以下は『アメリカオステオパシー学会雑誌』に2006年に発表された論文です。
「慢性疲労症候群における脳脊髄のリンパ・ドレナージ:頭蓋リズム脈動の仮説理論モデル」
Lymphatic drainage of the neuraxis in chronic fatigue syndrome: a hypothetical model for the cranial rhythmic impulse.
Perrin RN.
J Am Osteopath Assoc. 2007 Jun;107(6):218-24.
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これは読んで驚愕しました。書いたのはレイモンド・ペリンというイギリスのオステオパシー医師で、博士です。レイモンド・ペリンさんは、慢性疲労症候群患者をオステオパシーの『クラニオセイクラル・セラピー(頭蓋仙骨調整療法)』とマニュアル・リンパ・ドレナージュで治療しました。
この論文では、「慢性疲労症候群がクラニオセイクラルセラピーで治る機序は、脳からのリンパ・ドレナージ(リンパ排液)による解毒しか考えられないが、解剖学には、脳にリンパ管は存在しない。しかし、患者の身体徴候を、観察すると、やはりリンバ・ドレナージの機序しか考えられない。例え、脳の中にリンバ管が無くても、何らかのリンバ排液のシステムが存在するはずだ」と主張しているのです!!!
この論文が発表されたのは2015年7月の『ネーチャー』に脳内のリンパ管システムが発見される8年前!の2007年7月です!。一臨床家の実感からの仮説が、8年後に証明されたことに本当に感動しました。
『クラニオセイクラル・セラピー(頭蓋仙骨療法Craniosacral therapy)』はオステオパシーの手技であり、オステオパシーの創始者スティルの直弟子ウイリアム・ガーナー・サザーランド(William Garner Sutherland:1873–1954) が1930年代に始めました。それを1970年代にオステオパシー医師のジョン・アプレジャー(John Upledger1932ー2012)がまとめたものです。
以下、引用。
「慢性疲労症候群患者における脳脊髄の体液・リンパ液の排液ドレナージが探求するには面白い分野として注目を浴びている」
An interesting area of exploration has arisen on the involvement of cerebrospinal fluid and lymphatic drainage in patients with chronic fatigue syndrome (CFS).
「過去20年に渡り、私は何百もの慢性疲労症候群患者がリンパ排液ドレナージの問題を持っているのを見てきた。」
During the past 2 decades, I have observed hundreds of patients with this disorder who had CRIs and lymphatic drainage disturbances.
「しかしながら、脳にリンパ管の構造物がないという事実のため、この理論は受け入れられていない。脳の静脈はユニークでその薄い壁には筋肉のバルブがないのだ。」
However, the absence of contractile tissue in the veins and sinuses of the brain makes this theory difficult to accept. The cerebral veins are unique in that they possess no muscular tissue in their thin walls and have no valves.
「頭蓋リズム脈動は、交感神経システムによる脳脊髄の液体排出と脳中枢からのリンパ排液ドレナージによって引き起こされる」
The cranial rhythmic impulse is the rhythm produced by a combination of cerebrospinal fluid drainage from the neuraxis (brain and spinal cord) and pulsations of central lymphatic drainage induced by the sympathetic nervous system.
以上、引用終わり。
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この著者は、人間以外の哺乳類の脳のリンパ排液ドレナージシステムを論じ、さらに慢性疲労症候群患者の白色のリンパが停滞した静脈瘤などの証拠から、人間にも、未知の脳からのリンパ排液ドレナージシステムが存在することを示唆しています。そして、脳からのリンパ排液ドレナージによる解毒の方法としてエミール・ヴォダーのマニュアル・リンパ・ドレナージを含む頭頸部のリンパ・マッサージを治療法として提唱しています!。
このイギリスのオステオパシー医師のペリンさんは、自分を信じる力や、オステオパシーを信じる力が凄すぎます・・・。本当に尊敬できます。