社会歴史学者の著者が、1925年生まれの父親に聞き取りをしてまとめた本です。
生年からもわかるように、主人公の戦争体験といっても、実戦体験ではなくほとんどがシベリアにおける抑留生活におけるものです。
こうしたシベリア抑留者の手記は今までもたくさん出版されていますが、ほとんどが自費出版によるもので、親戚や知人の間だけで読まれ、これほど評判になることは少ないと思われます。
この作品が雑誌に連載され、新書として出版されたのは、著名な学者である息子のネームバリューのおかげもあることでしょう。
しかし、あとがきにも書かれているように、八十代にもかかわらず緻密な記憶と観察眼を持つ主人公と、これをたんなる戦争体験記にとどめずに、戦前戦中戦後の庶民の生活史としてまとめあげた著者の企画力に負うところが多いと思われます。
終始淡々と話をまとめながらも、父親への深い愛情と尊敬が感じられて、著者の新しい面を見る思いがしました。
そして、同じように父親の話を聞く機会はあったはず(晩年の十年間は同居していたのですから小熊以上にチャンスはあったでしょう)なのに、何もしなかった自分自身に忸怩たる思いがしています。
生年からもわかるように、主人公の戦争体験といっても、実戦体験ではなくほとんどがシベリアにおける抑留生活におけるものです。
こうしたシベリア抑留者の手記は今までもたくさん出版されていますが、ほとんどが自費出版によるもので、親戚や知人の間だけで読まれ、これほど評判になることは少ないと思われます。
この作品が雑誌に連載され、新書として出版されたのは、著名な学者である息子のネームバリューのおかげもあることでしょう。
しかし、あとがきにも書かれているように、八十代にもかかわらず緻密な記憶と観察眼を持つ主人公と、これをたんなる戦争体験記にとどめずに、戦前戦中戦後の庶民の生活史としてまとめあげた著者の企画力に負うところが多いと思われます。
終始淡々と話をまとめながらも、父親への深い愛情と尊敬が感じられて、著者の新しい面を見る思いがしました。
そして、同じように父親の話を聞く機会はあったはず(晩年の十年間は同居していたのですから小熊以上にチャンスはあったでしょう)なのに、何もしなかった自分自身に忸怩たる思いがしています。
生きて帰ってきた男――ある日本兵の戦争と戦後 (岩波新書) | |
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岩波書店 |