alternativemedicine

Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

日本のマッサージのもう一つの源流はケロッグ・コーンフレークのジョン・ハーヴェイ・ケロッグ博士

2015-07-17 | マッサージ研究

「ケロッグマッサージの理論とその手法」
和久田 哲司, 和田 恒彦, 野口 栄太郎, 西條 一止
『日本温泉気候物理医学会雑誌』
Vol. 62 (1998-1999) No. 2 P 80-86
https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki1962/62/2/62_2_80/_article/-char/ja/

 「スウェーデン・マッサージ」と誤った呼称で言われる「クラッシック・マッサージ」はアムステルダム生まれのオランダ人ヨアン・ゲオルグ・メッツアー(Johann Georg Mezger:1838-1909)が創始者です。

 1885年にジョージ・テイラー医師が英語圏のアメリカに、オランダ人メッツアーの「クラッシック・マッサージ」を、スウェーデン人ピーター・ヘンリー・リン(本当はパー・ヘリック・リンPehr Henrik Ling1776-1839)がつくったものと誤記して、「エフルラージュ」を「ストローキング(stroking)」、「ペトリサージュ」を「ニーディング(kneading)」と翻訳して紹介したようです(Taylor GH. Exposition of the Swedish Movement Cure. New York)。

 1890年代に「アメリカ・マッサージの父」ジョン・ハーヴェイ・ケロッグ(John Harvey Kellogg1852-1943)がさらに、このマッサージをアメリカで普及しました。

 さらに、1895年にケロッグが『マッサージの技術(The Art of Massage)』を出版すると、ボストン大学に留学中の川瀬元九郎医師は、岐阜訓盲院の院長だった森巻耳(もり・けんじ1855-1914)に紹介しました。

 森巻耳は、1897年に「ケルロッグ氏マスサージ学」として翻訳出版しました。ストローキング(Stroking)、ニーディング(Kneading)、バイブレーション(Vibration)、パーカッション(Percussion)などの手技が書かれているようです。


日本の西洋式マッサージはフランスではなくオーストリアのライブマイルから伝わった

2015-07-17 | マッサージ研究

「Reibmayrのマッサージ術に関する一考察ー我が国」
和久田 哲司, 和田 恒彦, 野口 栄太郎, 西條 一止
『日本温泉気候物理医学会雑誌』
Vol. 63 (1999-2000) No. 4 P 205-211
https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki1962/63/4/63_4_205/_article/-char/ja/

  昔、習った按摩マッサージ指圧の学校の教科書には、「明治時代に軍医の橋本乗晃がフランス式マッサージを日本に持ち帰り、長瀬時衝がそれを研究した」と書いてあった記憶があります。

 これも調べなおすと間違いだらけです・・・。
 明治時代に軍医で初代日赤病院院長の橋本綱常(はしもと・つなつね:1845-1909)が大山巌陸軍卿に随行して1884年(明治18年)のヨーロッパ医事制度視察の際にオーストリアからドイツ語のDr. Albert Reibmayr著
Die Technik der Massage.(1882年初版)を持ち帰りました。

 これを橋本綱常(はしもと・つなつね:1845-1909)が
陸軍軍医総監の長瀬時衝(ながせ・ときひら:1836-1901)に紹介しました。広島博愛病院の院長だった長瀬は1885年から、これを広島の病院で試して著効を得て、1893年に退官して、東京飯田橋で仁寿病院を設立した際にマッサージを治療に用いました。
 1895年には長瀬時衝(ながせ・ときひろ)は日本初のマッサージの翻訳本「『萊氏按摩新論』(『Die Technik der Massage』Dr. Albert Reibmayr著)」を出版しています。
 近代鍼灸教育の父と言われる奥村三策(おくむら・さんさく1864-1912)は長瀬からマッサージを学び、これが現在の日本の「マッサージ」の基礎となったようです。この日本に文献で伝わった「西洋式マッサージ」はオランダ人ヨアン・ゲオルグ・メッツアーの古典的マッサージのようです。

以下、引用。
「Reibmayrは、近代マッサージが1575年、外科の祖のAmroise Pareがマッサージの有効性を外科に応用したのを機に発達した関係上、その基本手技の名称をフランス語で表現する。そして、それまでに12手技にのぼる様々に分化し複雑化した手法をオランダのMezgerとその門下、BerghmanとHelledayに倣い、以下の4法に整理している」
以上、引用終わり。

 4つの手技はEffleurage(エフルラージュ:軽擦法)とMassage a Friction(フリクション:強擦法)とTapotement(タポテメント:叩打法)とBewegung(運動法)です。Bewegungだけドイツ語やん・・・。

 Bum,Mosengeil,Zabludowski,Schreiberなどのドイツのマッサージ医科の名前も挙げられています。




 


 


スウェーデン・マッサージはスウェーデン由来ではない

2015-07-17 | マッサージ研究

http://www.massagemag.com/magazine-2002-issue100-history100-24026/
↑ 
2014年4月24日に『マッサージマガジン』に載ったロバート・ノア・カルバートの素晴らしい記事です。

以下、引用。
「スウェーデン・マッサージはスウェーデン由来ではないし、スウェーデン人がつくったものでもない」
Swedish massage did not originate in Sweden, nor was it created by a Swede

「また、スウェーデンにおいては『スウェーデン・マッサージ』というのは存在しない。替わりに『古典的マッサージ』ならある」
Also, in Sweden there is no "Swedish massage"; instead, massage is referred to almost universally as "classic massage." 

