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AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

下歯痛・耳鳴に共通する一本針伝書「頬車」の考察

2025-05-28 | 経穴の意味

  一本針伝書の下歯痛の針と、耳鳴の針はよく似ている。その相違点を調べていくことにする。

1.下歯痛

1)下歯痛に対する裏頬車水平刺(「秘法一本針伝書)
 
東洋療法学校協会の頬車は、下顎角の前上方で歯を噛み締めると咬筋が緊張し、力を抜くと陥凹するところにとる。 しかし一本針での頬車は、下顎骨の裏側縁にとり、下顎骨裏面に沿って刺入する。したがって、下歯痛の一本針は標準的な頬車ではないので、これを「裏頬車」と称することにする。

①体位
痛む歯を上にした側臥位。上歯と下歯との間に手拭いをまるめて噛ませるようにする。

②取穴
下顎骨隅を指でナデ上げるようにする。初めは軽く、除々に強くなでると骨の欠け目がある。上にゴリゴリした筋肉様のものがある。この下の陷凹部を穴とする。

③刺針
針尖が口吻(こうふん)(=口元)の方向に向くようにし、針尖を下顎骨中(内に非ず、外に非ず、骨中を標的)に刺し透すような心得で刺入。深度は1寸~1.6寸位。(中略)痛む歯に針響あれば手をもって合図させる。響いたならば除々に抜除し、後揉捻しない。
☆注目すべきは、「耳の中に針響がある場合には針尖を下方に向ける」という一文である。この考察は耳鳴の一本針の項で説明する。


2)裏頬車水平刺の意味
   
通常の頬車は、下顎骨の表層を取穴するのに対し、素霊は下顎骨の裏側に入れる。頬 車水平刺は内側翼突筋中に刺針することで、下歯槽膿神経刺激をしている。「骨の欠け目」というのは、下顎骨と内側翼突筋のつくる陥凹だろう。

下顎孔から骨中のトンネル中を走りつつ、下歯に知覚神経の枝を出し、最終的にオトガイ孔から下顎骨表面に出る。このオトガイ孔部を刺激することのできる部分は裏頬車など狭い範囲に限定され、ここ以外の下歯槽神経は骨トンネル中にあるため、針で直接刺激できない。たとえば大迎(下顎角の前1寸3分で顔面動脈拍動部)からでは刺激できない。


2.耳鳴


1)「一本針伝書」の耳鳴りの針頬車水平刺
   
耳鳴りの一本針は、下歯痛の一本針と同じく裏頬車水平刺のことをさす。技法と深度も下歯痛と同じだが刺針方向が異なる。

下歯痛の治療は、患側上の側臥位でタオルを咬ませ、頬車から下顎骨内壁に沿うように水平刺すると下歯槽神経を刺激し、針響は下歯に至るというもの。
耳鳴りの治療は、まず下歯痛の一本鍼をして針響を下歯に得た後、今度は針先をやや上方(耳介方向)に向け、1寸ほど刺入するというもの。すると耳中に響きを感ずる。

2)「耳鳴の一本針」の考察

耳鳴に対する一本針である頬車水平刺の施術は、顎二腹筋後腹刺激になると考えた。

顎二腹筋後腹の起始は側頭骨の乳突切痕(乳様突起裏側の陥凹)、停止は舌骨であり、顔面神経支配。下顎角あたりの顎二腹筋後腹にはトリガーポイントがあり、このトリガー活性化は耳鳴りと関係があるという見解が散見できる。


3)顎二腹筋後腹筋腹への刺針


一本針伝書にみる頬車は水平刺しているが、顎二腹筋後腹筋腹際に刺すには直刺が適している。仰臥位で、顎を上げて健測に顔を向け、指先で顎下部を軽く押圧してスジバリを触知して刺針。寸6#2で1~2㎝刺入する。


一本鍼伝書の症状別治療の区分は大雑把なものだが、耳中疼痛と耳鳴は個別に説明している。耳中疼痛は中耳症状で、痛みは鼓室神経(舌咽神経の分枝)興奮によると私は推定しているが、頚筋や顎関節由来でもその関連痛として耳中疼痛は生ずるだろう。


4)蝸牛神経と連絡している脳神経


耳鳴は内耳症状であるが、針灸で治療可能なのは、いわゆる体性神経姓耳鳴で、具体的には顎関節症や頸部筋痛症など筋や関節運動により引き起こされたものになると思われる。ここでは顎二腹筋後腹のトリガーポイント活性による耳鳴として把握している。

難聴・耳鳴は蝸牛神経症状である。蝸牛神経は、脳幹レベルで種々の脳神経と連絡しているので、三叉神経・顔面神経・迷走神経などを刺激したりしても、耳鳴治療として効果があるかもしれない。


