりは奇策に、さすがにおとうさんも驚いていた。

「じゃあ、今日からは、朝錬もフライキャッチの練習にするからね」
 芳樹とおとうさんは、公園の広場の対角に位置した。そのちょうど中間に、正樹が今日はセカンドベースを描いた。セカンドとショートの役をやってくれるのだ。芳樹がライトの時はショートが、レフトの時はセカンドが内野への返球をキャッチするからだ。
「ライト」
 おとうさんの声とともに、芳樹は左側に動いてライトの守備位置についた。同時に、正樹は右に動いてショートの位置についた。
 カーン。
 浅いフライが上がった。芳樹は一、二歩前進すると、なんなくキャッチ。
「バックセカン」
 正樹が声をかけると、芳樹はすばやくセカンドに返球した。
 カーン。
 今度はやや大きめなフライがセンターよりに飛んだ。芳樹は素早く落下地点を見定めると、やや下がりながらランニングキャッチした。
「バック」
 芳樹は、今度もいい球を正樹に返した。
「よっちゃん、フライは大丈夫なようだね」
 おとうさんが満足そうに声をかけた。もともとキャッチングに自信のある芳樹は、監督がにらんだ通り外野ならなんなくこなせそうだ。
「じゃあ、今度はレフト」
 おとうさんにいわれて、芳樹は守備位置を右側に変更した。正樹も、今度は左側のセカンドの位置に移動している。
 カーン。
 おとうさんがフライをノックして、練習が再開された。

 翌週の土曜日、城山ジャガーズとの準々決勝が行われた。ここで勝てばベストフォー進出で、県大会出場が決まる。まさに、今シーズン一番の大勝負だった。
 一回の表、ヤングリーブスが守りについた。城山ジャガーズの一番バッターは、左バッターだったので、芳樹はライトを守っている。
 ピッチャーの智美が第一球を投げた。
「ストライク」
 審判が叫ぶ。外角低めに速球が決まった。智美は好調を維持しているようだ。
 二球目。ボールがやや高めに浮いた。
 カーン。
 思い切りよく引っ張った打球が、ライトを襲う。
 しかし、あらかじめ深めに守っていた芳樹が、背走してランニングキャッチした。
「いいぞ、よっちゃん」
 応援席から、おとうさんの声が聞こえてきた。
「ワンアウトよお」
 芳樹は人差し指を一本立てて、チームメイトに叫んだ。
「おーっ」
 みんなもそれにこたえた。
 次の打者は、右バッターだった。
 監督はベンチから出ると、
「守備交代をお願いします。ライトがレフト、レフトがライト」
 芳樹は、今度はレフトに向かって走り出した。観客席は、思いがけない守備交代にざわめいていた。

最終回(少年野球の場合は七回)の裏、3対2とヤングリーブスが1点リードしていた。芳樹をレフトとライトにコンバートした監督の奇策があたって、相手チームの打線を抑えている。芳樹は、フライをレフトで五つ、ライトで四つと、合計九つもキャッチして、しかもノーエラーだった。この数は、六回までのジャガーズの全アウト数の、ちょうど半分にあたっていた。
 しかし、この回、智美がコントロールを乱して、相手打線に捕まってしまった。
ワンアウト満塁。ヒットが出れば逆転サヨナラ負けのピンチだ。
次のバッターは、左バッターだった。
 すかさず監督がベンチから出てきた。
「守備位置、変更します。ライトがレフト、レフトがライト」
 主審に守備の交代を告げる。
今日の試合で、いったい何回目だろう。おそらく十回以上にもなる
芳樹は、レフトの守備位置から、小走りにライトに向かった。
ライトからは、四年生の慧(けい)がこちらに走ってくる。
「ハーイ」
ちょうど中間地点ですれ違った時、二人はグローブでハイタッチをした。
 相手バッターは四番の強打者だ。芳樹は大きな当たりに備えて、深めに守った。

カーーン。
智美が投げ込んだ初球を、相手のバッターが思い切り引っ張った。
鋭いライナーが、芳樹に代わってセカンドに入っている佳之の頭の上を越えてくる。このまま右中間を抜かれたら、逆転サヨナラだ。
芳樹は、けんめいに右中間へ走っていった。
打球は、地面すれすれにまで落ちてきていた。
芳樹は、全身を前に投げ出すようにしてダイビングした。
キャッチ!
芳樹がけんめいに差し出したグローブに、ボールがすっぽりと入っていた。
(やったあ!)
 芳樹は、グローブを差し上げてノーバウンドでキャッチしたことを、二塁の審判に示した。そして、すぐに跳ね起きて、二塁の方を見た。
 打球が外野の間を抜けると思った二塁ランナーは、大きく飛び出している。
「よっちゃん、バックセカンド」
 ショートの章吾がベースカバーに入ってくる。
 芳樹は、すばやく章吾に返球した。
「アウトッ」
 ダブルプレーで一気にチェンジになった。ヤングリーブスは、3対2でぎりぎり逃げ切った。これで、県大会出場が決定したのだ。
「ワーッ!」
 チームのみんなが歓声をあげながら、ホームベースへかけていく。芳樹も、泥だらけになったユニフォームのままけんめいに走っていった。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ばんひろこ「まほうのハンカチ」

2020-04-14 15:44:36 | 作品論



 小学一年生のみさきと弟のこうすけ、そして二人と仲良しのゆらちゃんが活躍するシリーズの三冊目です(他の二冊、「すみれちゃん、おはよう!」と「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」については、それぞれの記事を参照してください)。

 二人でお留守番をしていた時に、いつもこうすけに勇気をくれる、まほうのゾウさんハンカチを、ふとしたはずみで、団地の五階のベランダから落としてしまいます。
 ゆらちゃんも加わって、三人でハンカチを探し出しました。
 しかし、それは、子どもたちが「やまんば」と呼んで恐れている怖そうなおばさんの部屋のベランダでした。
 いつもは怖がりなこうすけは、勇気をふるってゾウさんハンカチの救出に向かいます。

 この作品でも、子どもたちと団地に住むいろいろな人たちとのふれあいが、自然な形で描かれています。
 随所に、子どもたちへの作者の優しい視線と、長年子どもたちと触れ合ってきた作者ならではの観察がいかされています。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする