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alternativemedicine

Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

Eosinophilic gastroenteritis

2014-07-10 | 中医学

酸球性胃腸炎(Eosinophilic gastroenteritis)】

 病変が大腸に限局している場合には、「好酸球性腸炎(Eosinophilic colitis)」と呼ぶこともある。

厚生労働省の好酸球性食道炎・好酸球性胃腸炎研究班
 http://ee.shimane-u-internal2.jp/23.html

好酸球性胃腸炎の診断指針

1.症状(腹痛、下痢、嘔吐等)を有する。
2.胃、小腸、大腸の生検で粘膜内に好酸球主体の炎症細胞浸潤が存在している。
(20/HPF以上の好酸球浸潤、生検は数ヶ所以上で行い、また他の炎症性腸疾患を除外することを要する)
3.腹水が存在し腹水中に多数の好酸球が存在している。
4.喘息などのアレルギー疾患の病歴を有する。
5.末梢血中に好酸球増多を認める。
6.CTスキャンで胃、腸管壁の肥厚を認める。
7.内視鏡検査で胃、小腸、大腸に浮腫、発赤、びらんを認める。
8.グルココルチコイドが有効である。

※1と2または3は必須
これら以外の項目も満たせば可能性が高くなる。

好酸球性胃腸炎の治療指針
1.プレドニゾロン20-40mg/日の内服が行われることが多いが投与量、減量スピード、中止の時期、治療抵抗例に対する対応、再発、再燃時の対応 については一定の見解はない。

好酸球性胃腸炎の診断と治療
木下 芳一, 石原 俊二, 天野 祐二, 清村 志乃, 多田 育賢, 丸山 理留敬
日本消化器内視鏡学会雑誌
Vol. 54 (2012) No. 6 p. 1797-1805
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/54/6/54_1797/_article/-char/ja/

Eosinophilic gastroenteritis: An unusual type of gastroenteritis
Sachin B Ingle and Chitra R Hinge (Ingle)
World J Gastroenterol. Aug 21, 2013; 19(31): 5061–5066.
Published online Aug 21, 2013
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3746377/

「①食物抗原となりやすいミルク、タマゴ、ピーナッツ、ナッツ類、小麦、大豆、海産物の6種の食品を除く除去食
②アレルゲンの除去食
③成分栄養食
④低カロリー低脂肪食やグルテン除去食」が試みられているが、エビデンスは十分ではない


特別講演会のお知らせ

2014-07-03 | 中医学

7月13日(日曜日) 10時~16時
関西中医鍼灸研究会
特別講義: 戸ヶ崎 正男(とがさき まさお)先生 「私の診察診断治療の考え方と実際」
  講義内容は、戸ヶ崎正男先生によると「私が考えている診察診断、治療について解説し、日頃私が臨床をしている流れをモデルを立ててやってみるつもりです」というものです。


場所がいつもと違います。参加費は同じ
ドーンセンター (大阪府立男女共同参画青少年センター)
〒540-0008 大阪市中央区大手前1丁目3番49号
京阪「天満橋」駅下車。東口方面の改札から地下通路を通って1番出口より東へ約350m。地下鉄谷町線「天満橋」駅下車。1番出口より東へ約350m。JR東西線「大阪城北詰」駅下車。2番出口より土佐堀通り沿いに西へ約550m。


【講義の当日の流れ】
10時~11時:戸ヶ崎先生の「私の診察診断治療」の講義
11時~13時:モデル患者で(できるだけ複雑で難しい疾患を持つ人)を立てて診察から診断、治療の実際を90~120分くらいかけて実際を行う(質疑応答を含む)。
13時~14時:昼食をとりながら、懇親会。
14時~14時30分:ツボの四型とその変え方の講義
14時30分~16時まで:比較的簡単な人をモデルにして標治的な治療でツボのⅠ~Ⅳ型を鍼あるいは灸でどのように変えるか実際に行なう。


