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環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

巨大構造物と環境問題 ③ 技術者の恐ろしい単純思考

2007-04-07 13:54:43 | 巨大構造物/都市/住環境
  

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昨日のブログで紹介したような1000メールを超えるような巨大構造物の建設は技術的には可能かもしれませんが、はたしてこんな所に人間が住み続けられるものでしょうか? 医学や心理学の立場から超高層ビルや高層住宅に対する健康や心理的へのマイナス面が指摘され始めていることを考慮しなければならないと思います。


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その意味では、巨大構造物への挑戦は嫌な表現ですが“人体実験”とも言えるでしょうし、もう少しスマートに表現すれば“わが日本人の新たな挑戦”ということにはなるかも知れません。
 
「このような挑戦はやってみなければわからない」と工学系の技術者は言うかも知れませんが、この程度のことであれば、私たちの直感だとか、「もう少し科学的でありたい」と言うのであれば、心理学者、社会学者、医者など通常人間を相手に仕事をしている専門家の知識を動員すれば、おおよそのことは事前に判断できるはずです。

このような巨大な構造物をつくって実験してみてからでなければ判断がつかないというのであれば、私たちは何のために学び、何のために日々の経験を積み重ねているのでしょうか? このような巨大構造物を作り、使用すれば、“環境にやさしい”などというものでなく、全く正反対に、「環境への負荷」が増大することは明らかです。

90年代初頭に、日本を代表するゼネコンは次から次へとこのような計画を発表していました。その主な「妄想的アイディア」を明日のブログで紹介しましょう。今後、1000メートルを超えるような高層都市はたぶん実現されないと思います。

都市づくりの面で先行しているアメリカやヨーロッパはすでに1930年代で都市のスケールや建築の高さがほとんど止まっていると言われています。ちなみに、アメリカのマンハッタンに102階、381メートルの威容を誇るエンパイア・ステート・ビルが完成したのは1931年でした。



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巨大構造物と環境問題 ②  建設業界の専門家は私の疑問にどう答える

2007-04-06 07:46:10 | 巨大構造物/都市/住環境
  

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いずれの“都市”も約10万人規模、すり鉢状の巨大な人工地盤を何層にも積み重ねた構造が基本で、鉢の底が公共緑地、鉢の斜面部分が住居やオフィスなどになっているのだそうです。  

私はこのような巨大構造物の計画を聞くたびに、環境問題の意識もさることながら、「地震をはじめとする災害対策はどうするのか?」ライフラインとしての「電気をどのように供給するのだろうか?」、「水の供給は?」、「ゴミの処理、処分は?」と考えるのですが、建設関係の技術者は建物を作ることに熱心なあまり、このような構造物の中で人が仕事し、生活することを忘れてしまっているのではないでしょうか? 




私の疑問に対する回答らしきものとしてこの記事では「エネルギーの供給施設として、今、最も効率がよい燃料電池を中心にゴミ焼却発電、下水熱利用ヒートポンプ、太陽光発電、風力発電、揚水発電を利用する。また、ビルの高さが1000メートルあることから、配管や通風筒にタービンを置いて動力を回収することも考えている」と書いてあります。

このような回答では同業の“専門家”を満足させることができるかも知れませんが、建設・建築分野の素人である私は到底満足できません。はたして、このようなエネルギー供給手段でこのように巨大な構造物を設計どおりに維持できると建設業界の専門家や技術者は本当に考えているのでしょうか? 

私の答えはNOです。これらの高層建築を夢見る設計者の技術者としての見識を疑わざるをえません。このような巨大構造物の維持のためには、まさに原発や火力発電が必要となるのです。



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巨大構造物と環境問題 ①  90年代の建設業界の「環境意識」

2007-04-05 09:39:16 | 巨大構造物/都市/住環境
  

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それでは、今日から「巨大構造物」と「環境問題」の関係を考えてみましょう。まず、「都市と環境問題」の大雑把な関係を考えます。1月31日のブログを開いてみましょう。

エコロジーという視点から見れば、現存する世界のどの大都市も持続可能な都市とは言えません。日本では90年代に次から次へと巨大な構造物がつくられました。当時の建設・建築分野で活動していた人々の問題意識から検証してみましょう。

