alternativemedicine

Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

帯状疱疹後神経痛の焦氏頭皮針

2012-05-18 | 頭皮鍼
帯状疱疹痛及び帯状疱疹後神経痛に対する頭皮鍼治療及び耳介療法
高橋秀則 帝京平成大学ヒューマンケア学部はり灸学科
医道の日本 68(6): 68-74, 2009.

上記の論文もエポックメイキング。

 帝京大学麻酔科ペインクリニック外来を過去3年間に受診した帯状疱疹痛または帯状疱疹後神経痛と診断された患者で、西洋医学的治療で除痛できなかったもの18例。抗ウイルス剤、抗うつ薬、抗けいれん薬、神経ブロック、経皮性電気刺激、脊髄硬膜外電気刺激で除痛できなかった。18人全員が灼熱痛を訴え、アロディニアは10人にみられた。

方法
焦氏頭皮針の「感覚野」「足運感区」に刺入し、電気刺激機で150Hz、20分間刺激した。
次回療法は、ノジェによるマッピングで、神門、ゼロ点、視床、さらに痛みに相当するポイントに20-40μAで20秒間通電。
初回治療後、4回目の治療、一週間後に疼痛の評価をVASで行った。

結果
初回治療で著効4名、有効8名、やや有効5名、無効1名。
4回治療で著効7名、有効9名、やや有効1名、無効1名であった。

典型的症例
83歳女性 帯状疱疹後神経痛
5月上旬
左顔面に痛みを伴う発疹。抗ウイルス剤、消炎鎮痛剤の治療を受け、数ヶ月たっても変化がない。左眼部から後頸部に持続痛とアロディニア。「感覚野」の左顔面に相当する部位に1寸8番鍼を刺入し、150Hzで20分間刺激し、自発痛は半減した。耳介治療を行ったところ、自発痛はほぼ消失した。イミプラミン(抗うつ剤)を処方した。
 その後、痛みは徐々に再燃して、1週間後の再診時には初診終了の半分ぐらいとなった。しばらく1週間に1度の治療で、5回目からは2週間に1度の治療。9ヵ月後にはそう痒感と発作痛は軽減、アロディニアは10分の1となった。10ヵ月後には左眼瞼周囲部の軽度の発作痛のみとなった。

 この研究の意義として、アロディニアによって、局所に鍼を刺入できない場合でも、反射区を組み合わせて用いることで、かなりの効果を挙げられることを示唆している。

永野剛造先生の朱氏頭皮針の論文

2012-05-08 | 頭皮鍼
『東方医学』の文献調査中に、朱氏頭皮鍼の論文を4つ読む。

「朱氏頭皮鍼が著効を示した脳血管障害の1例」
永野剛造、国安則光、森和、矢野幸彦、永井聡
『東方医学』VOL.9 NO.3 1993年
・50歳男性、左片麻痺・構音障害。平成3年3月5日に倒れる。CTで右被殼出血。左口角下垂。左上下肢完全麻痺。知覚障害なし。軽度の言語障害。脳浮腫が改善したため、4月11日に頭皮鍼治療を始める。右頂顳帯(前頂から頭維)に刺鍼刺激しながら上肢を動かすように指示。上下肢屈筋共同運動が出現し、翌朝まで置鍼して抜針。4月12日には左上下肢が少し動くようになったとの自覚的変化が報告された。4月19日の2回目の頭皮鍼治療では、背臥位で左手は口まで挙上可能となる。下肢は左足関節底屈・背屈が可能となり、患者は「鍼を刺すと左上下肢に電気が通る感じがする」と述べる。5月27日まで1週間に2回、合計10回の頭皮鍼治療。5月27日以後は1週間に1回の頭皮鍼治療。6月21日には歩行時に患側の軽度の引きずりを認める程度。8月14日に退院となった。

