奇想庵@goo

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アメリカとサッカー

2006年06月11日 19時22分09秒 | サッカーワールドカップ
昨日(6月10日付)の読売新聞夕刊のよみうり寸評は次のような内容だった。

 サッカーが米国でスポーツの主流になれない理由は、強い者が正当に勝てないからという◆サッカーライターの後藤健生さんが、「決定版 世界サッカー紀行」(文春文庫)で、そう分析している。足でボールを操るから、ミスしやすい。誤審も少なくない。得点も取りにくい。だから格下でも、必死に守って失点せず、運も味方すれば、1度のチャンスでゴールを奪い、勝てる、と◆アメリカン・フットボールのように、強い者が、力で勝つことを好む米国人には、これが「不条理なものであって、ルールのどこかが間違っている」と見えるらしい◆(以下略)


以下、日本の番狂わせを願う内容へと変わっていくわけだが、アメリカンフットボールのファンからすれば、この記述は明らかにおかしい。

まず、最初に書かれている、「サッカーが米国でスポーツの主流になれない理由は、強い者が正当に勝てないからという」という部分だが、アメリカで人気のある野球やバスケットボールを思い浮かべれば、これが全くの的外れであることは誰でも分かるだろう。
弱いと予想されるものが強いと予想されるものに勝つことを「アップセット(番狂わせ)」と呼ぶが、一試合あたりのアップセットの起こる確率は、野球やバスケットボールの方が遥かにサッカーより高い。今年の春にWBCがあったが、野球における一発勝負の正当性は低いため、一試合の結果だけで世界一というのには疑問の余地もあるほどだ。
プロのリーグでは100試合を越えるようなペナントレースを戦い、更に複数試合の優勝決定戦が繰り広げられるのが普通。優勝チームの勝率などを見ても、サッカーよりも強弱の関係が試合結果に繋がらないのは明白だ。

次に、「アメリカン・フットボールのように、強い者が、力で勝つことを好む米国人」とあるが、果たしてそうか?
確かにアメリカンフットボールは野球やバスケットボールに比べるとアップセット率は低い。その一面にはよりフィジカルなスポーツだからという部分があるからだろう。サッカーの場合、フィジカルコンタクトに関してはバスケットボールに近いと思われるが、得点の入りにくさからアップセットが起きにくくなっている。
アメリカのスポーツは引き分けが起きにくい、あるいは引き分けを認めないものが多いが、ヨーロッパのスポーツは引き分けが戦術の一部となっている。弱いチームは通常強敵に対するとき引き分け狙いで戦うことが出来る。もちろん守り一辺倒では耐え切れないので、ある程度の攻撃に出るのは常識だが、少人数で攻撃することで守りに人数を残す戦術を取る。そのため、ただでさえ点の取りにくいサッカーで守りに入っているチームが得点することは非常に稀なことだ。
ワールドカップの歴史において、弱者が引き分けることはよくあるが、勝つことはそれだけで話題になるほど滅多にない椿事だ。
それを考えると、アメリカンフットボールと比べてサッカーが著しくアップセットが起きるスポーツと言うことはできない。むしろアメリカンフットボールは作戦が勝敗の半分を担うと言われるように、机上での準備が選手の実力を越えて結果に反映するスポーツである。アップセットが起きにくいのはむしろヨーロッパ源流のラグビーの方だろう。

こういった牽強付会はともかく、ではなぜアメリカがサッカー不毛の地と呼ばれるのか。最近は子供のプレイするナンバーワンスポーツとなり、移民からサッカー文化も導入され、プロサッカーリーグも定着しているものの、それでもアメリカのトッププロスポーツとの差は大きい。これは単に歴史的な背景に拠る。
ヨーロッパを離れアメリカに新天地を見い出したアメリカ人は、特に文化の面でヨーロッパからの離脱を図った。その結果として、スポーツにおける非ヨーロッパスタイル、それが野球やバスケットボール、アメリカンフットボールの隆盛を生み出した。もちろんこれらのアメリカ生まれのスポーツはアメリカ的精神が根底にあるがゆえに、いまも根強くアメリカ人に支持されている。


アルゼンチン-コートジボワール(C組)

2006年06月11日 06時40分34秒 | サッカーワールドカップ
死のC組の開幕。前回大会でグループリーグ敗退の憂き目を見たアルゼンチンが今回も死のグループでどんな戦いを見せるか注目したが、内容ではなく結果を求めた試合だった。