次の図をとくとご覧ください。文字が小さくて記事の中身を読むのは困難ですが、写真と記事の見出しを読むだけで、当時の大手建設会社(一般にゼネコンと呼ばれる)や建設省(現在は国土交通省に業務が引き継がれている)の「環境問題に対する認識」を容易に知ることができます。



これは1992年6月6日付けの日本経済新聞の記事ですが、この記事のタイトルは「環境に優しい都市を作ろう」となっていることに注目してください。この記事によりますと、

「地球温暖化の主因とされる二酸化炭素(CO2)の排出を抑え、“環境に優しい都市”作りをめざす技術開発計画が相次いで浮上してきた。建設省建築研究所は『環境に優しい都市』をめざして、竹中工務店と共同で地球温暖化対策に重点を置いた高さ約1200メートルの超高層都市『エコシティ・スカイモデル』構想をまとめた。CO2排出の少ない都市・地域構造の形成などをうたった政府の地球温暖化防止行動計画に沿ったもの。CO2排出抑制には建物の外面を緑で覆ったり、都市を地下に移して地上を緑地にする考えもあるが、今回の調査研究で超々高層都市も選択肢の一つとして有望なことがわかった」

と書かれています。

この記事には、また、「国内の大手建設、鉄鋼、電気、重工業企業20社からなるエンジニアリング振興協会の超高層都市空間システム分科会は『東京エコポリス・シティ1000』の構想をまとめ、1992年6月の地球サミットの時に同時開催していた国際建築アカデミー主催のエコポリスコンペティションに、この構想を出展した」とも書いてあります。

そして建設地としては両都市とも首都圏を想定しており、超高層にすることで、広大な緑地を生みだし、CO2の排出を抑制するとともに、都市廃熱などによるヒートアイランド(熱の島)を緩和するのだそうです。

注意しなければならないのはこの記事に出てくる“環境に優しい”という言葉の意味するところが二酸化炭素(CO2)の排出を抑える、緑地を生み出す、ヒートアイランド現象の緩和という点だけだということです。

いずれにしても、これだけの要件で“環境にやさしい”とする判断基準はこの言葉を使用する人の環境問題に対する理解がいかに薄っぺらで、つけ焼き刃的な発想であるかを自ら露呈していると言わざるをえません。

たとえば、「稼働中の原発はCO2 を排出しない」というのは事実ですが、だから、原発は“環境にやさしいエネルギー”だとか、“クリーンなエネルギー”だとかいうのと同程度のお粗末さです。

CO2を排出しないこと、緑地を生み出すこと、ヒートアイランド現象を緩和することは“環境にやさしい”という総合的な判断基準の必要条件のわずかな数項目に過ぎず、十分条件ではないからです。あることが“環境にやさしい”かどうかはCO2 を出すか、出さないかで決められることではありません。


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「東京ミッドタウン」がオープンした

2007-04-03 12:42:26 | 巨大構造物/都市/住環境
  

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グーグルに「東京ミッドタウン」と入れ、クリックしました。検査結果は約2,560,000件と表示されました。

3月30日に、東京・六本木の旧防衛庁跡地にオフィスや商業施設、高級ホテルなどが入る「東京ミッドタウン」がオープンしました。東京ミッドタウンは、約10ヘクタールの敷地に都内一の高さとなる「ミッドタウンタワー」(248メートル)などビル6棟からなるそうです。



さて、これまで3ヶ月かけて環境問題の基本的な話をしてきました。私の環境論では、経済活動の本質は「資源とエネルギーの利用」であり、その結果必然的に生ずるのが「環境問題」です。経済活動は、 「その目的とする結果(経済成長)」と共に、必ず「目的外の結果」を伴う。経済活動に伴う「目的外の結果の蓄積」が環境問題です。ですから、環境問題の解決とは「持続可能な社会」を構築することです。平たくいえば「経済と環境は切り離せない」ということです。

これからは日本の具体例を引きながら環境問題の本質を考えていきましょう。「経済と環境は切り離せないこと」が理解できれば、環境問題で重要なことは、今後、何に投資をするかということです。私の環境論を支える柱の一つに「今日の決断が将来を決める」という原則があります。東京ミッドタウンの開業を機に、この原則を考えてみましょう。

