alternativemedicine

Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

緑内障の鍼とエビデンス

2013-06-10 | 西洋医学的鍼

コクラン共同計画の2013年5月31日発表のシステマティック・レビュー
「緑内障のための鍼(Acupuncture for glaucoma.)」 (PDF)
ジュリー・スタイン眼の研究所。カルフォルニア大学ロサンゼルス校。

コクランのサマリー
Acupuncture as a treatment modality for patients with glaucoma

【著者の結論】
現時点で、緑内障の治療に鍼を用いることをサポートするような信頼できる結論をデータから導き出すのは不可能である。 倫理的観点から、鍼単独と標準的な緑内障治療、またはプラセボと比較するのは、標準的な治療が既に確立されている国々においては正当化できたないためである。なぜなら、ほとんどの緑内障患者は非伝統医学を用いない眼科医によって治療されており、臨床においては、治療者と患者の好みに基づいた臨床的決断が行われるであろう。七つの中国における臨床試験が将来、このわれわれの結論を変える可能性もある。

AUTHORS' CONCLUSIONS:
At this time, it is impossible to draw reliable conclusions from available data to support the use of acupuncture for the treatment of glaucoma. Because of ethical considerations, RCTs comparing acupuncture alone with standard glaucoma treatment or placebo are unlikely to be justified in countries where the standard of care has already been established. Because most glaucoma patients currently cared for by ophthalmologists do not use nontraditional therapy, clinical practice decisions will have to be based on physician judgments and patient preferences, given this lack of data in the literature. Inclusion of the seven Chinese trials in future updates of this review may change our conclusions.

 


手太陰肺経(5)

2013-06-06 | 経絡弁証

 今週は忙しすぎる・・・。

 昼は、経渠(LU8)、列欠(LU7)の後、手太陰肺経の流注を講義。手陽明大腸経の商陽(LI1)と二間(LI2)を講義する。
 経渠(LU8)の刺鍼角度。

 列欠(LU7)の取穴法を説明するのに、かなりの時間を使った。
 列欠(LU7)では、四総穴としての頭痛への使い方を症例をもとに説明する。任脈の八脈交会穴としての例は、生殖器疾患として説明する。実際の症例としては、梅核気を列欠(LU7)ー照海(KI6)で治療した症例を紹介する。
 絡穴については、表裏経を治療し、慢性病を治療する程度の説明でおさえる。絡脈(大絡・絡・細絡)の概念を一度に説明すると、混乱する。

 『霊枢・経脈篇』の手太陰の絡(大絡・列缺)の説明では、「手太陰之別絡、名曰列缺。起於腕上,分間、並太陰之経、直入掌中、散入魚際。其病実,則手鋭掌熱、瀉之。虚,則欠、小便遺数、補之。去腕寸半、別走陽明也」となっている。
 つまり、列欠(LU7)で、小便頻数を治療するというのは、肺の絡脈:列欠の虚だと思う。 

 手陽明大腸経への列欠(LU7)の連絡を解説し、手陽明大腸経の流注の解説を行う。 これは、今週の「あはきワールド」の浦山玖蔵先生の商陽(LI1)に関する論述を超えるものは無いのではないか?
 商陽(LI1)といえば、咽喉痛というのが普通の認識で、わたしもそうだった。 『鍼灸甲乙経』では耳病を挙げている。偏歴でも耳病が挙げられている。これも、手陽明の絡脈:偏歴と耳のつながりなのではないかと考えている。


手太陰肺経(4)鹿児島の尺沢

2013-06-05 | 経絡弁証

 むかし、経絡治療夏季大学に行った際に、最も驚いたのは、鹿児島針灸専門学校の鍼灸師さんが取った「尺沢(LU5)」穴の位置だった。上腕二頭筋腱の尺側に取穴する「尺沢(LU5)」とのファースト・コンタクトだった。

「経流経穴の問題点 (2)」
濱添 圀弘
『自律神経雑誌』Vol. 22 (1975) No. 2 46-49(PDF)

 上記の論文は、まさに、『霊枢』や『明堂』の記述を根拠に、尺側の「尺沢(LU5)」について論陣をはられている。 

 鹿児島針灸専門学校といえば、その独自の「経穴学であり、ホームページ上でも
『鹿児島鍼灸専門学校の歴史の象徴ともいえる、独自の「経穴学」の教科書。「古来、鹿児島には密貿易により、他では手に入らない鍼灸の古典が薩摩藩に入っていました。伊助は肥後盛昌先生からそれらのすべてを受け継ぎ、さらに伊助の弟子である松本四郎平がこれらをもとに著した「鍼灸孔穴類聚」が、本校の経穴学の元になっています」(久木田隼人学校長)。この教科書は、「鍼灸孔穴類聚」を原本として濱添圀弘氏が新たに書き改めたもの。同校では東洋療法学校協会の「経穴学」の教科書と併用で使われている

  と書かれている。松本四朗平の『針灸孔穴類聚』は、2011年に績文堂より再刊されている。
 濱添圀弘先生は、南山堂から『針灸医学ー経絡経穴の近代的研究』、エンタプライズから『針灸治療法の再構築』など多数の著書を書かれている。

