白粉花

おしろいや二輌電車の通り過ぎ



　



オシロイバナ科の多年草。

中南米原産。

江戸時代前期にはすでに渡来していたという。







観賞用に栽培されているが、暖地では野生化しているもの

もある。







秋、ラッパ形の小花をさかせる。

花色は赤、白、黄、絞りなどがある。

夕方から芳香を放ちながら咲き始める。

黒く硬い種子の中にある胚乳をつぶすと白粉のようなので

この名がある。







夕方、線路脇の側溝のところに白粉花が咲いていた。

佇んで見ていると、近くを二輌電車が通り過ぎた。






白粉花（おしろい）や旅の一日の終りたる



　

背高泡立草

霽れてきし城址背高泡立草



　



キク科の多年草。

北アメリカ原産。

帰化植物で、空地などに群生する。

秋、茎頂に黄色の頭花を多数つける。







雨が上がって晴れてきた。

城跡の背高泡立草が日に当たり、黄色く鮮やかであった。







有松の街道から外れ、名鉄線の踏切を越えると天満社が

ある。

その入口手前の空地に背高泡立草が群生していた。







木々で鬱蒼とした長い階段を上っていくと天満社がある。







やっと上ると更に階段があり、木に囲まれた神社があった。

秋の蚊がいるだけで、人は誰もいなかった。






線路脇背高泡立草に沿ひ



　

柿の秋

街道に有松絞り柿の秋



　



柿の生る頃の秋をいう。







鳴海から二つ目の駅、有松を訪れた。







有松、鳴海付近で産する木綿の絞り染めを有松絞り、鳴海

絞りという。

有松は尾張藩の庇護の下で絞り染めの独占を続けた。

現在では、有松絞りは国の伝統工芸品に指定されている。







有松は格子窓の古い建物や蔵が立ち並び、昔の面影が色

濃く残っている。







街道には有松絞りの工房や小売りの店が数多くある。

そこを一歩外れると柿がたわわに生っていて、柿の秋である

ことが感じられた。






柿の秋旅のザックの重くして



　

梔子の実

梔子の実やまた宿（しゆく）の曇りきて



　



アカネ科の常緑低木。

実は楕円形をなし、縦に稜（りょう）が走る。

熟すとオレンジ色になり、染料、生薬用、食品着色料に用

いられる。

熟しても先端の口を開かないためこの名がある。







鳴海はかつては宿場町であり、寺の数が多い。

浄泉寺を訪れると、梔子の実が色づいていた。







朝の雨が上がり、一度青空がのぞいたが、昼過ぎに再び

鳴海宿は曇ってしまった。

葉に埋もれた梔子の実が愛おしく感じられた。






梔子の実を見するべき人もなし



　

柘榴

境内の実柘榴に艶ありにけり



　



ザクロ科の落葉高木。

ペルシャ、インド原産。







果実は拳大の球形をしており、果皮は黄紅色で黒斑がある。

晩秋に熟すると裂けて鮮紅色の多数の種子を露出する。

種皮は生で食べられ、また、果実酒に利用される。







鳴海の万福寺を訪れた。







境内には誰もおらず静まり返っていたが、柘榴が赤く生り艶

やかであった。

その重みで枝は枝垂れていた。






枝垂れたる柘榴に鳥の声もせず