脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

Road To 関西リーグ ~府県リーグ決勝大会 決勝~

2008年01月12日 | 脚で語る地域リーグ


 冷たい雨が止み、長居第2陸上競技場には寒さが渦巻く。しかし、スタンドには試合開始前から熱くこれからの夢へ向かおうと太鼓を打ち鳴らし、声を精一杯出し続けるサポーター達の姿があった。
 関西府県リーグ決勝大会も最後のゲームとなった。決勝に駒を進めたのは滋賀の2チーム。この最終局面で「びわこダービー」とでも称するべきか。滋賀FCとBSC HIRA(びわこ成蹊スポーツ大)の2チームで関西2部リーグへの自動昇格権を賭けて戦うこととなった。

<滋賀FC> (出場メンバー紹介は滋賀FCのみ)
GK1松岡
DF3奥村、4谷口、5上田
MF6前川、25西崎、10橋爪、8本間(20保田)、14西畑(2眞野)
FW18梅辻、7岩田

 正直、今季からの奈良県リーグのこともあり、この2チームがどれだけのレベルかというのも気になった点ではあった。ご存知の方もいるように奈良から決勝大会に進んだ2チームは1勝もできずに敗退を喫してしまった。(ポルベニルカシハラとJST)
 開始から素早いプレスを仕掛け、ペースを握ったのはBSCだった。しかしそれも束の間、徐々に立ち上がりは硬いところが見られた滋賀FCが、展開力のある中盤の前川を中心にリズムを作る。右サイドでは10番を背負うMF橋爪が呼応し、ほぼワンサイドゲームの展開に持ち込むまでそんな時間はかからなかった。特に上背がないながらも、中盤の選手はセントラルMFを中心にタイトにプレスを仕掛けられていたという印象。ボール奪取からの切替えに関してはBSCのペースを遥かに上回っていたと言える。
 13分の相手GKがかろうじて防いだゴール前FK、そして16分の思い切りの良いシュートなど攻撃は前川が牽引した。京都産業大学1年生、そして野洲高校では全国制覇時のメンバーだった。その本大会は怪我に泣かされ、出番に恵まれなかったという。そんな背景も知っていたせいか、彼からはこのゲームに対する強い執念が見えたように思う。
 28分にゴール前でチャンスを作った滋賀FCはMF本間のシュートがポストに弾かれたルーズボールにFW岩田が反応。これをヘッドで押し込み先制点を奪う。寒さを忘れる歓喜が広がる。しかし、先制点を奪うのが遅すぎたとも言えるほど滋賀FCのポゼッションにおける優位は明らかだった。

 後半の立ち上がり早々に右サイドを突破し、橋爪が絶妙なクロスをゴール前に供給。これに本間が執念のダイビングヘッド。素晴らしい展開で追加点を奪うことに成功する滋賀FC。その後にも、同じように橋爪のドリブルから本間に絶妙なスルーパスが繋がるなど序盤からたたみ掛ける。前半は良いところが無かったBSCも負けじと盛り返した。スペースとスピードを使いながら、徐々にリズムを掴んで相手の運動量の減ったところを巧く突いてきたが、ゴール前で決定的な場面を作れない。スタンドからは他のサッカー部員や学生たちが多数応援に駆けつける中、後半終了間際も怒涛の攻撃を演じてみせたが、無得点に沈んだ。
 そして、その試合終了のホイッスルと同時にスタンドから多くのビクトリーテープが投げ込まれる。滋賀FCの関西2部リーグ自動昇格が決定。敗北したBSC HIRAは紀北蹴球団(関西2部最下位)との入替戦に回ることとなった。

 おめでとう滋賀FC。「長かった」とサポーターの一人が呟いたように越年しながら長きに渡るシーズンを最高の形で締めくくった。選手と共に歓喜を分かち合うその姿は本当に印象的だったし、自分も1年後、いや少し時間がかかってでも「おらがチーム」をサポートしながらこの歓喜に浸りたいなという思いが込み上げた。しかし今日の2チームのレベルは高い。確実に奈良のレベルとは差があると改めて強く感じてしまわざるを得なかった。加えて、県リーグレベルであのサポーターの「質」は賛辞されるべきだと思う。この試合を観に来て良かったという充実感、そして地元に対する思いなど交錯する様々な気持ちを抱え、感慨深げにスタジアムを後にした。

 今年度は地域リーグの決勝大会決勝ラウンドも全試合観戦し、テレビでは観られない昇格の歓喜、敗退の悲しみを多く目撃してきた。華やかな舞台ではない。しかしそこには確かにサッカーを愛する感情で形づくられた幸せな空間が存在するのだ。「上を目指す」クラブとサポーターが一丸となって、全力を尽くす。そんな光景が最も最下層のカテゴリーにも浸透しつつある日本サッカーの熟成を垣間見た1年でもあったなと思うのである。


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4 コメント

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Unknown (宮田)
2008-01-13 16:51:47
今日は寒い中お疲れさまでした。

色々面白い話聞かせてくれてありがとう。
話させてもらって、個人的にもいいモチベーションになったし、早く矢部さんのお力になりたいと強く思うようになったわ。

絶対にJを作りましょう!!
諦めなければ必ずできる!!

そう思ってます。
ではまた☆


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Unknown ()
2008-01-13 23:50:46
>宮田くん
早速コメントありがとう!
こちらこそ心強い意思表明を聞けて良かったわ!

是非力を合わせて上を目指しましょう!

長い付き合いになりそうやね。これからもよろしく!
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Unknown (こてつ)
2008-01-16 19:20:06
コメント遅くなり申し訳ありません。また当日の詳細なリポートありがとうございます。
ようやく滋賀FCも第一関門を突破し関西の舞台に立つことができます。2008シーズンもさらなる飛躍の年となるよう僕らサポーターも頑張っていきたいと思います!
と喜び勢い込んでいたところに、佐川急便SCが「佐川急便滋賀フットボールクラブ(略称:SAGAWA SHIGA FC)」に改称されたという発表がありました。そのままじゃないですか…。

とにもかくにも都南クラブのご活躍祈っております。近い将来、できれば今シーズン対戦する機会が訪れることを期待しています。今後とも宜しくお願いいたします。
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Unknown ()
2008-01-16 20:18:32
>こてつさん
コメントありがとうございます。

県リーグのカテゴリーであれほど熱いサポーターの方々がおられるのは選手の大きな励みになりますし、またこちらも大きな刺激を受けました。
今季の滋賀FCのKSLでの奮闘を祈っております。

こちら奈良もレベルはまだまだですが、何とか1つでも上のカテゴリーを目指して頑張っていきたいと思います。

佐川の件は知りませんでした。「滋賀」という名称を付けて、地域密着を図るという狙いでしょうか。
とにかく、滋賀FCさんの方に配慮が欠けた改称ですよね。
元来滋賀で活動していたオリジナルクラブの意地を見せたってください!
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