alternativemedicine

Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

呼吸法と丹田

2018-06-30 | メモ
「近世養生思想における呼吸法と丹田
片渕 美穂子
『和歌山大学教育学部紀要. 人文科学』
64, 111-119, 2014-02-20
https://ci.nii.ac.jp/naid/110009794465
1.導引術と丹田
 
2.近世前期養生書における丹田
曲直瀬玄朔(1549-1631)の『延寿撮要』における丹田
 
3.貝原益軒『養生訓』における丹田
 
4.武芸思想と丹田
 
5.理想の丹田
 
 面白いのは、「肩があがり、胸がそった姿勢」は、欲からきており、「臍下の気が抜けている状態」であり、背中が丸く下腹部が膨らんだ男性の絵が「精神的な強さ」と「熟達した技芸の持ち主」として描かれていることです。
 これは、呼吸法や丹田の研究者にとって、面白い論文だと思います。

岡田式静座法研究の最前線

2018-06-30 | メモ
「霊動をめぐるポリティクス : 大正期日本の霊概念と身体」
栗田英彦
『東北アジア研究センター報告, 8号ー身体的実践としてのシャマニズムー』2013年
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024659420-00
これは、明治期・大正期の日本の精神療法のナゾを解き明かす論文です。

野口晴哉の「野口整体」に不随意運動を起こさせる「活元運動」があります。私も西宮市で行われた「活元運動」の集まりに参加してビックリしました。人間の身体が勝手に動き、ピョンピョン飛び跳ねます。

おそらく、その起源となった岡田虎二郎(1872-1920)の「岡田式静座法」の「振動」、
田中守平(1884-1929)の太霊道・霊子術の「霊動」、
大本教の浅野和三郎(1874-1937)の「鎮魂帰神」、を、この論文は詳しく解説しながら、その3者がお互いにどのような影響を与えたのかを解き明かしていきます。

 著者の日本学術振興会特別研究員・栗田英彦先生は、2016年3月18日に中外日報社の第12回「涙骨賞」を「岡田虎二郎の思想と実践―越境する歴史のなかで」で受賞しました。
 
 栗田英彦先生は、岡田虎二郎(1872-1920)を現在まで伝える団体である「静座社」の資料を発掘し、研究した「岡田式静座法」研究の第一人者です。

  岡田虎二郎(1872-1920)の「岡田式静座法」は、中国の「気功」をはじめとして、後世に多大な影響を与えたのですが、岡田虎二郎の生涯や普及の過程が謎でした。
   実際には1900年代のアメリカ遊学から帰国して、岡田虎二郎は「岡田式静坐法」を普及し始めます。栗田英彦先生の研究により、戦前の日本で流行した「霊術」「療術」の歴史の研究の視界が一気に広がりました。

Fasciaとフォームローラー

2018-06-29 | メモ
2015年7月8日『メドスケープ』
「筋肉マッサージの『フォームローラー』はほんとうに効果あるの?」
Are Foam Rollers for Muscle Massage Really Beneficial?

以下、引用。
「セルフ・マイオフェイシャル・リリース(筋膜リリース)は、効果があるの?」
Self-Myofascial Release Beneficial?

「アメリカのスポーツジムでは、近年、『フォームローラー』が春の花のように満開である」
Over recent years in gyms in the United States, foam rollers have sprouted like flowers in spring.

「メディアは、『フォームローラー』の使用を祝福し、自己管理マッサージ治療の方式を『セルフ筋膜リリース』と呼んで使用することを助けている」
 Media reports have celebrated the use of these rollers and other aids for promoting a type of self-administered massage therapy called "self-myofascial release."

「筋骨格の軟部組織治療は、可動域や痛みや筋肉の硬さを柔らかくすると称しており、関節可動域を拡げて、アスレティック・パフォーマンスさえ向上させると言う」
This soft tissue therapy for the treatment of skeletal muscle immobility and pain purportedly soothes muscle soreness, increases range of motion, and even improves athletic performance.

「現在、科学者たちは、比較試験が始まったばかりであると、述べている」
Now scientists have begun to test these claims with controlled trials.

「最近、『アメリカン・カレッジ・オブ・スポーツ・メディスン(ACSM)』で出版された文献レビュー(※1)では、セルフ筋膜リリースには、パフォーマンス向上があり、関節可動域を改善させると断言している。」
A recent review of the published literature and studies presented at the American College of Sports Medicine (ACSM) 62nd Annual Meeting in May challenge assertions about the increased performance benefits of self-myofascial release. But they do support self-myofascial release as way of improving range of motion.
以上、引用終わり。

※1:2015年5月
「セルフ筋膜リリースは、運動前と運動からの回復戦略として有効なのか?文献レビュー」
Is self myofascial release an effective pre-exercise and recovery strategy? A literature review.
Schroeder AN, Best TM.
Curr Sports Med Rep. 2015 May-Jun;14(3):200-8.

以下、記事からの引用。
「セルフ筋膜リリースVSマッサージ治療」
Self-Myofascial Release vs Massage Therapy

「セルフ筋膜リリースでは、人々が自分の軟部組織に自分でマッサージを行う。研究者たちは、このテクニックは専門家である理学療法士による『筋膜リリース』と同じ効果があるということを支持している。」
In self-myofascial release, people massage their own soft tissue. Researchers have supposed that this technique might produce some of the same benefits shown in myofascial release that is administered by physical therapists.

「一つの理論として、『フェイシア(筋膜)』は、外傷への防御反応として固くなる。時間がたつと、コラーゲンは密集して線維化する。そして、結合織における高い弾力性のあるタンパクであるエラスチンは、弾力を失う。これが、筋肉が機能を失って、痛みを引き起こす原因である。『筋膜リリース(マイオフェイシャル・リリース)』の理論によれば、『筋膜リリース』は、このプロセスを逆転させる」
One theory is that fasciae tighten as a protective mechanism in response to trauma. Over time, collagen becomes more dense and fibrous, and elastin—a highly elastic protein in connective tissue—becomes less resilient. This can reduce muscle functioning and cause pain. Myofascial release, in this theory, whether self-administered or administered by someone trained in the technique, might reverse this process.