運気論

2014-05-30 | 中医学

今年は甲(きのえ)・午(うま)。
甲(きのえ:木の兄)は陽干であり、五行は木であり、陽木なので足少陽胆経と対応する。
午(うま)は、手少陰心経と対応する。

甲午の年は、少陰君火司天、陽明燥金在泉、土運大過である。
今年度の前半は少陰病、後半は陽明病を考える。土運大過なので、土剋水で、腎虚に配慮する。

2014年5月21日から小満である。
主気は少陽相火の季節に、少陰君火司天であり、 「三之気、天政布、大火行、庶類蕃鮮、寒気時至。民病気厥心痛、寒熱更作、咳喘目赤」となっている。

五行の火が金を相剋するので、肺・大腸の病が増える。胸中に熱がこもってイライラして、皮膚が痛み、悪寒発熱して喘咳する。鼻水や鼻血、くしゃみ、吐き気、尿の色が変化する。はなはだしいと潰瘍や浮腫となる。肩背痛や肩痛、上腕痛となり、欠盆の中が痛む。心痛し、お腹がはり、病の本は肺にある。

実際、備忘録として書いておくが、自分自身が咳と腹部膨満、ガスがたまり、胸部痛や右肩の痛みに苦しめられている。今年度に関しては、五運六気が参考になる。この肺病をどこから治療するかが問題となる。


麻黄附子細辛湯と少陰病

2014-05-20 | 中医学

傷寒論の太陽病、少陽病、陽明病は陽証。
太陰病、少陰病、厥陰病は陰証。


寒邪が臓腑経絡に侵襲したのが少陰病。心腎陽虚となる場合がある。

少陰病、脈微細、ただ寝んと欲するなり」は心陽虚の状態。微脈は陽虚。

麻黄附子細辛湯証は、表裏双解。つまり、少陰心・腎とともに太陽経に風寒の邪気がある。
少陰病、始めてこれを得て、かえって発熱し、脈沈のものは麻黄附子細辛湯これを主る」
実際には、高齢者がインフルエンザやカゼをひいた場合、花粉症など鼻アレルギーによく使われる。疲労感や咽喉痛に麻黄附子細辛湯を用いた症例報告もある。


麻黄附子細辛湯
(麻黄、附子、細辛)
効能:助陽解表
主治:陽虚、風寒表証
病機:陽虚の体質の者が風寒を感受し、邪が虚に乗じて太陽と少陰(心腎)を侵犯した状態であり、表寒と裏寒を呈している。双感・両感と称される。悪寒、発熱、無汗、頭痛は風寒表証であり、陽気が衰弱で邪正相争がはなはだしくないために発熱が軽度であり、衛気の宣発が微弱であるから悪寒が強い。寒邪により心腎の陽気が阻滞されて、身体がだるい、眠い、横になりたい、四肢の冷えなどを呈する。表証がありながら脈が沈であるのは、陽虚で正気が表に向かう勢いが乏しいからであり、脈力も弱い。舌質淡、舌苔白は陽虚を示す。

 


補腎論

2014-05-19 | 中医学

先日の研究会の復習。

【 「補腎」とは、どういうことか?】
腎は蔵精を主り、先天の精を蔵する。先天の精は寿命なども関係している。
補腎すれば、寿命は延びるのか?
補腎の「八味地黄丸」を飲めば寿命は延びるのか?
腎経の原穴である太渓や背部兪穴である腎兪に毎日鍼の補法すれば、補腎できるのか?

 江戸時代の医学者たちは、補腎の八味地黄丸など附子の入った製剤をEDなどに使うときに、「拝借丸(はいしゃくがん)」と呼んでいた。これは、「元気を拝借する」という意味がある。これは、火の勢いがなくなったロウソクをイメージするとわかりやすい。ロウソクに油を注げば、一時的に火の勢いは強くなり、部屋の中は明るくなる。EDの状態は改善される。しかし、ロウソク自体は、ロウが溶けるのが早くなり、早く消えてしまうだろう。もともと附子はトリカブトであり有毒であり、毎日飲むものではありえない。