秘法一本針伝書における柳谷風池と柳谷完骨の考察

2025-05-27 | 経穴の意味

 柳谷素霊著「秘法一本針伝書」に収録されている眼疾一切の針「柳谷風池」と耳中疼痛の針「柳谷完骨」の図は非常に似ているが、詳しくみていくと別物であることがわかる。柳谷風池は、乳様突起の下後縁から対側眼窩方向に刺入する。これに対して柳谷完骨は、乳様突起の下後縁を刺入点とし、胸鎖乳突筋停止部をくぐるように耳孔方向に刺入する。両穴間の相違について説明する。

1.風池

1)位置と刺針

東洋療法学校協会教科書(以下、標準と記す)の風池の位置は、乳様突起下端と瘂門穴との中間で後髪際陥凹部にとる。ただし瘂門は項窩の中央、C2棘突起上方の陥凹部。後髪際を入る5分の陥凹部にとる。
一方、柳谷風池は、乳様突起後方に軟骨様の小突起(三角形で尖端下方に向く)中で、顎を上げると凹陥のある部にとる。針尖は 三角形の小隆起下を通過させ、対側の眼窩の方向にもっていくるような心得で5分~2寸刺入。側頭部または眼底に針響を誘導する。

2)柳谷風池の考察と適用

柳谷風池は標準風池に比べ、3㎝ほど外方になり、ほぼ標準完骨の位置になる。標準風池と柳谷風池はともに頭板状筋刺激になると思われる。また両穴とも対側の眼窩に向けて深刺すれば、大後頭神経刺激になる。大後頭神経刺激という観点からは天柱刺針の目的と同様の意味になる。以上の推測から次のことがいえるだろう。

①頭板状筋は、胸鎖乳突筋とともに、頭部を左右回旋する作用がある。

②大後頭神経痛の治療に用いる。大後頭神経痛は症状であって、真因は、頭半棘筋緊張にあり、本筋緊張によりC2後枝が興奮した結果である。したがって診断名は緊張性頭痛になる。

③大後頭神経刺激では、大後頭神経刺激→C2神経根→三叉神経脊髄路→三叉神経と刺激が伝わり(=大後頭三叉神経症候群)、三叉神経痛とくに眼精疲労(一本針伝書では眼病一切とあるで用いられる。


2.完骨

1)位置と刺針

標準完骨は、乳様突起基底部の後下方の陥凹部に取る。天柱と並ぶ高さ(C1C2棘突起間)になる。
柳谷完骨は、側臥位で脱力開口。乳様突起尖端後側、胸鎖乳突筋付着部で、指頭をここに付着させながら、頭をやや後方に曲げると、乳様突起と胸鎖乳突筋の付着部が陥むところにとる。
側臥位で脱力開口。耳孔に向け、乳様突起の下をくぐらせるように刺入。吸気時に留め、呼気時に刺入。寸6#2~#3で1寸~1寸3分刺入。、針尖がグリグリしたものに当たったところで留め、弾振して気の往来を待つ。耳の奥に響いたら、呼気にゆっくりと抜針する。針響を好む患者では、手技で響きを持続させる。


2)柳谷完骨の考察と適用

乳様突起の浅層には胸鎖乳突筋停止があり、乳様突起の奥に隠れるように顎二腹筋後腹の起始(側頭骨乳突切痕)がある。乳様突起後下縁の胸鎖乳突筋下から耳孔方向に刺入し、針先を顎二腹筋後腹停止部にもっていく。


顎二腹筋後腹の機能は、一言でいうならば開口時の下顎骨の位置を正常に保つことにある。顔を上に向けると、閉口しづらくなるのは顎二腹筋後腹が下顎骨を後方に引っ張るからである。顎二腹筋のトリガーポイント活性すると、耳鳴・難聴、耳閉感が生ずるとされる。
※顎二腹筋には前腹と後腹があるが、耳症状の治療として重要なのは後腹の方である。なお前腹への施術は梅核気の治療に用いられることがある。

 

3.柳谷風池・柳谷完骨と標準位置の一覧表


 


三焦・心包とは何か? ver.2.0

2025-05-21 | 古典概念の現代的解釈

1.五臓五腑あるいは六臓六腑?

古典では陰陽五行説が支配しているので、内臓は五臓五腑に分別する。五臓とは肝・心・脾・肺・腎、五腑とは胆・小腸・胃・大腸・膀胱である。ところが経絡の正経は12経あり、それぞれに所属臓腑があるので、五臓五腑ではなく六臓六腑として把握される。臓には心包が、腑には三焦が加わるのである。

三焦と心包は現代医学にない概念であり、解剖してもその実体がないことから、これまで心包と三焦は何を意味するものか、大いに議論されている。心包とは心嚢を指し、三焦とは腸の大網を指すという見解もあるが、私は、心包の機能とは心臓を動かす力であり、三焦とは体温を生む機能だと考えている。

