あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

ちょんぎれてた

2011-09-12 01:22:05 | Weblog
先日は夜間に解離が来まして、ボスや部長が来れないとのことで、わたくしが担当させていただきましたがなんとかなりました。
もともとRCAのAMIを伴っていまして、前医でPCIを試みましたがカテが解離腔に入ってしまうとのことで、手術となりました。開けてみたらRCAの入口部がちょん切れていました。AMIでしたので冷やしている間にRCAにはバイパスを置いていたので、心筋保護はよいのですが、これまで、離断してしまっている症例は見たことがありませんでしたので、はてどうしたもんかと、、、、。ボスなら迷わず、ベントールへ行くのでしょうが、私はいまだベントールは未経験ですので、とりあえず、修復しかないと。苦肉の策でパッチで内膜の入口部は閉じて、バイオグルーでがっちり固めて、#1はフェルトでつぶして閉鎖することとしました。これでだめならベントールしかないなと思いつつ、上行置換とA弁釣り上げにSVG-#2として、なんとかなりました。6時間と時間はかかってしまいましたが、ポンプ離脱後の止血にもさほど苦労せずに終了。恵まれていることに、これまでOPCABをそこそこさせてもらってきたおかげで、バイパスに対する抵抗感がありませんので、おかしければ即、バイパスを置くことができます。しかもon-pumpですので、かなり楽に感じます。しかし、AMI合併の解離の成績はやはり厳しいもので、目は覚めたので頭はよいのですが、まだLOSが続いており、CVP高くて完全な右室梗塞といった感じです。どこまで心臓が回復してくれるかによりますが、なんとかしたいものです。バイオグルーは初めて使いましたが、10秒程度でガチガチに固まりますので解離腔の閉鎖には安心感があり最高ーですが、吻合部に外から塗布するのは、よし悪し、今回も末梢側は丁寧に縫いましたので、運よくか、バイオグルーのおかげかわかりませんが、針穴からも出血はなかったのですが、中枢側がね、へたくそな吻合でしたので、やや出血してしまい、バイオグルーのおかげで、周りの脂肪ともくっついちゃって、どっから吹いているかよくわからず、、、、おまけにガチガチに固まってしまっているので、追加吻合がやりにくい、、、。
そもそも出血させるのがいけないのだが、やはり、針穴程度の出血にはよいのであろうが、へたくそな吻合の外科的出血には、さすがのバイオグルーも歯が立ちませんね。当り前か、、、バイオグルー塗布する前に、怪しいところは追加しておいたほうがよかったかな、、、ちょっと反省、でも血流再開の前にドライな状態で塗布しないと意味ないしね、、、うーん、まー、そもそも、こんなのに頼っていてはいけないのだな、きれいに吻合することですね。大体において、末梢側はえらい丁寧に吻合するからよい出のあるが、中枢側はどうしても末梢側が固定されているし、気が抜けてしますのでしょうか、吻合の精度がおちると思われる。吻合の方法も、少し検討してみたいと思う。あともう一つ、私は大血管のグラフトはいつもかなりツンツンにするのが好きなのだが、今回もツンツンにしたら、SVGの中枢吻合を置くスペースがあまりにも無くて苦労した。これも反省点、、、バイパスを追加するときは、もう少しグラフトに余裕を持たせるか、もしくは血管径にもよるがややべべリング状にというか、斜めにカットして人工血管の全面だけを広くとるようにすべきと思った。いろいろと自分でやってみると反省点が出てきます。前回の解離のときも両側のAMIを伴っていた症例であり、両側にステント3本入れてもらっていたけど、結果的にポンプ離脱後に、あとからバイパスが必要となり、その反省を踏まえ今回は先にバイパスを置いたのですが、前回はポンプ離脱後ということもあり、パーシャルかんだらえらいことになり、人工血管のパーシャルはかめないということが判明したのでした。
なかなかシンプルな解離に当たらないのですが、今回もいろいろと反省点がありまして、結果的に救命できましたのでよかったですが、また次につなげたいと思います。