アルゼンチンは司令塔のリケルメがゲームを作る。開始早々のフリーキックは誰も合わせられずにスルー。
一方、コートジボワールはエースのドログバが中心。左サイドからボカのクロスに合わせるもヘッドはヒットせず。コートジボワールはボカのミドルシュートも左に逸れる。更に右からのコーナーキックのチャンスもシュートには至らず。
対して、アルゼンチンも右からのクロスにクレスポが飛び込むもクリアされる。直後のコーナーキックではアジャラがタイミングよくヘディングシュートをするも、ゴールラインを割ったかに見えたが判定はノーゴール。
リケルメのロングシュートに対し、コートジボワールもゾコラがドリブルで切れ込んでクロスを上げるもクリアされる。アルゼンチンはカウンターから一気に押し上げるもシュートには至らない。
ほぼ互角の展開が続く。組織力ではアルゼンチンが優位だが、コートジボワールの高い身体能力を生かしたドリブルや個人技に手を焼く場面もしばしば見られた。
この状況を変えたのは、24分やはりリケルメ。精度のいいフリーキックを蹴り、こぼれ球をクレスポが押し込んで先制ゴール。続いてサビオラがミドルシュートを蹴り込み、一気に流れを掴むかに見えた。
しかし、ここからコートジボワールの反撃が始まる。ケイダのミドルシュート、ワンツーからカルーの惜しいシュート、ドログバがスルーパスを受けてシュートを放つもディフェンダーが体を張って阻む。左からのマイナス気味のクロスをフリーでカルーがシュートするも右に外れる。またも左からクロスをドログバが落としてケイタが飛び込んだが、ゴールキーパーのファインセーブに得点とならない。
押されっぱなしだったアルゼンチンは、ワンチャンスからリケルメがスルーパス。オフサイドラインの裏に飛び出したサビオラが上手く合わせてシュートを決めた。フラッグが上がってもおかしくない微妙なタイミングだったが、これで2点差となりアルゼンチンはかなり優位になった。
前半を終わって2-0とアルゼンチンリードとなったが、試合内容はほぼ互角。ただ3回の決定機のうち2回を確実に得点したアルゼンチンの勝負強さが光った。ただアルゼンチンらしいサッカーができていたかというと微妙なところ。

後半に入り、アルゼンチンは左サイドを起点にシュートまで持ち込む。コートジボワールはフリーキックのチャンスも壁に当たって流れを掴めない。アルゼンチンもリケルメのフリーキックがいいボールでゴール前を襲うが誰も合わせられない。
55分コートジボワールが先に動く。カルーに代えてダンダンが入る。このあとまたもドログバが左からのクロスにヘッドで合わせるがクリアされる。
コートジボワールはボカを下げてバカリ・コネを入れ、より攻撃的布陣に。対してアルゼンチンはクレスポを下げてパラシオを入れる。後半に入り、コートジボワールはよりサイドからの攻撃が目立つようになる。左から切れ込んだシュートや、ドログバがキープからケイタ、バカリ・コネと繋がってシュートまで持っていくなど攻撃のリズムが出てくる。そして、フリーキックでは流してからのロングシュートをドログバが足に当てて方向を変え、あわやゴールかという場面も演出する。
ここでアルゼンチンはサビオラを下げてルイス・ゴンザレスを投入。より守備の意識を高める。コートジボワールもケイタに代えてアルナ・コネを入れ、得点を狙いに来た。
後半、攻撃の形が作れないアルゼンチンに対し、再三攻め込むのはコートジボワールという構図となった。バカリ・コネのミドルシュートは外れるが、シュートの本数はかなりコートジボワールが上回るようになる。
そして82分。右からバカリ・コネのクロスを更に左で折り返し、中央のドログバがついにゴールを決める。これで2-1。後半押し続けたコートジボワールが1点をもぎ取った。
これで一気に流れを掴むかと思われたが、アルゼンチンはここからがしぶとい。リケルメのミドルシュートのこぼれ球にゴンザレスが詰めて押し込んだかに見えたゴールはオフサイドで得点にならなかったが、巧みな試合運びで、それまでのようにコートジボワールに自由にボールを運ばせない。唯一左からのクロスがチャンスになるかと思えたが、それも封じて、1点差になってからはシュートを許さずに試合を終えた。
時間のつぶし方の上手さはさすが南米と思わせるもの。ロスタイムに入って、リケルメに代えてアイマールを入れたのも時間稼ぎだった。

