東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

なべころ坂

2013年09月06日 | 坂道

なべころ坂下 なべころ坂下 なべころ坂下 なべころ坂下 前回の馬喰坂の坂下で左折する(現代地図)。散歩道の案内標識のある所のちょっと先である。

住宅街の中の細い道を北へ進む。ちょっと広めの道に出たが、そこの歩道にベンチがあったので、近くの自販機で買ったコーヒー缶で一休み。

歩道のちょっと先を左折すると、なべころ坂の坂下である(現代地図)。

その坂下から撮ったのが一枚目の写真で、左側がなべころ坂で、坂下からまっすぐに西へ上っている。

二枚目は坂下からちょっと進んで坂上側を、三枚目はさらに進んで坂上側を、四枚目はそのあたりふり返って坂下側を撮ったもので、このあたりはまだ緩やかである。

なべころ坂中腹 なべころ坂中腹 なべころ坂中腹 なべころ坂中腹 一枚目の写真は、さらに進んで中腹から坂上側を撮ったもので、このあたりから勾配がついてくる。

二枚目はそのさらに上側から坂下側を撮ったもので、坂下の勾配がつきはじめるあたりがよくわかる。

三枚目はさらに進んで坂上側を撮ったもので、この上で左へちょっと曲がっている。

四枚目はその上側から坂下側を撮ったもので、東側の眺望がよく(左右の視界は狭いが)、遠くに近くにビルが見える。

坂上に立っている坂の標識(目黒区教育委員会)に次の説明がある。

「なべころ坂
 昔は鍋が転がるほどの急坂であったので、なべころ坂とよぶようになったといわれる。また、道に粘土が露出した状態を、方言で「なべころ」といったことから、坂名になったともいわれる。」

目黒区HPには次の説明がある。

「中目黒四丁目13番と14番、16番の間の急坂をなべころ(別名 なべごろ)坂という。昔、鍋が転がるほどの急坂であったことからこの名がつけられたとする説と、「なべごろ」とは赤土が水でやわらかくなった状態を示す、目黒の古い方言であったとする説がある。

「なべごろ坂」とする説によると、坂道の両側には古くは耕地があり、坂道は狭く曲がっていた。用途が比較的少なかったためか、改造されることもなく、昔ながらの道路面は表土の黒土層が洗い流されて、赤土層が露出していた。そのため夏の乾燥日には赤土のかたまりがごろごろしていたし、冬の雪の日や春の霜解け、入梅期の雨の日などには赤土がぬかっていたという。」

二つの説が紹介されているが、「なべころ」の方がいかにも坂名らしく、語呂もよい。坂上からほぼまっすぐに下る坂を見ると、鍋がよく転がったのだろうと思ってしまう。

なべころ坂標識 なべころ坂上 なべころ坂上 なべころ坂上 坂上近くまで上ると、左側に植え込みがあるが、ここにステンレス製の箱形の標識らしきものが立っている。その下側は低木の葉や草に隠れているが、よく見ると、一枚目の写真のように説明板がはり付けられている。これでは見逃してしまう。なぜ通常の標柱タイプにしないのか不思議である。

二枚目は坂上近くから坂上側を、三枚目はそのあたりから坂下側を撮ったものである。

坂上の先を撮ったのが四枚目であるが、突き当たり左右の道が庚申道で、左折すれば、馬喰坂の坂上にいたる。

この坂は、横関、石川は紹介していないが、岡崎、山野が紹介している。ところが、岡崎は、「中目黒4-12、天台宗長泉院前を東に下るきわめて短い坂。傾斜もわずか。・・・」と記述し、位置が違う坂を指しているようである。

明治44年(1911)発行の東京府荏原郡目黒村の地図を見ると、この坂と思われる道筋があり、ほぼまっすぐに下っている。現在(現代地図)、馬喰坂が東に下り、庚申道に沿って北西側にある次に東へ下る坂は、この坂であるが、明治地図も同様である。昭和16年(1941)の目黒区地図にも同様の道筋があり、坂下南側に東京ガスのタンクが見える。

この坂も、台地から目黒川の流域の谷地へと東に下る坂で、かなりの急坂であったようである。

目黒区発行の「坂道ウォーキングのすすめ」にあるこの坂の全長、高低差、平均斜度は、183m、9.8m、4.57で、馬喰坂よりもちょっと緩やかである。
(続く)

参考文献
横関英一「江戸の坂 東京の坂(全)」(ちくま学芸文庫)
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
「嘉永・慶応 江戸切絵図(尾張屋清七板)」(人文社)
市古夏生 鈴木健一 編「江戸切絵図集 新訂 江戸名所図会 別巻1」(ちくま学芸文庫)
「東京人 特集 東京地形散歩」⑧august 2012 no.314(都市出版)
「昭和十六年大東京三十五区内目黒区詳細図」(人文社)
「荏原郡目黒村全図」(人文社)
「坂道ウォーキングのすすめ」(目黒区発行)

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