その理由を記す。


2.心包・三焦の機能は生きていることのバイタルサイン

生者と死者の臓器は基本的に同一である。ただ生者はそれが機能しており、死者は機能していない。では死者を死者とする所見は何だろうか?それは心停止と体温低下、(さらに瞳孔拡大)であることは今も昔も変わることがない。すると生者にあって死者にないものを探せば、心臓を動かす力が心包の機能であり、体温を生む力が三焦の機能であることが自ずと知れてくるのである。換言すれば、心包と三焦の機能停止が死となる。生者は六臓六腑が機能し、死者は五臓五腑になるともいえるだろう。


 

3.手に属する経絡と足に属する経絡

上左図の高橋晄正医師考案の図は、手に所属する臓腑、足に所属する臓腑の区分についての示唆を与えてくれる。体幹内臓を横隔膜を境として胸部内臓と腹部内臓に区分されているが、この2つは相似形になっている。体幹内臓を立体的に描いているのは手に所属する6臓腑で、水色で簡略的に示しているのが足に属する6臓腑である。

12経絡の何が手の所属で、何が足の所属なのは、明確な回答がないようだが、この図を見るとそれも理解できる。手に属する臓腑は、生命活動工場設備そのものである。工場稼働スタンバイの状況にあり、三焦が機能して地熱発電所(=ボイラー)の温度が上がり、心包が機能してモーターを回転させ工場を作動させる。


その状態になった後に足所属の臓腑が活躍して工場が稼働する。外部から原材料を運び(脾・胃)、加工して製品をつくる(肝・胆)。その過程で産業廃棄物(腎・膀胱)は廃棄される。これを続けることで生命活動が営まれる。


4.ゴールドを火で溶かして、この養分を四肢末端まで行き渡らせる

ところで、この生命活動工場は、何を製造しているのだろうか。これも五臓色体表から導き出すことができる。
胸部臓腑は、心(火)・心包(火)・肺(金)であり、腹部臓腑は、小腸(火)、三焦(火)、大腸(金)である。
これを高橋晄正医師の図に当てはめると、胸部内臓・腹部内臓とも、るつぼに入れた金(ゴールド)を火で溶かし煮詰めている場面が思い浮かぶ。このゴールドは身体隅々にまで養分として行き渡るのだろう。あたかも古代中国の錬金術さらにその背後にある道教思想まで想いをはせることができる。
 
金丹とは?
中国道教で説く仙人になるための薬。金丹の金は、火で焼いても土に埋めても不朽である点が重んじられた。我が国ではお伊勢参りの土産物として、今日でも萬金丹とよばれる漢方の丸薬が販売されている。トイガンで使うBB弾ほどの球状で黒く、
少量の金箔(?)をまぶしている。ちなみに萬金丹(マンキンタン)は、アンポンタンの元ネタ。


第10回針灸奮起の会実技セミナー  現代針灸からみた「秘法一本針伝書」 のご案内(終了)

2025-05-20 | 講習会・勉強会・懇親会

A.本セミナー参加のお誘い
 
「秘法一本針伝書」は、柳谷素霊が行った針灸局所治療を紹介している。ただし"伝書”とは、昔から伝承された秘技という意味もあるから、必ずしも素霊自身が見出した治療とは限らないかもしれない。
本書のような局所治療法は、現代針灸派にとっても興味深いが、類書と同様、本書も治療法の根拠を示していない。ゆえに針灸初心者は、素霊がどうしてこのような治をするのか理解できないだろうが、一定の針灸臨床経験があり、すでに自分のやり方を確立している者にとっては、素霊の方法と比較することで、いろいろな点を発見できるだろう。要するに者によって本書の価値は変化するのである。そこで過去のブログで、なぜ素霊がこうした内容を記したのかを推察するとともに、現代針灸から検討を加えてみた。今回のセミナーは、その集大成といえる。とはいえ古い書なので現代針灸的観点からすれば納得できない点も多々あった。素霊の示した治療法は二十症状に対するものだが、これでは余りにも少ない。そのため最小限と思える☆印の症状を加え、それぞれに私の見解を示すことにした。 
    本セミナーは、実技指導を中心としたものであり、受講生12名に対し指導3名としています。受講生は2人一組で6ペアとなり、それに指導者3名を配置しますので、非常に行き届いた実技指導となります。なお指導者は、私以外に現代針灸実力派である小野寺文人先生、岡本雅典先生にお願いしています。


B.セミナーの要項


1.会場:
国立市中1丁目集会所:東京都国立市中1丁目10-34       
   JR中央線国立駅、南口下車徒歩3分

2.開催時間 午後4時~6時30分頃 
3.定員:各回とも12名、 見学は2名以内。(定員になり次第〆切)
4.日程(基本的に第2第4日曜) 
  残席は5月17
日現在の状況です。
 第一回 3月9日(日曜)  B.腰下肢     終了しました
 
第二回 3月23日(日曜)   C.膝痛・肩関節痛・肩こり     終了しました
 第三回 4月13日(日曜)   D.体幹内臓     終了しました
 第四回 4月27日(日曜)   A.五官科①(歯科、眼科)     終了しました。

