2015年5月21日発表の『コクラン・システマティックレビュー』
「乳がん治療後のリンパ浮腫に対する『マニュアル・リンパ・ドレナージュ』」
Manual lymphatic drainage for lymphedema following breast cancer treatment.
Ezzo J et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2015 May 21;5:CD003475.
以下、引用。
「著者の結論:マニュアル・リンパ・ドレナージュは浮腫減少のための圧迫バンドに付け加える治療としては、安全で利益があるかもしれない」
Authors' conclusions:MLD is safe and may offer additional benefit to compression bandaging for swelling reduction
以上、引用終わり。
「マニュアル・リンパ・ドレナージュ(MLD:Manual Lymphatic Drainage)」は、デンマーク、コペンハーゲンで生まれて比較言語学を学んでいたエミール・ヴォダー(Emil Vodder:1896-1986)さんが、1932年にフランスのコート・ダジュールでマッサー(民間無資格マッサージ師)として働いているとき、扁桃炎に対してリンパをマッサージしたら改善したことから始まりました。エミール・ヴォダーさんは、ドクトル・デア・フィロゾフィー(Doktor der Philosophie:Ph.D)つまり哲学博士はとっているので、ドクターですが、医師(MD)ではありません。だから、「マニュアル・リンパ・ドレナージュ」は厳密には代替医療と見なされています。エミール・ヴォダーさんは1936年頃に、リンパ・ドレナージュを発表し、残りの人生をフランスのパリで過ごしました。
エミール・ヴォダー(Emil Vodder:1896-1986)さんは民間無資格マッサージ師だったため、「マニュアル・リンパ・ドレナージュ」はヨーロッパでも代替医療の扱いでしたし、今でも代替医療として扱っている国が多いです。EUでの研究の中心地はドイツです。ドイツでカイロプラクティックを行っていたヨハネス・アスドンク医師(Johannes Asdonk1910-2003)が1969年にヨーロッパ最初のリンパ・ドレナージュの学校とリンパ学会、専門クリニックをつくりました。1974年にドイツは「マニュアル・リンパ・ドレナージュ」に保険適応を認めます。
さらにミヒャエル・フェルディ医師(Michael Földi 1938-)がヨハネス・アスドンク医師(1910-2003)の研究を進めて、「マニュアル・リンパ・ドレナージュ」、圧迫バンデージ、コンプレッション・ストッキング、運動療法から成る「複合理学療法(CDP)」を創案しました。このミヒャエル・フェルディ医師の「複合理学療法(CDP)」が現在のリンパ浮腫患者に対する標準的な治療法となっています。
ドイツのエリザベート・ディッケは1920年代に「結合織マッサージ(Bindegewebsmassage)」を創り、
デンマーク(フランス)のエミール・ヴォダーは「マニュアル・リンパ・ドレナージュ」を1930年代に創り、
イギリスのサイアリュックスは1940年代に「ディープ・トランスヴァース・フリクション・マッサージ」をつくりました。
これらはいずれも「ファッシア(Fascia)」に作用する手技です。
そして、それ以前に、オランダ人ヨアン・ゲオルグ・メッツアー(Johann Georg Mezger:1838-1909)が「クラッシック・マッサージ」を創りました。
フランスの医師Just Lucas-Championnière(1843-1913)やロシアの医師イシドール・ザブルドスキー(Isidor Zabludowski:1851-1906)、ドイツの外科医アルバート・ホッファ(Albert Hoffa:1859-1907)は同時代人です。
1885年にジョージ・テイラー医師が英語圏のアメリカに、オランダ人メッツアーの「クラッシック・マッサージ」を、スウェーデン人ピーター・ヘンリー・リン(本当はパー・ヘリック・リンPehr Henrik Ling1776-1839)がつくったものと誤記して、「エフルラージュ」を「ストローキング(stroking)」、「ペトリサージュ」を「ニーディング(kneading)」と翻訳して紹介したようです(Taylor GH. Exposition of the Swedish Movement Cure. New York)。これが、「スウェーデン・マッサージ」という誤った名称の由来となります。
1890年代に「アメリカ・マッサージの父」ジョン・ハーヴェイ・ケロッグ(John Harvey Kellogg1852-1943)がさらに、このマッサージをアメリカで普及しました。さらに、1895年にケロッグが『マッサージの技術(The Art of Massage)』を出版すると、ボストン大学に留学中の川瀬元九郎医師は、岐阜訓盲院の院長だった森巻耳(もり・けんじ1855-1914)に紹介しました。森巻耳は、1897年に「ケルロッグ氏マスサージ学」として翻訳出版しました。ストローキング(Stroking)、ニーディング(Kneading)、バイブレーション(Vibration)、パーカッション(Percussion)などの手技が書かれているようです。