「頭皮鍼が著効を示したくも膜下出血後遺症の1例」
永野剛造、矢野幸彦、永井聡、末永和栄、国安則光、森和、
『東方医学』VOL.10 NO.1 1994年
・71歳男性、平成3年1月27日、クモ膜下出血にて入院。動脈瘤クリッピング後、水頭症発症。3月18日にシャント術、気管切開。7月30日に他院より転院。四肢拘縮が強く、他動的な伸展・屈曲運動もほとんど不能であった。植物状態。理学療法での運動機能の改善、意識状態の改善も不可能と判断されたが、家族の強い希望で頭皮針を試みた。8月23日、1回目の頭皮針。左片麻痺が強く、左半身優位に痙攣が見られたこととCTの所見から右頂顳帯(前頂から頭維)に刺鍼し、刺激を加える。初回の治療で左下肢の拘縮が改善し、左上肢の肘関節の屈伸が若干可能となった。8月30日、2回目の頭皮針。両頂顳帯(前頂から頭維)に刺鍼し、刺激したところ、右下肢の拘縮がやや改善し、ADL上オムツ交換が絡になった。右上肢も肘関節部が他動的に屈伸が可能となった。9月2日、四肢拘縮に著明な改善が見られた。9月6日、脳波計で周期性一側性てんかん様放電(PLEDs)の多発を認める。9月20日、5回目の頭皮針。右膝関節部の動きが改善した。9月21日刺鍼時の意識清明化が認められ、テレビ・家族の理解が確認された。以後、1週間に2回の頭皮針。11月8日、15回目の頭皮針。脳波計で周期性一側性てんかん様放電(PLEDs)の減少を認める。車椅子に5分間乗せたところ、開眼して1点を見つめていた。呼びかけに反応し、声のほうをむいた。1月21日脳波計で周期性一側性てんかん様放電(PLEDs)の消失を認める。1月24日、27回目の頭皮針。車椅子上にて坐位が安定し、10分程度可能となった。
コメント:論文の筆者は「考察」の「痙攣について」で、「朱氏頭皮針はテンカンに有効であると朱明清医師は著書で述べており、著者らも経験的には脳性麻痺児らに頭皮針を行うと、痙攣発作が減少することを認めているが、文献上では報告されていない」と述べている。さらに「中国では、てんかんはよくみられる病証であり、治験例も多く、鍼灸の適応症の1つと考えられている。てんかんに対する鍼治療は、一般には、風池・風府・人中・大椎・腰奇を常用穴とし、大発作・小発作・精神運動発作・焦点発作などにそれぞれ予備穴を用いる」と述べている。

「頭皮針により書字機能に改善が見られた右片麻痺の2例」
永野剛造、佐藤謙介、森和、朱明清
『東方医学』VOL.11 NO.1 1995年
・92歳男性。脳梗塞後遺症、右不全麻痺。平成5年3月14日脳梗塞にて入院。CT所見で多発性脳梗塞。額頂帯(神庭から百会)前方4分の1、後方4分の1、左頂顳帯(前頂から頭維)に刺鍼し、右上肢の運動療法。11月10日から1週間に2回の頭皮針を10回続けて、書字機能の著明な改善を見た。

「脳波解析(自己回帰要素波解析)から見た頭皮針の脳血管障害後遺症に対する効果」
永野剛造、佐藤謙介、末永和栄
『東方医学』VOL.12 NO.2 1996年
・8例の男性の脳障害患者で、年齢は24歳ー64歳、交通事故による脳挫傷4例。脳血管障害2例。もやもや病による脳梗塞1例。ヘルペス脳炎後遺症1例。発作から頭皮針開始までの期間は10ヶ月から20年。右片麻痺は6例、左片麻痺は2例。脳挫傷では全員が昏睡で気管切開の既往があった。治療開始1回ー2回に脳波検査を行い、1週間に1回の頭皮針を3ヵ月半から9ヶ月施行した後に再検査を行う。

焦氏頭皮針の研究(『中国針灸』1989年5月)

2012-04-27 | 頭皮鍼
「頭針体針対中風偏タン病人甲皺微循環和痛閾的影響」
于致順著『中国針灸』VOL.9 NO.5 1989年5月

「中風病45例、男性32例、女性12例。最高齢82歳、最年少32歳。50-69歳34人。41人が脳血栓。3人が脳出血。病歴は3日ー18ヶ月。
体針グループ、頭針グループ、体針+頭針グループの3組にわけて観察した(20・20・20例)。
爪床の微小循環血流速度と上肢の痛覚閾値を計測した。また、10例を対照群とした。