 第五回 5月18日(日曜)   A.五官科 ②(鼻科、耳科、咽喉科)  終了しました
  実技講習会後に、打上げ・兼小野寺文人先生(下写真下段中央)の誕生日会を実施しました。53歳となりました。
上段の左から二人目は、桑原正敬先生で、四国の徳島から遠路はるばるほぼ皆勤で参加されている方です。徳島と東京を一泊二日で往復すると、
御夫婦で13万円かかるということでした。お一人で上京すればもっと安くできるのに、と言うと、奥様は東京行を楽しみにしていると言っていました。まあ仲の良いのは結構なことです。

    

写真左は、岡本雅典先生、右は笠貴乃先生

5.会費:一般8000円、学生7000円、見学4000円。当日払い。領収書発行します。
6.お持ちいただくもの 
 各回オリジナルカラーテキストを配布。針灸実技用の道具類も支給。
 ②筆記用具はご持参ください。
7.懇親会
  講習会後、駅前の居酒屋にて懇親会実施。 飲食費は3000~3500円程度(当日受付)
8.参加お申し込み方法
      参加御希望の方は、①参加希望会のテーマと開催予定日、②氏名、③住所、④電話、⑤Eメールアドレスを、Eメールまたは電話でお伝えください。
      折り返しご連絡を差し上げます。お申し込み〆切は各回とも開催前日午後3時頃までとします。ただし参加者12名に達した場合、その時点で受付終        了します。各回ごとに見学者は2名以内
です。
  連絡先:あんご針灸院 似田 敦(にただあつし) 
   電話042(576)4418 
   メールアドレス nitadakai825@jcom.zaq.ne.jp

 

C.セミナーの概要  ( )内はテキストページ数
  ☆の症状は、一本針伝書になく、私が独自に取り上げた治療法になる。

A.五官科(27ページ)

 第1章      上歯痛の針(客主人)
 第2章      下歯痛の針(頬車)
 第3章     ☆顎関節症(下関、頬車)、舌痛(上廉泉)、歯肉痛(歯肉局所)
 第4章      鼻病一切の針(印堂)
 第5章         耳中疼痛の針(完骨)
 第6章      耳鳴の針(頬車)
 第7章       眼疾一切の針(風池)
 第8章       咽の病の針(合谷)

B.腰下肢痛(11ページ)

 第9章   下肢後側痛の針(外大腸兪・坐骨神経ブロック点)<座骨神経痛>
 第10章   下肢外側の病の針(環跳)
       ☆下肢内側の病の針(陰包)
 第11章   下肢前側の病の針(居髎)
 第12章  ☆腰重と下肢不定症状の針(仙腸関節刺針)<仙腸関節機能障害>
 
C.膝関節痛・肩関節痛・肩甲上部コリ・肩甲間部コリ(12ページ)
 第13章  ☆膝痛の針(内外膝眼、鶴頂、鵞足、委中)
    第14章   五十肩外転制限の針(肩髃、肩髎、肩井斜刺)
 第15章  ☆結帯動作制限の針(天宗と肩貞) と結髪動作制限の針(膏肓水平刺と臑兪)
 第16章   肩甲間部のコリの針(モーレー点) 
 第17章   肩甲上部のコリの針(肩井) 

D.体幹内臓症状(13ページ)

 第18章   排尿痛の針(中極・関元)
 第19章  便秘の針(左四満外方5分)
 第20章  上実下虚の針(崑崙)
 第21章  五臓六腑の針(華陀夾脊)

 