明治時代に軍医で初代日赤病院院長の橋本綱常(はしもと・つなつね:1845-1909)が大山巌陸軍卿に随行して1884年(明治18年)のヨーロッパ医事制度視察の際にオーストリアからドイツ語のDr. Albert Reibmayr著Die Technik der Massage.(1882年初版)を持ち帰りました。これを橋本綱常(はしもと・つなつね:1845-1909)が陸軍軍医総監の長瀬時衝(ながせ・ときひら:1836-1901)に紹介しました。広島博愛病院の院長だった長瀬は1885年から、これを広島の病院で試して著効を得て、1893年に退官して、東京飯田橋で仁寿病院を設立した際にマッサージを治療に用いました。
1895年には長瀬時衝(ながせ・ときひろ)は日本初のマッサージの翻訳本「『萊氏按摩新論』(『Die Technik der Massage』Dr. Albert Reibmayr著)」を出版しています。
近代鍼灸教育の父と言われる奥村三策(おくむら・さんさく1864-1912)は長瀬からマッサージを学び、これが現在の日本の「マッサージ」の基礎となったようです。
現在でもウィキペディア日本語版では、日本のマッサージはフランス由来とデタラメを書いています。
日本で西洋系のアロマ・マッサージをしている無資格者の方々は、
「エフルラージュ(effleurage:/e.flø.ʁaʒ/)」、英語のストローキング(Stroking)を軽擦法、
「ペトリサージュ(pétrissage:/pet.ʁi.saʒ/)」、英語のニーディング(kneading)、を揉捏法、
「タポトマン(tapotement:/ta.pɔt.mɑ̃/)」、英語のタポテメント(Tapotement:/təˈpəʊtmənt/)を叩打法、
「フリクション(friction:/fʁik.sjɔ̃/)」、英語のフリクション(friction:/fɹɪkʃən̩/)を摩擦法、
「ヴィブラション(vibration:/vi.bʁa.sjɔ̃/)」、英語のヴァイブレーション(vibration:/vaɪˈbɹeɪʃən/)を震顫法と翻訳しているようです。
フランス語と英語と日本語がごっちゃごちゃで、ものすごい恥ずかしい状態になっています・・・。しかも、コトバの中身が違い過ぎます・・・。
業界に入る前に、私には、「どうしても理解したい3つの心身ボディワーク」がありました。
F・M・アレクサンダー(Frederick Matthias Alexander:1869 -1955)の「アレクサンダー・テクニーク(Alexander Technique)」
アイダ・ロルフ(Ida Rolf:1896–1979)の「ロルフィング(Rolfing)」
モーシェ・フェルデンクライス(Moshe Feldenkrais:1904-1984)の「フェルデンクライス・メソッド」
の3つです。この3つの心身ボディワークを理解するのに、ものすごい時間がかかりました。
「アレクサンダー・テクニーク」は日本における第一人者である片桐ユズル先生のレッスンを受けることが出来ました。また、臨床のための「音楽家医学」を研究する過程で、姿勢の研究を通じて、理解できてきました。
「ロルフィング」は長年、理解が難しかったのですが、『アナトミー・トレイン』を書いたトマス・マイヤーズがマッサージ師であり、ロルファーであったので、『筋膜(Myofascia)』を研究する過程で、ようやく理解が深まりました。わたしが「ロルフィング」の本をいくら読んでも理解できなかったのは、日本の無免許「ロルファー」の方々が、本当の意味で「ロルフィング」を理解できていなかったことが、ようやく理解できました(笑)。
しかし、「フェルデンクライス・メソッド」だけは、謎のままでした。いままで、どうしても腑に落ちなかったのです。
『脳はいかに治癒をもたらすのか』には、創始者であるモーシェ・フェルデンクライスさんの人生が書かれています。フランスで講道館柔道の創始者である嘉納 治五郎(かのう・じごろう)に直接、柔道の指導を受けたフェルデンクライスさんは、放射線を発見したキュリー夫人の夫であるピエール・キュリーと一緒に研究するほどの物理学者であり、軍人・軍事スパイでもありました。フェルデンクライス・メソッドは、フェルデンクライスさんの人生と「神経可塑性」という視点から、はじめて理解できるものになりました。
「動きを通じた『気づき』(Awareness Through Movement:アウェアネス・スルー・ムーブメント)」という、フェルデンクライス法のコトバの意味を、20年かけて、ようやく理解できました。本当に感動しました。
それにしても、フェルデンクライス(1904-1979)さんは、第二次世界大戦や戦後に軍事スパイとしての仕事をしていたために、一般の人間には理解しがたい人生を送っていました。
