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ノルウェイの森 (文庫)

2014年06月16日 22時50分42秒 | 書籍



初めて「ノルウェイの森」を読んでみました。

現在までもっとも売れている文庫の一つという事ですが、今まで読む機会がありませんでした。
(実際は映画作品を観て、少しは知識を得て読んだ原作という事になります)

まず、小説の構成が主人公、わたなべ氏の回想録だという事。
その回想物語は小説の終わりまで続く、37歳のわたなべ氏が17年前に体験した
ほろ苦い思い出であり、忘れられない思い出でありながら、ビートルズの「ノルウェイの森」のメロディで
いつものように感情を混乱させ揺り動かすほどの、出来ればあまり思い出したくない思い出である

物語はわたなべ氏が18歳の時に大学の学生寮から始まる・・・
彼は東京も一人暮らしも初めてである神戸から出てきた大学生。
彼の東京での生活理由は「すべての事から距離をおく事
これって大学生活で未来の自分を模索するような希望や展望とは違う次元であり
「とりあえず」っていう理由なところがわたなべ氏のちょっと冷めた目線であり
日本の激動な時代背景としてはとてもクールで異質な人物像であるのがよく分かる。

全体的な印象としては主人公と関わった人物たちとの残酷な青春群像劇ですね
残酷でもあり感傷的であり、ノスタルジックな深い愛情の物語。
でも青春って元々、こういう迷宮みたいな不安や悩みとか
非常に馬鹿馬鹿しい事が青春の本質であったりするわけで・・・
あとは、愛情のすれ違いだったり、欲望の正当化だったり
悩んだり迷ったりする主人公にとっても感情移入出来ます。

ビートルズの「ノルウェイの森」の副題が「小鳥は去った」なので
小鳥は直子で去ったとは亡くなったとの解釈でしょう。

最後のレイコさんとの邂逅はとても印象深いです。
凄く感傷的な終わり方で、浄化作用っていうかカタルシスを感じる文章表現で癒されますね。
上巻の最初の言葉が「多くの祭りのために」なので
音楽で直子の葬式をしたってのが「多くの祭り」っていう意味なのか・・・

久しぶりに深く深く入り込んで読めた小説でした。
正直言って村上春樹の小説だという事を考えなくても、良く出来た印象深い文学であることは間違いないと思う。

最後に映画の話ですが、原作のエピソードを上手いこと表現していて
原作の雰囲気をよく引き出している映画作品ですね。
トラン・アン・ユン監督なので日本人の感覚とは違う不思議な映像が印象深いです。

次は「海辺のカフカ」に挑戦しようと思います。