※参考:今回セミナーの元ネタとなった「AN現代針灸治療」ブログ

第1 上歯痛の鍼(客主人) 
第2 下歯痛の鍼(頬車)
   ①2022/09/31:歯のくいしばりに対して顎二腹筋後腹への運動針が有効な例
   ②2023/01/17:顎関節症の針灸治療 改訂2版
   ③2023/05/23:歯周病に対する局所刺針の方法と女膝の灸 ver.1.8
   ④2024/07/13:上歯痛の針灸治療ver.2.0
   ⑤2024/08/01:下歯痛の針灸治療ver.1.2        
   ⑥2024/08/06:三叉神経第Ⅲ枝関連の顔面骨孔への刺針 
   ⑦2014/09/14:舌痛症の針灸治療 ver.1.2
第3 鼻病一切の鍼(印堂) 
   ①2017/07/19:嗅覚障害の針灸治療
   ②2002/12/06:慢性副鼻腔炎の針灸に上星の灸とマイクロライド長期投与
   ③2022/12/14:慢性副鼻腔炎と花粉症 ver.1.3    
第4 耳鳴の鍼(頬車) 
第5 耳中疼痛の鍼(完骨) 
   ①2006/03/15:耳鳴治療と舌咽神経ブロック針
   ②2010/07/16:顎関節症由来の耳鳴りに対する針灸①
   ③2013/07/24:耳鳴りの治療改訂版 その2
  ④2015/01/30:新・耳鳴の針灸治療 鼓室神経刺激と顔面神経下顎縁枝刺激 ver.1.1
   ⑤2017/10/10:耳鳴りの針灸治療まとめ2017年版
   ⑥2021/09/20:質問紙を使った耳鳴分析と鍼灸の奏功例 ver.1.1
   ⑦2023/02/11:難聴・耳鳴りに対する側頸部治療穴の理解 ver.1.2
第6 眼疾一切の鍼(風池) 
   ①2011/11/09:緊張性頭痛に対するトリガーポイント治療の整理 その3
   ②2012/10/14:緊張性頭痛治療に効果的な天柱・上天柱の刺針体位 ver.1.2
   ③2015/01/14:調節性眼精疲労に対する針灸治療の考察
   ④2021/01/08:眼窩内刺針が刺激対象とするもの ver.2.2
   ⑤2021/10/08:眼精疲労の鑑別と針灸治療
   ⑥2023/01/20:私の行っている眼窩内刺針の方法 ver.1.5
第7 喉の病の鍼(合谷)
   ①2015/03/17:大椎・治喘・定喘の効能
   ②2021/07/26:咽頭・喉頭症状に対する現代鍼灸
   ③2021/09/09:咽喉異常感症(咽頭神経症)の針灸治療・手技療法ver.2.0
   ④2023/01/13:咳嗽の針灸治療
   ⑤2023/08/18:喉頭症状に対する前頸部の針灸治療点の整理 ver.1.1
第10 下肢後側痛の鍼(外大腸兪・坐骨神経ブロック点)
   ①2006/03/10:腰下肢症状の診断
   ②2020/10/11:腰部神経根症に対する大腰筋刺針と坐骨神経刺針ver.1.3
   ③2021/03/03:「秘法一本鍼伝書」②<下肢後側痛の鍼>の現代鍼灸からの検討ver.1.1
   ④2023/12/19:居髎と環跳の位置と臨床運用
第11 下肢外側の病の鍼(環跳) (「下肢内側の病の鍼」含む)
   ①2006/07/11:殿部~下肢外側痛の病態と針灸治療(とくに小殿筋筋痛症)
   ②2017/05/05:殿部深部筋のMPSと坐骨神経痛
   ③2018/08/13:「秘法一本鍼伝書」③<下肢外側の病の鍼>の現代鍼灸からの検討
   ④2019/06/08:大腿外側痛の病態把握と針灸治療
   ⑤2021/07/11:<下肢内側痛の鍼>の現代鍼灸からの検討 ver.2.1
第12 下肢前側の病の鍼(居髎) 
   ①2010/12/28:股関節部痛に対する小殿筋深刺と、大腿直筋刺針の工夫 ver.1.2
   ②2015/08/23:変形性股関節症の針灸臨床 ver 1.5
   ③2018/06/04:大腰筋性腰痛の症状と鍼治療 ver.1.1
   ④2019/03/18:「秘法一本針伝書」①<下肢前側の病の鍼>の現代鍼灸からの検討ver.1.1
第16 四十腕五十肩の鍼(肩髃、肩髎) 
   ①2006/03/11:肩関節痛に対する巨骨斜刺+肩前斜刺
   ②2012/10/09:五十肩で上腕外側痛を生じる理由と治療法
   ③2013/05/12:肩関節痛に対する肩髃から肩髎への透刺(柳谷素霊の方法)
   ④2018/08/21:「秘法一本鍼伝書」⑤<上肢外側痛の鍼>の現代鍼灸からの検討ver.1.2
   ⑤2018/08/21:「秘法一本鍼伝書」⑥<上肢内側痛の鍼>の現代鍼灸からの検討
   ⑥2022/01/07:五十肩の鍼灸治療を苦手とする理由ver.1.1
   ⑦2024/05/11:肩中兪刺針の針響 ver.1.2
   ⑧2024/07/26:肩関節外転制限の針灸治療法ver.2.0
   ⑨2024/07/27:結髪・結帯制限の針灸治療理論
   ⑩2024/07/28:結髪・結帯制限の針灸治療技法
第17 肩甲間部のコリの鍼(缺盆) 
第18 肩甲上部のコリの鍼(肩井移動穴)
   ①2006/06/09:頸神経叢刺激点としての天窓
   ②2006/06/09:腕神経叢刺激点としての天鼎・肩中兪
   ③2024/05/11:肩中兪刺針の針響 ver.1.2
   ④2010/07/15:肩甲骨上角のコリに肩外兪運動針、肩甲骨部~肩甲上部のコリに附分斜刺
   ⑤2012/10/10:肩甲骨裏面に自覚するコリの正体と刺針法 ver.2.0
   ⑥2017/02/07:肩甲上部と側頸部のコリへの解剖学的針灸と坂井流横刺
   ⑦2022/02/15:膏肓穴についてver.1.2
   ⑧2024/11/01:柳谷素霊著、「秘法一本針伝書」肩甲間部のコリの針の考察ver.1.4
第13 急性淋病の鍼(中極・関元)p 32  
   ①2023/08/14:切迫性尿失禁が中髎の灸1回で改善した自験例(69才、男)
   ②2023/11/25 :尿路結石の疝痛は、側臥位での外志室深刺が効く理由 ver.1.1
   ③2024/11/03:「秘法一本鍼伝書」にみる急性淋病の針治療について
第14 実証便秘の鍼(左四満外方5分)p 34
          ※臍下2寸に石門をとり、外方5分に四満をとる。
第15 虚証便秘の鍼(左四満外方5分)p 36
   ①2013/09/08:痙攣性便秘と各種下痢に対する針灸治療
   ②2024/11/05:成書にみる便秘の局所治療穴
第19 上実下虚証の鍼(崑崙)
   ①2017/02/24:冷え性に対する針灸治療ver.3.3
   ②2022/12/15:足冷の針灸治療理論とテクニックver.1.1
   ③2024/11/19:柳谷素霊「秘法一本針伝書:上実下虚の針の考察
第20 五臓六腑の鍼(華陀鍼法)(脊柱棘突起外方5分
   ①2011/01/09:膻中穴圧痛の古典的意味と現代医学的意味 ver.1.2
   ②2018/05/25:腹診に関する現代医学的解釈 ver.2.0
   ③2019/12/10:心下痞硬・胸脇苦満の病態生理と針灸治療
   ④2020/12/10:柳谷素霊の「五臓六腑の針」と私の刺針技法の比較
   ⑤2023/08/30:胃倉・魂門の刺針目標
   ⑥2023/10/04:柳谷素霊著「秘法一本鍼伝書」五臓六腑の鍼の解説 ver.3.0
第8  上肢外側痛の鍼(肩髃)p22  →「四十腕五十肩の鍼」参照
第9  上肢内側痛の鍼(肩貞)p24   →「四十腕五十肩の鍼」参照