「ピラティス(Pilates Method)」を開発した、ジョゼフ・ピラティス(Joseph Pilates1883-1967)さんも軍事スパイでした。
日本にヨガを紹介した、中村天風(1876-1968)は、「人斬り天風」と言われた軍事スパイでした。
戦後日本に、本格的なヨガを紹介した、沖正弘先生(1921-1985)も軍事スパイです。
合気道の創始者、植芝盛平(1883-1969)も関東軍の特務機関の軍事スパイでした。
日本の少林寺拳法の創始者、宗道臣(そう どうしん:1911-1980)も軍事スパイでした。
ヨーガの世界は、中村天風も、尊敬する沖正弘先生も軍事諜報の世界の人間です。さらに、神智学のオルコット大佐(Henry Steel Olcott:1832-1907)も明らかに軍人です。
チベット学者のサラト・チャンドラ・ダス(Sarat Chandra Das:1849-1917)は明らかにイギリスのスパイであり、1886年にイギリス領インド帝国から勲章も受けています。このサラト・チャンドラ・ダスは、オルコット大佐とヘレナ・ブラヴァツキーにも会い、河口 慧海(かわぐち・えかい:1866-1945)のチベット・ラサへの潜入を助けています。1909年には河口慧海のチベット潜入記は、ロンドンで神智学のアニー・ベサントにより、「スリー・イヤーズ・イン・チベット」として出版されます。
この近代ヨーガの成立期の状況を、説明できるヒトは居ないと思います。
心理学や精神医学を学ぶ際には、このような陥穽や深淵、落とし穴があちこちにあるのですが、教える側の大学教授達が、このような落とし穴について倫理観を持って語らないため、後進の学生達が落とし穴に何十年もハマっているのは、心理学・精神医学の世界の日常の光景となっています。
「ロルフィング概説」
藤本 靖『日本補完代替医療学会誌』
Vol. 2 (2005) No. 1 P 37-43
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/2/1/2_1_37/_pdf
ロルフィング(Rolfing)は、アイダ・ロルフ(Ida Pauline Rolf:1896-1972)博士がつくったボディワークです。
現在のFascia研究者たちは、ロバート・シュレップにしてもトマス・マイヤーズにしても「ロルフィング」のプラクティショナーでもあります。
Fascia研究には3つの大きな源流があり、一つはオステオパシー・カイロプラクティックで、もう一つはトリガーポイント鍼療法、そしてロルフィングです。
【ロルフィングの創始者アイダ・ロルフ】
アイダ・ロルフは、1896年にニューヨークに生まれ、1920年にコロンビア大学で生化学で博士号をとりました。この1920年代にロルフはハタ・ヨガを研究していたそうです。1920年代の欧米は東洋ブーム・自然医学ブームでした。当時はドイツでもヨガやホメオパシーが大流行しています。1927年にロルフはスイスのジュネーブ、スイス工科大学で数学と物理学を学びながらホメオパシーを学びました。1930年代には、ロルフはアメリカでオステオパシー、カイロプラクティック、アレクサンダーテクニークを研究しています。この時代にオステオパスのトマス・モリソン博士からオステオパシーを学び、モリソン博士は後にロルフィングのクラスで筋膜について講義します。1940年代にアイダ・ロルフは出張治療の形で初期の「ストラクチュラル・インテグレーション(構造の統合)」というロルフィング技術を始めました。1947年に夫のウォルターが亡くなり、14歳と13歳の息子をかかえ、貯金も少なかったロルフは、多くのクライアントに施術を行いました。1950年代後半にはアメリカ、イギリス、カナダでワークショップを始めました。
【エサレン研究所と、ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメント(人間の潜在能力開発運動)】
1960年代のアメリカは「カウンターカルチャー」運動が起こりました。1961年にカルフォルニア州ビッグサーの海岸に「エサレン研究所(Esalen Institute)」が出来ました。
「エサレン研究所」に住んでいたゲシュタルト療法の創始者フリッツ・パールズ(Frederick Perls:1893-1970)は心臓病に苦しみ、アイダ・ロルフのマッサージを受けて緩解しました。フリッツ・パールズ(1893-1970)はヴィルヘルム・ライヒ(1897-1957)の治療を受けていたのですが、ライヒが亡くなってから心臓病に苦しみ、アイダ・ロルフを「ヴィルヘルム・ライヒの後継者」と見なしました。当時のエサレン研究所には、「ゲシュタルト療法」のフリッツ・パールズや「欲求五段階説」「自己実現」のアブラハム・マズロー、グレゴリー・ベイトソン、建築家のバックミンスター・フラー、「クライアント中心療法」「カウンセリングの創始者」「エンカウンター・グループの創始者」カール・ロジャースなどが居ました。
エサレン研究所でのアイダ・ロルフのマッサージは、当時、「痛い」(笑)のと、クライアントがトラウマの解放などの心身相関現象を体験するので有名でした。ロルフのマッサージは、心身を治療するものでした。