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8 コメント

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お疲れさんです。 (Y.I)
2011-09-12 11:28:34
相変わらず、しびれる手術の連続ですね。お疲れさまです。「自分しかいない」という状況で、追い詰められた中、頑張ってますね。感心します、ほんとに。反省もしっかり、ですしね。僕も努力しないと、です。これからも頑張ってください。
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YI先生へ (あぽいち)
2011-09-12 15:18:11
うーん、なんとかやれちゃいましたよ。
これも周りのスタッフのおかげであります。
感謝感謝です。
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感謝の気持ち (Y.I)
2011-09-14 01:03:30
そうなんです。その「感謝」ができない人が術者だと、みんな疲れますね。大切な事ですけれど、なかなかできない・・・・。僕もその気持ちを大切にしていきたいです。
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初めてコメントさせて頂きます (skt)
2011-10-12 11:16:25
先日当院でも似たような症例があり、右のorifice近くにエントリーがあり、ベントールするにも扱いが難しそうだったので外膜をパッチして、IEでやるみたいに中にバイオグルー塗りました。結局AVRもしたのでベントールの方が断端形成いらんので楽なのかもしれませんが、オプションとしてもっていると有用なのかなと思います。
コンプレックスな症例を6時間でやっておられて充分遅くないと思うのですが・・・
また色々教えて頂ければ幸いです。
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sktさんへ (あぽいち)
2011-10-12 19:53:04
いやー、こういう実践的な手技のアドバイス大好きです。ありがとうございます、世の中、たくさんの外科医がいますが、こうしたゲリラ的な手術のときは、その場のひらめきも大事ですが、如何に自分の中に引き出しというか、オプションをたくさん持っているかが大きいかと思います。特に私みたいな凡人には、天才ならひらめきでいけるのでしょうがね。
また、秘伝の手技があれば、教えてください。
ただ、この症例もやはり、遠隔期にはもしかしたら仮性瘤など作る可能性もあり、ほんとは姑息的なのだとわかっていますが、緊急は救命が第一ですから、許してもらいたいです。あとからボスに言われましたが、ほんとは、右のorificeのところだけ弁輪まで切り込んで舌状にした人工血管で吻合すればよかったといわれましたが、しかし、結果がすべてであります。合併症なく3週間目に歩いて退院しましたので、いいでしょう。
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Unknown (skt)
2011-10-13 11:30:38
このRCA orificeまで切り込んで舌状するというのはpartial remodelingみたいなイメージですか?

先生が仰るように
①基本的な技術の積み重ね
②トラブルケースにどう対応するか
が心臓血管外科はとても大切で、カニュレーションだとか吻合もある程度の外科技術があればできると僕は思っているのですが、
困難な状況に直面した時の状況判断や②に関して絶対的な経験を持つのがチーフサージャンの先生方なのだと思います。
そういう意味でも1例1例何か毎回新しいことを得ていかなければならないなと痛感します。
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Unknown (あぽいち)
2011-10-13 13:25:43
先生のいうとおり、手技は良い見本と経験である程度のところまでは誰でも到達すると思います。トラブルケースも2000例ぐらい手術見てれば、大抵のトラブルは経験できると思うので、そのときの対処方法を頭の片隅に詰め込んでおくと。ただ、手術手技よりももっと大事なのは、手術のマネージメントができるかどうかってことかなーと最近は考えています。寝ていても患者さんが手術台で待っていてくれるわけではないし、一人で手術はできないですもんね。特に日本の場合はね。そしてアカデミックなことは私の場合、一番後回しかね。
私も今の一例一例を大事に、次の症例ではもっと良くなるように、進歩するように、そんなつもりで頑張りたいと思います。
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Unknown (skt)
2011-10-13 13:50:54
私もそう思います。

術中のdecision makingにしろ、手術の説明、段取り、全てにおいて術者というのはトータルマネジメントが必要なんだと思います。

アカデミックなこともしたいのですが、手がついてこないと不安になります。また色々と御教授ください。
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