 確かに、古典の記述を厳密に精査していくと、尺沢(LU5)は、上腕二頭筋の尺側であるような気がしてくる。これは、一度、臨床で追試していかないと・・・。


医心方と明堂

2013-06-05 | 東洋医学

 日本最古の医学書『医心方』と『明堂』について、少し調べたら、本当にややこしい・・・。覚えているうちにメモ。

 まず、『明堂』について、真柳誠先生の『主要医薬文献史1 「内経」系医書および研究書』がもっとも詳しい。
 また、手に入りにくいが、長野仁先生の『古医書を読むための文献学基礎』(月刊『東洋医学』1991年Vol.21No.7 47-51)は、『明堂』についての最良の論文だと思われる。平成3年8・9月号から10月号、11月号、12月号。平成4年2.3月号と連載されている。

 『黄帝内経明堂』は、 『旧唐書』経籍志・『新唐書』芸文志等に記述がある。
楊上善は、これらをもとに『黄帝内経明堂類成』を編纂したと考えられる。これが日本に伝わったのが、仁和寺本といわれる仁和寺に伝わった『黄帝内経明堂』の巻1(肺経のみ)。
※楊上善撰注『黄帝内経明堂』、『東洋医学善本叢書』3所収、大阪・東洋医学研究会影印、1982。

  前田育徳会尊経閣文庫の重要文化財『黄帝内経明堂』巻一には、楊上善の序文も載っている(大東文化大学の林克教授による翻訳あり)。これは、日本内経医学会から出版されているが、絶版。
※『黄帝内経明堂』(小曽戸丈夫輯復、日本内経医学会編、北里研究所東洋医学総合研究所医史学研究部刊、1999年)

 敦煌から発掘された伝本(ロシア・エルミタージュ博物館のオルデンブルグ文書、レニングラード・アジア民族研究所所蔵)もある。
 おそらく前漢から後漢時代に『明堂』は成書となった。中国の黄龍祥先生が『黄帝内経明堂経輯校』 中国医薬科技出版社(1987年)を編集・出版している。 

 現在の経絡経穴のもとになった皇甫謐(215-282)の『鍼灸甲乙経』は、 『素問』『霊枢(九巻)』、『明堂孔穴針灸治要』を編纂したといわれ、この『明堂孔穴針灸治要』が『明堂』といわれている。

 日本では、桑原陽二先生が、『経穴学の古代体系=明堂経を復元する』、績文堂(1991年)を出版されている。

 『医心方』については、杉立義一先生の『医心方の伝来』(思文閣出版)がある(未見)。『医心方』の経穴についての記述は、『明堂』を下敷きにしている。

穴位主治の伝承における医心方の意義
光藤 英彦
日本東洋医学雑誌Vol. 44 (1994) No. 3 363-375(PDF

上記の論文は、 『医心方』と『黄帝内経明堂類成(仁和寺本)』の条文を比較している。

帝京大学の閻 淑珍(いえん・しゅちん)先生が京都大学の博士論文「『黄帝明堂経』系統の継承と変化ー六朝から唐代までの針灸資料を手掛かりに(ABSTRACT)」(2010)を書かれている。

閻淑珍先生は、以下の論文も書かれている。

閻 淑珍「『明堂経』の流傳と現状
『歴史文化社会論講座紀要』(2011)8pp.1 - 19

この論文は非常に参考になる。

 深谷伊三郎先生の『黄帝明堂灸経釈義』は、『太平聖恵方』(北宋時代)に収められ、元代のトウ桂芳が『子午流注鍼経』『鍼経指南』『灸膏肓兪穴法』といっしょに出版された『黄帝明堂灸経』という灸の専門書であり、楊上善の『黄帝内経明堂類成』とは、全く違う文献。


6月のお灸サークル予定

2013-06-04 | サークル

【お灸サークルの6月の短期目標】

督脈通陽法を実際にできるようになる。

小児鍼のいちょう鍼の操作をできるようになる。

生姜灸とビワの葉灸を実際にできるようになる。

 

【お灸サークルのスケジュール】

日程

内容

06月03日(月)

督脈通陽法の実際(温灸,生姜灸)。小児鍼(いちょう鍼)

06月10日(月)

督脈通陽法の実際(温灸,生姜灸)。小児鍼(いちょう鍼)

06月17日(月)

督脈通陽法の実際(温灸,生姜灸)。小児鍼(いちょう鍼)

06月24日(月)

びわの葉灸(びわの葉は各自、準備してください)

いちょう鍼、温灸器はサークルで貸し出します。サージカルテープせんねん灸などの消耗品は自己負担とします。

 

【お灸サークルの内容】

16451650

連絡

16501715

ペアの片方が

①遠隔治療として11円療法 

②伏臥位で軽擦した部分に督脈通陽法で生姜灸・温灸
③局所・全身にイチョウ鍼

→④イチョウ鍼で探した反応点・圧痛点に施灸(八分灸、糸状灸、せんねん灸など自由に使って良い)