 



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2004年 五輪招致をめざしたストックホルム市 

2007-03-23 08:37:23 | 巨大構造物/都市/住環境


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昨日、3月22日、第16回統一地方選挙の知事選が13都道府県で告示されました。注目される東京都知事選の立候補者数は最終的には14名だそうです。問題山積の都知事選の大きな争点に「2016年の夏季五輪招致」が徐々に浮上してきました。

この争点で思い出すのは、10年前の1997年8月にスウェーデンの首都ストックホルム市が「2004年の夏季五輪招致」をめざしていた頃のことです。私は、当時、1997年4月4日から10月3日の半年間、毎週金曜日に、日本工業新聞に「小沢徳太郎のグリーン時評」と題するコラムを持っていました。今日は、10年前に私がこのコラムにどんなことを書いていたのか、再録を試みます。

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日本工業新聞 1997年8月8日(金)

“環境にやさしい五輪”の誘致  日本vsスウェーデン

前回のコラムで、設備投資計画や公共事業計画が「循環型社会(小澤注:私は、当時「持続可能な社会」と「循環型社会」をほとんど同義語として理解していたのですが、日本で2000年5月に成立した「循環型社会形成推進基本法」の定義によって、両者は似て非なる概念であることを知り、それ以後 私は両者を意識して使い分けています)へのソフト・ランディング」をめざしたものかどうかを、計画の段階で判断するために、スウェーデン政府の環境諮問委員会が提示した6つの条件を紹介した。この判断の基準を適用するのに格好のテーマがある。

2004年夏季五輪招致をめざすストックホルム市は、「環境にやさしい五輪」を提案している。その一環として、各国の代表団の宿泊先となる予定の新しい住宅地区の建設事業が進行中である。

バルト海とメラーレン湖を結ぶ水路に沿った産業地区ハンマビー港を循環型社会のモデル地区に転換するこのプロジェクトは、先端的なエコ技術を育てながら建設し、五輪の開催で世界の注目を集め、育てたエコ技術の輸出も狙っている。

このプロジェクトの大きな目標は、施設の建設時および建設後の使用期間中の環境負荷を現在の半分にすることで、エネルギー、水利用、交通、建材など各分野の具体的な目標が設定されている。

一方、7月22日付けの日本経済新聞によると、横浜・神奈川総合情報センターがまとめた2008年に横浜で五輪が開催された場合の経済波及効果の試算では、観客500万人を見込み、経済効果(生産誘発額)は全国で5696億円。既存施設を活用する横浜市の方針があるので、経済効果はサービス業が最も大きいそうだ。

また、98年の長野冬季五輪については長野県内で2兆3244億円(長野経済研究所)と見ているが、その9割前後は建設投資によるものと言う。

長野五輪も“環境保護”を掲げてはいるが、事業者とその周辺の意識は相変わらず従来の発想と変わりないようである。2つの国の環境問題に対する意識とその意識に基づいた行動計画との落差は大きい。

これまで、マスコミはこの種のイベントが日本経済全体あるいは地方経済にどの程度の経済波及効果をもたらすかを経済成長の観点から大々的に報道してきた。 今後は、経済波及効果と共にイベントの準備期間および会期中に発生する「廃棄物の総量」と「その処理に要する費用」の試算結果を公表したらどうだろうか。

この種の情報が事業者によって「経済誘発効果」と共に提供されるか、マスコミ独自の調査によって積極的に国民に提供されるようになれば、国民の問題意識も大きく変わる可能性が出てくると思うのだが。
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なお、このコラム記事には続報(9月12日)があります。私は9月12日のコラム記事で、この記事の顛末をつぎのように書きました。

8月8日のコラムで取り上げた2004年夏期五輪は今月5日、アテネに決まり、ストックホルムへの招致は実現しなかったが、ストックホルム市の「循環型社会(小澤注:現在の私の理解では「持続可能な社会」)のモデル地区プロジェクト」は、もともと五輪招致を目的に計画されたプロジェクトではないため、五輪にかかわりなく進められる。




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