鼻と陰茎のトリビア ver.1.1

2025-05-13 | 耳鼻咽喉科症状

1.海綿体構造があるのは鼻と陰茎だけ
 
昔、フェリックスマン著 「 針の科学」を読んでいて、今でも記憶に残っている記載がある。「鼻甲介と陰茎は、人体における海綿体構造という共通点がある。海綿体構造はこの2カ所以外になく、これは鼻と陰茎が何らかの共通性があることを示唆している」との内容である。

鼻甲介は海綿体構造なので、充血して体積が増えると鼻閉となり鼻呼吸しづらくなる。
ペニスも海綿体構造で、勃起時には陰茎内に血液が充満し、その体積は7倍程度になる。
ただ当時はインターネットといったツールもなく、それ以上の知見は進捗しないまま、30年以上が経過した。


2.副鼻腔内の空間にはNO(一酸化窒素)が多く、NOは線毛運動活発化させる。

 
最近になりNOが人体に与える反応について分かってきたことがいくつかある。

①副鼻腔内の気体組成は、NOが多く、通常の大気の組成とは大きく異なる。
②NOは血流増加時、血管の内皮細胞から放出され、副鼻腔内の線毛の活動を活発化さる。そのことで副鼻腔内の痰や異物を外に出す働きがある。
ちなみに副鼻腔炎の現代針灸治療理論は、鼻口腔・副鼻腔を知覚神経支配している三叉神経第1枝を刺激する目的で、攅竹・印堂・挟鼻などにチクリとした刺激を与えることで、交感神経を興奮させるという内容だった。交感神経興奮では、血管内腔が細くなり血流低下する(それにより鼻閉改善や鼻汁量軽減する)ので、NO放出条件と一見矛盾するようだが、血流増加させるには一度血流を止める状況をつくり、それを開放するれば一気に血流増加させることができる。つまり攅竹・印堂・挟鼻刺激により、副鼻腔内の線毛運動の活発化が期待できる。


3.NOが全身の血管に与える作用と勃起作用

 
①NOは、血管を若く保ち、動脈効果を予防して、血圧を安定させる作用がある。

②性的興奮により勃起が生ずる。するとペニスの血管内皮細胞から、NOが放出される。勃起の機序は複数の化学物質が連鎖的に作動するが、勃起起動スイッチといえるものがNOになる。


4.鼻の大きさとペニスの大きさは関係するか? 