17151740

25分ずつで交代

17401745

後片付け

 


手太陰肺経(3)

2013-06-04 | サークル

列欠(LU7)について。

列欠の治効について
清水 千里
『日本東洋醫學會誌』Vol. 12 (1961) No. 2 64-67(PDF
※ 清水千里(しみず・ちさと)先生による列欠の症例。
A.頭項部のコリ。B.尿意頻数に列欠(LU7)の灸3壮。C.上腕神経痛。
D.扁桃炎、咽喉痛。E.頸筋強直による首の運動障害。F.母指痛。
【考察】項部が凝ってジメジメしておさえられたような感じのする頭痛。神経性の尿意頻数。

「鍼灸諸賦を追究して」
鎌田 秀吉
『日本鍼灸治療学会誌』Vol. 9 (1960) No. 2 42-45,33(PDF
※雑病穴法歌や馬丹陽天星十二穴雑病歌などを根拠に難治性の頭痛に列欠(LU7)と太淵(LU9)の瀉法を試みた症例3例の報告。

「漢方・鍼併用療法が奏効した慢性鼻閉塞の一例」
篠原 明徳, 清水 寛
『日本東洋医学雑誌』Vol. 46 (1995) No. 2 
315-318(PDF
※強い鼻閉を「手太陰肺経と手陽明大腸経の気滞」と弁証して、手太陰肺経の絡穴であり表裏経を通じさせる列欠(LU7)を迎香(LI20)と配穴し、葛根湯加川きゅう辛夷と併用した症例報告。



fish acupuncture

2013-06-04 | 西洋医学的鍼

イギリスの新聞『ザ・タイムス』の鍼の記事を読んでいたら

寿司のマグロの風味を良くするために使われる鍼
Acupuncture used to improve flavour of tuna for sushi)」
という記事があった。 

 これは、大分の「おさかな企画」という会社の卜部俊郎社長が開発した技術で、特許もとられている。わたしも10年以上前にテレビで見て知った。

特許 「ツボを突いて魚を眠らせる」1998年10月出願。

CNNの記事でも
「やわらかな心を持った料理人が魚を鍼でついて寿司にする
Soft-hearted chef sticks it to sushi)」
という1999年の記事にしている。

インターネット上でも2001年にアップされた動画で、卜部社長が魚を鍼で眠らせている。

動画

2010年の『ザ・グローブ・アンド・メール』という新聞では、

「極東よりの最高に新鮮な魚!
The freshest fish from the Far East)」

という記事になっている。カナダで、この「快眠活魚」という魚の鍼の技術が2007年から取り入れられたことが報道されている。

しかも、2010年の『エクザミナー』紙で、

「サカナのための鍼:PETAはこれを愛するだろう
Acupuncture for fish - PETA will love this one)」 
という記事にまでなっている。 


生姜灸

2013-06-03 | 灸の研究

生姜灸では、中村温灸院の中村万喜男先生が有名です。

五十肩と生姜灸
中村 四郎
日本鍼灸治療学会誌
Vol. 8 (1958) No. 1  23-24(PDF

小児に対する生姜灸の治療
(※サークルで述べた生姜灸のサイズを記入してある論文です)

中村 万喜男
日本鍼灸治療学会誌
Vol. 13 (1964) No. 3 32-36(PDF

頸肩腕症候群と生姜灸治験
中村 万喜男
日本鍼灸治療学会誌
Vol. 15 (1966) No. 1  373-379(PDF

痔疾患に対する生姜灸の治験
中村 万喜男
日本鍼灸治療学会誌Vol. 17 (1968) No. 3 
 62-65(PDF


デイリーメールの記事「鍼、ホットフラッシュをクールダウンさせる新兵器」

2013-06-03 | 西洋医学的鍼

2011年3月イギリスの新聞『デイリーメール』
「鍼、ホットフラッシュをクールダウンさせる新兵器
Acupuncture, the new weapon to cool down those hot flushes)」

これは、『ブリティシュ・メディカル・ジャーナル』の『アキュパンクチャー・イン・メディシン』2011年3月号に掲載されたトルコの研究者たちの論文にもとづく記事。

The effect of acupuncture on postmenopausal symptoms and reproductive hormones: a sham controlled clinical trial
Sunay D, Ozdiken M, Arslan H, Seven A, Aral Y.
Acupunctcure in Medicine. 2011 Mar;29(1):27-31.

53名の閉経後の女性を真鍼と偽鍼に無作為にわけて、更年期評価指数やエストラジオールやFSH、LHなどの女性ホルモンを治療前と治療後で比較した。治療後、真鍼は偽鍼と比較して、明らかに更年期評価指数や心理・身体尺度で改善した。結論として、「鍼は偽鍼と比較して閉経期の愁訴を減らすのに効果的であり、閉経期の徴候の治療において代替医療は考慮されるべきとみなすことができる(Acupuncture was effective in reducing menopausal complaints when compared to sham acupuncture and can be considered as an alternative therapy in the treatment of menopausal symptoms.)」と論じている。