また、当時のアイダ・ロルフは、ヴィルヘルム・ライヒの影響を受けていました。ジークムント・フロイトの直弟子ヴィルヘルム・ライヒは「気」そっくりの「オルゴン・エネルギー」を提唱し、精神的トラウマがオルゴン・エネルギーの詰まりを引き起こし、それをマッサージで解消するという治療法「ヴェゲトセラピー(Vegetotherapie)」を行っていました。ヴィルヘルム・ライヒの直弟子アレクサンダー・ローウェン(Alexander Lowen1910-2008)も「生体エネルギー(バイオエナジーBioenergy)」の詰まりが姿勢や筋肉の緊張をつくりだすという理論から「バイオエナジェティックス」という心身相関理論をつくりだしています。
また、1963年以降のエサレン研究所では、「センサリー・アウェアネス(感覚に気づく)」のワークショップが多く開かれました。「センサリー・アウェアネス(Sensory Awareness)」を提唱したシャーロット・セルバー(Charlotte Selver1901-2003)がスウェーデンマッサージとボディワークを統合して、オイルマッサージによる「エサレン・マッサージ(Esalen massage)」をつくりました。シャーロット・セルバーはダンスムーブメント・セラピーにも影響を与えています。
また、1972年にエサレン研究所では、モーシェ・フェルデンクライス(Moshé Feldenkrais1904-1984)がフェルデンクライス・メソッド(Feldenkrais Method)を講義しています。フェルデンクライスはロシアに生まれたイスラエル人の物理学者で1933年にフランスのパリで嘉納治五郎と出会い、柔道を始め、パリに最初の柔道連盟をつくりました。1942年に30代でサッカーで痛めた膝の治療のために自分自身で治すために始めた身体観察で「アウェアネス・スルー・ムーブメント(身体運動を通じた気づき)」と言われる「フェルデンクライス・メソッド」を創始しました。
この時期のエサレン研究所(Esalen Institute)はいまと違って、世界の心理学の中心地であり、思想的にも深みのある「ボディワーク」の一大中心地でした。現在の「エサレン・マッサージ」はスピリチュアリティを失った、無免許マッサージの金儲け主義の自己啓発セミナーのイメージがあり、「エサレン」のイメージは地に落ちており、残念です。
【ボディワークとなった「ロルフィング」】
1971年にロルフ身体統合研究所(Rolf Institute of Structural Integration)が設立され、アイダ・ロルフの活動はコロラド州ボールダーにうつります。アイダ・ロルフはマッサージの出張治療から始まったのですが、1961-1970年のエサレン研究所時代をくぐりぬけて、10セッションからなる「ボディワーク」や「身体教育」と呼ばれるものに変化していました。1977年にアイダ・ロルフの最初の著作「Rolfing:The Integration of Human Structure」が出版され、2年後の1979年にアイダ・ロルフは82歳で亡くなりました。
アイダ・ロルフは筋膜をリリースするボディワークを行っていました。
2007年には、「アイダ・ロルフ・筋膜Fascia研究ファウンデーション(the Ida P. Rolf Fascia Research Foundation)」が設立されました。現在でも『アナトミー・トレイン』を書いたトマス・マイヤーズや『膜・筋膜 張力ネットワーク』を書いたロバート・シュレップなど、ロルフィングのプラクティショナーがFascia研究をリードしているのは、このような歴史的経緯があります。
ーーーーーーーーーーーーー
アイダ・ロルフの人生については、以下の素晴らしい論文があります。アイダ・ロルフはオステオパシーの頭蓋仙骨療法(クラニオセイクラルセラピー)の基礎を創ったウィリアム・サザーランド(William Sutherland)の講義にも参加していたことを初めて知りました。
↓
「ストラクチュアル・インテグレーション:起源と発展」(英語)
Structural Integration: Origins and Development
Eric Jacobson, Ph
J Altern Complement Med. 2011 Sep; 17(9): 775–780
「ロルフィング」に関する科学的研究をまとめた以下の論文もあります。「ロルフィング」の筋膜研究者たちはメカニズムについてクリエーティブな研究を行ってはいますが、臨床的エビデンスはありません。
↓
「ストラクチュアル・インテグレーション:徒手医学と運動感覚教育の代替方法」(英語)
Structural Integration, an Alternative Method of Manual Therapy and Sensorimotor Education
Eric Jacobson, Ph
J Altern Complement Med. 2011 Oct; 17(10): 891–899.