「付け加えると、いくつかの研究は、障害、疾病、非活動性、炎症は、筋肉組織における繊維の粘着化(fibrous adhesions)を形成し、また、通常の機能を制限させる。『筋膜リリース(マイオフェイシャル・リリース)』は、この粘着化を破壊することが出来る」
In addition, some research suggests that injury, disease, inactivity, and inflammation may cause fibrous adhesions to form in muscle tissue, also limiting its normal functioning. Myofascial release could break these adhesions.
以上、引用終わり。
「筋膜リリース(マイオフェイシャル・リリース)」は、多くの源流があり、ややこしいです(笑)。

一つは、「オステオパシー」の創始者アンドリュー・テイラー・スティルです。
もう一つは、ジャネット・トラベルの「トリガーポイント療法」です。
もう一つは、「ロルフィング」のアイダ・ロルフです。
もう一つは、ドイツの「結合織マッサージ」のエリザベート・ディッケです。

「マイオフェーシャル・リリース®」は、ジョン・F・バーンズ(John F Barns)という、アリゾナ州セドナ在住のカリスマ的理学療法士が1990年代に提唱しました。
John F. Barnes, myofascial release approach®

DVD「マイオファッシャル・リリース(筋膜リリース法)」
ジョンF.バーンズ,P.T全3枚DVD36,000円(←高いわ!)

「Myofascial Release(筋膜リリース)」
竹井 仁(東京都立保健科学大学理学療法学科)
『理学療法科学』Vol. 16 (2001) No. 2 P 103-107
理学療法士の先生方は「®登録商標マーク」のついた治療法が好き過ぎです・・・(笑)。
以下は、「筋膜リリース(マイオフェーシャル・リリース)」のEBMはどうなっているのか?の調査です。

2013年『ジャーナル・オブ・アスレティック・トレーニング』
「整形外科領域での『筋膜リリース(マイオフェーシャル・リリース)』:システマティックレビュー」
Myofascial release as a treatment for orthopaedic conditions: a systematic review.
McKenney K, Elder AS, Elder C, Hutchins A.
J Athl Train. 2013 Jul-Aug;48(4):522-7.
「『筋膜リリース(マイオフェーシャル・リリース)』は、徒手療法として広く行われるようになっている。そのルーツは、1940年代にまでさかのぼり、『マイオフェーシャル・リリース』というコトバが使われたのは、1981年にオステオパスのアンソニー・チラ、キャロル・マンハイム医師によるミシガン大学の講義『マイオフェーシャル・リリース』が最初である。徒手療法の世界で、マイオフェーシャル・リリースは広汎に行われているにも関わらず、その効果は客観的に評価されていない」
Myofascial release (MFR) is one example of a manual therapy that has become widely used. Although its roots can be tracked to the 1940s, the term myofascial release was first coined in 1981 by Anthony Chila, DO; John Peckham, DO; and Carol Manheim, MEd, in a course titled “Myofascial Release” at Michigan State University. Despite the pervasiveness of MFR as a manual therapy, its effectiveness has not been objectively evaluated.

2015年『ジャーナル・オブ・ボディワーク・アンド・ムーブメント・セラピー』
「『筋膜リリース(マイオフェーシャル・リリース)』の効果:ランダム化比較試験のシステマティックレビュー」
Effectiveness of myofascial release: systematic review of randomized controlled trials.
Ajimsha MS et al.
J Bodyw Mov Ther. 2015 Jan;19(1):102-12.
 2015年と2013年のシステマティックレビューを読んだ限りでは、『筋膜リリース(マイオフェーシャル・リリース)』の有効性の科学的根拠については、まだ、何も言えないというのが現状だと思います。
 以下の2015年のシステマティックレビューの記述は、「Fascia(膜・筋膜)」の研究の記述として面白いです。
以下、引用。
「最近のファッシャ・リサーチ・コングレス(筋膜研究会)は、ファッシア(膜・筋膜)を結合組織システムの軟部組織コンポーネントであり、人間のからだのすみずみにあると定義している。ファッシア(膜・筋膜)の線維性コラーゲン組織は、人体の張力のトランスミッションシステムであると描写されている。」
Recent Fascia Research Congresses (FRC) define fascia as a ‘soft tissue component of the connective tissue system that permeates the human body’ (Huijing and Langevin, 2009). One could also describe them as fibrous collagenous tissues that are part of a body-wide tensional force transmission system (Schleip et al., 2012). 

「ファッシア(膜・筋膜)ネットは、靱帯、腱、筋外膜、最も深い筋内膜の層に含まれる。ファッシア(膜・筋膜)というコトバは、硬膜、骨膜、神経周膜、椎間板の線維性カプセル層、呼吸器の結合組織のカプセル組織、腹部の腸間膜も含んでいる。」
The complete fascial net includes dense planar tissue sheets, ligaments, tendons, superficial fascia and even the innermost intramuscular layer of the endomysium. The term fascia now includes the dura mater, the periosteum, perineurium, the fibrous capsular layer of vertebral discs, organ capsules as well as bronchial connective tissue and the mesentery of the abdomen (Schleip et al., 2012). 

「ファッシア(膜・筋膜)は、繊維の配列や密度に適した張力ネットワークとつながっている」
Fascial tissues are seen as one interconnected tensional network that adapts its fiber arrangement and density, according to local tensional demands (Schleip et al., 2012).

「2009年のデイや2013年のステッコらの著者、あるいは2011年のヘレン・ランジュバンらは、結合組織が、オーバーユースシンドロームや外傷後に、より固く緊密になることを示唆している。しかし、これはコラーゲン繊維の構成の変化なのか、線維芽細胞によるものなのか、骨基質によるものなのかは不明である。」
Authors such as Day et al., 2009, Stecco et al., 2013) and Langevin et al. (2011)) and colleagues, have suggested that connective tissue could become tighter/denser in overuse syndromes, or after traumatic injuries, but it is unclear if this is due to an alteration of collagen fiber composition, of fibroblasts, or of ground substance.

