alternativemedicine

Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

焦氏頭皮針の研究(『中国針灸』1989年5月)

2012-04-27 | 頭皮鍼
「頭針体針対中風偏タン病人甲皺微循環和痛閾的影響」
于致順著『中国針灸』VOL.9 NO.5 1989年5月

「中風病45例、男性32例、女性12例。最高齢82歳、最年少32歳。50-69歳34人。41人が脳血栓。3人が脳出血。病歴は3日ー18ヶ月。
体針グループ、頭針グループ、体針+頭針グループの3組にわけて観察した(20・20・20例)。
爪床の微小循環血流速度と上肢の痛覚閾値を計測した。また、10例を対照群とした。

治療法は、頭針と患肢の対側の『前神聡(百会の前1寸、四神聡の1つ)』から胆経の『懸リ』までの区域(運動区)に、28号または30号の1.5-2.0寸の長鍼を用い、頭皮の角度と15度の角度で3~4mmで刺入して、1分間240回の速度で3分間刺激し、1分休息した後、3回繰り返す。患側の体針として、外関・肩ぐう・曲池・合谷、下肢の環跳・足三里・委中・陽陵泉・衝陽に総合補瀉法を用いて、20分置鍼する。

本実験は、爪床微小循環と痛覚閾値を治療前と治療後を比較した。
1)針は末梢の血液循環を改善し、患者の痛覚閾値を下げることができた。
2)体針・頭針・体針+頭針の治療前後を比較したが、明確な差を見つけることができなかった。」

コメント:臨床的には、頭針単独と頭針+体鍼では、体針を併用したほうが良いという症例報告が多い。それを末梢循環との関係で証明しようとしたが、あまり成功していない研究

方雲鵬先生の方氏頭皮針

2012-04-26 | 頭皮鍼


学院の図書室で、『方氏微型針灸』陳西科学技術出版社(方雲鵬、方本正著、1998年10月初版)を見つける。学院の図書室の中医文献は、邵輝先生が選んだもの。さすが邵輝先生!こういうとき、中国伝統医学研究者としての力の差を感じる。

 方雲鵬先生は、もともと西洋医で、針灸の名医となった後も「経絡の実質は神経であり、神経の機能活動の現象は経絡である」(『現代中国100名人 鍼灸 マッサージ 気功』たにぐち書店、60-61ページ)とおっしゃっている。

方雲鵬先生(1909年ー1990年)の年譜
1909年 河南省生まれ
1927年 河南大学医学院入学。西洋医。
1948年 人民解放軍の軍医を担当。この頃、合谷に刺鍼して歯痛を止める経験がある。
1952年 中央衛生部針灸実験班に入る。
1955年 鍼麻酔の研究。
1958年 頭部の鍼で腰痛を治療し、頭皮針の研究に入る。これは、『方氏微型針灸』の6ページに詳細が書いてある。足少陽胆経の頭部のツボである承霊への刺鍼で、頭痛を治療した際に腰痛も治ったという偶然の経験から研究が始まった。
1961年 西安市中医院針灸科主任、外科主任。
1970年 方雲鵬先生は転んで尾底骨を打った。その際に、自分の頭蓋骨の人字縫合に圧痛があるのに気づき、他の医者に人字縫合に鍼をうってもらった。頭部の痛みと尾底骨の痛みがとれて、その際は督脈の関係だと考えた。それから間もなく、大腿部内側に大怪我をした農民を診たさいに、人字縫合の下に圧痛があるのに気づく。大腿部と督脈は関係がないため、経絡による鎮痛ではないと考えた。そこから独自の「伏臓」「伏象」をつくりあげることとなった(『方氏微型針灸』の7ページに詳細)。

 方雲鵬先生のマイクロ針灸は、頭皮だけでなく、手や足の「手象鍼」「足象鍼」「体環象鍼」も行われている。
 方雲鵬先生の「伏象」は朱氏頭皮鍼に似ているし、「倒象」は焦氏頭皮鍼の運動区、「倒臓」は焦氏頭皮鍼の感覚区にそっくりだ。
そして何より「伏臓」なのだが、前髪際に分布しているので、初期のYNSAに似ている(厳密に読むと大違いだが…)。


 方雲鵬先生の子息の方本正教授は、現在、アメリカ・カルフォルニアに滞在しているようだ。

脳から読み解く 中医学と鍼灸

2012-04-25 | 東洋医学
 『医道の日本』に「脳から読み解く 中医学と鍼灸」(『医道の日本』2007年3月号)という酒谷薫先生と兵頭 明先生の対談を発見して読む。