 
京都府立医科大学の研究チームは、126人を対象にした研究結果で、鼻の大きさ(左右内眼角の中央から外鼻孔までの長さ。鼻の高さは関係ない)と、通常時の伸ばした陰茎サイズに相関関係があることを明らかにした(2021年2月発表)。

しかし鼻の長さと勃起時のペニスの大きさとの関連性は調査していない。また鼻が長い者は、体格が大きいともいえるので、身体のいろいろなパーツも大きいだろう。
 
余談:以前、医学統計の講習会に参加したことがあり、その折の講師の話。ある書道の先生は、子供の文字の上手さと靴の大きさが相関することを発見して狂喜した。しかし冷静になって考えると、靴の大きさと年齢は正比例するから、年長になるほど文字が上手になることは、当たり前のことだった。
 


郡山七二と小山曲泉の眼窩内刺針の相違点と私のやり方

2025-05-01 | 眼科症状

1.郡山七二の眼窩内刺針(「針灸臨床治法録」天平出版、昭和48年刊より)

現在、「針灸臨床治法録」は絶版で、古書にしてもなかなか入手しづらいので、同書の内容をできるだけ忠実に記述することに努めた。


1)その発端     


郡山七二(1893-?)の眼窩内刺針という発想は大正8年から始まった。倉内末正医師の指導を受け、また動物実験(兎、犬、猫)を使って眼窩内刺二十数回の実験第一歩を踏み出した。その間なんらの副作用はなく、技術的にも大した支障もなかった。この結果を受け、大正10年に初めて人体に採用した。その後、幾人かの患者に実施して、ある種の病気にある程度奏功することも判明したので、大正13年8月、毎年夏に行っていた実地講習会において、この眼窩内針法を初めて発表した。

当時の針灸師の反響としては、奇抜なやり方だとして、その真偽さえ疑われたのだが、次第に行う者が増えていった。


2)眼窩内刺針の理論と刺針上の注意

 
眼球には4種の末梢神経が通過ないし所在しており、また眼球の運動を含む数個の筋群その他がある。もしこの眼窩内に針を刺入できたら、ある種の疾患に、ある程度奏功しそうだと考えた。

眼球と眼窩の間には、小指の先が入るほどの間隙がある。 この間隙内には筋・脂肪・結合識など柔軟な組織があり、針は別段の抵抗もなく案外容易に入る。ただし2~3㎝くらい張った時、骨に突き当たる場合が多い。これは上眼窩なら針尖が上の、下眼窩ならば針尖は下の眼窩壁に突き当たっていることによるから、ちょっと針を戻して、上手に操作しつつ静かに入れてやると、針が眼球の壁に沿って少し彎曲しつつほとんど無感覚、無抵抗で入っていく。上眼窩には割合入れやすいが、下眼窩は眼窩壁面に凹凸が多いので、余程練習しないと深刺は難しい。
針は1~2番針の、なるべく柔軟なものがよい。(ステンレス針などは硬い)。針が眼球内に入ることは避けるべきことである。郡山は、針先が眼球に触れた時の感覚を動物実験でたびたび実験してみたが、何となく針先がゴム製品に触れている感じで、軽い抵抗を感ずるのですぐ分かる、と記していた。


3)刺入部位

 
だいたい3部位で事足りる。疾患に応じて、内眦(ないし 内眼角)部、中央部、外眦(がいし 外眼角)のいずれかに限定して選択する。中央の針は、施術数十分後に紫色の瘢痕を生ずることがある。上は眼窩上動脈、下は眼窩下動脈が中央を貫通していることが原因だと考えた。その後はこれらの動脈を避けて刺入するようになってから、その種の失敗は一回も犯していない。

上眼部でも下眼部でも、中央部の針は1㎜ほど内または外から針を入れ、2㎝ほど深部で神経に触れる角度で入れてやると、血管に針が刺さらぬので出血しない。

          

4)主な適応症


①眼精疲労:もっともてきめんによく効く

②ノイローゼ
 すぐれた精神安定作用がある。刺針点は、前記の眼精疲労とともに、内眦部に1㎝ほど1本刺すだけでよい。
③三叉神経痛
 第一枝痛:前頭神経痛に有効。上眼窩中央の針で2㎝刺入。前頭神経に当たれば、前頭部に響きを感ずる。
 第二枝痛:下眼窩神経痛には、下眼窩中央の針で、2㎝刺入。
④仮性近視:上内眦部と下内眦部を選択
 

2.小山曲泉の掃骨法による眼窩内刺針

小山曲泉著「神経痛掃骨針法」明治東洋医学院出版部(昭和53刊)も絶版である。古書で入手するには数万円となり、非常に高価である。

小山曲泉(1912-1994)は、掃骨針法で知られている。掃骨針法とは、筋の骨付着部に対して10番程度の針で、骨を削るように深刺する技法のことである。小山は、郡山七二より19歳年下であり郡山の講習会などに参加しして影響を受けつつ、掃骨という手技で眼窩内刺針を行うことを考案した。


1)掃骨針による眼窩内刺針の理論

   
眼精疲労を訴える患者に対し、眼球そのものを押圧するのと、眼窩内に手指を折り曲げて按圧するのと、どちらが気持ちよいかを聴取すると、文句なしに後者の方が気持ちよいとの返答が得られる。すなわち骨を圧重した方が気持ちよいらしい。

