脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

ネガティブな記事に目を向ける

2008年01月25日 | 脚で語るJリーグ


 日頃、情報ソースとしても非常に活用させて頂く某ブログがあるのだが、何しろそのブログが大変面白い。
 サッカーが好きな人間、俗に「ファン」と定義できる人間は大抵ポジティブにそのサッカーに関する評論を書き連ねることが一般的だ。時に批判することがあっても、それはひいきのチームであったり、日本サッカーに対する愛情や情熱を持ってその現状を憂い、良い方向へ導こうとする意思の下であろう。好きな事象に対して365日批判的に物事を解釈する者はそうそう稀だ。

 そんな稀なスタイルでJリーグをひたすら崩壊に導くために粗探しに邁進するブログが存在する。これをお読みの方で、もうご存じの方も多いかもしれない。あえてブログ名は控えさせてもらうが、筆者はそのブログが大好きだ。
 非常に細かく、そして多岐に渡る視点、そしてその情報量。特にJリーグクラブの経営状況と自治体との摩擦問題など随所に大いに納得させられる記述も多く見られる。こういった方が存在し、明確な問題提起をしてくれることは、まだたかだかプロリーグが始まって15年の日本においては明るいことだと筆者は思う。時々、辛辣過ぎて多少ピントの外れたことをおっしゃられることがあるが。

 その某ブログで、最近興味深い記事があった。昨年ACLを制覇し、FIFAクラブワールドカップに挑んだ浦和のサポーターを引き合いに出し、金子達仁氏の発言も紹介しながら、「サポーターの応援は、応援歌を延々と唄うことにその目的が置かれている」といった趣旨の記事であった。浦和が目の前で世界随一の強豪クラブACミランに圧倒的にゲームを支配されてリードを許す中で、延々と応援歌、つまりチャントを唄い続ける浦和サポに対し「僕なら歌えない、言葉を失う」という金子氏の発言を引用しながら、ファッション感覚で応援することに傾倒した日本のサポーターは「唄う」ことでしか一体感を得られていないと指摘する。
 
 これは一理あるな、と思った。確かに“のべつ幕なし”に唄い続けることがサポーターの目標というか、ゴール裏で得る一体感とイコールで結ばれるのは確か。歴史の浅い日本のサッカーにおいて、命を懸けて愛するクラブに身を捧げる者は欧州サッカーのそれと比べれば確かに見られない。それは歴史とそこに根付くフットボール文化の差を考えれば当然のことだろう。だが、確かにファッション感覚や、選手を著しく「アイドル化」してはその「追っかけ」的なスタンスでゴール裏に紛れ込むファンも多い。これらをクラブ愛とイコールで結んでいる者が何とも多いことか。唄い続けることから多少焦点はズレているが、これも日本の特徴であろう。

 百聞は一見に如かず。それが最も分かり易く具現化されているのがG大阪のゴール裏。つまり「万博のゴール裏」と言えば手っ取り早い。これまでリーグ有数のタレントが揃い、成績も年々安定していることもさることながら、“男前”と評すべき選手の多さに少しスタンスを履き違えたファンも多く存在する。世界的に見ればまだ黎明期の日本のプロサッカーであるが、肝心な「選手を、クラブを勝たせるための応援」ができていないのだ。
 前述の浦和のようなケースでは確かに言葉を失うかもしれない。世界の名門の強さに打ちひしがれるかもしれない。しかし、Jリーグではリードしながらも肝心な局面であっさりと同点に追い付かれたり、逆転を許したりするG大阪特有の「持病」はサポーターのこんな所に起因しているのかもしれない。つまり皆と同じく「唄う」ことでとりあえずの一体感を共有しているファンが多いのである。加えて、前述したようなファッション感覚や追っかけ感覚でここ数年ファンになったサポーターも多いことで、満足に「唄う」ことでの一体感も図られていないのが現状。喜怒哀楽を共にありのまま内面吐露し合える人間はまだまだ少ないのだ。
 この問題に関しては、年末の天皇杯の後にサポーター団体の中心人物と話をする機会があり、まさにその話となった。まだ「唄う」ことでも一体感を成し得ていないG大阪サポがあの浦和サポにはまだ勝てない。ましてやそんなサポーターの後押しではクラブ自体が浦和を超えていくのは難しいということを実感した。

 考えれば考えるほど、これほど時の流れと歴史が刻むことに委ねてしまいたい問題は無いのだが。そういった意味でこの議論を重ねるのは時期尚早か。
 とにかく、ネガティブなその記事から時折得るインスピレーションは自身を少しでも研磨し、啓発し得る材料になるということだ。これからもその“苦い薬”から様々な問題点を考えることを大切にしたい。

 まぁしかし、面白い観点でJリーグを紐解く方もおられるものだ。それだけサッカーの魔力を感じて止まないのだが。