AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

股関節部痛に対する小殿筋深刺と、大腿直筋刺針の工夫 Ver.1.2

2010-12-28 | 腰下肢症状

1.股関節症に対する私の従来の治療法

股関節症は、股関節変形を基盤とした、股関節周囲筋の緊張による痛みである。いや痛みというよりは、股関節がギクシャクし、時に外殿部側面の深部に強いコリを自覚することが多い。
これまで私は、このたぐいの患者に対して次の施術を行い、良好な結果を得ていた。

1)側殿部の圧痛:側臥位にての中殿筋深刺や股関節裂隙深刺、5分間置針。
2)鼠径溝部の圧痛:大腿外旋、外転位(パトリックテスト時の肢位)にて、鼠径溝から大腿内旋筋群刺。5分間置針。

2.小殿筋深刺時の体位工夫大

多数の症例では上記施術で間に合うが、ときに小殿筋刺が必要な場合があることが分かってきた。
小殿筋の過緊張は、患者本人は体質的な一部と認識し、「股関節が硬い体質」と思い込んでいる者がいる。自分の足の爪が切れないという者がおり、確かに上体前屈動作が十分にできない。側殿部が非常に凝ってつらいと訴える者もいる。

解剖学的には中殿筋の深部にほぼ一致して小殿筋があるわけだが、側臥位にての中殿筋刺の深度をさらに深く刺針しても、独特の得られにくい。

そこで刺針体位の工夫だが、ベッドに後向き座らせ、次いで横座りにさせて、側殿部の圧痛を探ることが重要になる(横座りできない者は、正座でもよいが治療効果は劣る)。横座りの体位は、股関節に対して大腿骨が、外転・屈曲・外旋していると思う。この場合、中殿筋や小殿筋は、本来弛緩している筈だが、大腿骨頭が多少ずれるためか、あるいは上体を支えているためか、この姿勢にて上前腸骨棘から1~2横指仙骨に寄った部の圧痛をめがけて、やや下方(ベッド面方向)に直刺すると、深い処で強い筋緊張を感じ、患者は「つつらい処に当たった」といって喜ぶ。

変形性股関節症の者に対する、こうした施術は、しょせんは対症療法だが、治療効果は1週間~1ヶ月程度は持続するので、十分価値があると思う。

3.大腿直筋刺針の工夫

鼠径部が痛むという患者においては、鼠径部圧痛点の所在により、大腿内転筋群の痛みか、大腿直筋の痛みかを判断する。大腿内転筋群の圧痛に対しては、いわゆるパトリック肢位にして鼠径部の圧痛点に刺針する。

大腿直筋の痛みの場合、立位で大腿を持ち上げる際に痛むと訴えることが多いようだ。この場合には、踏み台を用意し、下図のように患側の脚を踏み台にのせ、鼠径部圧痛点に手技針すると効果的になる。


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