「同じ著者らは、ファッシア(膜・筋膜)の柔軟性の変化が、緊張や運動器のコーディネーションが弱まることにつながる身体の誤ったアラインメントや貧弱な筋肉のバイオメカにクスとなる可能性を示唆している」
 The same authors suggest that the alteration of fascial pliability could be a source of body misalignment, potentially leading to poor muscular biomechanics, altered structural alignment, and decreased strength and motor coordination. 
以上、引用終わり。

Fasciaとローリング療法と擽感(りゃっかん)

2018-06-29 | メモ

痛みが消える速効ローリング法―腰痛、ひざ痛から慢性病まで…
蓑原 右欣
河出書房新社 (1997/06)

「ローリング療法」の蓑原右欣(みのはら・すけよし:1926-)先生です。「ローラーベッド」は蓑原先生の発明です。

 
 蓑原(みのはら)先生は、1948年に22歳で柔道整復師の資格を取得し、28歳のときに交通事故に会い、頭部打撲・脊髄損傷の重症と後遺症に苦しみます。その過程でローラーベッドを発明し、「ローリング療法」を創案しました。1966年に「ローリングベッド」を発売します。
 
 「ローリング療法」では、シコリやうっ血が体じゅうに発生すると考えて、硬質ゴムで出来た「ローラー」で、うっ血をとり、血行を改善します。特徴的なのは、擽感(りゃっかん)といって「くすぐったい所」や「硬結」をローラーでつぶしていくことです。
 最初は手足の末梢部分からローラー刺激をはじめて、体幹部にローラー刺激をしていきます。
 
 蓑原(みのはら)先生は、自分が交通事故の後遺症で苦しんだ際に、丸太やボール、サイダーのビンを並べて置いた上を仰向けでゴロゴロと転がしているうちに、痛みが和らいで、ローラーベッドを発明したそうです。これは、アメリカのスポーツジムで流行している「フォーム・ローラー」、「セルフ筋膜リリース」と同じです!
 「筋膜リリース」でも、筋膜が硬くなって機能を失ったのをローラーでゴロゴロさせることで、癒着をリリースします。

Fasciaとロバート・マイグネのセルラルジア(Cellulalgia)

2018-06-28 | メモ
フランスの医師ロバート・マイグネは、椎間関節に問題が起こると、対応する神経根に支配された皮膚デルマトームに、このような蜂の巣状の変化「セルラジア(cellulagia:蜂巣痛)」が起こることを報告しました。
 
下記のリンク先は、『アナルス・オブ・フィジカル・アンド・リハビリテーション・メディスン』2012年10月号収録の論文「ロバート・マイグネ(1923–2012)」です。2012年に亡くなったロバート・マイグネ医師の経歴が説明してあります。
「ロバート・マイグネ(1923–2012)」
Robert Maigne (1923–2012)
Annals of Physical and Rehabilitation Medicine
Volume 55, n° 7 page 451 (octobre 2012)
 
「ロバート・マイグネ(1923–2012)」は、フランスを代表する整形外科医です。カナダのケベック州はフランス語圏であり、ケベック州頭痛研究グループは、ロバート・マイグネの「セルラジア(cellulagia)」を診断治療に活かしています
「椎間関節機能不全の痛み:ロバート・マイグネの頸椎性頭痛へのオリジナルな貢献:ケベック頭痛研究グループ」
Painful intervertebral dysfunction: Robert Maigne's original contribution to headache of cervical origin. The Quebec Headache Study Group.
Meloche JP et al.
Headache. 1993 Jun;33(6):328-34.
この論文での「頭痛」の分析は素晴らしいです。
 
以下、引用。
「ロバート・マイグネ教授は、フランス人整形外科医で機能リハビリテーションの専門家であり、脊椎由来の痛みの理解をよりよくするための新しい概念を送り出した」
Professor Robert Maigne, a French Orthopedic Medicine and Functional Rehabilitation specialist, has put forward new concepts leading to a better understanding of common pain of spinal origin.
 
「マイグネは、脊椎の痛みは、椎間板、椎間関節の靱帯、椎間関節から成り立った可動式のセグメントの機能障害であると説明している。」
Maigne explains that pain in the spine is due to an intervertebral dysfunction of the mobile segment which consists of the intervertebral disc, ligaments and the facet joints. 
 
「良性の機械的な機能障害は、その脊椎の問題と同じ高さのデルマトームに放散する」
Any benign mechanical dysfunction of the mobile segment can induce a pain radiating in the dermatome at the same level as the vertebral problem.
 
「マイグネは、皮膚では『セルラジア(cellulalgia)』、筋肉では『ミアルジック・バンド(myalgic bands筋痛バンド)』そして、骨と腱の付着部では『テナルジア(tenalgia)』を発見した。これらのサインは、脊椎の問題と同じ高さのデルマトーム(皮膚分節)、ミオトーム(筋分節)、スクレロトーム(骨分節)で発見できる」
Maigne also described signs found in the skin (cellulalgia), in the muscles (myalgic bands) and in the bony insertions of tendons (tenalgia). These signs are to be found in the same dermatome, myotome and sclerotome as the spinal dysfunction. 
 
「頸椎由来の頭痛は、椎間関節の機能障害に由来しており、もっとも見られるのはC2-C3のレベルである」
For headache of cervical origin due to painful intervertebral dysfunction, the most frequent dysfunctional mobile segment is located at the C2-C3 level. 
 
「これは、ほとんどの場合、C2-C3のデルマトーム、後頭部に『セルラジアcellulagia(蜂巣痛)』を形成する」
This induces pain mostly in the posterior parts of the head and cellulalgia in the C2 and C3 dermatomes.
 
