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トリニダード・トバゴ-スウェーデン(B組)

2006年06月11日 03時46分33秒 | サッカーワールドカップ
これがワールドカップ。そんな思いの残る試合だ。優勝候補の一角にさえ挙げられるスウェーデンに対し、初出場のトリニダード・トバゴが徹底した守りで勝ち点1を奪った。実力差を埋めたのは、徹底した戦術だった。見る者にとってはあまり楽しい試合ではなかったが。

試合開始直後に、スウェーデンはペナルティエリアのすぐ外からフリーキックのチャンス。ベテランのラーションが強烈なシュートを放つもわずかに右。試合は予想通りスウェーデン優位に展開するが、トリニダード・トバゴはフォワード一人を残して全員が守りに入り、スペースを与えない。そのためスウェーデンの攻撃はシュートまで結びつかない。
スウェーデンは、ゴール前のイブラヒモビッチに合わせようとするが、スペースがないため上手く収まらない。たまに、ディフェンダーのメルベリのロングシュートや、右からのクロスにイブラヒモビッチがオーバーヘッドシュートを試みるが、うまくヒットしない。
カウンターからラーションとイブラヒモビッチが二人で切れ込むもクロスに合わせられない。右、左とクロスを続けて揺さぶって最後は中のリュングベリに合わそうとするもシュートはヒットせずにゴールから大きく外れてしまう。
テクニックは明らかにスウェーデンが上回っているが、守備の意識が高く、また身体能力に優れているため、球際で自由にさせないプレーが目立つ。スペンションが裏に抜けてシュートの場面を作るもオフサイドで決定機とならない。
トリニダード・トバゴの初めてのいい攻撃は、32分のエドワーズのミドルシュート。これは枠内だったがゴールキーパーの好セーブに阻まれる。
しかし、その後もスウェーデンの攻めが続き、リュングベリの右からのクロスにラーションがヘッドで合わせたり、ダイレクトパスのいい流れからヴィルヘルムションがミドルシュートを放ったり、コーナーキックからメルベリがヘディングシュートをしたり、イブラヒモビッチがクロス気味のボールをワントラップでシュートしたりと、再三ゴール前でチャンスは作るが、どのシュートもゴールを割ることが出来ない。
一方、前半終了間際、トリニダード・トバゴは右からのクロスをワントップのスターン・ジョンがヘディングシュートをし、更にビルチャールがミドルシュートを放った。
スウェーデンは、縦パス一本を狙う場面が目立ち、攻撃の形を組み立てられないのに対し、トリニダード・トバゴは典型的なカウンターサッカーだったが、チャンスを作る場面はほとんどなかった。ただ気になったのは、スウェーデンにミドルレンジからのシュートがほとんどなかったこと。撃てそうな場面でもフォワードへのパスを選択してばかりだった。前日にドイツがコスタリカを下した試合と比べると非常に顕著な違いだ。

後半開始すぐに、トリニダード・トバゴのディフェンダー、エイブリー・ジョンが2枚目のイエローカードで退場となる。これでますますスウェーデンが優位に立ったかと思われた。だが、トリニダード・トバゴのオランダ人監督ベーンハッカーは、サミュエルを下げてグレンを入れ、これまでのワントップからツートップに戦術を変える。
スウェーデンはエドマンが左サイドから上がってクロスを放つものの、イブラヒモビッチのヘッドはゴールの外に。逆に、その直後にトリニダード・トバゴの代わったグレンがワンチャンスで右45度の角度からシュートを撃ち、クロスバーに当たるあわやの場面を作った。
前半と違い、サイドからの攻撃の意識の高まったスウェーデンだが、イブラヒモビッチへのクロスの精度が低く、またイブラヒモビッチ自身の体の切れも感じられずに、クロスに合わせてもシュート性の当たりにはならない。
後半60分を過ぎて、ようやくスウェーデンはスペンションに変えてフォワードのアルベックを投入し、より攻撃的になる。それに対しトリニダード・トバゴも若いセオボルドに代えてベテランのウィットリーを投入。
スウェーデンのアルベックはゴール前にいい飛び込みを見せるもシュートにならず。トリニダード・トバゴのグレンも右サイドからのクロスにヘッドで合わせるもヒットせず。更にアルベックはうまくディフェンスラインの裏を取ったにも関わらずシュートがヒットせずに決定機を生かせない。
左サイドを起点にエドマン、アルベックとボールが繋がるがシュートはゴールキーパー正面。78分にリンデロートとヴィルヘルムションに代えてヨンソンとシェルストレームを入れ、スウェーデンは全てのカードを切る。が、ラーションからのスルーパスをもらい決定的な場面でアルベックがまたもシュートをキーパー正面に蹴ってしまう。
トリニダード・トバゴは残り10分の場面でコーナーキックのチャンスを得ると、二人の長身のセンターバックをあえてゴール前に上げたが、シュートには至らなかった。
このあと、スウェーデンはヨンソンのクロスにアルベックが合わせられず、リュングベリやラーションを軸に波状攻撃をかけるも決定機を作れず。ラーションが久々にミドルシュートを放ったのは86分。最後の決定機とも言えたイブラヒモビッチのシュートもゴール右上に外れ、ついにスコアレスドローで試合が終了した。

トリニダード・トバゴは一人少ない窮地に立っても、攻撃の枚数を増やすことでスウェーデンに揺さぶりをかけ、守備では精神的支柱でもある大ベテランのヨークがボランチとして素晴らしい読みを発揮した。最後まで守備の意識を保ち続けられたのは、シンプルな戦術の徹底があったからだろう。残り2試合を同じように戦うのは難しいだろうが、この勝ち点1で波乱を生む可能性が出てきたことは間違いない。

スウェーデンは、暑さの影響があったのかもしれないが、ワールドカップが夏場の戦いであるのは既に分かっていたこと。格下相手に戦術面での準備が明らかに不足していた。前半の課題の一部は後半修正できたものの、攻撃の幅が狭く、特にイブラヒモビッチの切れのなさは目に付いた。この組は守備力の高いチームが多いため、この試合の攻撃の戦術では得点力は期待できなくなった。グループリーグ突破のためには次のパラグアイ戦で勝ち点3が必要になってきたが、簡単には取れないだろう。

トリニダード・トバゴ 0-0 スウェーデン




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