脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

主力脱落を招いた千葉フロントの怠慢

2008年01月19日 | 脚で語るJリーグ


 昨日付にて千葉よりDF水本裕貴のG大阪完全移籍加入が正式に発表された。G大阪の積極的な補強策と言うよりも、どうしてもこのストーブリーグでは、千葉の主力離れがクローズアップされがちだ。何しろ前述の水本を含め、MF羽生がFC東京へ、MF水野はセルティックに、そしてMF佐藤は京都へ、MFは山岸は川崎へと新天地を求めることとなった。主力5人の退団。なかなか普通では考えられないことだ。今、ジェフ千葉はジェットコースターで急降下しているかの如く嵐のオフを過ごしている。

 この主力5人の離脱に共通して言えることは、正式にコメント発表したほぼ全員が「厳しい環境に身を置きたい、チャレンジしたい」とも取れる発言をしている点。移籍する際の去り際の常套文句である。それはあくまでも無難なコメントの発表だけに過ぎず、ストレートに「今季の千葉ではサッカーをする気になれない」と発言しているにも等しい。日本代表候補の巻や、新潟に完全移籍しながらも2年ぶりに古巣に戻る坂本などの存在が在りながらも、今回の主力離脱騒動はサポーターにとっても非常に胸を苦しめられる思いだったというのは想像に難くない。
 昨季終了後直ちにアマル・オシム監督解任を決め、オシムサッカーとの決別を果たしたフロントの判断が誤っていたのか、今季より就任するクゼ新監督の目指すべき方向性が違っているのか、主力の5人がどういった思いでクラブを離れたのか真意は分からないが、個人的に思うのは千葉があまりにもクゼ新監督の招聘に時間がかかったという点に関して、フロントの責任は大きいということ。何人かの選手が新監督と話をしてからその去就を決めるという中で、新体制の発表が成されたのは11日、そして当のクゼ氏が来日したのは13日だった。この時点で、山岸、水野、水本の3選手が既に退団確実だったという。必死に慰留に努めたのだろうが、いささか筋違いである。昨季終了時点から千葉のフロントはどれだけ今季のスタートに関して明確な段取りを進めていたのか。このスローペースでは選手もスタートを切れない。フロントの怠慢ぶりが目立つばかりだ。

 昨年の12月初旬、熊谷で行われた地域リーグ決勝大会のスタンドに今季より千葉のチーム統括本部長を務めることとなった昼田氏の姿があった。来季に向けた新戦力の品定めに来ていたのであろうか。よもや、現在の彼はそれ以上の責務を果たさなければいけない職務に着いたことになる。彼に求められる最も重要な使命は、もちろんクラブを勝たせることではあるが、「オシムイズム」という亡霊に縛られた千葉をどう再生し、ファンとフロントにできた溝を埋めていくかということだ。こうなってしまった以上、淀川社長へのファンの反旗は結果をそうそう出しても、それでは取り返せないほど翻っていると言っていいだろう。またこんな負のサイクルが来年の初旬にも来るのだろうかと思ってしまうのも無理はない。

 かつて一人のカリスマ指揮官によって構築された「オシム王国」は音を立てて崩れることとなった。クラブ、選手、そしてファンが三位一体となって初めて強いクラブづくりが成されるということをこの悲劇を機に学ばなければならない。早々に結果にこだわってクゼ監督を早い段階で解任ということが起こらなければいいが。とにかく3月8日の開幕戦でマッチアップする千葉の再生を願うばかりだ。健全で皆がサッカーそのものを楽しめる環境とはほど遠いところにいるジェフ千葉。もう現フロント陣営にチャンスは無い。彼らの怠慢のツケは現場スタッフ、選手とサポーターが如実に反映されるのだ。

奈良のフットボリスタは奈良バカ

2008年01月18日 | 脚で語る奈良のサッカー


 タイミングが良いというか、何というか、ここでサッカーに特化して奈良の現状をいろいろ書く機会があるが、またそれとは違って、いかにも奈良県が全国にアピールできるドラマが始まった。
 「鹿男あをによし」
 タイトルだけ見てもまさに奈良の色が前面に出ていると言えるだろう。ドラマの内容は奇妙なものであるが、そこかしこに出てくる奈良の風景は、これまでのメジャードラマの中でも突出している。おそらく奈良県民が最もTVにかぶりついてこのドラマを観ていたんじゃないかと思う。

 特に北部の盆地地区においてベッドタウン化著しいこの奈良県では、暮らしている奈良のことを意外と知らない人も多いことだろう。そういった意味でも、逆に大阪まで電車で40分、京都までは50分と鉄道アクセスに優れたこの奈良に暮らす多くの県民自体が、もう一度奈良を再認識できればと筆者はこのドラマに思いを馳せている。
 住まいの拠点を奈良に長年置いている人に限って、逆に奈良の魅力を見逃していることが多い。筆者も大学時代に京都に2年ほど住み、その後再び奈良に帰ってきた訳だが、現在も仕事は京都でしていることもあって、ここ数年は地元奈良で休日を過ごすことにかつては感じなかった「何か」を感じることがある。

