現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

橘玲「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」

2018-03-20 08:43:15 | 参考文献
 ずいぶん大げさなタイトルで250ページ以上もある本ですが、実際に生き延びる方法について書いてあるのはほんの少しで、後は作者の雑学知識の披瀝のオンパレードにすぎません。
 率直に言えば、以下に引用したあとがきだけ読めば十分でしょう。
「この本は、自己啓発のイデオロギーへの違和感から生まれた。
 能力に恵まれた一部のひとたちが、その能力を活かして成功を目指すのになんの文句もない。でもぼくは自分が落ちこぼれだということをずっと自覚してきたから、「努力によって能力を開発しよう」といわれるとものすごく腹が立つ。その一方で、「能力がなくても生きる権利がある」とナイーヴにいうこともできない。いくら権利があったって、お金が稼げなければ生きていけないのだから。
 誰もがうらやむ成功を手にできるのは限られたひとで、ぼくたちの大半はロングテール(注:この用語も作者のオリジナルではなく、市場を大半の売り上げを独占しているショートヘッドとそれ以外のロングテールにモデル化し、そのロングテールをニッチな市場に分割していって、さらにそれぞれにショートヘッドとロングテールがあるというクリス・アンダーソンの論にのっかっているだけです)で生きていくほかはない。市場での居場所が小さくなるほど売り上げは減るから、それに応じてコストを引き下げなくてはビジネスは成立しない。その下限は、自分と家族が生きていくための生活費になるだろう(もちろんサイドビジネスや趣味として「好き」を仕事にすることはできる)。そう考えれば、ロングテールのビジネスは会社ではなく個人のためのものだ。(以下省略)」
 どうやらこの本は、ひところ盛んに本が出ていた経済評論家の勝間和代と精神科医の香山リカの論争に便乗して出版されたようです。
 キャッチーなタイトルと旬のテーマを盛り込んで、博覧強記な雑学的知識を使いまわして(作者はいろいろな本で同じネタを使っています)本を出版するのが、作者のロングテールビジネスのようです。

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法
クリエーター情報なし
幻冬舎



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