環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

東日本大震災:首相が被災地再生構想(朝日新聞 朝刊)、  電力制限令 今夏発動へ(朝日新聞 夕刊)

2011-04-02 07:04:55 | 自然災害
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                              第6章の目次


素人の素朴な疑問

その1 

1990年12月23日に発表されたわが国の総理府の「原子力に関する世論調査』」によれば、調査対象の90%が原発に不安を感じるが64.5%は原発の必要性を感じているそうです。一方、スウェーデンの世論調査では、自国の原発に不安を感じるのは常に調査対象の30~40%程度で、1980年の国民投票でも投票者の60%弱が12基までとの上限があるものの原発容認に票を投じていました。

 2010年における原発を発電容量で「現在の2倍以上(110万Kw級原子炉で40基分相当)」にするという目標を1960年6月に設定したわが国と、2010年には原発を「ゼロにする」という目標を10年前に掲げてさまざまな試みを行ってきたスウェーデンとの間に原発に対する考え方の大きな相違があるのはなぜなのでしょうか?

その2 

 わが国の原子力関係者の一部には、スウェーデンはそのエネルギー政策で“苦悩あるいは迷走”しているという表現を好む向きがあります。私にいわせれば、順調に稼働し、しかも自国の原発技術に対して政府や国民がかなりの信頼を寄せている原発を廃棄し、しかも自然破壊の原因となる水力発電のこれ以上の拡張を禁止し、さらに、環境の酸性化の原因とされる化石燃料の使用に厳しい規制を要求する国民各層の意見を反映して策定された国のエネルギー政策を、そのような判断基準を持たない国の視点で現象面だけを見れば、「苦悩しているように見える」のは当然でしょう。

   ①もし原発が環境に対してクリーンであるならば、20年以上も硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)に起因するとされる『環境の酸性化に悩
    み、 

    しかも

   ②二酸化炭素(CO2)の排出にも最も厳しい姿勢を示しているスウェーデンが順調に稼働し、信頼されている原発を“苦悩あるいは迷走”しながら
    も廃棄しようとするのはなぜなのでしょうか?

その3  

 200年を超えるという情報公開制度の歴史を持つスウェーデンで、国際的に見ても
 
   ①最大限の安全対策、
   ②最大限の廃棄物対策、
   ③徹底した原発労働者の放射線被ばく防護対策、
   ④原発の安定した順調な稼働実績、
   ⑤徹底した原発施設の一般公開
   ⑥原発情報の積極的な公開と提供

などに加えて、十分なPR活動を続けてきたにもかかわらず、1989年4月に東京で開かれた日本原子力産業会議の第22回年次大会で、スウェーデン原子力産業会議の会長に「スウェーデンでは原発のPAが得られなかった」と言わせしめたのはなぜなのでしょうか?

その4

 わが国の高校社会科の教科書における原発の扱いにも問題があります。この件を報じた1990年7月1日付けの朝日新聞の記事から抜粋した表11をご覧ください。私は「原稿本」の表記が正しく、文部省の指示にしたがって修正した「見本本」は誤りであり、この修正は改悪であると思います。疑問に思う方はわが国の原子力委員会が編集している『原子力白書(平成元年版)』の13~14ページのスウェーデンの項を参照してください。原子力白書はかなり正確にスウェーデンの状況を記述しています。



 仮に、この記事の「見本本」の表記が正しいとすれば、スウェーデンのエネルギー政策の行方に一喜一憂(?)することもなければ何組もの調査団をわざわざスウェーデンまで送り、類似の関心事項を繰り返し調査するような無駄は必要ないと思いますがいかがでしょうか? 

その5 

 皮肉なことに、スウェーデンの原子力技術の水準の高さを最もよく知っているのはわが国では、原子力の専門家の方々です。原子力エネルギーが環境に対してクリーンかどうかは、1991年8月12日の朝日新聞の記事「原子力への課税提案へ」という記事や業界誌の週刊『エネルギーと環境』の1991年7月11日号の「原発もCO2 課税の対象に、波紋投げる」という記事をみれば、明らかでしょう。

 原子力エネルギーが環境にクリーンというなら、スウェーデン以外の先進工業国、たとえば、米国、英国、ドイツ、フランスなどが原子力エネルギーの利用にこれまで以上に積極的にならないのはなぜなのでしょうか? 

 前述の『エネルギーと環境』誌の1992年2月20日号は「IPCC報告、CO2への原子力貢献に否定的」という見出しを掲げ、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の全体会合が2月にジュネーブで開催され、一昨年8月にまとめられた「第1次評価報告」の補足報告書がこの会合で了承されたことを報じています。この補足報告書では、CO2削減の最も効果的なオプションは生産から最終利用に至る各分野でのエネルギーの節約と効率化だとし、原子力の貢献には否定的だそうです。ちなみに、この補足報告書を策定したIPCCの「エネルギーと産業」を検討する分科会の共同議長国はわが国と中国です。
 

 化石燃料に乏しく、輸入石油への依存度が高いという点で、かつてはわが国と似た立場にあった工業国スウェーデンに対するこれらの素人の素朴な疑問に答えることこそ、わが国の原子力関係者に求められていることではないでしょうか?








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