 その「何か」とは何だろう。これを読んでくださっている県内在住の方々それぞれが一度じっくり考えてもらえればと思うが、個人的には「ノスタルジア」であると思っている。簡単に言えば人間が「懐かしさ」という感情を最も素直にその情景から焙り出される地ではないかとここ数年強く感じるのだ。
 自分が生まれ育った地であるということもあるだろうが、仕事柄、またサポーターというスタンスにおいても全国各地、または海外に行くことが非常に多い自分にとってここまで「帰ってきたな」と思わせる地はない。そのイメージの中では間違いなく「懐古」や「追憶」といった人間がそのイメージの時間軸を過去に置いて、勝手に自分が過ごしたこともない古の時代を思いめぐらせるスイッチがONとなる訳だ。
 世界的にも名高い文化財を数多く残す奈良にとって、そのスイッチは観光産業を成立させる重要なファクターをなっているのは言うまでもない。悲しくもそういった面で経済的に繁栄している京都の影には隠れがちであるが、京都にはない「落着き」がまた奈良の良いところだと解釈することもできる。

 さて、冒頭にも書いたドラマが今回フジテレビ系列で開始された訳だが、今日は何を言いたいかというと是非、日頃目にすることのない奈良の良さをもう一度感じてもらいたいということだ。あえて東大寺に行ってみるも良し、春日大社にお参りに行くも良し。服を買いに行くにしても大阪まで行かずとも古着屋はもちいどの商店街にもある。明日香村はさらに輪をかけて、かつてその地で栄光を成した先人の知恵や仏教への深い帰依を感じることができる。南部の山間地もそういった意味では神々しささえ感じることができるものだ。天川村や“日本一大きな村”である十津川村など、修験道における山岳信仰のメッカとなったミステリアスな雰囲気を併せ持つ場所も数知れずである。

 個人的には、ならまち界隈、談山神社、暗峠、春日山原始林、桜井の笠荒神で食べる笠そばなどがオススメであり、お気に入りのスポットであるが、またそんなことも機を改めてご紹介できればと思う。何せ筆者は、たまに大阪にクルマで出た時はわざわざ車の通行困難な暗峠越えをしながら帰ってくるような人間。春日の原始林の奥で何度かイノシシに遭遇したこともある。どこへ行っても感じるその追憶の彼方に、さらにその深さ、そして新しさを見つけられる奈良。奈良の自慢なら負ける気はしないものだ。

 そんなアイデンティティ、つまりは愛する奈良という地への帰属意識を引っ提げて、2008年からは「サッカー」で皆が一つになっていこうではないか。とんでもなく分かり易くドラマでのアプローチが始まった今、タイミングをしては申し分ない訳である。少しでも奈良の皆さんのお力をお借りしていきたいと思う所存である。

ベストメンバーはJリーグが決めるのか?

2008年01月17日 | 脚で語るJリーグ


 出たよ、16日のJリーグ実行委員会で今季も再度確認されたベストメンバー規約。昨年、開幕直後に柏がナビスコ杯にて先発メンバーを総入替したり、川崎がACL直後のリーグ戦に主力を温存させるなどで注目された日本で最も不必要な概念である。規約付けされているJリーグ第42条を再確認すると・・・
①Jクラブは、その時点における最強のチーム(ベストメンバー)を持ってリーグ戦に臨まなければならない。
②リーグ戦の試合における先発メンバー11人は、当該試合直前のリーグ戦5試合の内、1試合以上先発メンバーとして出場した選手を6人以上含まなければならない。
 
 この何とも興行的に傾斜したアホらしい概念は上記のようにJリーグ規約第42条にてきっちり明文化されている。そして、この基準を違反することになれば・・・
①最高2000万円の制裁金
②リーグ戦での違反に対し、当該1件につき勝ち点マイナス3ポイント
③カップ戦での違反に対し、翌年度のリーグカップ参加権剥奪
といった非常に重い制裁が科せられる訳であり、Jリーグを戦う上での知っておかねばならない「ルール」となっているのだ。
 この規約、本当に必要だろうか。一番最初に論争が巻き起こった00年シーズン(この年に当時J1の福岡がナビスコカップ湘南(J2)においてメンバーを大幅に変えて臨んだことが発端)から、筆者はこの規約に首を傾げるしかなかった。そして、冒頭でも述べた柏をと川崎の一件も然り。この時、柏は開幕後まだ4試合しか消化していなかったために基準に満たないと分かった上で、メンバー入れ替えに踏み切っている。もちろんJリーグ側からの事情聴取は無かった。
 ところが、これがACLの中東遠征をリーグ戦と並行して戦っていた川崎が同じようにメンバー入れ替えを行えば、基準を満たしていたとはいえ武田社長が事情聴取を食らうという事態になったのである。

 さて、このルールを皆さんはどうお考えだろうか。筆者は個人的にはこんなことを何年もやっているようでは日本サッカーの発展は無いとも思っている。昨シーズンが如実にそれを物語っているだろう。
 昨年、浦和はACLに執念を燃やし、見事にアジアを制覇した。しかし最終局面で優勝を逃したリーグ戦、格下の愛媛FCに惨敗を喫した天皇杯と国内では無冠に終わっているのが現実である。それら国内タイトルを軽視していたとは思わない。ところが、ACLとの並行した戦いの疲れが浦和には顕著だった。勝てなかったことで結果的にこれ以上ない鹿島の覇権をアシストした格好となってしまった。それはそうだろう。メンバーはずっと主力がほぼ固定だった。息をつく暇がないほどタイトルが目の前にぶら下がった状況を過ごした訳である。出場機会に恵まれない若手の控え選手が気になったぐらいだ。それほどの連戦を彼らは強いられていた訳である。これがシーズン序盤からターンオーバー制とまではいかずもスムーズにメンバーが入れ替えできていれば、タイトル総ナメも夢では無かったかもしれない。
 