 先天の精は後天の精(水穀之精)によって補われている。本来は、良い食事、良い睡眠、良い呼吸をしていれば、自然に先天の精は補われる。
 先天の精(両親)は両親からもらったもので増やすことはできない。先天の精は寿命や身体の強さに関係している。現実として、長寿家系と短命家系は存在する。
 後天の精は、水穀の精微が代表的で、良い呼吸で肺から天の気を吸入し、脾胃から水穀の精微を吸収すれば、後天の精は強くなる。
 生まれつき短命家系の人でも、良い食事をして良い呼吸をすれば、長生きできるかも知れない。しかし、長寿家系の人でも飢饉の際のアフリカに生まれて栄養失調状態なら短命となる。これが先天の精と後天の精の関係である。
 これは西洋占星術と東洋占星術の「運命」という言葉に似ている。「命」というのは先天であり、変えることができない。「四柱推命」では、生まれ年月日時から、先天の「命(めい)」を分析する。しかし、「運」は後天であり、変えることができる。西洋占星術のホロスコープでは運命を知ることはできても変えることはできない。

 中医学における「補腎」、あるいは「八味地黄丸(六味地黄丸)」による補腎や、太渓に補法をする補腎で寿命を長くすることはできない。では、何をやっているのか?

【補腎陰の六味地黄丸】
 六味地黄丸は、地黄(かんじおう)、山茱萸(さんしゅゆ)・山薬(さんやく)という3つの補剤「三補」と、沢瀉(たくしゃ)・茯苓(ぶくりょう)・牡丹皮(ぼたんぴ)という「三瀉」の6つの生薬から成り立つ。
 ここで、ポイントとなるのは、補陰剤である地黄・山茱萸・山薬と同時に「利水剤」である沢潟・茯苓と瀉熱剤である牡丹皮を配合していることである。補陰と利水を同時に行うことで、これはエンジンをグルグルと回す意味がある。何万キロも走った中古車を久しぶりに運転して、エンジンがストップしたことをイメージしたら、わかりやすい。エンジンがストップした車に対して、エンジンや車ごと取り替えたら、また何万キロも旅行できる。しかし、自分の身体を取り替えることはできない。そこで、ガソリンを入れ、良いオイルを入れ、人力で押しながら、エンジンをかけることで、もう少し走ることができて、走っているうちに、エンジンが温くなって、調子が良くなる可能性がある。つまり、古くなったエンジンをグルグル動かすことで、調子を良くするのが六味地黄丸の補腎である。

【補腎陽の八味地黄丸】
 六味地黄丸に補陽の附子と肉桂の2味を加えたのが八味地黄丸である。ここでは三補三瀉で結果的に補陰するのに加えて、同時に補陽する。補陰しつつ、補陽する。

【温陽利水の牛車腎気丸】
 八味地黄丸に利水の牛膝と車前子の2味を加えたのが牛車腎気丸である。 補陰しつつ、補陽しつつ、利水する。


文献調査

2013-11-11 | 中医学

 

日時:11月16日土曜日 18時~21時
場所: 大阪市立総合生涯学習センター 第一研修室(大阪駅前第2ビル5F)
特別講師:戸ヶ崎 正男先生
詳細は関西中医鍼灸研究会
 http://www001.upp.so-net.ne.jp/yuihari/top.htm

 

2003年
四型分類(異常な場の形態特性)と診断、治療との関係について
『鍼灸OSAKA』19巻3号73-78


鍼響の本質及び鍼響と四型分類との関係について
『鍼灸OSAKA』19巻4号61-66

ツボを虚実で的確に捉えられれば適切な補瀉が可能になる
『医道の日本』 62(7): 139-141, 2003.

2006年 
既往症のある足関節の治療で, 十二指腸潰瘍が寛解した

『医道の日本』 65(3): 59-61, 2006.
 
2007年
臨床家にとって経穴とは何か~WHOにおける経穴標準化をうけて~
『医道の日本』 66(2): 11-26, 2007. 

効かせる鍼をするには 切経探穴による異常な場(ツボ)に応じた刺鍼技術を

『鍼灸OSAKA』Vol.23 No.2  39-45 2007

刺鍼手技(鍵)と刺鍼の場の状態(鍵穴)との関係について
『伝統鍼灸』33(2):76-80、2007 

灸(透熱灸)の補瀉について
『伝統鍼灸』34(1):66、2007 

2008年
「触診上達の秘訣」
『医道MOOKシリーズ002鍼灸臨床のコツ』医道の日本社、133-136

2009年
正穴, 奇穴はどうやって分かれたの?」 

『医道の日本』 68(5): 114-117, 2009.

