AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

内・外膝眼穴への刺針意義

2006-06-14 | 経穴の意味

1.内膝眼と外膝眼の位置

東洋療法学校協会の経絡経穴学テキストによれば、内膝眼(奇穴)は、仰臥位で膝伸展位で、膝蓋骨靱帯内側の陥凹部にとる。外膝眼(奇穴)は、同姿勢で、膝蓋靱帯外側の陥凹部にとる。
ただし日本経穴委員会では、犢鼻穴位置(膝蓋靱帯上の中央部)を外膝眼を定めており、犢鼻穴と外膝眼を同一部とみなしている。本稿では東洋療法学校協会テキストに従う。


2.膝関節内刺針の意義
 
膝伸展位にて内外の膝眼穴から直刺すると、針は膝蓋下脂肪体→関節滑膜→関節腔と入ることになる。ある程度深刺して関節滑膜を刺激すると、関節全体に響く感じが得られる。関節滑膜には神経・血管が豊富なので、関節滑液の分泌、知覚神経興奮の鎮静、血流改善などの治癒機転が働く。
さらに深刺すると関節腔に入るが、関節腔内にあるのは関節液だけなので、刺激する意味はない。

※関節包:骨膜が互いに連続してできた2層の膜で、内面を滑膜、外面を線維膜とよぶ。

なお膝眼穴刺針の体位は、可能であれば膝完全伸展位の方が、当たりがいいようで、膝下にマクラを入れての軽度屈曲肢位の刺針は、効きが悪いという印象がある。

 

3.細菌性膝関節炎への注意

膝関節痛に対し、医師が行う関節包内へのステロイド注射には関節リスクを伴う。細菌性関節炎になると、施術後数時間~2日程度後に、急激な疼痛・発赤・腫脹・熱感・運動制限などがおこる。ひどくなると悪寒発熱出現。このような場合、緊急で関節部への直接的な抗生物質投与が必要となる。

鍼灸治療での内膝蓋・外膝眼刺鍼では、使う鍼が医師の使う針と比べ、細菌感染の頻度が低いとはいえ、細菌感染リスクがあることに変わりはない。感染過誤を起こさなぬよう、鍼の滅菌、刺針患部の消毒、施術者の手指の消毒など細心の注意が必要である。