1.機能性眼精疲労の分類
機能性眼精疲労の原因は、次の2つに分類されるが、調節性眼精疲労の方が主なる原因であるとされている。
1)調節性眼精疲労(=内眼筋障害)
毛様体筋の疲労による。毛様体神経節は、目の焦点を合わせ、虹彩の開き具合を調整する機能がある。眼精疲労は、この毛様体神経節および毛様体筋の疲労であると考えられる。
2)筋性眼精疲労(=外眼筋障害)
輻輳(=より目)不全、斜視による。左右の眼の動きの不統一。
2.調節性眼精疲労と毛様体筋
瞳孔括約筋は、虹彩の内周にある。巾着袋のような作用で、筋緊張すると口が狭まり、縮瞳になる。瞳孔散大筋は、虹彩の外周にある。瞳孔括約筋と逆で筋緊張すると虹彩が開き、散瞳になる。
遠見時:毛様体輪状筋が弛緩して輪が広がる → チン小帯はピンと張る→ 水晶体は引っ張られて薄くなる。
近見時:毛様体輪状筋が緊張して輪が狭まる → チン小帯が緩む→ 本来もっている性質により、水晶体は厚くなる。
3.調節性眼精疲労の針灸治療
1)調節性眼精疲労は副交感神経緊張によるのものだろうか?
眼精疲労を訴える患者に対し、伏臥位で天柱から深刺手技針を十数秒間行なった後、患者は「目がすっきりし、外界が明るく見える」などの喜びの声をあげることは、日々の臨床で普通にみられる。ただ筆者は昔から、「外界が明るくなった‥‥」という返答から、虹彩が開いた状態になった、すなわち交感神経緊張状態になったと理解すべきかどうかを悩んでいた。
2)調節性眼精疲労の機序の考察
①調節性眼精疲労は交感神経緊張症状なのか?
成書には調節性眼精疲労は、副交感神経緊張→毛様体筋収縮→水晶体厚くなるという機序が記載されている。これは直感的には意外なことで、交感神経緊張の間違いではないかと考えがちである。
しかし考えてみれば、本来、人間は近くを見ているとき、リラックス状態をつくっている状態にる。というのは原始時代、人間は仕事として獲物を狩り、そして狩ってき食料を住居で食べて生するという形をとってきた。そのため、遠くにいる獲物を探したり、狩るときは交感神経が優位なり、家の中で家族とご飯を食べている時は副交感神経が優位になることが正常な自律神経サイクルだったという。
しかし現代人では勉強や仕事で頭脳がフル回転しているような状態であっても、血圧も呼吸数も増えていないので身体としては副交感神経緊張であろう。つまり頭脳労働は精神活性化状態ではあっても、交感神経緊張状態とはいえない。
脳と身体の活動の関係は、睡眠におけるノンレム睡眠とレム睡眠の関係に相似している。ノンレム睡眠は、睡眠直後から現れ、脳の疲労回復が目的であるのに対し、レム睡眠は睡眠90分以降に現れ、日中の交感神経優位状態になった身体を、ゼンマイをゆるめるように副交感神経優位にもどすのが目的である。脳の疲労回復は、ごく短時間睡眠で回復できるのに対し、身体の疲労は90分以上の持続的睡眠が必要である。一回数十分の針灸治療でできることは、脳の疲労に限定されるといえるだろう。
パソコンディスプレーを長時間注視するなどして眼精疲労になることは多いが、これも交感神経緊張症状ではない。これも副交感神経緊張症状である。
副交感神経緊張→毛様体筋収縮→水晶体厚くなるというのが調節性眼精疲労であるなら、これは毛様体過緊張による仮性近視状態になっているともいえる。
②眼精疲労に対する凸レンズメガネの使用
長時間をディスプレーを注視するなどそてこの状態での対処法として、凸レンズめがね(=老眼鏡)をかけてみるのも一つの方法である。凸レンズめがねを使うと、水晶体が以前より厚くなる必要がない→毛様体筋収縮緩和→眼精疲労改善という機序になる。(さくら眼科 院長とスタッフblog より)
③天柱刺針の効果
天柱深刺で眼精疲労がとれる機序は、身体を交感神経緊張状態に誘導した結果だと考える。わが国の習慣として、気合いをいれて物事に取り組もうとする時、ハチマキ巻くことがある。これも交感神経緊張度を高める方法として広く知られている。こめかみにメントール軟膏を少々塗って、眠気を防ぐのも同様である。こめかみ部は、経穴では太陽穴に相当している。
太陽穴の局所解剖
https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/fa45a20b1cb0137a5678eaf59e4c5fac
①天柱施術の効果は交感神経優位ではなく「副交感神経優位による末梢血管拡張から循環血流量の増加により停滞していた眼球内の不純物が洗い流された結果」だと考えておりますがいかがでしょうか?
いわゆる抗重力筋に治療を施すと副交感神経が優位になるという反応があったように思いますが天柱付近もこの例に漏れなければ副交感神経優位になると思います
たいていこのような患者は後頸部はコチコチですし…記事内の通り、私もそのように考えがちです
交感神経優位とはスッと飲み込みにくいのですが…
私の考えの根拠は交感神経α遮断薬を投与すると眼内循環血流量の増加が起こるからです
駄文での説明で読みにくいかと思いますがご検討ご教授、よろしくお願いいたします
当ブログで、天柱刺針の効果は、交感神経緊張させることで、散瞳となるので、視野が明るく見えるようになると説明しました。これは、リラクセーションすなわち副交感神経緊張に誘導することが視力回復に良いという常識に反するものですが。
では、天柱への弱刺激で副交感神経緊張に誘導したらどうなるかといえば、縮瞳→ピンホール効果(遠近ともピントがあう)+水晶体の中央部のみ通光→視力向上感(一時的)となります。これも治療的意義をもつので、天柱刺針の刺激方法も多様になると思います。