兵頭明先生「合谷に鍼をうちました。fMRIで撮りました。前頭葉に反応が出ましたというのは、単なる現象を見ているだけです。脳の中のフラクタルな法則性と言う部分は、これからの研究課題であると強く感じます」

酒谷薫先生「私にはストレス疾患やストレスのメカニズムの解明、あるいはその治療に対して針灸や中医学に期待を抱いています

酒谷薫先生「もしかしたら、鍼治療は脳に対する刺激として、認知症に治療効果があるのでは。可能性はおおいにあります」

兵頭明先生「昨年7月に東京で開催された、脳科学の専門家が集結する第12回日本脳代謝モニタリング研究会で、酒谷先生の日本大学医学部癑神経外科に所属する鍼灸師の北川毅氏が発表されたことは、非常に興味を引かれる出来事でした」

『北川毅「鍼治療中の大脳皮質賦活酸素代謝変化
合谷に刺鍼→感覚野だけでなく、左前頭葉に刺激と同期した反応を得た。
(1)鍼刺激による「ひびき」は対側感覚野だけでなく、前頭前野を賦活する例が存在する。
(2)前頭前野は様々な高次脳機能に関与するだけでなく、自律神経系にも関与することが指摘されており、鍼刺激による前頭前野の賦活は鍼治療のメカニズムを考える上で重要であると示唆された。』

酒谷薫先生「北川氏の研究に用いた脳の機能測定器というのが、光トポグラフィー近赤外光を使った脳の機能を見る装置です。」

酒谷薫先生「現在、進めているのは、ある経穴を刺激したときの『ひびき』といわれる現象と、単なる皮膚の痛み刺激とどう差があるかです」

非常に刺激的な対談だった。

 酒谷薫先生は著書『脳は鍛えるな!』(講談社+α新書)のなかでも「アロマテラピー」や「化粧」、運動とストレス、脳血流の関係を書かれている。

論文も以下は、化粧について

化粧時の触刺激による前頭葉血流の変化―近赤外分光分析を用いた検討―」
『自律神経 (suppl)』: 66-66, 2011.

化粧の連用による脳の活性化と認知機能の改善―近赤外分光分析を用いた検討―」
『自律神経 (suppl)』: 78-78, 2011

以下は、ストレスの脳血流について
ストレス反応における前頭前野の役割」
『自律神経 (suppl)』: 111-111, 2010.

軽症うつに対する運動のリラクゼーション効果」
『自律神経 (suppl)』: 201-201, 2010.

ハンドマッサージについて
ハンドマッサージによる前頭葉の脳循環酸素代謝変化(第2報):左右施術順序の影響」
『自律神経 (suppl)』: 202-202, 2010.

「マッサージ効果の新しい定量評価手法開発」
『自律神経 (suppl)』: 195-195, 2009.

ハンドマッサージによる前頭葉の脳酸素代謝変化」
『自律神経 (suppl)』: 229-229, 2009.

以上です。

脳活動と針灸

2012-04-25 | 東洋医学
4月23日のブログ記事「鍼とfMRI」で書いた「カルフォルニア大学で趙という教授が合谷や足三里に刺して、fMRIで反応を調べている」に関連した論文をみつけた。

Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Mar 3;95(5):2670-3.
New findings of the correlation between acupoints and corresponding brain cortices using functional MRI.
Cho ZH, Chung SC, Lee HJ, Wong EK, Min BI.

 これは、1998年のカルフォルニア大学アーバイン校の趙教授の論文で、至陰など下肢の膀胱経の、眼に効果があるとされているツボに鍼を刺し、大脳皮質の視覚野をfMRIで観察するというもので、「経穴には特異性があることを証明した」とマスコミで大きく取り上げられた。わたしがニューズウィークで読んだのはその頃の記事らしい。 ただ、2006年に趙教授(Cho ZH)は、前記論文を撤回している(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16790551.1)。
 このへんの複雑な事情は、2009年に東京有明医療大学の開学記念セミナーで行われたハーバード大学のJian Kong氏の講演「鍼治療の特異的効果と非特異的効果」に詳しい。

 鍼と脳活動についての科学的研究について、日本では「脳活動と鍼灸」(『全日本鍼灸学会雑誌』2004年第54巻5号686-697)というシンポジウムに詳しい。

 ここでは、下山一郎氏による、合谷刺鍼と近赤外スペクトル分光法、光トポグラフィーによる脳活動の観察、合谷の鍼通電とfMRI観察あるいは合谷への円筒灸刺激とfMRI観察が述べられている。fMRIについて触れられた記述は、方法論的な難しさがわかる。

