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現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

城山三郎「そうか、もう君はいないのか」

2018-03-18 09:24:39 | 参考文献
 キンドルホワイトペーパー(その記事を参照してください)を買ったばかりの時に、キンドルストア(アマゾンの電子書籍を販売しているサイト)でセールスで非常に安い価格で売られていたので、試しに買ってみました。
 キンドルの読みやすさは味わえたのですが、本自体はタイトルがキャッチーなだけで、他の城山の本に比べてあまりにお手軽なものでした。
 城山の娘さんによる長いあとがきによると、夫人が亡くなられた後、城山は酒びたりになり、体調を崩して亡くなったそうですから、この本の執筆時には筆力がそうとう落ちていたのでしょう。
 ここでは作品評価ではなく、この世代の夫婦のあり方について感じるところがあったので述べてみたいと思います。
 三木卓の「K(内容についてはその記事を参照してください)」を読んだ時にも感じたのですが、この世代(城山は1927年生まれ、三木は1935年生まれ)の夫婦関係は、いい意味でも悪い意味でも桃太郎的なオールドスキーム(仕組み)です。
 つまり「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に」という風に、夫は仕事に生き妻は家事をするカップルで、それぞれが相手に依存していて自立していないことが多いです。
 そういう私も大きなことは言えず、妻とは同じようにオールドスキームで暮らしてきて、私も妻に依存している部分が多いことは認めざるを得ません。
 高度成長からバブル期までは、このスキームの方が効率が良く、夫は妻のサポートのもとで収入を最大化できました。
 しかし、バブルがはじけて以降は、低成長で収入の格差が大きくなり、このスキームは破綻しました。
 これからのカップルは、夫も妻も働いて収入を二倍にし、家事や育児も分担していく新しいスキームでないとうまくいかないと思われます。
 ところが、他の記事にも書きましたが、ジェンダー観の揺り戻しがあって、女性は専業主婦を志向して、男性に経済力(年収600万円以上)を求めるようになっています。
 もちろんそんな男性はほとんどいない(20代、30代男性の4パーセント以下)ので、なかなか結婚に結びつかないのです。
 一方、男性も古い価値観に縛られて、家事や育児のできる(あるいはやろうとする)人があまり増えていません。
 また、政治や行政や企業もこれらの世代のために仕事をしていなくて(相変わらず団塊の世代などの人口がマジョリティで選挙に結びつく人たちのために働いています)、働く女性たちや、家事や育児をする男性たちを、きちんとサポートしいないので、少子化問題は解決できません。
 このジレンマを解決するためには、女性も男性も社会も、オールドスキームを捨てて(児童文学の世界では、そこへ回帰しようとする反動的な作品(たとえば中脇初枝「きみはいい子」など)が評価されていて、その古い体質に驚愕しています)、ニュースキームへ転換していかなければいけないのではないでしょうか。
 また、二十代、三十代の女性が仕事を続けることは、団塊世代のリタイアによる労働力の不足を補填する効果もあり、日本の国際競争力の維持にもプラスになります。
 

そうか、もう君はいないのか
クリエーター情報なし
新潮社
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