東南アジアから太平洋諸島のマッサージ文化を観察すると、共通点と相違点があります。まず、マッサージのプラクティショナーはスピリチュアルヒーラーを兼ねて、霊的・心身的修行を行います。東洋医学の「気」によく似たエネルギーを感じるため、才能と訓練が必要です。伝統治療者としての数年から数十年に渡るココロの修行が重視され、特に太平洋地域では母から娘に受け継がれる血統が重視されます。
しかし、「スピリチュアルエネルギーを感じる才能がある程度、血統で受け継がれる」 、「霊的修行が必要である」などの伝統文化部分や深い部分は、現代のSPA文化のマッサージには不必要なので切り捨てられたようです。
2015年6月17日『理学療法雑誌』掲載
「一般の筋骨格障害へのマッサージ療法は無治療群と比較して短期的効果がある:システマティック・レビュー」
Massage therapy has short-term benefits for people with common musculoskeletal disorders compared to no treatment: a systematic review
Diederik C Bervoetsa, Pim AJ Luijsterburga, Jeroen JN Alessieb, Martijn J Buijsb, Arianne P Verhagena
Journal of Physiotherapy『理学療法雑誌』
Available online 17 June 2015
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26093806
(全文無料オープンアクセス)
↑
以前、理学療法士(PT:Physical Therapist)さんとお話しした際に、「理学療法の学校では、マッサージはリンパ・マッサージしか習わない。マッサージはエビデンスが無いと教わっている」と聞いて、仰天しました。EBM(科学的根拠に基づいた医療)の立場から言えば、この数年、マッサージが痛みなどに有効であるというエビデンスが積まれて、それが海外でのマッサージ・ブームにつながっているからです。そして、理学療法士さんが学校で習う「リンパ・マッサージ」「リンパ・ドレナージ」はむしろ、相対的には、科学的根拠があまり無いマッサージだからです。要するに、理学療法士さんが持っているマッサージについての知識は全てデタラメで科学的根拠がありませんでした。これは驚愕の事実でした。これは、その理学療法士さんの責任ではなく、彼を教えた教育者たちの責任です。
日本の法律でマッサージを病気の患者さんに出来るのは、国家資格の「あん摩マッサージ指圧師」と「理学療法士」のみです。昔は、理学療法士さんが少なかったので、「あん摩マッサージ指圧師」が病院でリハビリを担当していました。それが、「マッサージ師」が病院では少なくなり、「理学療法士」さんが病院でのリハビリを担当するようになりました。しかし、マッサージに関して、きちんと科学的な知識を持った理学療法士さんに会ったことが無いのです。
もっとも「あん摩マッサージ指圧師」でも、マッサージの歴史について、正確な知識を持った先生に会ったことが無いです。教科書が科学的・学問的に間違っており、教える側も、きちんと根拠のあることを教えていないからです。
2008年にコクラン・システマティックレビューでは、「腰痛へのマッサージ」(※1)が有効で、クラシカル・マッサージ(スウェーデンマッサージ)より、ツボ指圧が効果的と論じています。2012年のコクラン・システマティック・レビュー「機械的頚部障害へのマッサージ」も「マッサージ単独でメカニカルな頚部の障害を治療することは即時的・短期的には痛みと圧痛について効果的であることはわかった」としています。
※1:「腰痛へのマッサージ」『コクラン・システマティックレビュー』
Massage for low-back pain.
Furlan AD, Imamura M, Dryden T, Irvin E.
Cochrane Database Syst Rev. 2008 Oct 8;(4)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18843627
※2:「機械的頚部障害へのマッサージ」『コクラン・システマティックレビュー』
Massage for mechanical neck disorders.
Patel KC, Gross A, Graham N, Goldsmith CH, Ezzo J, Morien A, Peloso PM.