ツボの状態と刺鍼手技との関係
『伝統鍼灸』36(2):44-45、2009 

経絡治療の学術的意義並びに普及運動の真の意味
『社会鍼灸学研究』3:73-86

異常なツボ及びその変化(正常化)を押手によってどのように捉えるか
 『伝統鍼灸』35(2):79-83、2009. 

自然治癒力を医療の中核に 任督中心療法、ツボの四類型から見えてくるもの
『東洋医学鍼灸ジャーナル』8巻、13-36 2009.

臨床家としての柳谷素霊再評価」13-17
未来鍼灸のための素霊学へ」72-74
『柳谷素霊選集』を読んで」90-93
『柳谷素霊に還れ』 2009年7月

2010年
灸(透熱灸)の補瀉について
 『伝統鍼灸』37(1):68-73、2010. 

伝統鍼灸の真髄を探る
 『伝統鍼灸』37(2):106-107、2010.  

ツボの状態と刺鍼手技との関係
 『伝統鍼灸』36(3):93-98、2010.
  
経絡治療の学術的意義並びに普及運動の真の意味 経絡治療の社会的意義」『社会鍼灸学研究』4:100-113

効果を出す鍼灸の技
『鍼灸OSAKA』Vol.100/101 No.4/No.1 17-40 2010 

効かせる鍼を身につけるには
 『鍼灸OSAKA』Vol.100/101 No.4/No.1 41-46 2010

効かせる灸術を身につける
  『鍼灸OSAKA』Vol.100/101 No.4/No.1 173-178 2010

2011年
「治未病」の過去・現在・そしてこれから
『全日本鍼灸学会雑誌』Vol. 61 (2011) No. 4 392-410

病態の診方と治療上の発想の転換
『医道の日本』 70(6): 51-55, 2011.

2012年

思うツボ』ヒューマンワールド2012-06-01
 
歪みの大本が背部の督脈上に現れることがわかってきました
『医道の日本』 71(7): 48-55, 2012.

2013年
 「鍼法を名づけることがなぜ重要か
『医道の日本』 72(2): 12-17, 2013.

武術を基にした養生法 太極拳
『医道の日本』 72(6): 25-25, 2013.

DVDでよくわかる経絡按摩-切経探穴のための手技-伝統医学における身体診察の基礎づくり』 ヒューマンワールド 2013年10月

 


沈自尹先生の中西医結合研究

2013-09-11 | 中医学

http://v.youku.com/v_show/id_XMzk2NzE2ODQ4.html

↑中西医結合研究の第一人者、沈自尹先生の動画を発見!
 国立上海医学院(上海医科大学)に入学、共産党への入党。国民党のブラックリストに載っていたことなど、まさに大河ドラマ!
 中西医結合研究への動機や、金匱要略などの古典を学び、老中医・姜春華先生との師弟関係など、これこそ中医学のホントウの歴史・・・。1954年の共産党の中医政策、1963年に最初の喘息の患者を補腎の治療で直したこと、1965年の中西医結合学会、文化大革命による停滞、四川省での下放の経験と、その臨床経験を活かした処方と研究、腎の現代医学的研究・・・。そして、沈先生の82歳でボウリングしている姿に感動した!この動画は本当に見て良かった!


『腎の現代医学的研究 』上海医科大学 (著), 「腎」邦訳委員会 (著) 、中国漢方

 わたしは20代の頃、『腎の現代医学的研究』という文献に出会い、これはメチャクチャ面白かった。腎陽虚腎陰虚を現代医学的に分析して、中医学の「腎」を視床下部ー脳下垂体ー副腎皮質系統から分析するという考え方に影響を受けた。日本では江部康二先生や江部洋一郎先生が追試の論文を発表されている。

腎陽虚・腎陰虚の患者における尿中17 OHCS, 17 KS値について
江部 康二, 江部 洋一郎, 宮本 龍輝
『日本東洋醫學會誌』Vol. 32 (1981) No. 3 143-148



『中西医結合研究叢書 虚証研究
顧安望、沈自尹、王文健、主編、上海科学技術出版社、1991年10月第1刷

↑ 中国で、この文献を見つけたときは、嬉しかった。腎虚だけでなく、脾気虚心気虚陰虚火旺を分析していた。ただ、腎の現代医学的研究ほどクリアーに理解できなかった。これは私の知識不足。