 興味深かったのは、近赤外スペクトル分光法で、合谷に「鍼管設置だけでも血流増加」「切皮だけでも血流増加」が見られたという部分。これは臨床的にすごくわかる。テイ鍼をたてるだけで、合谷は変化するし、得気もできる。

「従来からfMRIを研究手法に用いている研究施設では、鍼灸を対象にした検討も報告されている。ただし、その結果については、いまだコンセンサスが得られているとは言い難い。Cho(趙)らが報告した眼の疾患を治療する経穴への刺鍼の例がきわめて特徴的である。眼の関連経穴に中国鍼を用い、得気刺激を持続的に行った画像と行わなかった画像から、鍼灸刺激で後頭葉の視覚中枢に局所脳賦活が認められた、との報告が米国の有名雑誌であるProc Natl Acad Sci誌に掲載された。これに対していくつかの追試が行われ、同様の結果が得られたとする報告と、得られなかったとの報告が行われている」
『全日本鍼灸学会雑誌』2004年第54巻5号693ページより引用


そして、2006年にCho(趙)教授は論文を撤回することになる。

アスペルガー障害と督脈通陽

2012-04-24 | 中医学
 以前、自分のFACEBOOKのノート(2012年2月7日のノート)で、中国、江蘇省新沂市人民医院の兪文江さんの脳血管認知症に対する「通督健脳調神法」という治療法について少し書いた(「脳血管認知症38例に対する鍼治療」 谷田伸治『中国医学情報』、『鍼灸柔整新聞』第921号(2012年1月25日)。

 今度は、『全日本針灸学会雑誌』に「アスペルガー障害を持つ女児に対する針灸治療」という論文の要旨の中で、「補益心脾、督脈通陽を目的に、左神門、右三陰交、大椎に円皮針貼布、背部、前腕、下腿の陽経、および頭部と手足井穴に接触針、督脈上の圧痛点に八分灸を3壮行った」という記述を見つけた。

アスペルガー障害を持つ女児に対する針灸治療
『全日本針灸学会雑誌』第60巻第4号(2010年8月)
澤田和代、北川善保、坂口俊二、郭哲次
PDFファイルで全文が読める。

 督脈通陽ということばは使わなくても、深谷伊三郎先生は、『お灸で病気を治した話』にて、多くの精神疾患を、督脈上の圧痛点に灸することで、治療している。

焦氏頭皮鍼の症例(『中国針灸』1989年4月)

2012-04-24 | 東洋医学
「頭針治療偏タン(「タン」はやまいだれに難)1228例臨床観察」
武承仁『中国針灸』VOL.9 NO.4:3-4 1989年4月
※「偏タン」とは半身不随のこと。

「われわれは1972年以来、頭針を脳血管障害が引き起こす『偏タン(=半身不随)』に用いた。
 1228例中、手による捻鍼で治療したのが218例(男性146例、女性72例)。
 捻鍼機を用いたのが216例(男性142例、女性74例)。
 G6805治療機(パルス通電)を用いたのが794例(男性502例、女性292例)
年齢は最年長が81歳、最年少が17歳。病歴が一番短いのは1日、最長は2年以上。
右側の半身不随が516例、左側が516例。

 治療方法は選区の根拠は患者の半身不随や失語症などの症状により、対側の運動区、感覚区、言語区などを選び、暈聴区、足運感区なども用いた。加えて顳三鍼(※1)や、額五鍼(※2)を用いた。刺激方法は3-5分ごとに(1)毎分200-250回の捻鍼を3回、置鍼15分の治療を毎日1回行うグループ、または(2)毎分300回の捻鍼機を用いて捻鍼3-5分、置鍼15分を毎日1回のグループ。(3)G6805のパルス通電機。1分500-700回の頻度で刺激10分後、15分置鍼を毎日1回のグループ。

治療結果:1228例中、最短は20回。最長は56回。治癒者は608例(49.51%)、著効者は479例(39%)、好転者は123例(10.02%)、無効者は18例(1.47%)。
 グループ1の手での捻鍼は218例で、治癒104例(47.43%)」。グループ2の捻鍼機は216例で治癒109例(50.46%)、グループ3のG6805機のパルス通電刺激は794例で治癒395例(49.62%)。統計学処理P>0.5。3種類の刺激による効果の間に明らかな差異は認められなかった。」

