あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

縦隔洞炎

2005-10-22 00:33:45 | Weblog
今、病棟には創感染の患者が6人と外科入院の4分の1ぐらいを占めている、先が見える人はいいが、なかなからちが明かない患者は、永遠と続く毎日の消毒に、だんだん患者も医者もまいってくる。内訳は縦隔洞炎が3人、AFPの感染が1人、カテの穿刺部位の仮性瘤術後の創感染が1人、あとはペースメーカー感染が1人である。
今日の二例目は縦隔洞炎患者のデブリと腹直筋充填をした、今回入院している縦隔洞炎の患者はみんなもう経過が3ヶ月から半年と非常に長く、洗浄を繰り返してはいるがやはり胸骨の感染が残ってしまい結局すっきりと治らない人たちばかりである、ボスいわく2、3週間洗浄してだめなら、とっとと全麻でデブリして何か充填しないとダメだと、、、。何ヶ月も洗浄して粘っても意味がないとのこと。ここに来て何人か見てきたが、みんな結局はデブリ+充填しないと治らないイメージだ、何ヶ月も洗浄を続けるのは、こちらサイドのあわよけばこのまま治ってほしいという希望と、単なる怠惰であり、結局は逃げているだけなのかなと、思うところもある、患者にも大変な負担がかかるし、こちらにも毎日洗浄をするという負担がかかり双方にとってマイナスかも。ボスもこれまでたくさんの経験を踏んでそのように言っていると思うので、たぶんその通りなのだろうと思う。

今日の症例は胸骨の裏の骨膜に感染源があったと思われる、腹直筋のフラップは初めてなので、忘れないように簡単に書いておく。まずは胸骨と大胸筋を外し視野を取れるようにして、ダメな骨をどんどんとリュールで削り、その下の汚い肉芽を削ると不良肉芽は簡単に削れ、きれいな組織が自然と残ってくる。
その後、腹直筋を腱鞘から剥がし中の筋肉のみを剥離する。下腹壁動脈を末梢側で結さつして、筋肉を結さつして腹直筋を末梢で離断する。中枢側は肋骨付着部付近まで剥離しておく。それで反転させて数箇所固定して閉じる。

ボスの忠告もあり、来週空いているところで、後の二人の縦隔洞炎もデブリすることとなった。あまり、気持ちの良い手術ではなく、みんなやりたがらないのは良くわかるが、早くけりをつけたほうがみんなのためであるし、こういった手術はゲリラ的で教科書には載っていないので、この際なので立て続けに経験させてもらい、自分のものにしてしまいたい。感染を残さないということと、関係ないものを傷つけないようにすること、これさえ注意すればけして難しい手技ではないと思う。ただ、トラブルが起きたときは、いちおう再手術なので大変なことになる。


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2 コメント

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新しい傷の治り方 (第一ばか医局長)
2005-10-25 05:08:44
上記タイトルで最近、相沢病院(藤松先生のところ)の傷の治療センター?だったかな、の夏井先生という人が佐倉で講演してたんだけど、結構今まで持ってた 消毒 の概念が変わったよ。基本的な考え方は、消毒薬はバイ菌も殺すけど、増生しようとする細胞、組織も殺してしまう、というもの。術中、縫合前の消毒、あれは禁忌みたいよ。

なんか相沢病院ではその人が来てから縦隔洞炎は無くなったって。なんか、うさんくさい人だったけど結構感化された。ホームページもあるらしいからみてみなよ。ほな           
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Unknown (あぽいち)
2005-10-25 13:35:08
医局長、ありがとう、でも、そのページはもう2,3年前から愛読してるよー、本だって全部持ってるよー。

ウロにいるときは、医局員みんなに夏井先生の本読んでもらって教育して僕らもいっさい消毒なしの包交してたけど、かなり好評だった。でも、こっち着てからはなかなか、みんなの信頼得るまでは新しいことは提案しにくいというかなんと言うか。胸と腹はちょと違うしなー。

そろそろ、やったるかー。

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