アルゼンチンは試合内容では、リケルメこそ目立ったものの、力強さを見せることなく戦い抜いた。見ていて面白いサッカーではなかったが、このグループを勝ち抜くためには仕方ない戦い方だろう。消耗せず、確実に勝ち点を取ることが今求められているのだから。ただ決勝トーナメントでいい結果を残すためには、起爆剤が欲しいところでもある。
コートジボワールは初出場ながら欧州リーグでプレイする選手が多いため実力を存分に発揮できたと言えるだろう。アフリカらしく、組織性は乏しいが、個人技の強烈なパワーは見る者を圧倒する。ただしこの死のグループを勝ち抜くには、足りないものが多すぎる。集中力の持続やずる賢さもサッカーには求められる。アフリカのサッカーの常だが、そういった部分の改善がなされないと、本当に強いチームにはならないだろう。

アルゼンチン 2-1 コートジボワール

アルゼンチン:クレスポ,サビオラ
コートジボワール:ドログバ


トリニダード・トバゴ-スウェーデン(B組)

2006年06月11日 03時46分33秒 | サッカーワールドカップ
これがワールドカップ。そんな思いの残る試合だ。優勝候補の一角にさえ挙げられるスウェーデンに対し、初出場のトリニダード・トバゴが徹底した守りで勝ち点1を奪った。実力差を埋めたのは、徹底した戦術だった。見る者にとってはあまり楽しい試合ではなかったが。

試合開始直後に、スウェーデンはペナルティエリアのすぐ外からフリーキックのチャンス。ベテランのラーションが強烈なシュートを放つもわずかに右。試合は予想通りスウェーデン優位に展開するが、トリニダード・トバゴはフォワード一人を残して全員が守りに入り、スペースを与えない。そのためスウェーデンの攻撃はシュートまで結びつかない。
スウェーデンは、ゴール前のイブラヒモビッチに合わせようとするが、スペースがないため上手く収まらない。たまに、ディフェンダーのメルベリのロングシュートや、右からのクロスにイブラヒモビッチがオーバーヘッドシュートを試みるが、うまくヒットしない。
カウンターからラーションとイブラヒモビッチが二人で切れ込むもクロスに合わせられない。右、左とクロスを続けて揺さぶって最後は中のリュングベリに合わそうとするもシュートはヒットせずにゴールから大きく外れてしまう。
テクニックは明らかにスウェーデンが上回っているが、守備の意識が高く、また身体能力に優れているため、球際で自由にさせないプレーが目立つ。スペンションが裏に抜けてシュートの場面を作るもオフサイドで決定機とならない。
トリニダード・トバゴの初めてのいい攻撃は、32分のエドワーズのミドルシュート。これは枠内だったがゴールキーパーの好セーブに阻まれる。
しかし、その後もスウェーデンの攻めが続き、リュングベリの右からのクロスにラーションがヘッドで合わせたり、ダイレクトパスのいい流れからヴィルヘルムションがミドルシュートを放ったり、コーナーキックからメルベリがヘディングシュートをしたり、イブラヒモビッチがクロス気味のボールをワントラップでシュートしたりと、再三ゴール前でチャンスは作るが、どのシュートもゴールを割ることが出来ない。
一方、前半終了間際、トリニダード・トバゴは右からのクロスをワントップのスターン・ジョンがヘディングシュートをし、更にビルチャールがミドルシュートを放った。
スウェーデンは、縦パス一本を狙う場面が目立ち、攻撃の形を組み立てられないのに対し、トリニダード・トバゴは典型的なカウンターサッカーだったが、チャンスを作る場面はほとんどなかった。ただ気になったのは、スウェーデンにミドルレンジからのシュートがほとんどなかったこと。撃てそうな場面でもフォワードへのパスを選択してばかりだった。前日にドイツがコスタリカを下した試合と比べると非常に顕著な違いだ。

