杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

雨を告げる漂流団地

2023年11月26日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年9月16日公開 120分 G

まるで姉弟のように育った幼なじみの航祐(CV:田村睦心 )と夏芽(瀬戸麻沙美)。小学6年生になった二人は、航祐の祖父・安次の他界をきっかけにギクシャクしはじめた。
夏休みのある日、航祐はクラスメイトとともに取り壊しの進む「おばけ団地」に忍び込む。その団地は、航祐と夏芽が育った思い出の家。航祐はそこで思いがけず夏芽と遭遇し、謎の少年・のっぽ(村瀬歩)の存在について聞かされる。すると、突然不思議な現象に巻き込まれ――気づくとそこは、あたり一面の大海原。航祐たちを乗せ、団地は謎の海を漂流する。はじめてのサバイバル生活。力を合わせる子どもたち。泣いたりケンカしたり、仲直りしたり?果たして元の世界へ戻れるのか?ひと夏の別れの旅がはじまる―(公式HPより)


取り壊しの進む団地に入り込み、不思議な現象によって団地ごと海を漂流することになった小学6年生の少年少女たちが繰り広げるひと夏の別れの旅を描いたアニメーション作品です。
可愛らしい絵柄に惹かれて観ましたが、内容はけっこう重かった😓 

二人と共に漂流することになったのは、航祐に好意を持っている令依菜と彼女の親友の珠理、二人と同じサッカーチームの太志と譲です。

夏芽と航祐は同じ団地に住んでいた幼馴染で、サッカーチームの2トップですが、老朽化した団地の取り壊しで引っ越ししてから、夏芽はチームに顔を出していませんでした。引っ越しで家が片付いていないと言う夏芽でしたが別の理由がありました。

作業員の目を盗んで団地に入った航祐、太志、譲は、航祐が住んでいた112号棟に忍び込み、鍵が開いていた航祐の祖父・安じいの部屋で寝ていた夏芽を発見します。寝ぼけて「のっぽくん?」と言った彼女は、のっぽくんとは以前団地に住んでいた少年だと説明します。団地の近くを通りかかった令依菜も、屋上に航祐たちの姿を見かけて珠理と団地に入り合流します。

夏芽が祖父のカメラを持っていたのを見咎めた航祐と喧嘩になった夏芽は煙突に上りますが急に降ってきた雨に足を滑らせ落下しますが、次の瞬間、112号棟は海の上に浮いていて、夏芽も水中に落ちて無事でした。
外界と切り離され、スマホも圏外で途方に暮れる中、夏芽は灯りや、雨水を沸かした湯、持ち込んでいたコーラやお菓子、ブタメンをなどを用意します。皆が幽霊と間違えたのがのっぽくんでした。この現象は以前にも経験していて、でも寝て起きると元の世界に戻ったから大丈夫という夏芽でしたが、翌朝も状況は変わらずに団地は漂流を続け食べ物も少なくなってきます。
屋上で一人見張りを続ける航祐は、時折別の建物が近づいてくるのに気付きます。
近づいてくる建物に飛び移って食べ物を探そうとした航祐を心配して夏芽もやってきますが、ガラス片でケガをしてしまいます。何とか非常用持ち出し袋を見つけて持ち帰り、航祐も皆と一緒に過ごすようになります。
あのカメラは航祐の誕生祝いで安じいからのサプライズの筈だったと言われた航祐でしたが、素直になれず受け取らずに逃げてしまいます。

遠くに自分たちの町の景色が見えて戻れると喜ぶのですが、航祐がのっぽくんの左手の異常に気付きます。自分はこの団地が出来た時らここにいてみんなのことを見てきたと言うのっぽくんの左腕には植物が生えていて、皆驚きながらも彼を受け入れます。

夏芽と航祐は家族のように育ってきたのですが、入院している安じいの見舞いに行った日に、励ますつもりで「お前のじーちゃんじゃない」と言って夏芽を傷つけてしまい、それを聞いていた安じいから「謝ってこい!」と叱られたのが安じいとの最期の会話になっていました。素直に謝ることのできないままの航祐と自分のせいだと気にしている夏芽は以来ぎくしゃくしていたのです。