 かつてのJリーグとは違い、現在はA3にナビスコ杯にACLに年間34試合のリーグ戦と上位クラブにとっては見過ごせない過密日程。おまけに今季G大阪などは、昨季のナビスコ杯王者ということで、ACLとは別に2月から新設されたハワイでのパンパシフィックチャンピオンシップ、そして7月には南米コパ・スダメリカーナ覇者アルセナルFCとのタイトルマッチとJリーグ側が取り入れた新設の公式戦を消化しなければならない。浦和もACLをディフェンディングチャンピオンとして決勝トーナメントから出てくるとは言え、ナビスコ杯は予選からしっかり戦うことになる。
 忘れてはならないのが今年は2010年に向けたW杯予選が大詰めを迎える年。代表組のこなさなければならない試合数を考えるとゾッとするものだ。本当にケガも心配だし、コンディションも年間通してキープは難しいだろう。選手層に恵まれているACL参戦組はメンバーのやり繰りが非常に困難なのは目に見えている。鹿島などこのストーブリーグの穏やかさを見ると、本当に大丈夫なのかと心配してしまうほど目立った動きをしていない。現状で回せるほど甘くはない。それは前述した昨季の浦和を見れば明らかである。

 どう考えても足かせとなり得るベストメンバー規約。そもそも「最強メンバー」とは決められてしまえるものなのかと強く感じる。上記前述の①の曖昧さは否めないし、これは現場で指揮する監督がその時その時の選手のコンディションを見極めて判断するものではないだろうか。これを明文化してしまうのは甚だおかしい。おまけにファンがその判断に対して不満があるのならば、Jリーグから物言いが付く前にファンがその声を上げるだろう。運営するJリーグが少しでも興行的に潤うようにしか考えられていないこの規約の矛盾は限界に達しているのだ。
 
 無理やり各クラブ首脳陣の首を縦に振らせた感の強いJリーグ実行委員会。ベストメンバー規約の是非は今季の日程が消化されるごとに、その矛盾を露呈していくだろう。各クラブの現場レベルの判断で、上手く選手がケガをしない回し方で今季を戦ってくれることを願うばかりだ。

 

奈良のフットボリスタ ~奈良にプロクラブを~⑮

2008年01月16日 | 脚で語る奈良のサッカー


 奈良サッカーを盛り上げるべく著しくお届けする短期集中連載。ということで今回はどこの媒体も取り上げることのない第34回奈良県社会人サッカー選手権大会について可能な限り展望していこう。
 この大会は第44回全国社会人サッカー選手権大会の奈良県予選も兼ねている。昨年関西1部リーグ2位のFC Mi-OびわこKusatsuが全国社会人サッカー選手権(通称:全社)を制し、全国地域リーグ決勝大会に駒を進め3位以内という成績を収め、JFLに昇格を遂げたように、全国地域サッカーリーグ決勝大会には毎年、この全社優勝チームの出場枠が設けられている。つまりはこの全社の全国大会で優勝すれば、都道府県リーグのクラブであろうと一気にJFLの舞台を目指して戦うチャンスが掴めるのだ。
 とは言っても全社になれば、その全国から出場してくるクラブは地域リーグにまで枠が広がり、レベルの差という大きな壁に阻まれる。地方によってはゴロゴロと元Jリーガーを有する実力クラブがたくさんあるものだ。

 勝ち進めば飛び級でチャンスを掴めるものの、必然的にぶち当たる大きなレベルの壁。しかし、そんな夢物語を脳裏に描くだけでも、一転俯瞰して観るとローカル色漂うこの奈良県予選も、非常にスリリングかつサッカーの醍醐味を楽しむことができるはずだ。何しろ本格的に応援する我がクラブが出るのならば尚のこと。ノックアウト方式で進む大会から目が離せなくなる。

 今回1月20日から初戦が橿原公苑陸上競技場及び葛城市新町健民球技場で常時始まるわけだが、その出場クラブを振り返ってみよう。
 まず、県1部リーグから出場するのは、ポルベニルカシハラ、JST、都南クラブ、FC橿原、信貴ヶ丘AURA、天理大学FC(13日に入替戦)、畝傍クラブ(今季より2部降格)の7チームだ。特に昨年1部リーグの1位、2位となり共に府県リーグの決勝大会に駒を進めたポルベニルとJST、そして県1部リーグ3位で最後はプレーオフに泣いた都南クラブの3チームが優勝候補の最筆頭候補だろう。この3チームの実力は昨年のリーグ成績を見ても実に拮抗していると言える。ポルベニルは昨季8勝と最多勝を挙げ、JSTはそのポルベニルと同じ31得点をシーズンで叩き出しながら、失点はわずか10と最少失点数を誇る。得点数ではこの2チームに及ばない都南クラブも唯一シーズン喫した黒星はわずかに1のみと3チーム共にほぼ互角。その中でかつてJリーグでプレーした矢部次郎が新たに戦力となった都南クラブが、4月からの新クラブ始動も控えていることもあって、モチベーションの面でも一歩リードしていると言えるだろう。
 その都南クラブとポルベニルは共に準決勝まで勝ち上がればそこで対峙することになるが、それまで1部のチームとのマッチアップは無い。おそらく間違いなくこの2チームが準決勝で覇権への王手を争うことになるだろう。