Cochrane Database Syst Rev. 2012 Sep 12;9:
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22972078
さらに、2014年の「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディスン(BJOSM)」では、『非特異性肩痛への軟部組織マッサージと運動の効果:メタアナリシスとシステマティックレビュー』において、痛みと関節可動域への効果を論じています。
※3:『非特異性肩痛への軟部組織マッサージと運動の効果:メタアナリシスとシステマティックレビュー』
Effectiveness of soft tissue massage and exercise for the treatment of non-specific shoulder pain: a systematic review with meta-analysis
Br J Sports Med., 48 (2014), pp. 1216–1226
P.A. van den Dolder, P.H. Ferreira, K.M. Refshauge
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22844035
2014年には安全性に関してもマッサージの有害事象のシステマティック・レビューが初めて発表されました。
※4:「痛みに関連した状態のマッサージ治療の有害事象:システマティックレビュー」
Adverse Events of Massage Therapy in Pain-Related Conditions: A Systematic Review
Evid Based Complement Alternat Med. 2014;Published online Aug 12, 2014.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25197310
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4145795/
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4145795/pdf/ECAM2014-480956.pdf
↑
「マッサージのプロフェッショナル」を名乗るなら、上記は最低限の知識になります。
運動痛に関しても、リンク先は、エツァート・エルンストが1998年の『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディスン(BJOSM)』に発表した「運動後のマッサージ・トリートメントは筋肉の硬さを減らすのか?システマティック・レビュー」があります。
※5:「運動後のマッサージ・トリートメントは筋肉の硬さを減らすのか?システマティック・レビュー」
Does post-exercise massage treatment reduce delayed onset muscle soreness? A systematic review
E. Ernst
Br J Sports Med. Sep 1998; 32(3): 212–214.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9773168
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1756095/
「結論:マッサージ療法は遅発性筋痛症(DOMS:Delayed onset muscle soreness:)のための有望な治療法かもしれない。」
CONCLUSIONS: Massage therapy may be a promising treatment for DOMS.
このようなマッサージに関する研究では、エモリー大学医学部のマーク・ヒンマン・ラパポート(Mark Hyman Rapaport )教授は、2010年(※6)と2012年(※7)にマッサージに関する研究のターニング・ポイントとなる研究を行いました。
※6:2010年論文
「健康人への一回のスウェーデン・マッサージが視床下部ー脳下垂体ー副腎皮質系統と免疫機能に及ぼす影響の初歩的研究」
A preliminary study of the effects of a single session of Swedish massage on hypothalamic-pituitary-adrenal and immune function in normal individuals
Rapaport MH, et al.
J Altern Complement Med. 2010.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/20809811/
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3107905/
↑
クラシカル・マッサージ(スウェーデン・マッサージ)は、軽いタッチ・マッサージと比較して、血液検査でバゾプレッシン、オキシトシン、ACTH、コルチゾール、インターロイキンなどを顕著に変化させています。
※7:2012年論文「反復マッサージが視床下部ー脳下垂体ー副腎皮質系統と免疫機能に及ぼす影響の初歩的研究:メカニズムとドーゼの研究」
A Preliminary Study of the Effects of Repeated Massage on Hypothalamic–Pituitary–Adrenal and Immune Function in Healthy Individuals: A Study of Mechanisms of Action and Dosage
Rapaport MH, et al. J Altern Complement Med. 2012.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3419840/
↑
クラシカル・マッサージ(スウェーデン・マッサージ)による血液の数値の変化は、週一回または、週二回のドーゼによって異なっています。これは、私の実感とあっています。週2回のマッサージを継続していくと、身体の変化は顕著に感じるからです。患者さんに説明する際に一つの根拠になります。
2012年2月にはカナダのマクマスター大学のジャスティン・クレインらが「運動による筋肉ダメージのあとの炎症シグナルへのマッサージ治療の影響」を書き、はじめて筋肉損傷からの回復における炎症性サイトカインの減少による回復の促進という機序を明らかにしました。
同じく2012年2月にはオハイオ州立大学のハースたちが、「ウサギモデルでの運動後の筋肉回復と炎症に対するマッサージ・タイミングの影響」を書き、運動直後の10分程度のマッサージの有効性を動物で証明しました。
2015年5月28日には、トーマス・ベストが「マッサージは筋線維再生と血管新生を促し、エキセントリック運動障害後の線維症を減らす」を発表しています。
そして2015年6月17日には、『理学療法雑誌』に「一般の筋骨格障害へのマッサージ療法は無治療群と比較して短期的効果がある:システマティック・レビュー」が掲載されました。このように、臨床医学・基礎医学の両面で、筋骨格障害へのマッサージの効果は、2008年から2015年にかけて、研究が進展しました。
「運動による筋肉ダメージのあとの炎症シグナルへのマッサージ治療の影響」
Massage Therapy Attenuates Inflammatory Signaling After Exercise-Induced Muscle Damage
Justin D. Crane et al.
Science Translational Medicine 01 Feb 2012:
Vol. 4, Issue 119, pp. 119ra13
http://stm.sciencemag.org/content/4/119/119ra13.abstract
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22301554
「ウサギモデルでの運動後の筋肉回復と炎症に対するマッサージ・タイミングの影響」
Massage timing affects postexercise muscle recovery and inflammation in a rabbit model.
