脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

どうして酒はダメ?

2008年01月23日 | 脚で語るJリーグ


 今季からその戦いの場をJ2に移すロッソ熊本改めロアッソ熊本。今日新体制発表会が行われ、クラブの5年でJ1を狙うという目標や新加入選手、またマスコットキャラクターのお披露目が行われた。

 ロアッソ熊本といえば、かねてから問題になっていた胸スポンサーの「白岳」問題。昨季まで地元を代表する高橋酒造がその自慢の代表商品名を胸スポンサーに躍らせていたわけだ。しかし、今回のJ昇格を受けて、Jリーグから「待った」がかかった。
 その理由は「酒類の表示ができない」ということ。青少年への影響への配慮か、やはり世間に対するJリーグクラブの胸スポンサーの影響の大きさを痛感するエピソードとなった。その結果、これまでトレーニングウェアにその名称を使用していたお菓子の香梅が「武者がえし」という代表的商品を新たにその胸に躍らせることになった。

 せっかく念願のJリーグ入りを果たしながら、高橋酒造としては大きな痛手だろう。JFLより遥かにメディア露出度の増えるJリーグの舞台で自慢の商品名が陽の目を見ないことになる。これまでチームをスポンサードし続けてきた地元の老舗にとってはまさに寝耳に水。昨季のJFLでは佐川急便SC(今季よりSAGAWA SHIGA FCに名称変更)にぶっちぎりで優勝を許し、なんとか2位でのJ昇格。おまけにクラブ名は変わるわ、胸スポンサーには文句を付けられるわで、熊本の船出はどうもバタバタしてしまった印象は拭えない。

 ただ、気になるのは、「酒類の胸スポンサー表示はダメ」という規定は元来Jリーグの規約にあったのだろうか。無かったとしても、その方針をこれまでJリーグ側が徹底して貫いてきたのかは疑問が残る。
 そう、かつてのヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ1969)を思い出して欲しい。96年~98年シーズンにかけてだったろうか。その胸のスポンサーにはしっかりサントリー、そしてその目玉商品である「モルツ」の文字がアルファベットでしっかり躍っていたではないか。おまけに背中のスポンサーまでもがサントリーではなかったか?当時のあのV川崎のユニフォームを持っている人間は少ないと思うが、確かに過去にあったケースだ。いつからJリーグはその方針を辿ったのだろうか。

 そんなことを言い出すと、もうかれこれ10年以上日本代表をサポートするキリンの表示はどうなるのか。代表のトレーニングウェアにはしっかり「KIRIN」の文字が。それどころかビブスにまでしっかり入っている。もしかして日本サッカー協会とJリーグでは方針が違うのだろうか。百歩譲って、トレーニングウェアだけということでOKということであっても、キリンカップなど国際大会まで催しておきながら、熊本の「白岳」に“待った”はどうしても理解できない。
 かつてはサントリーシリーズ、ニコスシリーズと銘打って2ステージ制で開催していたJリーグがそういう線引きで今回の熊本の胸スポンサーに判断を下したのかが非常に謎である。
 日本代表チームとリンクさせたビールのCMはこれまで数多く放映されてきたはずだ。前述のキリンカップなど国際試合では勝利チームにビールもたんまり送られていたはずでは?青少年への配慮を考えるならば、もう根底から日本サッカーのスポンサーをひっくりかえなければならない。考えれば考えるほど矛盾が残るだけだ。

 まだ船出を遂げたばかりの新興クラブにとって、地元企業の手厚いスポンサードほど貴重な財源はない。そんな中起きた今回の騒動、Jリーグの理念は時折、非常に屈折したもの見えるのは筆者だけだろうか。とにかく「武者がえし」からすればしてやったりの展開になったわけだが。