MASTER PIECE

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ショートショート(創作)

2016年10月25日 00時02分47秒 | その他

「27クラブ」


俺はジミヘンになりたい! ジャニスになりたい! いや、ジムやカートでもいい!

若くして名声を得られるならば27クラブに入ってもいい。俺は自分の才能の無さを棚に上げて今の境遇を嘆いていた。
「よし!!もうこうなったら悪魔頼みするしかない!!」
俺は18歳でミュージシャンを目指して上京し、現在22歳のフリーターではあるが,音楽の歴史に名を刻みたい。
藁をも掴む思いでもんもんと過ごしていたのだが、ある古書店で怪しい古ぼけた本を手に入れた。
それは紛れも無く悪魔召喚の魔術書だった「よし、これさえあれば俺は伝説になれる!!!」
入念に下調べをしてソロモン72柱の27番目の悪魔ロノウェを呼び出す準備をする。
魔道書通り床にソロモン五芒星を描き、呪文を唱えていると円の真ん中からもくもくと煙が湧き上がり
本のイラスト通りの悪魔ロノウェが出てきた。

「私を呼び出したのはお前か!!」
「にっ、日本語が喋れるのか?」
「当たり前だ!!私は伝達を司る悪魔だからな!!」
「私は音楽の名声がほしい!!、願いが叶ったら早死にしてもいい!!」
「よかろう、お前に名声を与える!!、この契約書にサインすれば願いをかなえてやろう」
「一つだけ決まりがある、契約後はこの魔道書は手放すことだ、よろしいかな?」

俺はなんの躊躇も無く、悪魔が差し出した契約書にサインをした・・・
次の日に魔道書は古本屋に引き取ってもらった。

それからというもの俺の人生は変わり始めた、デモテープを送り続けていた音楽事務所から連絡があった。
一度オーデションを受けに来ないかと話があった。
行ってみると見事合格、一年間レッスンを受けた後にCDデビュー、出した曲は大ヒット。
テレビ出演で知名度も上がり、デビューから半年でドームライブを行った。
音楽界の奇跡といわれるが、俺は当たり前だと思っていた、もちろんそれは俺が命と引き換えに、悪魔と契約したからだ・・・

俺もこの世界に入って早4年、今年27歳になった。
「俺も次の誕生日までには死ぬって事か・・・でも、成功できたしなんにも後悔は無い、本望だ!!」
しかし28歳になっても29歳になっても30歳を超えても俺は生きている・・・
仕事も無くならないし、出す曲は大きなヒットは無いが安定している。
「どうして死なないのだろうか?俺は27クラブに入れてはもらえないのか・・・」

俺はもう一度魔道書を探し始めた、以前に引き取ってもらった古書店にはすでに無かった。
全国を旅して周り、各地方の古書店やネットの怪しい趣味の会での情報などを頼ったが見つからない。
時間だけが過ぎていった・・・すでに40歳を過ぎていた。
私のミュージシャンとしてのキャリアも全盛期は過ぎていて、今は細々と仕事をしていた。
伝説には成らなかったが、今の安定した生活も悪くないとは思っている。。。

ある日に地元の古書店に寄った時に店の主人が声をかけてきた。
「以前あなたが探していた古い本が入ったよ、見ていくかい?」
俺はその本を見て一発で探していた本だと分かった。
高値ではあったがすぐに購入して自宅へ持ち帰った。

「もう一度悪魔を呼び出して、どうして27歳で死ななかったのか聞いてやる!!」
以前のやり方を思い出して床に五芒星を描き、呪文を唱えるとロノウェが煙とともに現れた。
俺は怒りの感情で悪魔に怒鳴った。
「やい!!俺との契約はどうなったんだ!!」すると悪魔は落ち着き払って
「お前との契約はいまだ更新中だが、何か不満でも?」
「若くして名声を得て27歳で死ぬ予定だったのだが。」
「まぁまて、お前は勘違いしている。契約者が27歳で死ぬのは運命だ!!それは悪魔でも変えられない!!」
「じっ、じゃあ別に悪魔との契約など最初から必要なかったとでも言うのか!」
「それは考え方次第だ!!、お前は名声を得たい為に自分でがんばったのだろう?私との契約はその切欠に過ぎない」

私は呆然とした、悪魔は何を目的として契約したのか?命との引き換えではなかったのか?
「では、お前の契約とは何なのだ!!」
「あれ?知っていたとは思うが、お前が死んだら魂をもらう事だ、そう契約しただろう、違うか?」
「ただ一つ教えてやろう、お前との契約履行は72人待ちだ、お前は73番目となる
つまり契約者の72人が死ななければお前には権利が回ってこないと言う事だ。」
「その時は歴史に残るような名声を与えてやろう、悪魔の力で!!」
「お前の番になるまでお前が生きていればの話だがな。。。」

「ソロモン72柱の悪魔ロノウェはニヤリと笑って煙と共に消えてしまった・・・」


おしまい。。。

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