これは三叉神経の第1枝、第2枝の末端がそれぞれ眼窩上神経、眼窩下神経となって 眼窩の骨に分布し知覚をつかさどっており、過労・ストレス・循環障害などで神経障害を惹起 するものと考えればよい。掃骨針法の場合、眼精疲労といより眼窩神経痛に対する刺針法ともいえる。

2)刺入部位


繁用するのは上眼窩が一番多い。同時に承泣、内眦の睛明、外眦の瞳子髎等を併用する。掃骨針ではあるが眼窩内刺針では10番ではなく3~5番針を用いる。圧痛の方向に骨の変性を探り、コツコツと軽く雀啄する。そこには必ず快痛のヒビキがある。


3)治療効果


掃骨方式の眼窩内刺針を行えば、涙目・かすみ目・痛み眼等の重圧が一挙にとれる。


3.小橋正枝先生への質問と回答

今日において掃骨針法伝承者の代表といえば大阪市で開業されている小橋正枝先生だろう。一昔前、メールで質問したことがあった。眼窩内刺針で、選穴はどうするのか、また刺針方向はどうするのかとの内容だった。これに対してご丁寧な回答を頂戴した。
 
眼精疲労を訴える者は、左右の目頭を母指と示指でつまむようなポーズをとる。これは上睛明穴に相当し、この穴が最も使用頻度が高い。

刺針方向についてであるが、患者に針管を渡し、眼窩から気持ちのよいと思う方向に押すよう指示する。これが刺針方向になるということだった。
掃骨針の要領は、鍋についたおこげを落とすように刺針する、とのこと。筋に対しては、筋付着部のサビを落とすように刺針する。




4.私(似田)の眼窩内刺針の変化
 
私が郡山七二方式の眼窩内刺針を行って以来、すでに30年以上経過している。眼精疲労など機能的な眼症状に対しては、ある程度の効果があったようだが、同時に天柱・上天柱・風池・翳明・太陽といった穴に施術することも多く、眼窩内刺針の使用が不可欠だったとは言い難い。網膜色素変性症患者にも上睛明、球後(後述)に30分置針して、蒸しタオルで温補したが、目立った治療効果は得られなかった(治療直後効果として、一過性に視野がやや広がった)。

郡山七二の眼窩内刺針は、ほとんど針響がなく、術者の刺し手にもシコリに当たったという手応えがない。深刺すると眼窩内の骨に当たるが、骨に当たってもそれ以上刺入しないので、針響はないのが普通である。
 
そこで数年前から小山曲泉方式に変えてみた。私(似田)が小山曲泉の方法で気持ちよい圧痛点を探してみると、上睛明のやや外方と承泣(瞳の下で骨縁にある陥凹)2点に圧痛が出現する傾向があった。これらを刺入点とし、圧痛硬結に向けて刺入すると、硬い組織(=骨膜)、当たった。そこを削りとるように細かく針を上下に動かすと眼球に響いた。

眼窩内の骨にぶつかるまでこのシコリに向けて4番針で約2㎝刺入、5分間置針してみた。患者は眼球部に重い感じがしたとのこと。閉眼状態で、上下左右の眼球運動を数回指示したこともあったが、その際もとくに刺激感はなかったようだ。


5.眼窩内刺針の二つの代表治療点



1)上眼窩裂溝内刺針(上睛明) 


位置:眼球と上眼窩の間隙。具体的には瞳孔線上、瞳孔線の内眼角寄り、深部に視神経管(視力を司る視神経が通る)がある。

 患者に針管を渡し、「一番つらいと思う場所を、気持ち良く感じる方向に押してみて....」というと、大抵の患者は睛明もしくは睛明の5㎜上から直角に     深く押圧するようになる。確かに眼精疲労の際、母指と示指で目頭を強く押圧するのは、 日常的にもよくある動作である。このように考え、私は眼窩
 内刺針では睛明の使用頻度が多い。

2)球後
位置:外眼角と内眼角との間の、外方から1/4 の垂直線上で「承泣」の高さ。球後は眼窩と眼球間の間隙がやや広い部であり、深刺しやすい部である。
 球後とは眼球の後という意味で、中国では内眼病(網膜や視神経疾患)の治療穴として使用されているが、治療効果は不明である。

刺針:眼窩内に直刺、その後針尖を上内方に少し向け、視神経方向に刺入。患者は眼球が熱く腫れる感じを覚える。   
 
※毛様体神経節刺について

眼球の奥には毛様体神経節がある。これは米粒より小さい。自律神経系に属する神経節で、瞳孔収縮と散大、眼球知覚などに関係し、視覚機能の調整を担当している。球後を刺入点としてかなり深刺すると毛様体神経節刺針となる。中村辰三が実施してみた結果、眼精疲労に効果あったということだが、リスクを考慮すれば積極的には行い難い刺針技法であろう。