「有痛性の腫れは、このレベルの椎間関節の後方で発見できる」
Painful tumefaction is also found over the posterior aspects of the facet joints on palpation at this level. 
 
「これらは、有痛性椎間関節機能障害の診断のキー・エレメントである」
These findings are key elements for the diagnosis of painful intervertebral dysfunction. 
 
「このサインの認識は、頭痛における頸椎の理解を変化させる。有痛性の椎間関節機能障害は、非常に頻繁に慢性頭痛で見られる」
The recognition of these signs is changing our understanding of the role of the cervical spine in headaches. Painful intervertebral dysfunction is very frequently found in chronic daily headaches.
以上、引用終わり。
 これは、事実上、兵頭正義先生が提唱し、間中信也先生など日本の頭痛専門医たちが提唱している『天柱シンドローム』と同じものを言っているのだと思います。

Fasciaのテンセグリティと美容鍼

2018-06-28 | メモ
顔の肌がたるむ原因は?
 
以下、引用。
「縦の線維からなる突起状の構造体が、顔の肌を支えるのに大きな役割を果たしていた!
加齢によってこの構造体が減少すると、肌を支える力が弱まり、たるみが発生
この突起状の構造体を詳しく解析してみると、通常の真皮層ではコラーゲン線維やエラスチンなどの弾力線維が横向きに張り巡らされているのに対し、縦方向に配列されていることが分かりました。このことから、この突起状の構造体は縦の弾力で、肌をしっかりと固定させる役割があることが分かります。この特殊な形とその役割から、水底にひっかけて船を固定させる錨にちなみ、「アンカー」と名づけました。
さらに、20代と70代の方のアンカーを比べてみたところ、70代の方のアンカーが減少していることが分かりました。加齢によってアンカーを形づくる細胞が減ってしまうことで、アンカーが失われ、たるみが引き起こされていたのです。」
以上、引用終わり。
(PDFファイル:カラーの画像あり)
 このコラーゲン繊維・エラスチン繊維の縦方向の「アンカー(anchor)=碇(いかり)構造」という発見は面白いと思います。美容鍼をすると、たしかに肌のはりは良くなります。また、リフトアップ効果もあります。しかし、理論的に説明するのが難しかったです。美容鍼(コスメティック・アキュパンクチャー)に関する科学的研究と言えるのは、論文では3つぐらいです(※1、※2、※3)。しかし、いずれも美容鍼で起きている現象を説明できるレベルではないです。
 
 一度、皮下の結合組織のコラーゲン繊維・エラスチン繊維を破壊して、刺激して、再構成するのなら、長期的効果としては説明できます。
この資生堂の研究を発表した江連智暢(えずれ・とものぶ:Ezure Tomonobu)先生によると、以下のようになります。
 
「加齢線を加えるだけで、どんな顔でも老けた印象に見えてしまいますよね。一般的に、ほうれい線は、固定化された深いシワだというイメージがあるかもしれませんが、シワではないんです。それを証明する実験があります。同一人物で起き上がった状態と仰向けに寝た状態での顔の形態を比較します。起き上がった状態よりも、仰向けに寝た状態の方が、ほうれい線が目立たなくなるんです。この実験によって、シワのように固定化されたものではなく、頬が重力によって垂れ下がることによってできる境界線であるということが判明しました。
 
意外なことがたるみの原因になっていました。それは皮下脂肪です。皮下脂肪が多いヒトは肌の弾力が低下し、たるんでいるのです。これは皮下脂肪が多いことで真皮へのダメージとなり、エラスチンと呼ばれる弾力繊維がバラバラになって肌の弾力が下がってしまうためです。なぜこんなことが起きるのでしょうか。皮下脂肪が増えると、脂肪細胞が脂肪を蓄え、肥大化するのですが、この肥大化した脂肪細胞が肌へのダメージ因子(遊離脂肪酸)を出していました。このダメージ因子により肌でのヒアルロン酸やコラーゲンの産生が低下して、肌の弾力が低下してしまいます。つまり、たるみ・加齢線の原因は肥大化した脂肪細胞であることがわかってきたのです」
 
 江連智暢(えずれ・とものぶ:Ezure Tomonobu)先生が発表した論文をPubmedで調べると、ほとんどが表情筋についての研究です。シワではなく、皮下脂肪によるタルミであるというものです。
 皮下脂肪からの遊離脂肪酸・アディボネクチンが分泌され、TNFーαが過剰分泌され、これらのダメージ因子により、ヒアルロン酸・コラーゲンの産生が低下して、肌の弾力が落ちるというロジックです。それに対して、江連智暢(えずれ・とものぶ:Ezure Tomonobu)先生が特許をとっているのは、ワレモコウ筋細胞賦活剤ATP代謝促進剤(※4)やアズキの抽出物、甜茶、西洋バラエキスやヨモギエキスによる靭帯細胞賦活剤、表情筋エクササイズやストレッチ、電気刺激装置や温熱刺激装置などでした。
 
 江連智暢(えずれ・とものぶ:Ezure Tomonobu)先生は、資生堂という企業に属し、論文が公開されているのが少ないため、本当に考えていることがわかりにくいです。
しかし、早川も自称オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT:Open Source INTelligence)専門家として、公開されているオフィシャル情報を分析していくと、これは、バラエキスやヨモギ、桃の葉などの生薬を顔面に外用して温熱療法を加え、さらにコラーゲン・エラスチンの再生を促すために鍼をやるというスタイルは、かなりイケそうな気がします。実は、2004年頃に美容鍼灸サークルのS先生とK先生が、こういうスタイルの美容鍼をされていました。まあ、まだ、江連智暢先生の研究の分析が必要ですが。
 
 コラーゲン繊維・エラスチン繊維の縦方向の「アンカー(anchor)=碇(いかり)構造」というのは、まさに「テンセグリティ」テンション・ネットワークであり、これは面白い分野になると思います。
 