 それ以外には2部リーグからも今季から1部昇格を果たした新庄FCを筆頭に7チーム。3部リーグからは2チーム、県内1種のカテゴリー最下層となる教育リーグからも2チームが出場エントリーを果たしている。初戦のマッチアップの注目は2部Aブロック2位だった大和クラブと1部8位の成績だった信貴ヶ丘AURAの一戦。そういえば、この大和クラブは先日天理大FCと入替戦を戦っているはず。まだ情報が入っていないが、今季は1部にその戦いの場を移す可能性もある。ならば、十分に大和クラブが勝ち進む可能性は大いにあるだろう。

 そんな中、やはり焦点は前述の優勝候補3チームを中心に大会は進むと言っていいだろう。幸いにも会場は全て芝のグラウンド。これだけ奈良の1種におけるサッカーを好条件で短期間で楽しめる機会は奈良県サッカー選手権大会(天皇杯代表決定戦)とこれぐらいしかない。4月から開幕する県リーグの調整と片づけるにはあまりに価値の高い今大会。残念ながら都南クラブの1戦目は駆けつけることができないが、決勝までしばしの間、奈良のサッカーが少しずつ成長していく様を追いかけたいと思う。実に楽しみだ。

奈良のフットボリスタ ~奈良にプロクラブを~⑭

2008年01月14日 | 脚で語る奈良のサッカー

 ここ最近、頭の中で常に回り続けていることがある。それは奈良県内のサッカーを行う環境について。昨日、都南クラブの藤本氏とお話している中にも、県リーグを含めた1種の会場にできるだけ好環境をといった話が出てきた。奈良県社会人1部リーグにおいては会場の大半が土のグラウンドである。昨年でも特に会場の主軸となったのが、奈良大学野外活動センターグラウンド及び吉野運動公園グラウンド。もちろん言わずもがな土のグラウンドである。
 
 さて、奈良県内でどれだけ人工芝も含めた芝のグラウンドでサッカーのできる環境があるだろうか。
 まずは、1種陸上競技場に認定されている奈良市立鴻ノ池運動公園陸上競技場と奈良県立橿原公苑陸上競技場が真っ先に挙げられるだろう。あとはどこか。葛城市に新町健民球技場がある。そして大淀町には平畑運動公園。昨年11月に県リーグのプレーオフも行われた奈良産業大グラウンド(人工芝)。このぐらいではなかろうか。
 12日に関西リーグ2部への昇格を決めた滋賀FC。彼らが戦ってきた滋賀県1部リーグは天然芝1面、人工芝2面が整備されたビッグレイクがその主戦場であった。夜間照明も完備され、ナイターでの催行も可能である。ほぼ全ての日程をそこで行っている滋賀県の環境の良さは奈良県と比較するまでもなく際立つ。府県リーグ決勝大会を最後まで勝ち残った2チームが両方滋賀のチームだというのも頷ける話だ。

 奈良県サッカー協会は今季の県リーグの日程を3月下旬~4月上旬にかけて発表予定らしい。冒頭にもある藤本氏との会話の中で、せめて奈良産業大グラウンドをメインに使える日程が組めれば、という話題も出てきた。それだけでも大きな前進である。もちろん運営費用や使用料の問題もあるだろう。しかしながら、是非とも今季は場所は少ないながらも極力土以外のグラウンドで県1部リーグの催行を望む限りだ。

 流通経済大柏高校の優勝で幕を閉じた第86回全国高校サッカー選手権大会。決勝でも爆発的な力を見せた彼らもまた、実に充実した人工芝のサッカーグラウンドで日々練習を行っている。それに対して先日何年ぶりかにお邪魔した奈良育英高校のグラウンドはサッカー部員100人弱が本当に練習しているとは思えない狭さ。もちろん土のグラウンドである。他の運動部との兼ね合いもあって、フルでグラウンドを全面使用できる時間はほとんどない。1種だけでなく2種でもそういった地域間の環境の格差は著しく結果に繋がっていると言えよう。

 これは無いものねだりではないはずだ。1種のカテゴリーもままに芝のグラウンドでサッカーができない現状。それは間違いなく県内の実力選手の放出を招き、県内の社会人リーグの発展を阻害している。ほぼ手付かずのこの現状を打破するためにもこれから我々が突き進んでいかなければならない。
 そう思うと、少しでも早く結果を出さなければならないという焦燥感に駆られるのもあながち嘘ではない。

奈良のフットボリスタ ~奈良にプロクラブを~⑬

2008年01月13日 | 脚で語る奈良のサッカー


 3連休の2日目は全国社会人サッカー選手権(通称:全社)の奈良予選を今月末に控え、調整の進む「おらがチーム」こと都南クラブを激励。この日は県内屈指の強豪、奈良育英との練習試合(15分×6本)で調整。
 選手、我々サポーターと初顔合わせを行い、改めて皆が一丸となってこの大会を乗り越え、春からの新クラブスタートに向けて駆け出して行くことを実感する。

 何よりもホッとしたのはこの日クラブの代表として来られていた藤本氏と話ができたこと。これまで矢部選手を通して情報を聞いていたのみで、それ以外のクラブ関係者と話ができていなかった。これからクラブをサポートしていく上では、是非サポーターとクラブ、選手の“距離”は縮めたい。そんな思いがあったが、話をすると本当に気さくな方で、藤本氏自身も保守的な奈良のサッカーシーンにおいて、こういったクラブチームで是非新しいチャレンジをしていきたいということを以前から思われていたようだ。7年間という長い間、奈良県1部リーグで戦いながら、「小さいクラブだから失うものは何もない。」ということもあり、今回の矢部選手の復帰と将来的にJリーグを目指すというチャレンジに意欲を示してくださったということだった。その他にも奈良の1種における現状などしばしいろんな話をさせて頂いた。自分自身もとにかくこのクラブを勝たせたい、そのためにもサポーターは本当に必要だということ再確認した。

