本日、読み終わりました。
東京の鉄道建築会社で働く36歳の多崎つくるが、彼女の助言も受けつつ、自分の過去と向き合う旅に出る。
東京から名古屋、そしてフィンランドへ・・・
なんともすっきりしない物語でしたが、やっぱり村上春樹は長編のほうが面白いです。
主人公の多崎つくるが、なんともとらえどころの無い(なにを考えているのか分からない)人物のようで
それは村上春樹の他の小説にも出てくる独特の男性像に描いてあったのは流石だと思う(笑)
この物語の後半にはっきりと1995年の地下鉄サリン事件を連想させる文章が出てきます(396P)
それは実際に起こった事件であり、それまでの話の流れとしては皆無でしたから
今までの話を整理していくと・・・2013年で36歳だと1995年は18年前。主人公たちが高校を卒業しての3月という事になる。
18年前の当時の世相や、事件が関係している話だとその時点で初めて分かるというなんともトリッキーな展開・・・
まぁ大学の後輩である灰田も、仲が良かったシロもカルト教団と関係していたってなると
全然、イメージが違って見えるミステリーですね。
灰田はなぜ、突然の休学で去っていったのか?
シロは誰に殺害されたのか?
でもこの小説はそんなミステリーはどうでもよくて、謎は謎のままであり
地下鉄サリン事件と同じ理不尽な暴力によって受けた自分自身のトラウマや苦しみに向き合っていく
一人の人間の魂の浄化と再生の物語となっているのが凄く共感できます。
題名の「色彩を持たない」っていうのはそんな意味だったんですね。
自分自身のアイデンティティーとしてのコンプレックスを乗り越えられるか?ってのも、この作品のテーマだと思う。
面白く読めた作品でした。
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