環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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この10年、ほとんど変わらなかった「環境問題」に対する企業の基本認識

2010-01-16 15:58:47 | 環境問題総論/経済的手法
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一昨日のブログで、「環境問題」に対する大学生の基本認識がほとんど変わらなかった、というこれまでの10年間の私の観察結果をお知らせしました。また、昨日のブログでは、日本の行政担当者(国、地方自治体)の「環境問題に対する基本認識」について私の観察結果を書きました。

では、この10年間の「環境問題」に対する企業の基本認識はどうだったでしょうか。私の講演会で、企業の部課長クラスの参加者から必ず出てくるコメントや反応があります。それは「おまえのいうことは、個人として、あるいは一技術者としてはよくわかるが、企業としてはできない」というものです。でも、これほど矛盾した反応があるでしょうか。

「企業の技術者としては、個人的にことの重大さはわかっていても、目の前の生活防衛のために、自分の属している組織の拡大のために全力を尽くす」、つまり、「前方が断崖絶壁であることが一技術者として理性的にわかっていても、乗り合わせたバスのなかで声を上げられない」という状況が、自分や自分の家族の将来、自分の属する企業や組織の将来活動を危うくすることだ、ということがなぜわからないのでしょうか。
 
次の図をご覧下さい。


このような議論が起こるのは、「個人」と「組織」との間に根本的な違いがあるからです。個人は人間ですが、個々の人間からなる組織(企業はその代表的なもの)は、人間ではないということです。個人は自分の「目的とする行為」がどの程度達成できるかということと、その行為が周囲にどのような影響(目的外の結果)を及ぼすかを、程度の差こそあれ、必ず考慮し、配慮します。ところが、組織は特定の目的を達成するためにつくられたものですから、「目的とする結果」にのみ関心を示し 「目的外の結果」を考慮しません。
 
個人的行為の場合は、動機と目的が直接結びついていますが、組織的行為の場合は組織の目的と個人的動機は、多くの場合、同じではありません。組織的行為は独立した個人によって支えられていますが、行為の主体は個人ではないからです。組織の本質は「維持・継続」です。ですから、組織にとっては、「組織の維持・継続」にプラスかマイナスかが、決定的に重要な判断基準となるのです。
 
したがって、「目的外の結果」は、ひたすら組織の維持・存続にとってプラスかマイナスかで評価されることにならざるを得ないのです。組織にとってプラスであれば積極的に、マイナスであれば可能なかぎり無視し、視野の外に置き、対応を余儀なくされたときに初めて対応することになります。このことは、 「組織」をその代表である「企業」や「行政」と置き換えて考えてみるとわかりやすくなるでしょう。環境問題は人間活動の代表的な「目的外の結果」だというのが、私の環境論の最も強いメッセージです。次の図は1996年に作成したものですが、上の図の「コスト」と関連するところです。当時の日本の企業人の本音がよく出ていると思います。




最近の「気候変動問題」に対する日本企業の基本認識は、次の3つの関連記事を見ますと、昨日の行政担当者の基本認識と似たような状況ではないでしょうか。この10年、日本企業、特に製造メーカーの意識はほとんど変わってないように思います。

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しかし、10年前と明らかに異なるのは、日本企業の一部や経済界の一部とはいえ、国際的な大きな流れを十分正しく理解し、積極的に課題に対応して行動する頼もしい動きが見られるようになってきたことです。