治療法は、頭針と患肢の対側の『前神聡(百会の前1寸、四神聡の1つ)』から胆経の『懸リ』までの区域(運動区)に、28号または30号の1.5-2.0寸の長鍼を用い、頭皮の角度と15度の角度で3~4mmで刺入して、1分間240回の速度で3分間刺激し、1分休息した後、3回繰り返す。患側の体針として、外関・肩ぐう・曲池・合谷、下肢の環跳・足三里・委中・陽陵泉・衝陽に総合補瀉法を用いて、20分置鍼する。

本実験は、爪床微小循環と痛覚閾値を治療前と治療後を比較した。
1)針は末梢の血液循環を改善し、患者の痛覚閾値を下げることができた。
2)体針・頭針・体針+頭針の治療前後を比較したが、明確な差を見つけることができなかった。」

コメント:臨床的には、頭針単独と頭針+体鍼では、体針を併用したほうが良いという症例報告が多い。それを末梢循環との関係で証明しようとしたが、あまり成功していない研究

方雲鵬先生の方氏頭皮針

2012-04-26 | 頭皮鍼


学院の図書室で、『方氏微型針灸』陳西科学技術出版社(方雲鵬、方本正著、1998年10月初版)を見つける。学院の図書室の中医文献は、邵輝先生が選んだもの。さすが邵輝先生!こういうとき、中国伝統医学研究者としての力の差を感じる。

 方雲鵬先生は、もともと西洋医で、針灸の名医となった後も「経絡の実質は神経であり、神経の機能活動の現象は経絡である」(『現代中国100名人 鍼灸 マッサージ 気功』たにぐち書店、60-61ページ)とおっしゃっている。

方雲鵬先生(1909年ー1990年)の年譜
1909年 河南省生まれ
1927年 河南大学医学院入学。西洋医。
1948年 人民解放軍の軍医を担当。この頃、合谷に刺鍼して歯痛を止める経験がある。
1952年 中央衛生部針灸実験班に入る。
1955年 鍼麻酔の研究。
1958年 頭部の鍼で腰痛を治療し、頭皮針の研究に入る。これは、『方氏微型針灸』の6ページに詳細が書いてある。足少陽胆経の頭部のツボである承霊への刺鍼で、頭痛を治療した際に腰痛も治ったという偶然の経験から研究が始まった。
1961年 西安市中医院針灸科主任、外科主任。
1970年 方雲鵬先生は転んで尾底骨を打った。その際に、自分の頭蓋骨の人字縫合に圧痛があるのに気づき、他の医者に人字縫合に鍼をうってもらった。頭部の痛みと尾底骨の痛みがとれて、その際は督脈の関係だと考えた。それから間もなく、大腿部内側に大怪我をした農民を診たさいに、人字縫合の下に圧痛があるのに気づく。大腿部と督脈は関係がないため、経絡による鎮痛ではないと考えた。そこから独自の「伏臓」「伏象」をつくりあげることとなった(『方氏微型針灸』の7ページに詳細)。

 方雲鵬先生のマイクロ針灸は、頭皮だけでなく、手や足の「手象鍼」「足象鍼」「体環象鍼」も行われている。
 方雲鵬先生の「伏象」は朱氏頭皮鍼に似ているし、「倒象」は焦氏頭皮鍼の運動区、「倒臓」は焦氏頭皮鍼の感覚区にそっくりだ。
そして何より「伏臓」なのだが、前髪際に分布しているので、初期のYNSAに似ている(厳密に読むと大違いだが…)。


 方雲鵬先生の子息の方本正教授は、現在、アメリカ・カルフォルニアに滞在しているようだ。

『中国針灸』のYNSA紹介

2012-04-20 | 頭皮鍼
中国の針灸雑誌『中国針灸』の文献調査をしていて、YNSAの紹介を発見しました。

日本山元式新頭針療法簡介
『中国針灸』VOL.9 NO.5:33-34、1989年5月
中国中医研究院針灸研究所 王本

「日本の宮崎県日南市の山元医院の山元敏勝院長は、中国の頭針を応用する過程で、経験を蓄積して、新しい『山元式新頭針療法』を創造した。簡単に紹介する」

以下の内容は、1980年に『東洋医学とペインクリニック』に発表された山元敏勝「新しい頭針療法」(『東洋医学とペインクリニック』VOL.10 NO.3 126-134)を翻訳しつつ、ダイジェストした内容となっている。