後半開始すぐに、トリニダード・トバゴのディフェンダー、エイブリー・ジョンが2枚目のイエローカードで退場となる。これでますますスウェーデンが優位に立ったかと思われた。だが、トリニダード・トバゴのオランダ人監督ベーンハッカーは、サミュエルを下げてグレンを入れ、これまでのワントップからツートップに戦術を変える。
スウェーデンはエドマンが左サイドから上がってクロスを放つものの、イブラヒモビッチのヘッドはゴールの外に。逆に、その直後にトリニダード・トバゴの代わったグレンがワンチャンスで右45度の角度からシュートを撃ち、クロスバーに当たるあわやの場面を作った。
前半と違い、サイドからの攻撃の意識の高まったスウェーデンだが、イブラヒモビッチへのクロスの精度が低く、またイブラヒモビッチ自身の体の切れも感じられずに、クロスに合わせてもシュート性の当たりにはならない。
後半60分を過ぎて、ようやくスウェーデンはスペンションに変えてフォワードのアルベックを投入し、より攻撃的になる。それに対しトリニダード・トバゴも若いセオボルドに代えてベテランのウィットリーを投入。
スウェーデンのアルベックはゴール前にいい飛び込みを見せるもシュートにならず。トリニダード・トバゴのグレンも右サイドからのクロスにヘッドで合わせるもヒットせず。更にアルベックはうまくディフェンスラインの裏を取ったにも関わらずシュートがヒットせずに決定機を生かせない。
左サイドを起点にエドマン、アルベックとボールが繋がるがシュートはゴールキーパー正面。78分にリンデロートとヴィルヘルムションに代えてヨンソンとシェルストレームを入れ、スウェーデンは全てのカードを切る。が、ラーションからのスルーパスをもらい決定的な場面でアルベックがまたもシュートをキーパー正面に蹴ってしまう。
トリニダード・トバゴは残り10分の場面でコーナーキックのチャンスを得ると、二人の長身のセンターバックをあえてゴール前に上げたが、シュートには至らなかった。
このあと、スウェーデンはヨンソンのクロスにアルベックが合わせられず、リュングベリやラーションを軸に波状攻撃をかけるも決定機を作れず。ラーションが久々にミドルシュートを放ったのは86分。最後の決定機とも言えたイブラヒモビッチのシュートもゴール右上に外れ、ついにスコアレスドローで試合が終了した。

トリニダード・トバゴは一人少ない窮地に立っても、攻撃の枚数を増やすことでスウェーデンに揺さぶりをかけ、守備では精神的支柱でもある大ベテランのヨークがボランチとして素晴らしい読みを発揮した。最後まで守備の意識を保ち続けられたのは、シンプルな戦術の徹底があったからだろう。残り2試合を同じように戦うのは難しいだろうが、この勝ち点1で波乱を生む可能性が出てきたことは間違いない。

スウェーデンは、暑さの影響があったのかもしれないが、ワールドカップが夏場の戦いであるのは既に分かっていたこと。格下相手に戦術面での準備が明らかに不足していた。前半の課題の一部は後半修正できたものの、攻撃の幅が狭く、特にイブラヒモビッチの切れのなさは目に付いた。この組は守備力の高いチームが多いため、この試合の攻撃の戦術では得点力は期待できなくなった。グループリーグ突破のためには次のパラグアイ戦で勝ち点3が必要になってきたが、簡単には取れないだろう。

トリニダード・トバゴ 0-0 スウェーデン




イングランド-パラグアイ(B組)

2006年06月11日 00時44分23秒 | サッカーワールドカップ
1点を巡る攻防と言いたいところだが、残念ながら盛り上がりに欠ける試合内容だった。このB組は高レベルでの争いを期待していたが、その期待を裏切る可能性が出てきた感じだ。