Haas C et al.
Med Sci Sports Exerc. 2013 Jun;45(6):1105-12.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23274593
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3632662/
「マッサージは筋線維再生と血管新生を促し、エキセントリック運動障害後の線維症を減らす」
Massage Increases Muscle Fiber Regeneration And Angiogenesis And Decreases Fibrosis Following Eccentric Exercise Injury
Thomas M. Best et al.
Musculoskeletal Injury and Muscle Damage
http://www.abstractsonline.com/Plan/ViewAbstract.aspx?sKey=731c51ca-1976-4944-95f9-3dfdbcda4381&cKey=e8bfba87-5d09-4362-8a8f-8d20dbc4b8c5&mKey=8ba47590-f6fa-424e-a609-471a2e1de3bc
また、2009年にエツァート・エルンストが「がんの緩和サポートケアのためのマッサージ療法:ランダム化比較試験のシステマティック・レビュー」(※10)を書き、2014年には中国の研究者によって「乳がん治療の副作用とマッサージ介入:システマティック・レビューとメタ・アナリシス」(※11)が書かれています。マッサージはガンの痛みや不安をとり、疲労感をとります。2010年には「線維筋痛症」にもマッサージの効果が有望という研究が発表されました(※12)。
※10:「がんの緩和サポートケアのためのマッサージ療法:ランダム化比較試験のシステマティック・レビュー」
Massage therapy for cancer palliation and supportive care: a systematic review of randomised clinical trials.
Ernst E.
Support Care Cancer. 2009 Apr;17(4):333-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19148685
2014年には「乳がん治療の副作用とマッサージ介入:システマティック・レビューとメタ・アナリシス」(※8)が。
※11:「乳がん治療の副作用とマッサージ介入:システマティック・レビューとメタ・アナリシス」
Massage interventions and treatment-related side effects of breast cancer: a systematic review and meta-analysis.
Pan YQ, et al. Int J Clin Oncol. 2014.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/24275985/
↑
以下、引用。
「結論:現在のエビデンスはマッサージが乳がん患者のネガティヴな感情や疲労感に利用可能な介入であるというマイルドなエビデンスがある」
CONCLUSIONS: The current evidence demonstrates that there was mild evidence that massage may be a useful intervention in alleviating negative emotions and fatigue in patients with breast cancer.
※12:「線維筋痛症の症候へのマッサージ治療」
Massage therapy for fibromyalgia symptoms.
Kalichman L.
Rheumatol Int. 2010 Jul;30(9):1151-7. doi: 10.1007/s00296-010-1409-2. Epub 2010 Mar 20.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20306046
また、「インファント・マッサージ」の分野では、マイアミ大学医学部のティファニー・フィールド教授が未熟児の体重増加・不眠・喘息などにマッサージが有効であるという研究を行いました(※13、※14)。2013年にはイギリスのプリマス大学の研究者たちによるコクラン・システマティックレビュー「生後6ヶ月の乳児の精神的・身体的健康の発達におけるマッサージの促進」(※15)が発表されました。
※13:「小さな子どもの肌のコンディションへのマッサージ治療」
Massage therapy for skin conditions in young children.
Field T.
Dermatol Clin. 2005 Oct;23(4):717-21.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16112449
※14:2014年11月4日『マイアミ・ヘラルド』
「マイアミ大学の研究者は未熟児のマッサージが成長を刺激することの先駆者」
UM researcher pioneered massaging premature infants to stimulate growth
http://www.miamiherald.com/living/health-fitness/article3556835.html
※15:「生後6ヶ月の乳児の精神的・身体的健康の発達におけるマッサージの促進」
Massage for promoting mental and physical health in typically developing infants under the age of six months.
Bennett C, Underdown A, Barlow J.