 練習試合は随所に息の合ったコンビネーションも見られたし、まだまだダメなところもある。ただただ選手各自がこれから始まるシーズンに向けてコンディションを整えてくれればそれで結構。あとは皆の力で勝っていこう。ピッチでもスタンドでも皆で戦っていくのみだ。

 筆者の呼びかけに呼応してくれたサポーターの同志とも初顔合わせができた。意外な出会いで、将来的に運営の面でクラブに尽力したいという協力者とも親睦を深めることができた。本当に意義深い一日なったと思う。昨日の滋賀FCの戦いぶりやサポーターの姿を現地で見てきただけに万感の思いが込み上げる。

 奈良育英高校のグラウンドからはその東側に、この日山焼きを控えた若草山が鎮座している。その大らかな光景とサッカーがもたらしてくれる繋がりに改めて背中を押される思いだった。

Road To 関西リーグ ~府県リーグ決勝大会 決勝~

2008年01月12日 | 脚で語る地域リーグ


 冷たい雨が止み、長居第2陸上競技場には寒さが渦巻く。しかし、スタンドには試合開始前から熱くこれからの夢へ向かおうと太鼓を打ち鳴らし、声を精一杯出し続けるサポーター達の姿があった。
 関西府県リーグ決勝大会も最後のゲームとなった。決勝に駒を進めたのは滋賀の2チーム。この最終局面で「びわこダービー」とでも称するべきか。滋賀FCとBSC HIRA(びわこ成蹊スポーツ大)の2チームで関西2部リーグへの自動昇格権を賭けて戦うこととなった。

<滋賀FC> (出場メンバー紹介は滋賀FCのみ)
GK1松岡
DF3奥村、4谷口、5上田
MF6前川、25西崎、10橋爪、8本間(20保田)、14西畑(2眞野)
FW18梅辻、7岩田

 正直、今季からの奈良県リーグのこともあり、この2チームがどれだけのレベルかというのも気になった点ではあった。ご存知の方もいるように奈良から決勝大会に進んだ2チームは1勝もできずに敗退を喫してしまった。(ポルベニルカシハラとJST)
 開始から素早いプレスを仕掛け、ペースを握ったのはBSCだった。しかしそれも束の間、徐々に立ち上がりは硬いところが見られた滋賀FCが、展開力のある中盤の前川を中心にリズムを作る。右サイドでは10番を背負うMF橋爪が呼応し、ほぼワンサイドゲームの展開に持ち込むまでそんな時間はかからなかった。特に上背がないながらも、中盤の選手はセントラルMFを中心にタイトにプレスを仕掛けられていたという印象。ボール奪取からの切替えに関してはBSCのペースを遥かに上回っていたと言える。
 13分の相手GKがかろうじて防いだゴール前FK、そして16分の思い切りの良いシュートなど攻撃は前川が牽引した。京都産業大学1年生、そして野洲高校では全国制覇時のメンバーだった。その本大会は怪我に泣かされ、出番に恵まれなかったという。そんな背景も知っていたせいか、彼からはこのゲームに対する強い執念が見えたように思う。
 28分にゴール前でチャンスを作った滋賀FCはMF本間のシュートがポストに弾かれたルーズボールにFW岩田が反応。これをヘッドで押し込み先制点を奪う。寒さを忘れる歓喜が広がる。しかし、先制点を奪うのが遅すぎたとも言えるほど滋賀FCのポゼッションにおける優位は明らかだった。

 後半の立ち上がり早々に右サイドを突破し、橋爪が絶妙なクロスをゴール前に供給。これに本間が執念のダイビングヘッド。素晴らしい展開で追加点を奪うことに成功する滋賀FC。その後にも、同じように橋爪のドリブルから本間に絶妙なスルーパスが繋がるなど序盤からたたみ掛ける。前半は良いところが無かったBSCも負けじと盛り返した。スペースとスピードを使いながら、徐々にリズムを掴んで相手の運動量の減ったところを巧く突いてきたが、ゴール前で決定的な場面を作れない。スタンドからは他のサッカー部員や学生たちが多数応援に駆けつける中、後半終了間際も怒涛の攻撃を演じてみせたが、無得点に沈んだ。
 そして、その試合終了のホイッスルと同時にスタンドから多くのビクトリーテープが投げ込まれる。滋賀FCの関西2部リーグ自動昇格が決定。敗北したBSC HIRAは紀北蹴球団(関西2部最下位)との入替戦に回ることとなった。

 おめでとう滋賀FC。「長かった」とサポーターの一人が呟いたように越年しながら長きに渡るシーズンを最高の形で締めくくった。選手と共に歓喜を分かち合うその姿は本当に印象的だったし、自分も1年後、いや少し時間がかかってでも「おらがチーム」をサポートしながらこの歓喜に浸りたいなという思いが込み上げた。しかし今日の2チームのレベルは高い。確実に奈良のレベルとは差があると改めて強く感じてしまわざるを得なかった。加えて、県リーグレベルであのサポーターの「質」は賛辞されるべきだと思う。この試合を観に来て良かったという充実感、そして地元に対する思いなど交錯する様々な気持ちを抱え、感慨深げにスタジアムを後にした。

