脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

岡田チルドレンの台頭

2008年01月30日 | 脚で語る日本代表


 W杯アジア3次予選タイ戦を控えた最後の親善試合、ボスニア・ヘルツェコビナ戦は3-0という完勝劇に終わった。

 「接近・展開・連続」とひっきりなしに岡田監督の掲げるフィロソフィが話題に上がっているが、特にこれをピッチで具現化できたのは83分に山瀬が奪った2点目の展開だと言えるだろう。センターライン付近で途中出場の今野が効果的なチェックでボールを奪い、大久保へ。その大久保を意識しての山瀬のオーバーラップに大久保も呼応して最終的にGKと1対1という局面に持ち込めた。先日のチリ戦も含めてこれ以上ない連携が結果に繋がったシーンであっただろう。
 3点目は完全に相手の集中力が欠如していたが、これを巧みに突いた今野がまたも効果的なフィード。交代出場の播戸が体を張ってフリーのスペースに落とし、難なく山瀬が決めることができた。ボスニア・ヘルツェコビナの運動量が極端に落ちていることを差し引いても、結果を出せたことでW杯予選へのチームの盛り上がりには十分なスコアだったといえる。

 しかし、かつては「オシム・チルドレン」と呼ばれた巻・山岸・羽生らに対して、今日の試合で活躍したのは全て「岡田チルドレン」とも形容できる選手たちだ。準備期間の限られた中での監督交代ながら、継続路線を貫くとはいえ、少しずつチームは変わっていることを実感した。
 特にMVPに挙げたいのは途中出場ながら、共に決定的な仕事をしたMF山瀬と今野。共に札幌時代に岡田監督に教えを享受した者同士である。特に山瀬は、自身が一番手として名乗りを挙げるべきトップ下のポジションを大久保に奪われ、その悔しさを暗に2ゴールに込めたことであろう。ゴール以外の場面でもムダな動きは少なく、相手の運動量の減退もあってか、中盤が快活に機能できた原動力となった。同じく今野も少ない時間で効果的な仕事ができた。特に3点目のフィードは狙い通り。これは同じく少ない時間帯での出場にも関わらず、チリ戦から課題となっていた前線のボールの受け方を己の身を持って呈した播戸のプレーと見事にマッチングして、山瀬の3点目を導き出した。まさに朱勲の「フィード」と「落とし」である。

 前回も触れた前線のファーストチョイスにまたしても岡田監督は頭を悩ませることになるだろう。なぜなら、この試合もまたもやFWが点を取れなかった。前半は巻が負傷交代する34分までトップ下を務めた大久保もチャンスには顔を出しながらもゴールが遠かった。巻は果敢に身を呈して飛び込む気概を随所に見せてくれるも、どうもゴールの匂いからは遠い男である。エースの高原に関してはコンディションが悪すぎる。この2試合で最も期待を裏切った男となった。
 そこで、播戸がなぜ2試合通して10分間しか使われなかったのかについて言及しておきたいのが筆者の正直な感想だ。指宿合宿でもゴールを量産し、キレは良かった。せめてもう少しプレッシャーのきついチリ戦で出場時間が欲しかった。大久保に次いで岡田ジャパンのメンバーではゴールの匂いが最も漂う男ではあるのだが。そろそろ高原と巻というファーストチョイスをリセットする必要があるだろう。皆さんはいかがお考えだろうか。

 とにかく先制点もかつて岡田監督が指揮した横浜FMの黄金時代を知る闘将中澤。そして山瀬の2発に、今野と播戸の効果的な仕事と、「岡田チルドレン」が台頭してアピールした今日の試合。オシムジャパンでは見られなかった化学反応が少なからずも垣間見えたことに今後の面白さを窺わせた。しかし、改めて注意しておきたいのは今日のボスニア・ヘルツェコビナが非常に緩慢だったということである。真剣勝負のW杯予選、初戦はいつも僅差でしか勝利できていない。苦戦の中で成長していくチームにおいて「岡田チルドレン」が鍵を握っているのは言うまでもないだろう。

 さて、ここまで頭が動いたことであるし、明日医者にドクターストップを解除してもらうとしよう。