 最初にA点、B点、C点、D点、E点の紹介、さらに陰点と陽点の紹介。次にA点+B点を350例に使用して有効率81.5%などの統計の紹介。さらに典型例として脳血管障害の症例を挙げている。

 参考文献もしっかりしているし、非常に好意を持った紹介の仕方だった。最後の英文のABSTRACTでは、‘The new scalp acupuncture treatment of Yamamoto mode is economical, simple, safe, and effective.(山元氏の新しい頭針は経済的で、シンプルで、安全で効果がある)’と結んでいるが、これが全体のトーンを反映している。

焦氏頭皮鍼の症例(『中国針灸』1989年3月)

2012-04-20 | 頭皮鍼
頭針治療脳血管障害後遺症113例
『中国針灸』VOL.9 NO.3:36-36 1989年3月
河南省 孟仄良

「近年、筆者は頭針を用いて脳血管障害後遺症113例を治療し、好結果を得たので以下に報告する。
113例中、男性79名、女性34名、年齢は33歳ー87歳。50歳以上のものが多かった。
病歴は最短が1日、最長が7年、3ヶ月以内の者が73例。3ヶ月以上の者が40例。

治療方法は健側の頭部の運動区感覚区、両側の足運感区、言語障害があるものは言語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ区
1.5-2.0寸の毫鍼で皮下に快速刺入し、運針1-1.5寸。
毎分200回の速度で捻転5分後、休憩10分。
再度捻鍼5分。これを3回繰り返す。毎日1回で、10回を1クールとした。

治療結果
言語が正常で思考も正常、麻痺側の四肢の筋力が正常、一般労働が可能なものを『全癒』とした。
113例中、全癒43例(38.0%)、著効31例(27.4%)、好転33例(29.2%)、無効6例(5.3%)であった。総有効率94.7%であった。

臨床的には3ヶ月以内の者は、3ヶ月以上の者よりも明らかに効果があった。
一部の患者では、低血圧によって脳血栓を引き起こし、頭針は慎重に用いるべきである。」

コメント:上記の研究でも毎分200回の捻転を行っている。著効例65.4%であり、これは日本の論文や以前の中国の論文とほぼ同じで、信頼できると思う。

頭皮鍼の梗概

2012-04-19 | 頭皮鍼
 アメリカ、オレゴン州、ポートランドにある伝統医学研究所(Institute for Traditional Medicine)のスブティ・ダーマナンダ博士とエディス・ヴィッカーズさんが書いた「頭皮鍼に関する梗概(SYNOPSIS OF SCALP ACUPUNCTURE)」という論文が素晴らしい。

http://www.itmonline.org/arts/newscalp.htm

 以下の文章の、3つの主要な頭皮鍼システムのJiao Shunfaはたぶん焦順発(しょう・じゅんぱつ)先生だろう。Fang Yunpeng方雲鵬(ほう・うんほう)先生、Tang Songyan湯頌延(とう・しょうえん)先生だと思う。

 During the 1970’s, scalp acupuncture was developed as a complete acupuncture system. Three major contributors to the development of this system, Jiao Shunfa, Fang Yunpeng, and Tang Songyan, each proposed different diagrams and groupings of scalp acupuncture points(1970年代に、頭皮針は、完全な1つの針灸治療システムとして発達した。3つの主要な頭皮針発達の提唱者、焦順発方雲鵬湯頌延は、おのおのが違う図と頭皮針治療のグループを発達させた).

