alternativemedicine

Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

イランの鍼研究

2012-09-27 | 西洋医学的鍼
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3430048/

 イランのイスファハン医科大学の研究のフルテキストを読んだら、配穴に驚いた。

 耳鳴りの主穴は、耳門・聴宮・聴会に翳風という組み合わせで、これだけでも効果がありそう。

 それに加えて、以下の五つのグループの配穴を加減する。

1-TE3(中渚), TE5(外関), TE17(翳風), GB8(率谷), GB20(風池), GB43(侠渓), LR2(行間)

2-LI4(合谷), SP9(陰陵泉), ST40(豊隆), SI19(聴宮), TE3(中渚), TE21(耳門), BL20(脾兪), GB20(風池), GB2(聴会), CV9(水分), CV12(中カン), TE5(外関)

3-SP6(三陰交), HT6(陰ゲキ), BL23(腎兪), KI3(太渓), KI7(復溜), GB2(聴会), LR3(太衝), GV4(命門), CV4(ダン中)

4-LU9(太淵), SI19(聴宮), BL13(肺兪), TE16(天よう), GV20(風池), CV6(気海), CV17(ダン中)

5-SP6(三陰交), SI19(聴宮), BL15(心兪), PC6(内関), GV20(風池), CV14(巨闕)

 この配穴はセンスが良すぎる。特に1グループなんて、少陽経の経気を通して、肝胆の熱をとる栄穴を配穴している。これは肝火上炎証だろう。

 グループ2は陰陵泉・豊隆・水分・中カンと去痰去湿のツボをそろえて、これも脾虚湿盛だろうと考えられる。

 グループ3は、腎兪、太渓、復溜、命門など補腎のツボとダン中や陰ゲキなど心の清熱をとって、腎陰虚または心腎不交の配穴だ。

 グループ4は、太淵・肺兪と補肺気して、気海とダン中で補気しているから肺気虚。

 グループ5は心兪・巨闕・内関と心気を補い、三陰交で補血している。おそらく心血虚の配穴だろう。

 全体として五臓で分類した臓腑弁証となっている。物凄くセンスが良すぎて、ちょっと驚いた。


 

腰痛と経絡弁証(2) 正経と奇経

2012-09-27 | 経絡弁証
 現代の中国で教えられている中医学(中国伝統医学)の腰痛の理論は、粗雑という印象がある。少なくとも繊細さに欠けている。
 例えば、『鍼灸学ー臨床篇』(東洋学術出版社)では、寒湿腰痛腎虚腰痛オ血腰痛の3種類が分類として書かれている。まあ、外邪、臓腑の虚証、労損という病因から分類すれば、こうなるんだけど。

 治療していると、陽陵泉や中封で治る腰痛がある。しかし、イライラも憂鬱感も無いし、臓腑弁証の肝欝気滞とは思えない。また、帯脈穴の刺鍼で治る腰痛がある。足臨泣で治る腰痛がある。
 わたしの場合、決定的だったのは、兌で改善した腰痛があったことだ。『霊枢・根結篇』の根結治療を取り入れて、井穴を用いた治療を試したところ、さらに様々な経絡で改善する腰痛を発見できた。正経太陽・少陽・陽明・太陰・少陰・厥陰経がいずれも腰痛を治療できることを発見できた。

 さらに奇経を研究した際に、当然、督脈で治療できる腰痛があった。任脈で治療できる腰痛もあり、帯脈で治療できる腰痛、陽維脈の陽交や金門、陰維脈の築賓や衝門で治る腰痛もあった。陽キョウ脈の申脈や附陽、陰キョウ脈の照海や交信で改善される腰痛もあった。

 そこで、石原克己先生の『素問・刺腰痛論篇』をベースに置いた論文に出会い、『素問・刺腰痛論篇』の重要性に気づいた。

 邵輝先生と木村律先生の『鍼灸臨床治療法集』にも、後渓や養老、委中といった太陽経だけでなく、少陽経の陽陵泉や陽明経の条口、あるいは手少陰経の神門での腰痛治療が書かれていた。

 これらを統合できる理論は、『素問・刺腰痛論篇』だった。これは私のオリジナルではなく、2,000年前に『黄帝内経』を書いた古代中国人や、それをベースに精緻化させた石原克己先生の論文だ。中医学的には、腰痛は経絡弁証をベースにすべきだ。
 しかし、同時に、わたしは推拿の骨格矯正的な考え方も用いるし、耳鍼や手鍼、頭皮鍼も用いるようになった。皮内針を多用することで、皮部の浅さでとれる腰痛もあれば、逆に深刺しないととれない腰痛もあることがわかってきた。
 石原克己先生の論文は、まさに、その皮部・経筋などの深さや病因などの問題を含めた総合的な議論をされている。