以下資料。    
[Theme]  NOVEL APPROACH TO ANTI - AGING FACIAL SKIN CARE    
[Presenter]  Tomonobu Ezure ,  Senior Scientist  ( Cosmetics Basic Research Center ),  Shiseido  Research Cent er    
[Summary]  We elucidated that "sagging" and "nasal - labial folds", which become more visible  due to  aging, are related to decrease in skin elasticity. F acial shape drastically changes with aging;     and sagging and nasal - labial folds, which have been the con cern for many women, are formed. As  a result of the joint research with Mr. Kyoichi Matsuzaki, who is Associate Professor of St.  Marianna University School of Medicine, and Mr. Takahiro Ochiya, who is Chief of Division of  Molecular and Cellular Medicine, N ational Cancer Center Research Institute, it was elucidated that  one of the major factors is the fact that decrease in skin elasticity due to aging makes it difficult to  support facial shape. By further advancing this result, we will develop new skincare c osmetics.          
 
※1:2012年4月、筑波大学の殿山希先生。
Cosmetic acupuncture to enhance facial skin appearance: a preliminary study.
Donoyama N, Kojima A, Suoh S, Ohkoshi N.
Acupunct Med. 2012 Jun;30(2):152-3.
Epub 2012 Apr 25.
 
※2:2013年7月の韓国の慶熙大学校。
Effect of facial cosmetic acupuncture on facial elasticity: an open-label, single-arm pilot study.
Yun Y1, Kim S, Kim M, Kim K, Park JS, Choi I.
Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:424313.
Epub 2013 Jul 28.

※3:2015年の中国、北京中医薬大学
Acupuncture for melasma in women: a systematic review of randomised controlled trials
Qianyun Chai, et al.
Acupunct Med 2015;33:254-261 doi:10.1136/acupmed-2014-010633A
 
※4
 
 

セルライトのエビデンス

2018-06-28 | メモ
結論から言えば、セルライトにリンパ・ドレナージュは残念ながら、効果無いようです。有れば、新しい職域開拓になったのにー。
 
以下は、2010年に『ヨーロッパ皮膚と性病の学術雑誌』にトルコの研究者が発表した論文。
 
「機械的マッサージ・徒手リンパ・ドレナージと結合組織テクニックの肥満女性のセルライトへの効果」
Effects of mechanical massage, manual lymphatic drainage and
connective tissue manipulation techniques on fat mass in women with
Bayrakci Tunay V1, Akbayrak T, Bakar Y, Kayihan H, Ergun N.
Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology
Volume 24, Issue 2, pages 138-142, February 2010
 
リンパドレナージ・徒手マッサージを大腿部に行い、足が細くなったという結果は出ました。これは本当だと思いマス。足痩せはリンパマッサージで簡単にできます。
結論「全てのトリートメントテクニックはセルライトのある患者の局所脂肪を薄くするのに有効だった」
Conclusion:All the treatment techniques are effective in decreasing
the regional fat values of the patients with cellulites
 
しかし、セルライト(cellulite)は皮膚にある脂肪による凸凹のことなので、大腿全体が細くなったとしても、セルライトが改善したとは言えないと思いマス・・・。
まじめに比較試験をしたのは、この論文のみデシタ。
 
Pubmedで調べたら、コスメティック・クリームや高周波やコラーゲン注射などが試されているけれども、科学的根拠は無いです。
 
以前、かなり高齢の女性の患者さんに、セルライトについて聞かれたことがあり、この機会に調べました。
 
「形態学的・生化学的なセルライトの探求・研究」
An exploratory investigation of the morphology and biochemistry of cellulite.
 
ニューヨーク、ロックフェラー大学のローゼンバウムが1998年に
「美容整形・再建外科」
Plastic Reconstruction Surgery
に発表した論文。
 
以下、引用。
セルライトの形成の原因について、生理学的にも、血流でも、生化学的にも初歩的な証拠さえ、存在しません
しかしながら、女性の大腿部の結合組織の小さな皮下脂肪組識貯蔵の違いを強調するために、それは構築されています」
There is noevidence of any primary role for adipose tissue physiology,
blood flow, or biochemistry in the etiology of cellulite, although the
connective tissue of the female thigh is structured to accentuate
differences in small subdermal adipose tissue depots.
 
エーっ!!!というマサカの結論でした。セルライトは確かに不整な脂肪組織ですが、組織を切り取って顕微鏡で調べても、それ以上のことは何も言えないようです。
セルライトの形成の原因は不明です。男性よりも女性に目立つことで女性ホルモンの関与と遺伝が関係していることが指摘されているぐらいです。
 
2004年にカルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)が
『美容とレーザー治療雑誌』に「セルライト:生理学と治療法のレビュー」という総説論文を書いています。
Cellulite: a review of its physiology and treatment
Journal of Cosmetic and Laser Therapy
2004, Vol. 6, No. 4 , Pages 181-185
 
「(セルライトの)治療法は4つのメイン・カテゴリーに分けられる。悪化の要素を遅らせるための物理的、化学的方法と、薬物的治療法とレーザー治療法である。セルライトに対して効果的な治療法は、本当は存在しない
‘Treatment modalities can be divided into four main categories:attenuation of aggravating factors, physical and mechanical methods,
pharmacological agents and laser. There are no truly effective treatments for cellulite’
 
 ですから、エステで行われている、リンパマッサージ、高周波、高価なコスメティック・クリーム、圧迫バンドを巻いての遠赤外線、美容整形外科でやっているコラーゲン注射、レーザー治療や薬物療法は全て、科学的根拠がないというのが結論です。

Fasciaとセルライト

2018-06-28 | メモ
偶然発見した、『レーザーセラピー』という雑誌に掲載された神奈川県、クイーンズスクエアメディカルセンターの皮膚科医、尾見徳弥 (おみ・とくや)先生の論文「セルライトの形態学の超微細構造アセスメント:治療戦略の手掛かり?」です。 
 