淺野周先生の『頭皮鍼治療のすべて』によると、方雲鵬(ほう・うんほう)先生の方法は焦順発先生の焦氏頭皮鍼と並んでもっとも早期に確立した方法で、「冠状縫合、矢状縫合、ラムダ縫合で頭を前にして人体が伏せている」というホログラフィー的なマップでわかりやすい。湯頌延(とう・しょうえん)先生の方法は、上海の湯頌延先生が1970年代に完成したもので「百会を境界にして人体投影像の縮図があるとするもの」だった。

 Thus, scalp acupuncture is not really a single system, but a multiplicity of systems still in development, with a 30-year history of practical experience. A standard of nomenclature for acupuncture points has been developed (adopted in 1984 and reconfirmed in 1989), indicating 14 therapeutic lines or zones based on a combination of the thoughts of the different schools of scalp acupuncture. However, it is often necessary to carefully review the zones relied upon by an individual practitioner, as few have adopted the unified pattern.(したがって、頭皮針は、1つのシステムではありえず、30年の実践のなかで多重的に発達した。針灸治療の標準的な治療区は1984年に採用され1989年に修正され、違う頭皮針の学派の組み合わせの14の治療ラインや区域として発達してきた。しかし、統一区が採用されることは少なく、それはしばしば、個人的治療者によって治療区を見直す必要があった).

 そして、朱氏頭皮針の朱明清(Zhu Mingqing)先生の登場となる。この論文は、非常に興味深く、研究する価値を感じた。

焦氏頭皮鍼の症例(『中国針灸』1989年1月)

2012-04-19 | 頭皮鍼
頭針配合粗針治療脳血管病後遺症169例観察
251医院 中医科 姜定気
中国針灸』VOL.9 NO.1 12-13 1989年1月

「当院(251医院 中医科)では、1971年以来、頭鍼と粗鍼を用いて脳血管障害169例を治療し、好結果であったので報告する。

 169例は男性128例、女性41例、脳梗塞117例(脳梗塞の男性91例、女性26例)、脳出血52例(男性37例、女性15例)、最年少は33歳で最高齢は81歳、病歴は最短3ヶ月で最長は11年。高血圧の病歴は148例で87.57パーセントを占める。

《治療法》
〈頭鍼〉
両側の運動区と両側の足運感区
麻痺側片側の感覚区と言語不利の場合は言語区を加え、24号の毫鍼で、先に健側を刺し、後で患側を刺。毎日1回治療する。
捻鍼は1分間200回2分捻鍼し、5分の感覚で、合計3回捻鍼を行う。
〈体鍼〉
5寸の長鍼を自作して、上肢麻痺なら肩井・曲池・合谷の配穴、または肩ぐう・外関・後溪の配穴。
下肢麻痺なら気海兪から八りょうの透穴。
陽陵泉・環跳・血海・豊隆。足の内反があれば金門を加える。
毎日1回の治療。
169例中、治癒率は48.5%有効率97.6%)で副作用は無かった。」

コメント:1分間200回の捻鍼を2分間し、5分のインターバルで3回の捻鍼をして、毎日1回治療するというのは、かなりの刺激量になる。また、頭鍼と体鍼を組み合わせたほうが効果が高いと考えられる。

YNSA基本F点・G点・H点・I点

2012-04-18 | 頭皮鍼
 今日は、たまたま主訴:右膝痛の方を「なんちゃってYNSA」で治療して、うまくいきました!患者さんは、頭部の刺激で、右膝の痛みがとれたので驚かれていました。ますます、やる気が出てきましたヨ! まあ、しばらくは、YNSA基本点で痛みの治療で経験を積もうと思います。

YNSAの基本F点は、坐骨神経に対応している。

「YNSAの基本F点(陽)は、1点のみで、陽区域に位置する。基本F点(陰)は見つかっていない。F点は、耳介の後ろの乳様突起の最高点上に位置する」
『山元式新頭鍼療法YNSA』54ページより引用。

YNSAの基本G点は、膝関節に対応している。

「YNSA基本G点(陰)は次の3つの細別点に分けられる。G1=中央膝区域、G2=前部膝区域、G3=側部膝区域」

「膝の治療には同時にD点を用いることも可能である。基本G点(陽)は、乳様突起に沿って存在し、各点は陰基本点と同じ機能を有する」

YNSA基本H点基本I点は、腰椎特別点

「YNSA基本H点は基本B点の直上(頭頂より)に位置する」

「YNSA基本I点は、基本C点から約5cm後方に位置する」
『山元式新頭鍼療法YNSA』56ページより引用。

頭皮鍼と作用機序の科学的研究

2012-04-18 | 頭皮鍼
データベースのMEDLINEで、「scalp acupunture頭皮針)」をキーワードに検索を行い、200の論文を調べた(タイトル読むだけで、大変!)。
その中で、興味深かったのは、徳島大学の井上勲先生の以下の2本の論文のサマリー。