「そして、ヨーロッパのほとんどでは『クラッシック・マッサージ』が『スウェーデン・マッサージ』よりも使われている。しかし、アメリカでは、『クラッシック・マッサージ』という言葉はほとんど使われずに、スウェーデン・マッサージが古典的で最もマッサージの基本であると見なされている」
And in most of Europe the term classic massage is much more prevalent than Swedish massage. But in America, the term classic massage is used very little, while Swedish massage is considered the classic and most basic of all massage methods.
以上、引用終わり。

例えば、日本では『医療マッサージの基礎と応用』(2008年)は素晴らしい文献だと思うのですが、6ページの部分だけは間違っていると思います。 理由は以下です。

以下、引用。
「そして、『スウェーデン・マッサージ』というのは数ある中でも誤った呼称なのだ。この100年間、マッサージの教科書はスウェーデン人のピーター・ヘンリー・リン(1776-1837)が創始者と書かれて、スウェーデン・マッサージという誤った呼称が使われてきているが、それは歴史的には『古典的マッサージ(クラッシック・マッサージ)』と呼ばれるべきであり、ピーター・リンはスウェーデンマッサージの創設者ではないのだ。これは多くの読者にとってショックを与えるかも知れない。でも絶対に本当なんだ。ピーター・リンは『スウェーデンマッサージの父』などではない。なぜなら、リンが1813年につくったスウェーデン・ジムナスティック・ムーブメントのカリキュラムにはスウェーデンマッサージは一箇所も含まれていない」
And so the term "Swedish massage" is a misnomer in a number of ways. I don’t know of a massage textbook written during the last 100 years that does not attribute Swedish massage to Peter Henry Ling (1776-1837), a Swede. Setting aside the argument that Swedish massage is a misnomer and would be more historically correct if it were called classic massage, Peter Ling was not the creator of Swedish massage. This may come as a shock to many readers, but it is absolutely true. Peter Ling is not the "father of Swedish massage," because Swedish massage was not a part of Ling’s Swedish Gymnastic Movements nor the curriculum of the Royal Central Gymnastic Institute founded by Ling in 1813.
以上、引用終わり。

そうです。戦前に、日本でもヘンリック・パー・リンがつくった「スウェーデン体操」が流行しました。当時は、「デンマーク体操」や「ドイツ体操」、チェコの「ソコール体操」が日本でも流行し、これは世界的な「マス・ゲーム」の流行にもつながっていきます。体育やボディワークを詳しく研究したヒトなら誰でも知っていることです。

 「スウェーデン・マッサージ」と誤った呼称で言われる「クラッシック・マッサージ」はアムステルダム生まれのオランダ人ヨアン・ゲオルグ・メッツアー(Johann Georg Mezger:1838-1909)が創始者です。
 メッツアーはオランダのライデン大学で医学を学び、アムステルダムで貴族相手にマッサージの仕事をしており、患者にはスウェーデン国王グスタフ5世などもいました。
 「マッサージ」というコトバはフランス語だし、手技名である「エフルラージュ(effleurage軽擦法)」や「ペトリサージュ(petrissage揉捏法)」はメッツアーがフランス語で名づけて、ヨーロッパ中に広まったそうです。
 さらに1885年にジョージ・テイラー医師が英語圏のアメリカに、オランダ人メッツアーの「クラッシック・マッサージ」を、スウェーデン人ピーター・ヘンリー・リン(本当はパー・ヘリック・リンPehr Henrik Ling1776-1839)がつくったものと誤記して、「エフルラージュ」を「ストローキング(stroking)」、「ペトリサージュ」を「ニーディング(kneading)」と翻訳して紹介したようです(Taylor GH. Exposition of the Swedish Movement Cure. New York)。

 1890年代には「アメリカ・マッサージのパイオニア」と言われるジョン・ハーヴェイ・ケロッグ博士(ケロッグ・コーンフレークのケロッグ社の創設者)を始めとするマッサージ関連の書籍を出版したヒト全員が、この誤記を書き写しました。それから2014年4月まで、アメリカや英語圏では誰も気づかずに、この誤った知識が広められ、さらに世界中に拡がっていったというのが真相のようです・・・。いまでも世界中の医学雑誌に掲載される論文は「スウェディッシュ・マッサージ」と書いてます。事情を知っているヒトやプロフェッショナルだけが「クラッシック・マッサージ」と表記してイマス。