「セルライトの形態学の超微細構造アセスメント:治療戦略の手掛かり?」
Ultrastructural assessment of cellulite morphology: clues to a therapeutic strategy ?
Tokuya Omi et al.
LASER THERAPY
Vol. 22 (2013) No. 2 p. 131-135
実は、「セルライト(cellulite)」は、いままで、形態も病理も治療法もまったく不明でした。
 
1998年論文「形態学的・生化学的なセルライトの探求・研究」
An exploratory investigation of the morphology and biochemistry of cellulite.
Plastic Reconstruction Surgery
ニューヨーク、ロックフェラー大学のローゼンバウムが1998年に発表した論文では、以下のように論じています。
以下、引用。
「セルライトの形成の原因について、生理学的にも、血流でも、生化学的にも初歩的な証拠さえ、存在しません。しかしながら、女性の大腿部の結合組織の小さな皮下脂肪組識貯蔵の違いを強調するために、それは構築されています」
There is noevidence of any primary role for adipose tissue physiology,blood flow, or biochemistry in the etiology of cellulite, although the
connective tissue of the female thigh is structured to accentuate differences in small subdermal adipose tissue depots.
以上、引用終わり。
 
2004年にカルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)が『美容とレーザー治療雑誌』に「セルライト:生理学と治療法のレビュー」という総説論文を書いています。
Cellulite: a review of its physiology and treatment
Journal of Cosmetic and Laser Therapy
2004, Vol. 6, No. 4 , Pages 181-185
 
「(セルライトの)治療法は4つのメイン・カテゴリーに分けられる。悪化の要素を遅らせるための物理的、化学的方法と、薬物的治療法とレーザー治療法である。セルライトに対して効果的な治療法は、本当は存在しない
‘Treatment modalities can be divided into four main categories:attenuation of aggravating factors, physical and mechanical methods,pharmacological agents and laser. There are no truly effective treatments for cellulite’
 
 ですから、エステで行われている、リンパドレナージ、高周波、高価なコスメティック・クリーム、圧迫バンドを巻いての遠赤外線、美容整形外科でやっているコラーゲン注射、レーザー治療や薬物療法は全て、科学的根拠がないというのが結論でした。
 
 しかし、尾見徳弥 (おみ・とくや)先生の論文「セルライトの形態学の超微細構造アセスメント:治療戦略の手掛かり?」は、はじめて、『セルライト』の形成について、納得できる仮説を提出しています。脂肪細胞のまわりに、線維芽細胞(Fibroblast)が繊維を形成し、繊維が脂肪を囲む隔壁を形成し、局所的な循環障害(peripheral circulatory failure)が起こり、「セルライト」を形成するというのです。これは、納得できます。

 そして、治療法として、繊維の隔壁を破壊する「低レベル光治療(Low-level Light therapy)」を提唱しています。
これは、既に、世界中で、低レベル・レーザー治療によるセルライト治療が報告されつつあります(※1、※2)。もっとも、「セルライト(cellulite)」は正常な脂肪組織なので、美容以外で、治療の意味はあまり有りません。
 
 「セルライト(cellulite)」については、聞かれることが多いのと、ロバート・マイグネの『セルラジア(cellulalgia:蜂巣痛)』の概念に少し関係があると感じたので記録します。
 
※1:「局所脂肪と線維性セルライトの低レベル・レーザー治療と振動治療」
Low-Level Laser Therapy and Vibration Therapy for the Treatment of Localized Adiposity and Fibrous Cellulite
Antonella Savoia et al.
Dermatol Ther (Heidelb). 2013 Jun; 3(1): 41–52.
Published online 2013 May 23.
 
※2:「脂肪層減少のための低レベル・レーザー治療:包括的見直し」
Low-level laser therapy for fat layer reduction: a comprehensive review.
Avci P,et al.
Lasers Surg Med. 2013 Aug;45(6):349-57. 

Fasciaとオステオパシーのクラニオセイクラル・セラピー(頭蓋仙骨調整療法)

2018-06-27 | 間中喜雄先生
以下は『アメリカオステオパシー学会雑誌』に2006年に発表された論文です。
 
「慢性疲労症候群における脳脊髄のリンパ・ドレナージ:頭蓋リズム脈動の仮説理論モデル」 
Lymphatic drainage of the neuraxis in chronic fatigue syndrome: a hypothetical model for the cranial rhythmic impulse. 
Perrin RN. 
J Am Osteopath Assoc. 2007 Jun;107(6):218-24. 
これは読んで驚愕しました。書いたのはレイモンド・ペリンというイギリスのオステオパシー医師で、博士です。レイモンド・ペリンさんは、慢性疲労症候群患者をオステオパシーの『クラニオセイクラル・セラピー(頭蓋仙骨調整療法)』とマニュアル・リンパ・ドレナージュで治療しました。
 この論文では、「慢性疲労症候群がクラニオセイクラルセラピーで治る機序は、脳からのリンパ・ドレナージ(リンパ排液)による解毒しか考えられないが、解剖学には、脳にリンパ管は存在しない。しかし、患者の身体徴候を、観察すると、やはりリンバ・ドレナージの機序しか考えられない。例え、脳の中にリンバ管が無くても、何らかのリンバ排液のシステムが存在するはずだ」と主張しているのです!!!
   この論文が発表されたのは2015年7月の『ネーチャー』に脳内のリンパ管システムが発見される8年前!の2007年7月です!。一臨床家の実感からの仮説が、8年後に証明されたことに本当に感動しました。
 
   『クラニオセイクラル・セラピー(頭蓋仙骨療法Craniosacral therapy)』はオステオパシーの手技であり、オステオパシーの創始者スティルの直弟子ウイリアム・ガーナー・サザーランド(William Garner Sutherland:1873–1954) が1930年代に始めました。それを1970年代にオステオパシー医師のジョン・アプレジャー(John Upledger1932ー2012)がまとめたものです。

以下、引用。
「慢性疲労症候群患者における脳脊髄の体液・リンパ液の排液ドレナージが探求するには面白い分野として注目を浴びている」
An interesting area of exploration has arisen on the involvement of cerebrospinal fluid and lymphatic drainage in patients with chronic fatigue syndrome (CFS).
 