Reproduction of scalp acupuncture therapy on strokes in the model rats, spontaneous hypertensive rats-stroke prone (SHR-SP).
Inoue I, Chen L, Zhou L, Zeng X, Wang H.
Neurosci Lett. 2002 Nov 29;333(3):191-4.

Scalp acupuncture effects of stroke studied with magnetic resonance imaging: different actions in the two stroke model rats.
Inoue I, Fukunaga M, Koga K, Wang HD, Ishikawa M.
Acupunct Med. 2009 Dec;27(4):155-62.

 日本語でも2003年の「頭針による卒中易発症ラット(SHRーSP)卒中麻痺回復過程における脳内組織変化の非破壊追跡」というPDFファイルと、2007年の「頭針治療直後に現れる位相性卒中麻痺軽減時における脳内過程のMRI解析」がある。

 2003年の「頭針による卒中易発症ラット(SHRーSP)卒中麻痺回復過程における脳内組織変化の非破壊追跡」では、「頭針は中国針の1つで主に卒中による麻痺の軽減に広く用いられている。これまでの臨床報告によれば、虚血、出血の原因によらず、患者の95%に麻痺の軽減が認められ、さらに患者の60-80%は完全あるいは社会復帰できるまでに著しく回復する。このような回復率は投薬による回復率の2倍であるこのような頭針の劇的な作用を自然科学のベースで理解するためには安定したコントロールと心理効果の除外が必要である」として、高血圧性卒中易発症性ラット(SHRーSP)を用いてMRIによる非破壊観察を行っている。

 2007年の「頭針治療直後に現れる位相性卒中麻痺軽減時における脳内過程のMRI解析」では、高血圧性卒中易発症性ラット(SHRーSP)と、中大脳動脈閉塞ラット(MCAO)に対し、頭針を行っている。

 高血圧性卒中易発症性ラット(SHRーSP)における卒中発症時の脳内変化は、血液脳関門の透過性の増大と、その結果、現れる血管由来性浮腫の急激な拡大であり、細胞毒性浮腫は見られない。10分間の頭針処置後、麻痺の緩和と全身症状の改善が見られ、1日後には血管由来性浮腫の顕著な縮小が全てのラット(n=7)で認められた。頭針処置を施さないラットでは、麻痺の進行と浮腫の拡大が認められた。
 高血圧性卒中易発症性ラット(SHRーSP)における卒中発作は、血管由来性浮腫の発現を伴い、浮腫の軽減は内因性の水排出作用によるが、頭針はこの内因性作用を著しく増強することが強く示唆されたとしている。

 また、中大脳動脈閉塞ラット(MCAO)においては、1時間の閉塞により、広範な細胞毒性浮腫が現れ、片方前肢に麻痺を起こす。この場合、血管由来性浮腫は発症しない。再潅流1日後に、血管由来性浮腫が広がり、全身症状の悪化を引き起こすが、これは再潅流時に発生するフリーラジカルによる血管内皮細胞の損傷とそれによる血液脳関門透過性上昇によるものと考えられている。頭針は中大脳動脈閉塞ラット(MCAO)の細胞毒性浮腫や血管由来性浮腫、麻痺に対して効果が認められなかった。

 井上勲先生は、2010年に「運動機能回復を目的とした脳卒中リハビリテーションの脳科学を根拠とする理論とその実際」という論文も書かれていて、これも現在の脳の可塑性などの最新の知見に基づくリハビリテーション、特に経頭蓋直流電流やミラー刺激なども書かれていて、とても興味深い。

 また、秋田県立リハビリテーション精神医療センターによる「fMRIによる運動麻痺の回復過程における賦活領域の検討」も頭皮針の作用機序を考える上で、面白い。