腰痛と経絡弁証(1)

2012-09-26 | 経絡弁証
 『中医臨床』で少し論じた部分を補足する。

 腰痛について、現代中医学は単純化しすぎていると感じる。『黄帝内経素問・刺腰痛論篇第四十一』をベースにして再構築する必要がある。
 
 例えば、自分の経験でも、足陽明胃経の兌や足少陽胆経の陽陵泉や足竅陰で治った腰痛がある。手少陰心経の少海で治った症例もある。陰維脈の築賓や陽きょう脈の申脈で治った症例もある。十二井穴を用いた根結療法を用いると、太敦で改善する腰痛もあった。

(1)足太陽膀胱経
【古典における足太陽膀胱経と腰痛】
「足太陽膀胱経が腰痛を起こすと、項背から脊柱、殿部にかけて重くなる。足太陽膀胱経のゲキを刺す。もし春なら瀉血してはいけない
(足太陽脈令人腰痛,引項脊尻背如重狀,刺其卻中。太陽正經出血,春無見血。)」
『黄帝内経素問・刺腰痛論篇第四十一』

※上記の『刺腰痛論篇』のゲキとは、委中であるとの王冰の注釈がある。

「外邪が本経を犯して起こる病気として、気が上衝して頭痛し、眼球は抜けるようであり、項は抜けるように痛み、脊柱が痛み腰は折れそうに痛み、大腿部は屈伸できなくなり、ふくらはぎは避けるように痛む。これは踝厥である。
 筋によって生じる病は痔、瘧、精神病、頭痛、目黄、涙が出る、鼻血、そして項や背中腰や尻や膝窩やふくらはぎや脚が全て痛み、小指が使えないというものである(是動則病。衝頭痛、目似脱、項似抜、脊痛、腰似折、髀不可以曲、膕如結、足耑如裂。是為踝厥。是主筋所生病者。痔、瘧、狂、癲疾、頭シン項痛、目黄、涙出、鼻衄、項,背,腰,尻,膕,脚皆痛、小指不用。)」
『霊枢・経脈篇第十』

「足太陽の別絡は名前を飛揚という。外果から7寸に起こり、わかれて少陰腎経に走る。実すれば鼻がつまり、頭や背中の痛みとなり、虚すれば鼻血となる(足太陽之別。名曰飛揚。去踝七寸、別走少陰。実則鼻窒、頭背痛、虚則鼻衄。取之所別也)」
『霊枢・経脈篇第十』

「足太陽経筋に発生する病は小指がひきつり、踵が腫れて痛む。膝窩がひきつる。脊柱がそりかえって痛む。項部がひきつる、肩が挙がらない、腋から欠盆にかけてひきつり痛み、左右にゆらすことができない。(其病、小指支、跟腫痛、膕攣、脊反折、項筋急、肩不挙、腋支、欠盆中紐痛、不可左右揺)」
『霊枢・経筋篇第十三』

イランの鍼灸研究

2012-09-26 | 西洋医学的鍼
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22973392

 Pubmedを見ていたら、イランのイスファファン医大(Isfahan University of Medical Scien)の鍼灸研究があったので、メモ。英語のウィキペディアで見たら、イスファファン医大は、イランの一流医大みたい。

 タイトルは、「内耳由来の耳鳴りに対する針の効果(The effects of acupuncture on the inner ear originated tinnitus)」

【背景】耳鳴りは、ある患者には心理的な反応を引き起こす慢性の悩ましい問題である。構造的な問題が見つかる場合もあれば、原因が見つけられない場合もある。この研究は構造的な原因が見つからない耳鳴りの集団で内耳由来とされる耳鳴りの鍼の効果を評価する。

【方法】2010年から2011年のイラン、アルザフラとカシャニ病院で前向き臨床試験が行われた。単純なサンプルが使われ、真の鍼と偽の鍼の2つのグループに割り付けられた。それぞれの患者グループは27人である。患者によって、不安・うつスケール(HADS)と耳鳴りの大きさスケールが記入された。5回目と10回目の鍼灸治療の際に、再び、患者が記入した。これらのグループは、真の鍼と偽の鍼で治療された。

【結果】5回から10回の治療後、耳鳴りの指標は顕著に減少した。付け加えるに、QOLも顕著に改善された。さらに耳鳴りの大きさも顕著に減少した。

【結論】鍼は、ある種の選ばれた患者の耳鳴りを改善することができるように思える。