 今年度は地域リーグの決勝大会決勝ラウンドも全試合観戦し、テレビでは観られない昇格の歓喜、敗退の悲しみを多く目撃してきた。華やかな舞台ではない。しかしそこには確かにサッカーを愛する感情で形づくられた幸せな空間が存在するのだ。「上を目指す」クラブとサポーターが一丸となって、全力を尽くす。そんな光景が最も最下層のカテゴリーにも浸透しつつある日本サッカーの熟成を垣間見た1年でもあったなと思うのである。

ジレンマに囲まれる家長昭博

2008年01月11日 | 脚で語るJリーグ


 2004年の6月26日、ビッグスワンで行われたアルビレックス新潟戦だった。未だにゲームの詳細をよく覚えている。前節浦和に勝利を収め、このシーズン初の3連勝がかかった1stステージの最終節で4-1と勝利。まだビッグスワンが鬼門ではなく、この年は新たなストライカー大黒将志が爆発の予感をそのまま結果に出しつつあった。しかし、この日は更に大きなサプライズがあった。
 
 まだ当時高校3年生だったユース所属のMF家長昭博がスタメンに名を連ねていた。「初出場、初スタメン」の18歳にはとんだオマケが付いた。試合開始わずか9分で強烈なミドルシュートを叩き込む。これで「初出場、初スタメン、初ゴール」となり、そういう意味ではかつてG大阪が生み出した天才MF稲本潤一を超えるデビュー戦となった。この日のゴールラッシュの口火を切った家長のゴールは今でも鮮明に覚えている。兼ねてから非常に才能のある選手で、前年から二種登録はされていたが、まさかここまでとは思っていなかった。とんでもない18歳が現れたなと感じたのを昨日のことのように覚えている。
 その後の家長の活躍は皆さんもご承知の通り。デビュー戦のちょうど1ヶ月後にはプロ契約を結ぶのである。

 その家長が現在、大きな壁にぶつかっている。おそらくキャリアの命運がかかった岐路に直面しているといって過言ではない。ジュニアユース時代から9年間を過ごしたG大阪からの移籍を彼は考えている。

 昨季は27試合に出場しながら、スタメン出場はわずかに6試合。ゴールはわずか2得点。これまで長くスタメンでチームの屋台骨として活躍してきたベテラン選手なら真っ先に出ていくことも考える成績かもしれない。昨季のシーズンを振り返ると確かに家長自身、コンスタントに好パフォーマンスを発揮したとも言い難く、代表クラスがひしめき合うG大阪の選手層の中で、その才能は確かに埋没しつつあった。移籍を示唆し始めた彼の下にはJ1数クラブからのオファーも相次ぎ、シーズン終了後には西野監督に起用法を巡っての直談判を行うなど、来年に北京五輪を控えた彼を取り巻く状況は穏やかでない。契約期間が残っている中で残留を基本路線とするクラブ側と移籍を希望する本人との間に現時点での正式な決定は下されていない。

 下部組織から育成させた彼をクラブの「至宝」と考えるのは間違いではない。実際、2005年シーズンのリーグ優勝時も彼の貢献度は非常に高かった。その独特のドリブルセンスと何かを起こしてくれそうな類まれなる攻撃ポテンシャルに我々も何度も胸を躍らせたものだ。しかし、五輪代表だけでなくA代表でのデビューを遂げた彼をこれまで過大評価し過ぎた感も今さらながら否めないなというのが個人的な見解だ。
 彼は3年前にとあるインタビューにてこう答えている。

「西野監督が企業報みたいなもので取材を受けていたのですが、そこになるほど、ということが書かれていて…。で、そういうことなんかと…(笑)。
監督は、トップとサテライトの選手とでは何が違うのか、みたいな話をしていたんですね。で、どう書いてあったのかというと『トップの選手とそうでない選手は、自分が持っている力を引き出すメンタリティを持っているかどうかが違う』と。
要は、100%の力を持っていてもメンタリティが追い付かずに60~70%程度の力しか出せない選手は、結果的にいつも60~70%の力しかないのと同じだ、みたいな話だったんです。それが自分にすごくあてはまるな、と。だからこそ、今はまず、自分の潜在能力や技術を100%出せるメンタリティを身に付けたいってすごく感じていますね。
プロの世界というのは、自分の力を100%出し切ったとしても、いい結果を残せるかどうかわからないっていうくらい厳しい世界なのに、そこで自分の力が60~70%しか出せないとなれば、当然、いい結果は出せないと思いますしね。それに、僕の場合、与えられるチャンスもまだまだ少ない中で、常にいいパフォーマンスを出すためには、やっぱりメンタリティの部分での強さは欠かせないな、と。もちろん、技術、体力もまだまだ全然足りていないんですけど(笑)。」