「過去20年に渡り、私は何百もの慢性疲労症候群患者がリンパ排液ドレナージの問題を持っているのを見てきた。」
During the past 2 decades, I have observed hundreds of patients with this disorder who had CRIs and lymphatic drainage disturbances. 
 
「しかしながら、脳にリンパ管の構造物がないという事実のため、この理論は受け入れられていない。脳の静脈はユニークでその薄い壁には筋肉のバルブがないのだ。」
However, the absence of contractile tissue in the veins and sinuses of the brain makes this theory difficult to accept. The cerebral veins are unique in that they possess no muscular tissue in their thin walls and have no valves.
 
「頭蓋リズム脈動は、交感神経システムによる脳脊髄の液体排出と脳中枢からのリンパ排液ドレナージによって引き起こされる」
The cranial rhythmic impulse is the rhythm produced by a combination of cerebrospinal fluid drainage from the neuraxis (brain and spinal cord) and pulsations of central lymphatic drainage induced by the sympathetic nervous system.  
以上、引用終わり。
この著者は、人間以外の哺乳類の脳のリンパ排液ドレナージシステムを論じ、さらに慢性疲労症候群患者の白色のリンパが停滞した静脈瘤などの証拠から、人間にも、未知の脳からのリンパ排液ドレナージシステムが存在することを示唆しています。そして、脳からのリンパ排液ドレナージによる解毒の方法としてエミール・ヴォダーのマニュアル・リンパ・ドレナージを含む頭頸部のリンパ・マッサージを治療法として提唱しています!。
 
   このイギリスのオステオパシー医師のペリンさんは、自分を信じる力や、オステオパシーを信じる力が凄すぎます・・・。本当に尊敬できます。

Fasciaとキネシオテーピング2

2018-06-27 | 間中喜雄先生
2015年「筋筋膜痛(マイオフェーシャル・ペイン)のコントロールにおけるキネシオテーピング法」
The Kinesio Taping Method for Myofascial Pain Control
Wei-Ting Wu, et al.
Evid Based Complement Alternat Med. 2015; 2015: 950519.
Published online 2015 Jun 21
 論文は、「筋筋膜性疼痛症候群(MPS:Myofascial Pain Syndrome )」と「筋筋膜トリガーポイント(MTrP: Myofascial Trigger Point))」の説明と、トリガーポイント形成仮説から始まります。
 
 そして、【筋筋膜トリガーポイントの治療】として、
(1)ジャネット・トラベルによる「塩化エチルスプレー」と「ストレッチ」、
(2)レウィットとサイモンズによる「ポスト・アイソメトリック・リラクゼーション・エクササイズ(Post Isometric Relaxation (PIR) exercise)」、
(3)ジェームズ・サイリュアックスによる「ディープ・フリクション・マッサージ」が挙げられていました。サイリュアックス・マッサージは筋線維や腱を横切るように刺激します。
 
以下、引用。
「サイリュアックスは、指を筋線維、筋硬結の筋筋膜トリガーポイントの長軸を横切るように刺激するディープ・フリクション・マッサージを発達させた」
Cyriax developed a deep fraction massage requiring that the finger runs across the long axis of muscle fibers or taut bands at level of MTrPs, and it is specific for those located at middle of muscle belly. 
以上、引用終わり。
 
(2)のカレル・レウィットは筋筋膜痛に対して、1979年に最初に鍼(ドライ・ニードリング)を使ったチェコの医師です。
 デビッド・サイモンズ(1922-2010)は、1960年にジャネット・トラベルと出会って共同研究を行い、1983年に『トリガーポイント・マニュアル筋膜痛と機能障害』(邦訳はエンタプライズ社)を出版したトリガーポイント理論の創始者の一人です。レウィットとサイモンズが共同の論文(※1)を書いていたことを初めて知りました!!!
 
 カレル・レウィットとデビッド・サイモンズの提唱した「ポスト・アイソメトリック・リラクゼーション・エクササイズ(Post Isometric Relaxation (PIR) exercise)」とは、オステオパシー分野でオステオパシー医師フレッド・ミッチェル(Fred L.Mitchell:1909-1974)が1948年に開発した「マッスル・エナジー・テクニック(MET:Muscle Energy Technique)」の変法のようです・・・。正直に言って、この情報はまったく知りませんでした。
 
以下、『ポスト・アイソメトリック・リラクゼーション』Post isometric Relaxationのホームページより引用。
「『ポスト・アイソメトリック・テクニック』は、ミッチェルらによって、開発され、レウィットによって修正された。レウィットは、機能を邪魔している筋肉の緊張の増加を減らすことを感じており、ストレッチは必要ないとしていた。レウィットは、ストレッチは、形態学的に結合組織が変化したような不可逆性の拘縮にのみ必要だとしている」
Postisometric technique as developed by Mitchel et al., was modified by Lewit. Lewit feels that to reduce increased muscle tension due to disturbed function, stretch is not really necessary. He feels that stretch is only necessary if there are "irreversible contractures due to morphological connective tissue change."
 
「プロセデュワ(手順)は次のようである」
The procedure is as follows: 
 
「1.筋肉を最大の長さまで、ストレッチすることなしに、ゆるみをまきとる。最小限に、痛み無く行う」
1.Bring the muscle to its maximum length without stretching, taking up the slack. There should be only minimal or no pain.
 
「2.患者は最小限のちからで抵抗し(等張性に)、そして、10秒間呼吸する。」
2.The patient is asked to resist with only minimal force (isometrically) and to breathe in for 10 seconds.
 