試合開始直後、イングランドはかなり遠い位置からのフリーキック。ベッカムの蹴ったボールは、パラグアイのディフェンダー、ガマーラのヘッドに当たってオウンゴール。非常に距離のあるフリーキックにも関わらず、速く、鋭く変化して、素晴らしいボールだった。
堅守を誇るパラグアイは、いきなり先制されゲームプランの修正を余儀なくされた。しかも、その直後にゴールキーパーのビジャールが負傷退場し、代わってボバディージャを投入せざるを得なかった。流れを掴めないパラグアイに対し、イングランドはベッカムのコーナーキックからジェラードがミドルシュートを放ったり、ジェラードの距離のあるスルーパスにオーウェンが走り込んだり、ペナルティエリア内からの間接フリーキックを得てランパードが強烈なシュートをしたりと、嵩にかかって攻め立てた。
パラグアイはこの苦しい時間帯を守り抜き、ようやくパレデスやリベロスがミドルシュートを撃って反撃に出る。
一方的な展開から押し戻したものの、ベッカムの精度の高いロングパスもあって試合展開はイングランド優位に進む。ランパードやジェラードのミドルシュートでパラグアイゴールを脅かす。パラグアイは右サイドからの攻撃が目立ったが、シュートまでは繋がらない。
38分にはベッカムがゴールを決めた位置より近い距離からのフリーキックを蹴り、パラグアイは必死のクリアでそれを防いだ。更に、左から崩して最後は中央のベッカムのシュートもわずかに右に逸れた。
前半ロスタイム、パラグアイはまたも右サイドを起点に、バルデスが中央から上手く体を使ってシュートを放つも、ほんのわずかにゴールポスト左で同点のチャンスを逃した。
イングランドは背の高いクラウチが絡む機会が多いものの、それがシュートにはなかなか結びつかず、パラグアイの守備陣が落ち着いてからは、いいパスは繋がっても決定的なチャンスを奪えずにいた。対するパラグアイは、エースのサンタクルスユの出来が悪く、攻撃の形すらなかなか整わなかった。

後半の立ち上がりはパラグアイの攻めが目立った。右サイドからの攻撃を軸にするものの、シュートまでには至らない。イングランドも前半に比べ運動量が目立って落ち、パラグアイの守備を崩すことができない。
55分にはオーウェンを下げて左サイドのダウニングを入れ、ジョー・コールをトップに据えた。その直後、ベッカムが上手く裏を取り、シュートを放つも大きく左に逸れた。更に高い位置でボールを奪い、ジョー・コールがシュートを撃つがゴールキーパーの好セーブに阻まれる。
パラグアイも右から崩してパレデスがゴールキーパーのクリアしたボールを直接シュートするが大きくふかしてしまう。
じりじりした展開にイングランドのクラウチがレフリーのジャッジへの不服でイエローカードを受けるなど、イングランド側にファンも含め苛立ちが募りつつあった。
そんな中、パラグアイで目を見張る運動量でイングランド陣をかき乱していたバルデスが、ハーフウェイラインからドリブルで一気にペナルティエリアに侵入しシュートを撃つもゴールキーパーにセーブされる。パラグアイも中盤からのパスの精度とアイデアが不足していて、堅いイングランドの守備を崩せずに漫然と時間が過ぎていった。
そこで、パラグアイはボネに代えて、スーパーサブ的なフォワードのクエバスを投入し、攻撃的な布陣とした。クエバスのドリブルはアクセントとはなったが、しかし、イングランド守備陣を突破する力はなかった。
イングランドもランパードがミドルからいいシュートを放ち、パラグアイに攻撃のリズムを簡単には与えない。残り10分となって、パラグアイはトレドに代えヌニェスを、イングランドはジョー・コールに代えハーグリーブスを投入。パラグアイはサイドをより攻撃的に、イングランドは守備固めを意図した交代だった。
パラグアイは中盤は回せてもラストパスが繋がらずシュートを撃てない。イングランドはランパードがまたもミドルシュートでパラグアイをひやりとさせた。
そして、終わってみれば開始3分のフリーキックからのオウンゴールが唯一の得点となった試合だった。確かに両チームとも堅い守備力があるのは見て取れたが、両チームとも相手の守備を崩すという意味では物足りなさも残った試合だった。

イングランドは開始15分くらいまでは思い通りの素晴らしいサッカーを見せてくれたが、その後はベッカムとランパード、ジェラードが目に付いたくらいで、攻撃よりも守備での勝利と言えるだろう。クラウチの評価は分かれそうだが、あまり機能しているとは思えなかった。ルーニーを欠き、オーウェンも途中で下がった点を割り引いても、セットプレー以外での得点力に脅威を感じない内容だった。タレント集団ではあるが、優勝を目標とするには物足りない試合と言えるだろう。
パラグアイは、ベッカムの驚異的なフリーキック一本に負けたとも言えるが、ゴールキーパーが代わり、その動きが頼りない中でその後失点しなかった点は評価できる。だが、攻撃に関しては内容が悪すぎた。イングランドの守備の堅さが定評通りだったとはいえ、攻撃のバリエーションも乏しく、得点を予感させたのはたったの1回だけに終わった。グループリーグ突破のためには、得点が必要となる以上、かなり大きな修正が必要だろう。

イングランド 1-0 パラグアイ

イングランド:(オウンゴール)