中山裕次郎(著) 幻冬舎文庫
雨野隆治は27歳、研修医生活を終えたばかりの新人外科医。二人のがん患者の主治医となり、奔放な後輩に振り回され、毎日、食事をする間もないほど忙しい。責任ある仕事を任されるようになった分だけ、自分の「できなさ」も身に染みる。そんなある日、鹿児島の実家から父が緊急入院したという電話が……。現役外科医が、生と死の現場を圧倒的なリアリティで描く。(BOOKデータベースより)
『泣くな研修医』の続編です。二年間の研修医生活を終えた主人公は、引き続き牛之町病院で上司の岩井や佐藤先生の指導のもと、消化器外科の新人医師として働いています。彼が消化器外科を選んだのは、前作で書かれた、同い年の大腸がん末期患者や高齢の胃がん患者ら、関わった患者さんとの出来事があったから。何もできなかった無力さがあったからこそ、一人でも多くの患者を救う医者になろうと奮闘しますが、三年目の新米医師にはまだまだ超えられない壁が立ち塞がります。
初めて受け持った後輩の研修医・西桜寺凛子の手前、情けない姿を見せまいと頑張るけれど、逆に失敗してしまうことも度々。
安易に「大丈夫」と言ってはいけないのは今や医療人の常識ではありますが、それでも患者側にしてみたらその言葉に縋りたくなるのよね
今作では、大腸がん患者の水辺さんとの関わりを通して成長する姿が見られます。
佐藤玲先生は相変わらずクールで腕も確かで、超カッコいい女医さんです。後輩の凛子ちゃんも、外見や話し方に似合わず聡明で素直な人柄で、これはもう佐藤先生の後継者っぽいキャラ それにしても二人とも美人過ぎだぞ
前作で合コンで知り合った彼女が雨野にとってどんどん大きな存在になっていくのですが、真面目な彼の心を受け止め癒してくれる優しい女性として描かれていました 彼女にとって雨野は母性をくすぐられ守ってあげたくなる人なんですね
ほぼ病院に泊まり込んでいる雨野は、実家の母から父親が病気だ、手術したとの連絡を受けても忙しさを理由に帰ろうとしません。新人だからとか、受け持ちの患者がいるからという理由以外に、彼は肉親の病気という現実から目を逸らしたかったのかもと思ってしまいました。 いつまでたっても子供にとって親は元気で大きな存在なのですから、老いや死は考えたくないものなのです。
彼女や佐藤先生に背中を押され、やっと見舞いに帰った日に父は急変し、言葉を交わすことなく帰らぬ人となります。
医者として患者の死を看取るのと肉親の最期に立ち会うのとは全く違って、DNR(Do Not Attempt Resuscitation)の同意すらできないまま急変した父の最期を見守るしかなかった場面は、とてもリアルな描写です。医師として頭では理解できていても、感情が追い付かないのです。き
息子が医者として立派にやっていることを誇らしく思いながらも、本当は顔を見せて欲しいと思っていたことを母から聞いて雨野は号泣します。
まさに後悔先に立たず。でもこのことが彼をより成長させていくのでしょう。そうでなくてはお父さんも浮かばれないですものね。
まだ出ていませんが続編でより成長した雨野と出会えたら良いな~~