「3.患者は、それからリラックスするように言われて、ゆっくりと息を吐き出す。これは、医師にとって待つことが重要であり、リラクゼーションを感じさせる。医師はリラクゼーションが起こるまで10~20秒待つ。純粋なリラクゼーションのために関節可動域が増大する。」
3.The patient is then told to 'let go' (relax) and exhale slowly. It is important for the doctor to wait and feel the relaxation. The doctor could wait 10 to 20 seconds or longer as long as relaxation is taking place. Due to pure relaxation there should be an increase in the range of motion.
 
「4.もし、患者がリラックスすることが難しければ、患者にリラックスさせるまえに等張性の状態で30秒待つ」
4.If the patient has difficulty relaxing, hold the isometric phase for 30 seconds before having the patient 'let go.'
 
「5.普通、3回から5回は、自発的ストレッチをそれぞれのセッションで加えることが必要である。」
5.Usually three to five times is all that is necessary to obtain spontaneous stretch each session.
 
「6.呼吸にあわせて、患者は目だけ見上げる。これはインスピレーションを容易にして、筋肉を楽にする。リラックスを助けるために、息を吐き出す間、患者に下を見させる」
6.Along with the breathing, having the patient look up (eyes only). This helps facilitate the inspiration, which facilitates the muscle. Have the patient look down during expiration to aid in relaxation.
以上、引用終わり。
 確かに、この手技はオステオパシーの「マッスル・エナジー・テクニック(MET:Muscle Energy Technique)」そっくりです。
これは理学療法の世界では、「等尺性収縮後の筋伸長法(PIR:Post Isometric Relaxation)」と呼ばれて、文献まで出版されているようです
(伊藤 俊一著 「Post isometric relaxation―等尺性収縮後の筋伸張法」 http://www.amazon.co.jp/dp/4895903176)。
 
台湾の2015年論文では【筋筋膜トリガーポイントの治療】として、
(1)ジャネット・トラベルによる「塩化エチルスプレー」と「ストレッチ」、
(2)レウィットとサイモンズによる「ポスト・アイソメトリック・リラクゼーション・エクササイズ(Post Isometric Relaxation (PIR) exercise)」、
(3)サイリュアックスによる「ディープ・フリクション・マッサージ」、
 
その次に、
(4)アイダ・ロルフの「ロルフィング(Rolfing)」
(5)筋膜リリース・テクニック
(6)加瀬建造先生の「キネシオ・テーピング」が挙げられています。
 
以下、引用。
「ロルフィング法は、『Fascia(膜・筋膜)』の粘弾性(ヴィスコエラシティviscoelasticity)に焦点を当てている。このマニュアル療法は、硬いタイプのコロイド筋膜をより液体形態のものにすることで機械的摂動を起こします。この筋膜は、豊富な侵害メカノレセプターを含みます。ゴルジ受容体を刺激する筋膜リリース・テクニックは、筋骨格の緊張を変えるように誘導します。最低でも、固有受容の増大による機能障害は減少します」
Rolfing method introduced focuses on viscoelasticity of the fascia . By this manual treatment, firm type of colloid fascia due to mechanical perturbation can be transduced to a more liquid form. The fascia contains abundant innervation with mechanoreceptors. Fascia releasing technique with stimulation of Golgi receptors can lead to changes in the underlying tension of the skeletal muscle. At least, by increasing local proprioception, status of dysfunction will be reduced.
 
「最近、いくつかの研究で、筋筋膜性疼痛症候群へのキネシオテーピングの治療効果が研究されています」
Recently, few studies researched the therapeutic effect of Kinesio Taping (KT) method as a new therapy of MPS and with hope of self-application for this condition.
以上、引用終わり。
 キネシオ・テーピングによる「筋筋膜性疼痛症候群」が効果的であるか、どうか?については、エビデンスが十分ではありません。この2015年台湾論文では、考えられるメカニズムと実験報告をまとめています。加瀬建造先生による「皮膚の持ち上げによるリンパ循環の改善」理論による効果なのか、筋膜リリース的な効果なのか、プラセボ効果なのはハッキリしません。また、鍼と違って、キネシオテープはプラセボをつくりにくく、二重盲検法によるランダム化比較試験が困難なようです。キネシオ・テーピングについては超音波を使った基礎研究がいくつかあるようです。
 
 「Fascia(膜・筋膜)」の研究は、わたしにとっては、
(1)トリガーポイント鍼理論。マイオフェーシャル・ペイン(筋筋膜痛)の解明が、第一義です。「Fascia(膜・筋膜)」の研究はジャネット・トラベルが「マイオフェーシャル・ペイン(筋筋膜痛)」を書くまで、西洋医学では、マジメに取り上げられていませんでした。
 
 同時に、(2)「ストレッチの理論的整理」の問題があります。わたしは筋骨格系疾患の臨床にはトリガーポイント・ストレッチを使っています。トリガーポイント理論の創始者ジャネット・トラベルも『スプレー・アンド・ストレッチ』を使っていました。しかし、現状では、ストレッチの理論は混乱しています。オステオパシーの「マッスル・エナジー・テクニック」や「ストレイン・カウンターストレイン」というストレッチ系手技療法と、トリガーポイント・ストレッチの関係は 「Fascia(膜・筋膜)」研究を使って整理できそうです。今回のレウィット&サイモンズのストレッチは貴重な情報であり、この個人的なFasciaリサーチのターニングポイントになると予感しています。
 
 あとは、「結合織マッサージ」、「マニュアル・リンパ・ドレナージュ」、「ディープ・フリクション・マッサージ」、「マイオフェーシャル・リリース」といった理学療法系マッサージや「ロルフィング」などのボディワークの理論的整理です。(3)ボディワーク・手技療法の理論的整理、です。
 これらの手技療法は、わたしの中の評価は、「きちんとしたマッサージの基礎知識と技術が無いヒト(理学療法士と無免許のシロウト)がやる『マッサージもどき』」(笑)というヒドイ評価だったのですが、少しは効いている可能性がありそうです。Fasciaリサーチは、これらのソフトなマッサージや吸玉・刮サの理論的整理の意味もあります。