Cochrane Database Syst Rev. 2013 Apr 30;4:CD005038.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23633323
上記が、マッサージのプロフェッショナルが最低限、知っておくべき知識になります。マッサージの科学的研究は、2005年頃から2015年の15年間で激変しました。
↑
トリシュ・ドライデン(Trish Dryden)、クリストファー・モイヤー(Christopher Moyer)ら編集の
Massage Therapy:Integrating Research and Practice
Human Kinetics 2012
残念なのは、歴史において、やはりPehr Henrik Ling(1776-1839)をマッサージの歴史に入れていることだ。
もちろん、Johan Mezger(1838-1909)をマッサージの祖にしている。Hippocratesについては書いてあるが、パレについては書かれていない。
ザブルドスキー(J.B.Zabludowski:1851-1906)やアルバート・ホッファ(Albert Hoffa:1859-1907)といったドイツの医師や、イギリスのウィリアム・ミューレル(William Murrell:1853-1912)、アメリカのダグラス・グラハム(Douglas Graham:1848-1928)をマッサージの初期の研究者として挙げているが、説明は無い。
また、モーゼンガイル(Mosengeil)をマッサージ研究者として挙げている。
それらの名前の後にケロッグ(J.Harvey Kellogg:1852-1943)の名前が出てくる。1895に「Art of Massage」を出版している。
また、James B.Mennell(1880-1957)が1917年に「Massage:its Princples and Practice」を書いている。
イギリスのMary Mcmillan(1880-1959),アメリカのGertrude Beard(1887-1991)、Frances Tappen(1917-1999)などの名前が挙がっている。
Beard G, Domenico GD, Wood E: Beard's Massage. 4th edition. Philadelphia: Saunders; 1997.
Tappan F: Healing Massage Techniques: A Study of Eastern and Western Methods. Reston: Prentice-Hall; 1980.
『医療マッサージの基礎と応用』との情報を総合すると以下のようになる。
・オランダ人ヨアン・ゲオルグ・メッツアー(Johann Georg Mezger:1838-1909)が「クラッシック・マッサージ(誤称スウェーデン・マッサージ)」の創始者である。
・Just Lucas-Championnière(1843-1913)は、フランスの医師で消毒法で有名(リスターと同時代)
著書として「骨折のマッサージによる治療とメタボリズム」
Traitement des fractures par le massage et la mobilisation.
・イギリスのウィリアム・ミューレル(William Murrell:1853-1912)はロンドンでマッサージを医療として位置づける。
著書として「治療モードとしてのマッサージ」
1923年のMassage as a Mode of Treatment (AMAZONで購入可能)
・『医療マッサージの基礎と応用』も「Massage Therapy」も共に間違っているのがザブルドスキーについてです。
Isidor Zabludowski(1851-1906)は、ロシア生まれのユダヤ人でサンクトペテルブルクで医学を学び、ベルリンのフリードリヒ・ヴィルヘルム大学で多くのマッサージに関する本を書きました。
これは、「イシドール・ザブルドスキー:忘れられた現代科学的マッサージ治療のパイオニア」という論文があります。
Isidor Zabludowski:a forgotten pioneer of the modern scientific massage therapy.
http://progress.umb.edu.pl/sites/progress.umb.edu.pl/files/phs_0002/208-216%20Ohry.pdf
・アルバート・ホッファ(Albert Hoffa:1859-1907)はドイツの外科医で、1893年に「マッサージのテクニック」という文献を出版しています。
Technik der Massage, 1893
「あん摩マッサージ指圧師」の学校の教科書も間違いだらけだし、徒手療法の文献も歴史の部分は目を覆いたくなるような間違いが多いです。アメリカのマッサージの文献も間違いだらけでした。
「ケロッグマッサージの理論とその手法」
和久田 哲司, 和田 恒彦, 野口 栄太郎, 西條 一止
『日本温泉気候物理医学会雑誌』
Vol. 62 (1998-1999) No. 2 P 80-86
https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki1962/62/2/62_2_80/_article/-char/ja/
↑
「スウェーデン・マッサージ」と誤った呼称で言われる「クラッシック・マッサージ」はアムステルダム生まれのオランダ人ヨアン・ゲオルグ・メッツアー(Johann Georg Mezger:1838-1909)が創始者です。
1885年にジョージ・テイラー医師が英語圏のアメリカに、オランダ人メッツアーの「クラッシック・マッサージ」を、スウェーデン人ピーター・ヘンリー・リン(本当はパー・ヘリック・リンPehr Henrik Ling1776-1839)がつくったものと誤記して、「エフルラージュ」を「ストローキング(stroking)」、「ペトリサージュ」を「ニーディング(kneading)」と翻訳して紹介したようです(Taylor GH. Exposition of the Swedish Movement Cure. New York)。
1890年代に「アメリカ・マッサージの父」ジョン・ハーヴェイ・ケロッグ(John Harvey Kellogg1852-1943)がさらに、このマッサージをアメリカで普及しました。
さらに、1895年にケロッグが『マッサージの技術(The Art of Massage)』を出版すると、ボストン大学に留学中の川瀬元九郎医師は、岐阜訓盲院の院長だった森巻耳(もり・けんじ1855-1914)に紹介しました。
森巻耳は、1897年に「ケルロッグ氏マスサージ学」として翻訳出版しました。ストローキング(Stroking)、ニーディング(Kneading)、バイブレーション(Vibration)、パーカッション(Percussion)などの手技が書かれているようです。