沈自尹、王文健著「中西医結合の重要性」
『中医臨床』Vol.26-No.1 13-15.2005年3月

↑上記の『中医臨床』に載った論文も凄く、懐かしく、嬉しかった。

 アスピリンを中医学的に瀉熱と分析して、用いた「医学衷中参西録」の著者、張錫純(ちょうしゃくじゅん:1860-1933)の「石膏アスピリン湯」や王清任(おうせいにん:1768-1831)の西洋医学の「脳」の学説からの血府逐オ湯、さらに唐容川(とうようせん:1862-1918)の「血証論」など、特に「オ血学説」を学ぶと、どうしても中西医結合的な視点が必要となる。
 わたしは幸い、中医学を教えていただいた邵輝先生から張錫純や王清任、唐容川などの存在を教えていただいたので、中西医結合的な考え方も、中国伝統医学の重要な一部と思えるようになったが、ラッキーだった。 


9月7日土曜日の講義の反省

2013-09-09 | 中医学

 9月7日土曜日の講義、参加していただいた方には、ご清聴・ご協力ありがとうございました。邵輝先生に教えてもらったことの中で、最も印象的に感じたことが講義テーマでした。自分としては、「鍼灸は公共財」と考えており、この技術はgo public(=未公開情報の公表)すべきことと考えていましたが、ようやく公けの場で発表できて、肩の荷が降りた思いです(別に秘密でも何でもなく、邵輝先生は授業中に教えていましたし、わたしも毎年、学生に教えていました。学外が初めてなのです)。これで、とりあえず、社会的責任が果たせました。

 9月7日土曜日の講義は、自分にとっても技術的チャレンジでした。まず、iphoneとMovile Cinema iE600というプロジェクターを組み合わせて動画を使って講義したのが初回でした。途中、何度か止まるのには焦りましたが、なんとかうまくいきました。技術的に使えるメドが立ちました。
 Movile Cinema iE600プロジェクターは、後期から今年、はじめて担当する気功学の授業で使う予定だったので、その試験投入です(笑)。
 iphone のプロジェクターや、このalternativemedicineのブログと参考文献を連動させるのは、講義の技術的にも新しい試みでした。

 あと、20:00-21:00の1時間の大急ぎで「得気」の体験(ペアの刺鍼と手技)までを行うというのは、かなり、チャレンジングでした。今年度、学生は気功学という授業で半年かけて、同じ内容を体験します。半年を1時間に短縮したので、さすがに無理があり、齟齬があったかと思います。その点は申し訳ないです。それでも、かなり多くの参加者の方が体験まで出来たようなので、良かったと思います。

 『(1)「得気」の西洋医学的研究をジャーナリスティックに紹介』の部分は、予想外に時間がとられて、この部分の説明を予定の半分ぐらいしかできなかったのは大誤算でした。「良い講義は引き算」とわかっているのですが、これは準備段階の大失敗でした。
 しかし、全体の構成から言うと、講義を聞いた方はおわかりでしょうが、『(3)得気の実際を体験』の体験を根拠に、批判するための『(1)』の紹介なので、ここは端折っても良いところ(笑)と講義中に判断して、全力で端折りました(笑)。興味のある方は、参考文献をご自分で精査していただければと思います。鍼鎮痛やデフォルト・モード・ネットワーク、ペイン・マトリックスといった一番、時間をかけて準備した部分が全部パーになりましたが仕方が無いです・・・。

 それでも 『(1)「得気」の西洋医学的研究をジャーナリスティックに紹介』は、いままで日本ではあまり紹介されていない部分にまで踏み込み、1973-2013までの40年間のWestern Medical Acupunctureの歴史を「得気した深い鍼と浅い鍼の違い」という切り口で、紹介できました。これもチャレンジングな試みだったと思います。

 『(2)「得気」における中国伝統医学の概念を整理』 の部分では、「引き算」の原則にしたがって、あっさりと通り過ぎる予定で、実際に通り過ぎました。これは資料末に付けた『鍼灸臨床治療法集』の論文で、完全に論じられている部分だからです。