 この発言にあるように自身のメンタリティをシーズン通して、コンスタントに発揮することはプロフットボーラーとして、試合出場を常時成し遂げるための最低条件である。特に西野監督に関してはその点で非常にシビアだ。先日、エルゴラッソの誌面で大宮の特集が組まれている中、元G大阪の吉原宏太も西野監督が自分を起用しなかった要因をこのあたりに起因されるものだったと後から気付いたと語っている。
 おそらく家長自身の甘さもあっただろう。常に優勝争いの渦中にあったチームでこのメンタリティを100%発揮し続ける努力をしたかというと疑問符が付くし、逆に西野監督自身が彼との直談判でも語ったように、指揮官が家長自身のメンタリティを上手くコントロールできなかったことも原因の一端を担っている。実はこのあたりで非常に特性がシビアで取扱いが難しい選手というのは、そう珍しくなく、おそらく他のチームでもよくある話だと思う。これまで一体何人もの未来の代表候補と言える若手選手たちが結果を出せずにトライアウトを経て、下のカテゴリーへ戦いの場を移したことか。
 ただ、家長に関して断言できるのは、彼自身が爆発的な潜在能力を持っているということであり、それを彼自身でなくクラブやサポーター、如いては日本のサッカーファンの誰もが認識しているということだ。ここに大きなジレンマを抱えていることに今回の移籍騒動は起因されていると感じる。
 プロの選手として他の環境で気持ちをリセットしてプレーに取り組みたいという気持ちは当然のこと。その彼の実力を評価して残留を迫るフロントの対応も当然のことだ。もちろんサポーターにとっても彼の残留を願う声は現在後を絶たない。
 しかし、家長を過大評価し、パーフェクトな彼の肖像を求めてきたツケというべきか、その苦しみが今、彼自身とクラブ、サポーターの三者三様に渦巻いている。もう少し寛容に見守ってやれる、そして彼自身のパフォーマンスに見合った起用法が取れれば幸いであったのだが。厳しいプロの世界、ジッとしていれば誰かがすぐに追い越していく。その目まぐるしい時間の流れに家長の今シーズンは波長が合わなかった。

 彼自身の考えを尊重してやるべきだと個人的には考えている。現在、移籍であれば1年間の期限付きが既定路線だ。行先は大分、神戸、名古屋あたりで話も進展しているようだが、本当に大事なのは、家長自身がこの残念な結末の悔しさを忘れることなく、復帰後のG大阪での活躍を目標として成長を遂げて欲しいということ。彼自身、そしてクラブ、サポーターも含めて、持っているメンタリティを引き出せなかった悔しさは大きいが、それをG大阪でやり直すチャンスはまだ幾らでもあるということだ。「期限付き」と言えども、ここまで堅固な鎖で繋がれた移籍も珍しい。しかし、その裏には将来G大阪の中心選手として狙える潜在能力を充分に評価しているということ忘れてはいけない。クラブもサポーターも見捨ててはいない。

 移籍が濃厚となった今、移籍先でさらにそのメンタリティに磨きをかけることと、G大阪が今後、指揮官も含めて彼のメンタリティを引き出せてやれる、その機が熟すまでしばらく待つしかない。「至宝」の彼が「輝く」か「腐る」かは今後の彼次第でもあり、クラブも大きなその舵取りを担っているということを忘れてはいけない。それも踏まえた上で、双方に良い結末が訪れれば良いのだが。

来季一番怖いのはどこだ!?

2008年01月10日 | 脚で語るJリーグ


 ストーブリーグの動向がスポーツ紙を賑わすこのオフ。専門誌を筆頭にどこも今季の新体制の予想に余念が無い。水面下で話が浮き彫りになっていた移籍話が現実のものとなって、この1月から慌しく動き出している。長年在籍した選手の突然の移籍、若手有望株の移籍、即戦力の加入など、どこのチームのサポーターも毎年この時期は新体制始動まで悲喜こもごもであろう。

 しかし、高原の移籍加入を筆頭にこのオフの浦和の凄まじい攻勢には恐れ入る。新潟からはFWエジミウソン、大分からはMF梅崎、ザルツブルグから復帰を果たす三都主、そして昨年は全く手を出さなかった新卒の選手を3名獲得する。駒大のユニバー代表FW高崎、市立船橋高のU-18代表候補DF橋本、昨年の高校選手権を制覇した盛岡商高からMF林など無名な選手は皆無だ。これだけの補強を現時点で完成しながら、退団濃厚な長谷部の代役に考えていた今野の獲得がならなかったことに対して、中村GMが「プランが狂った」と嘆く始末。いやはや、この浦和のメガクラブぶりには昨年のACL、クラブワールドカップの激戦を経て更に拍車がかかった印象だ。
 この浦和は昨年ACLで結果を残しながら、国内のタイトルとは無縁に終わった。その奪回を目指して、今年は昨年以上の気迫でタイトルを狙いに来るのは明らか。幾ら守備的な戦いを繰り広げたオジェック体制とて、これだけ攻撃陣にタレントを抱えれば、点は取れて然り。歯車が噛み合えば本当に手の付けられないチームになりそうだ。
 ただ、高原がドイツから5年ぶりに復帰するが、彼も外国人選手並みの順応性が問われる。2002年の手の付けられなかった高原のトップフォームは未だ記憶に新しい。あれだけのリズムを取り戻すことができれば本当に驚異的だ。

 川崎もフッキの復帰と得点王のジュニーニョ、昨年その身体能力を惜しみなく発揮してスタメンの座を射止めた鄭大世とタレントには不足ない。その余りある強烈な得点力を関塚監督がどこまで采配で見せつけられるか非常に注目できる。
 川崎のストロングポイントは、この攻撃陣陣だけではない。個人的にはJ2時代からほぼ布陣のブレない3バックの箕輪、寺田、伊藤の3人が川崎の真骨頂だと思っている。J1昇格を遂げてから川崎はここにほぼテコ入れを施さずACLまで戦うチームに変貌を遂げたのだから、これもまた賞賛すべき点であろう。