一向に町に近づく様子のないまま、大きな建物が近づいてきます。それはかつて町にあったデパートで航祐、夏芽、のっぽくんが向かいますが、食べ物は見つからず、おもちゃ売り場での過去の悲しい出来事(両親の喧嘩)を思い出した夏芽は固まってしまいます。その後両親は離婚し、母と団地に引っ越してきた夏芽を可愛がってくれたのが安じいでした。
その時、デパートに他の建物がぶつかり、さらに団地にデパートがぶつかります。
衝撃で傾いた団地の屋上から落ちそうになった太志を珠理と令依菜が助けますが、今度は珠理が落ちそうになります。夏芽が珠理を助けますが体勢を崩して海中へ落ちてしまいます。海の底から現れたモヤのようなものが夏芽の足に絡みついて引きずり込もうとするのをのっぽくんが助けますが、彼の左足首が失われ鉄骨のようなものが剥き出しになります。

頭を怪我して意識が戻らない珠理を見て半狂乱になった令依菜が夏芽を責めます。
独りでいる夏芽を慰めようとした航祐に彼女も本音(両親の不仲で泣いてばかりだったけれど団地に来て安じいに受け入れてもらい航祐と3人で本当の家族のように過ごしたことへの感謝の気持ち)を明かします。

深夜、団地の浸水が始まり、脱出のための準備を始めます。姿の見えないのっぽくんを探しに屋上へとやってきた航祐に、彼は「この海は、本当はぼくだけが来るはずだった。ぼくが君たちを連れてきてしまった。」と言います。
全員で脱出すると決め、浴槽を繋いで筏にして乗り込みますが、残ろうとしたのっぽくんを追って夏芽が戻ってしまいます。

筏に残った5人の前に家族の幻影が見えます。その中には夏芽の母の姿もあり、航祐は夏芽も一緒に帰るんだ!と叫びます。すると近くに遊園地の観覧車が姿を現します。

団地の屋上で、自分のせいでみんながバラバラになった、お母さんだって自分がいない方がいいんだ!と呟く夏芽でしたが、「でも怖い、怖いよ」と。それが本心だよね。

嵐の中、団地に近づく観覧車。5人は協力して団地を引き寄せようとします。
バランスを崩した令依菜を助けたのは突然現れたお姉さん。のっぽくんのように緑色がかっている彼女はこの遊園地によく来ていた幼い頃の令依菜を覚えていると言います。

皆を危険に曝したと責める夏芽に航祐は一緒にいたいんだと叫びます。再び団地と観覧車は離れてしまい、傾いた屋上で身を寄せ合い荒波を耐えた3人の前に島影が現れ、近くに観覧車が浮かんでいるのが見えました。

筏で団地に戻ってきた4人と合流した夏芽たちは、美しい花と緑の島に人影を見ます。降りようとする皆を止めたのっぽくんは別れを告げます。

青白い光に包まれた団地がゆっくりと浮かび上がります。光に包まれた彼らが目覚めると、もとの団地の屋上にいました。

彼女を探しにきた母に本心を話す夏芽。
日常が戻ってきました。112号棟は取り壊されましたが、安じいのカメラで撮った写真にはあの日の海やのっぽくんの姿がありました。

夏芽は自分が必要とされていないのではという不安を抱えながら強がってみせています。それに気づいて心配しながらも素直になれない航祐。二人を結び付けていた団地と安じいを失ったことで、夏芽の中で何かが壊れてしまうのですが、思わぬ事態が再び二人の絆を繋ぎます。のっぽくんや観覧車のお姉さんは取り壊される建物の化身のような存在でしょうか。かつて暮らした、遊んだ人たちを慈しむ気持ちが彼らの中にあり、そんな彼らの行き着く安住の地としてあの島があるのかもしれません。

正直、夏芽より令依菜の方が素直だし、珠理は誰より大人だしで、一番ガキンチョなのが夏芽と航祐でした。二人の心の成長が軸になっているので当たり前ですが😁 

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