 『(3)「得気」を体験』では、テイ鍼だけでなく、毫鍼でペアに刺しあって「得気」を体験という部分までを、実際にできたので良かったです。参加者の方が楽しそうに実技をされているのがウレシかったです。
 1時間の実技でしたが、反省点としては、この実技の部分がキモなので、講義2時間・演習1時間のバランスを講義1時間・演習2時間に時間配分すべきだったかな、と感じました。予定としては、講義1.5時間:演習1.5時間だったのですが、講義部分が予想以上に時間がかかりました。よく考えたら、(1)西洋医学の部分を全部、端折っても良かったぐらいです。

 ふだん、わたしは仕事(90分授業)では、講義(lecture)30分:演習(exercise)60分という1:2のバランスで実技を行っていますが、講義:演習のバランスはそれぐらいがちょうどの配分だと再確認しました。これは実技を教える際に、いつも感じていることで、講義無しのexerciseだけでは進歩しないし、lectureだけでは理解できないです。 

 最大の反省点は、質問などのfeedbackの時間がとれなかったことです。 これが最大のマイナスポイントだと思います。

 まあ、このテーマで講義・実技することは2度とないので、次回には生かせないですが、自分的にはチャレンジした分、技術的にも得るものは多かったと思います。 


9月7日の参考文献・参考資料

2013-09-06 | 中医学

以下は、講義の配布資料で触れる文献や参考論文のリンク集です。

注釈1)
The Science of Acupuncture _ BBC Documentary _ Traditional Chinese Medicine
 https://www.youtube.com/watch?v=41vm87qq1KU

木村律、邵輝共訳編『鍼灸臨床治療法集』たにぐち書店
 http://t-shoten.com/BASE/HARI/46.HTM

戸ヶ崎正男著『思うツボ』ヒューマンワールド
 http://www.human-world.co.jp/books/book017.html 

注釈2)
サイモン・シン、エツァート・エルンスト著『代替医療のトリック』新潮社
 http://www.amazon.co.jp/dp/4105393057

サイモン・シン、エツァート・エルンスト著『代替医療解剖』新潮文庫
 http://www.amazon.co.jp/dp/4102159762

An Introduction to Western Medical Acupuncture
Adrian White , Mike Cummings, Jacqueline Filshie
Churchill Livingstone 2008/10/9
http://www.amazon.co.jp/dp/0443071772

注釈3)
Peripheral afferent pathway for acupuncture analgesia.
Chiang, C.Y. Chang, C.T., Chu, H.L. Yang, L.F.
Scientia Sinica. 1973, 16:210-217.


注釈4)
Effect of low- and high-frequency TENS on Met-enkephalin-Arg-Phe and dynorphin A immunoreactivity in human lumbar CSF.
Han JS, Chen XH, Sun SL, Xu XJ, Yuan Y, Yan SC, Hao JX, Terenius L.
Pain. 1991 Dec;47(3):295-8.


注釈5)
Acupuncture to prevent cisplatin-associated vomiting.(PDF)
Dundee JW, Ghaly RG, Fitzpatrick KT, Lynch GA, Abram WP.
Lancet. 1987 May 9;1(8541):1083.


注釈6)
Acupuncture prophylaxis of cancer chemotherapy-induced sickness.
Dundee JW, Ghaly RG, Fitzpatrick KT, Abram WP, Lynch GA.
J R Soc Med. 1989 May;82(5):268-71.


注釈7)
Acupuncture in patients with osteoarthritis of the knee: a randomised trial.
(PDF)
Lancet. 2005 Jul 9-15;366(9480):136-43.
Witt C, Brinkhaus B, Jena S, Linde K, Streng A, Wagenpfeil S, Hummelsberger J, Walther HU, Melchart D, Willich SN.


Acupuncture for knee osteoarthritis--a randomised trial using a novel sham.
Manheimer E, Lim B, Lao L, Berman B.
Acupunct Med. 2006 Dec;24 Suppl:S7-14.


Meta-analysis: acupuncture for osteoarthritis of the knee.
Manheimer E, Linde K, Lao L, Bouter LM, Berman BM.
Ann Intern Med. 2007 Jun 19;146(12):868-77.


