脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

さらば、ハマのスリーストライプス

2008年01月20日 | 脚で語るサッカーギア


 19日の行われた横浜Fマリノス(以下横浜FM)の2008年度新体制発表記者会見。桑原隆新監督就任やロニー、ロペスといった新外国人選手の加入、早大よりMF兵藤慎剛、J2水戸から屈指のハードーマーカー小椋祥平を獲得するなど地味ながらも着実な補強を続ける新陣容が発表される中、古くからのサッカーファンも注目していたトピックスがとうとうお披露目となった。

 それはNIKE社のサプライによる新ユニフォーム。JSL日産自動車時代からの“スリーストライプス”ことadidas社との契約を打ち切り、最大のライバルであるNIKE社との新規契約。昨年から明らかにされていた情報であったが、adidasに感謝の意を示すポスターで広告であったり、それを察した横浜FMサポーターがホームゲームで歴代のユニフォームフラッグを観客席に掲げるなど、少なからずその反響は大きいものであった。
 確かに日産時代から引き継がれる横浜FMのトリコロールカラーは、スリーストライプスがシンボルであるadidasとの相互イメージを歴代のユニフォームデザインの変遷より徐々に深めてきた。これまでほどの相思相愛ぶりを、そのクラブが表現すべきデザインコンセプトとサプライヤーの間にイメージがさせるクラブは無かった。そういった意味でも少々寂しいと思われる方もいるかもしれない。「横浜FM=adidas」と形容しても過言ではなかった。

 これまでadidasとNIKEという二大スポーツブランドの世界的競争については何度か触れてきたが、今回のケースはクラブとしてこれまで以上に飛躍を遂げるための覚悟を持った「革新」であると信じたい。決してその裏にあるマネーゲームには触れたくないと勝手に思ってしまう。今や海外のクラブでもこれだけ1社が長くサプライヤーとして君臨するケースは珍しいことであった。極端に例えるならば、ドイツ代表がadidasをやめて新たにNIKEと契約するような衝撃度を感じているファンも少なくないはず。
 幸いにもキーコンセプトを貫き、新ユニフォームはシンプルなデザインの中にも確かに横浜FMらしさが出ている。意外と違和感を感じず、逆にスッキリとスマートになった印象を受けたのが正直なところである。昨季リーグチャンピオンの鹿島、そして浦和のユニフォームサプライヤーもNIKEによるもの。彼らはJリーグにおいて徐々にその足場を踏み固めてきたと同時に、adidasとの激しい市場競争の中でサッカーの振興に一役も二役も買っていることもまた事実である。

 かつてに比べると、Jリーグの各クラブのユニフォームサプライヤーはかなりマルチ化してきた。大宮はLotto、横浜FCはhummel、名古屋は長年le coqを愛用。その他京都は地元企業のワコール、草津はファイテン、水戸がmiter、湘南はA-LINEと個性的なブランドを登用することも多くなってきている。京都のようにそれが従来のスポーツアパレルブランドと限らないケースも出てきているのである。それぞれのデザインもそれぞれの色があって見ていると面白い。一般的なインターナショナルモデルをそのまま起用ぜず、オリジナルモデルで展開するクラブも多い。そういった意味でこのシーズンオフを経て、各クラブが文字通り“装い”も新たにスタートを切るのは要注目だ。

 03年、04年と現日本代表監督の岡田武史氏がクラブを率いた時代は圧倒的な強さを見せた横浜FM。覇権奪回に向けNIKEとの新たなタッグで黄金時代を再び築けるか。監督も変わり、新ユニフォームのイメージ定着にも中途半端な成績は許されないのである。