 鹿島は現有戦力からベースアップといったところか。帰国中のDFファボンがどうやらそのままブラジルに復帰することになりそうなのは痛いところだろう。FC東京からDF伊野波の加入が濃厚だが、これでプラスマイナスゼロ、むしろ柳沢の移籍でバックアップ陣が充分とは言い難い。「棚ぼた」と一部でも囁かれる昨季の優勝がフロックでなかったことを見せつけるには少々時間がかかるかもしれない。

 まぁ単純に考えれば浦和と川崎が陣容でこのストーブリーグをリードしていると言える。しかし、見逃せないチームが他にも存在する。

 それはやはり神戸。電撃的に鈴木規郎の加入が決定的という情報には驚いたが、元韓国代表の金南一と大分の快足FW松橋章太を獲得。横浜FMからMF吉田、昨季ブレイクしたのが記憶に新しいFW須藤大輔も甲府から獲得している。豊富な資金力があるがゆえ余剰戦力が顕著だった選手たちは、レンタル移籍と引退も含め13人も放出したことでチームは確実にスリムになった。親会社の恩恵も大きいことは周知の事実だが、この選手層のバランスが今季の神戸を上位に導く鍵となっていることは確かだろう。
 
 京都の陣容も非常に興味深い。相変わらずこのチームも節操が無いと言うべきか。しかしながら今季は少し状況が違うようにも感じる。
 それはやはり加藤久監督の続投をチームが表明したところによるものだろうか。これまで同じミスを何度も繰り返した京都が今季のフロントには寛容かつ慎重な姿勢を見せた。加藤監督本人の強い意志もあったただろうが、それが鹿島から柳沢、そして千葉から加入濃厚となっている佐藤勇、正式にレンタルでの加入が決まった増嶋など即戦力を導いているとも言えなくはない。ただ、まだここがエレベーターチームを脱却したと断言するには時期尚早すぎる。真価は蓋を開けてみないと分からない。

 スポーツ紙を連日賑わせる報道内容に一喜一憂を繰り返しながら、サポーターは早春の新シーズンの開幕を待ちわびるのだ。ゲーム内容と同じく本当にフットボールは常に流れているスポーツ。このオフにまでそんなことを実感できる今日この頃である。

名タッグに馳せるかつての名勝負

2008年01月09日 | 脚で語る日本代表


 8日に発表されたU-17日本代表チーム。2年後のU-17ワールドカップを目指していくのだが、元プロ野球選手の高木豊氏の長男であり、東京V1969ユースのFW高木俊幸や元広島や京都で活躍した元日本代表、森保一氏の長男であるDF森保翔平(広島ユース)などが選出された。
 かつてのJリーガーやスポーツ選手の子供がもうこんなカテゴリーで代表などに選出されるのは歳月の流れを感じると共に、一握りの才能溢れる次世代の集団に彼らが名を連ねることは改めてその「サラブレッド」ぶりもつくづく感じる。

 暫定的ながらこのU-17日本代表チームを率いるのは、布啓一郎氏。かつて市立船橋高の監督として高校総体優勝、全国高校サッカー選手権優勝など数々の輝かしい戦績を残してきた名監督である。現在は、日本協会技術副委員長を務めるその布氏が指揮官として、1月23日から行われるメキシコ遠征にてコパ・チーバス2008という大会に参戦する。
 特筆すべきは、この2011年U-20ワールドカップを狙う代表チームのコーチとして奈良育英高校の上間政彦監督が帯同しているということだ。指導歴25年を迎える上間氏が高校サッカー界のきっての指導者として多くのJリーガーを奈良か輩出したことは周知の事実。奈良のみならず、関西のユース世代のサッカーシーンの発展に大きな尽力を果たしてきた。布監督と並んでS級ライセンスを保有していることから、この抜擢にも繋がったと窺えるが、この上間監督が代表コーチとして世界にチャレンジするのは奈良人としても非常に喜ばしいことである。

 筆者が小学6年生の冬、つまり95年の1月になるが、この上間監督率いる奈良育英高校が全国高校サッカー選手権でベスト3となる快挙を達成したのは非常に鮮烈な印象として脳裏にこびりついている。
 当時の守護神は現在日本代表でもお馴染みの楢崎正剛。初戦で前年度優勝の清水商を破り、怒涛の快進撃を遂げた。特に3回戦の四日市中央工高との9-8までもつれ込んだ熾烈なPK戦は忘れ得ぬ名勝負である。その後、準々決勝で三本木農高に1-0と辛勝し、準決勝でこの年の優勝校となる市立船橋高に0-3と敗れる。当時、1年生だったFW北嶋(現柏)、得点王にも輝いた3年生FW森崎嘉(元市原、水戸、横河)、2年生MF式田(元市原)を中心とした市立船橋高は驚異的な強さだった。全試合でわずか1失点。そして帝京高との決勝で5-0と圧勝を遂げた攻撃陣は6試合で23得点。その強豪を率い、全国の初戴冠をもたらしたのが布啓一郎監督であるのだ。
 何とも運命的な巡り合わせといえるだろうか。個人的には非常に思い入れの強いタッグである。この強烈な指揮官2人に導かれ、遠くメキシコの地で若きサムライたちが大きく成長を遂げてくれるのを願うばかりだ。
 
 そんなに取り上げられないニュースかもしれない。注目度も決して高くない代表カテゴリーだ。しかし、そんなノスタルジックなかつての名勝負を演出した名指揮官がコンビを組んで、現在の日本サッカーを牽引してくれていることを思うと、胸が熱くなるのは筆者だけだろうか。