注釈8)
「代替医療のトリック」 の鍼治療に関する記述の問題点
川喜田 健司『全日本鍼灸学会雑誌』Vol. 60 (2010) No. 2 252-254


「代替医療のトリック」に答える小川卓良
小川 卓良『全日本鍼灸学会雑誌』Vol. 60 (2010) No. 4 656-671 


注釈9)
The needle effect in the relief of myofascial pain.(PDF)
Lewit K. Pain. 1979 Feb;6(1):83-90.


注釈10)
Dry needling of muscle motor points for chronic low-back pain: a randomized clinical trial with long-term follow-up.(PDF)
Gunn CC, Milbrandt WE, Little AS, Mason KE.
Spine (Phila Pa 1976). 1980 May-Jun;5(3):279-91.


注釈11)
Superficial acupuncture in the relief of chronic low back pain.(PDF)
Macdonald AJ, Macrae KD, Master BR, Rubin AP.
Ann R Coll Surg Engl. 1983 Jan;65(1):44-6.

注釈12)
Superficial versus deep dry needling.(PDF)
Baldry P.  Acupunct Med. 2002 Aug;20(2-3):78-81.

Effects of acupuncture on skin and muscle blood flow in healthy subjects(PDF)
European Journal of Applied Physiology
September 2003, Volume 90, Issue 1-2, pp 114-119
Margareta Sandberg, Thomas Lundeberg, Lars-Göran Lindberg, Björn Gerdle

「近赤外線分光法による鍼刺激時の筋組織血液量変動の検討」 
 大久保正樹『全日本鍼灸学会雑誌』59巻3号、429ページ、2009年

注釈13)
Effects of electroacupuncture versus manual acupuncture on the human brain as measured by fMRI.(PDF
Napadow V, Makris N, Liu J, Kettner NW, Kwong KK, Hui KK.
Human Brain Mapping 24:193-205(2005)

 注釈15)
Characterization of the "deqi" response in acupuncture.(PDF
Hui KK, Nixon EE, Vangel MG, Liu J, Marina O, Napadow V, Hodge SM, Rosen BR, Makris N, Kennedy DN.
BMC Complement Altern Med. 2007 Oct 31;7:33. 

注釈16)
Monitoring acupuncture effects on human brain by FMRI. PDF
Hui KK, Napadow V, Liu J, Li M, Marina O, Nixon EE, Claunch JD, LaCount L, Sporko T, Kwong KK.
J Vis Exp. 2010 Apr 8;(38). pii: 1190. doi: 10.3791/1190.

M.E.レイクル「浮かび上がる脳の陰の活動」『日経サイエンス』2010年6月号
 http://www.nikkei-science.com/page/magazine/1006/201006_034.html

注釈18)
Characterizing acupuncture stimuli using brain imaging with FMRI - a systematic review and meta-analysis of the literature
.(PDF

PLoS One. 2012;7(3):e32960. Epub 2012 Apr 9.
Huang W, Pach D, Napadow V, Park K, Long X, Neumann J, Maeda Y, Nierhaus T, Liang F, Witt CM.

注釈22)
Characterization of deqi sensation and acupuncture effect.(PDF)
Yang XY, Shi GX, Li QQ, Zhang ZH, Xu Q, Liu CZ.
Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:319734.

注釈23)
Acupuncture 'deactivates brain'

図⑨:David Bowher Mechanisms of Acupuncture

注釈24)

松田博公著『日本鍼灸へのまなざし』ヒューマンワールド
http://www.human-world.co.jp/books/book010.html


9月6日

2013-09-06 | 中医学

 明日の講義の準備は、ようやくできました。昭和大学医学部の武重千冬先生の針麻酔研究の論文を、千本ノックのように読んだのが一番、印象的でした・・・(多すぎて、いつものように参考文献リストをつくる気に、まだ、なれません・・・)。
 あと、鍼鎮痛の研究や、キャスリーン・フイさんやナパドウさんの研究をひたすら読み、最近の得気関連の研究を読み、新たな課題もたくさん見つけました。まあ、西洋医学的な部分は、あくまでもアカデミックというよりはジャーナリスティックに解説するつもりです。
 それでも、これは準備をすることで、自分の知識は確実にあがったと実感できます。これだけでも良かった。

 自分としては、そのとき、そのときで、一番、自分の気持ちがこもる、最も興味を持ち、「面白い!」と感じていることをお話しできればと思います。