※1:顳三鍼…上海第二医科大学の林学検が焦氏頭皮針を実践するなかで新たに開発した刺法。
※2:額五鍼…上海第二医科大学の林学検が焦氏頭皮針を実践するなかで新たに開発した刺法。いずれも詳しくは『頭皮鍼治療のすべて』157ページ参照。

鍼とfMRI

2012-04-23 | 東洋医学
 鍼の機序とfMRIに関する論文を検索して以下の論文のサマリーを読む。2012年4月にドイツの研究者たちが発表したものなので、最新の見解といえる。わたしが興味を持っているのは、経穴による差異。たしか、カルフォルニア大学で趙という教授が合谷や足三里に刺して、fMRIで反応を調べているという記事が10年ほど前にニューズウィークに載り、調べたが論文を発見できなかった記憶がある。あれから10年がたち、どれほど発展したのか、知識をアップデートしておきたい。

Characterizing acupuncture stimuli using brain imaging with FMRI - a systematic review and meta-analysis of the literature.
PLoS One. 2012;7(3):e32960. Epub 2012 Apr 9.
Huang W, Pach D, Napadow V, Park K, Long X, Neumann J, Maeda Y, Nierhaus T, Liang F, Witt CM.
Institute for Social Medicine, Epidemiology and Health Economics, Charité University Medical Center, Berlin, Germany.

摘要
背景:経穴の特異性も含む、鍼の基礎的な作用機序はまだよくわかっていない。この10年、刺鍼による脳の反応を調べるためのfMRIを用いた研究の数は増加している。われわれの目的は、次の観点を考慮して、体型的な概要を提示することである。すなわち、1)真の鍼と偽の鍼の間の差異、2)違う種類の鍼の操作による差異、3)患者と健康人との差異、4)経穴による差異

方法論的な、主な発見:われわれは、2009年9月までの英語、中国語、韓国語、日本語のデータベースで出版された、最低でも一グループは鍼を受けている、人間の脳について鍼の効果を調査したfMRIを用いた研究を含めた文献を調べた。779の論文があり、149の論文は説明や分析の基準を含んでいる。34の論文はメタ分析に適確であった。説明された視点では、複数の研究が、鍼は、特別な脳の領域、それは体性感覚野大脳辺縁系大脳基底核脳幹、そして小脳を含む領域の活動を調整すると、報告していた。真の鍼刺激のメタ分析は、上述の多くの領域の脳の活動を確証していた。真の鍼と偽の鍼の差異は、帯状回(middle cingulate)の脳の反応で言及されている。異なる見解が言及されて、感覚運動野、大脳辺縁系、小脳が含まれているものもある。

結論:刺鍼による脳の反応は、体性感覚野だけでなく、感情的・認知的なプロセスを含む脳のネットワークが含まれている。一方、説明された視点から、ほとんどの研究で脳の特定の領域での活動を刺鍼は調整していると示唆している。証拠に基づいたメタ分析は、これらの結果を確証している。より良質で、方法論でも透明性のある研究が研究の発展のために必要である。

中国伝統医学のルポルタージュ

2012-04-23 | 東洋医学
 酒谷薫先生の『なぜ中国医学は難病に効くのか―脳神経外科医がみた「不思議な効果」』 (PHP研究所、2002年3月6日初版)を読了。

酒谷薫先生は脳神経外科医。経歴は、以下。

1981年 大阪医科大学卒業、同年大阪医科大学大学院入学
1987年 大阪医科大学大学院修了、ニューヨーク大学医学部脳神経外科・フェロー
1989年 ニューヨーク大学医学部脳神経外科・Assistant Professor
1990年 イエール大学医学部神経内科・Visiting Assistant Professor(兼任)
1995年 北京日中友好病院脳神経外科・JICA専門家
2002年 日本大学医学部脳神経外科・助教授
2003年 日本大学医学部・脳神経外科学系・光量子脳工学分野 教授

 1995年から2002年まで北京の日中友好病院の脳神経外科で6年半に渡って指導された際の経験を書かれている。もともと西洋医であり、東洋医学に興味はなかった。北京の日中友好病院で、以下のN氏の症例に出会って考え方が変わった。

N氏 45歳男性
初診2000年9月上旬
病歴:「封入体筋炎」を発病して18年が経過。大学卒業後、技術者として就職。28歳のときに、腰がふらつき、歩く姿勢がおかしくなる。半年後には階段を昇るのが遅くなる。1年後には走ることができなくなる。大学病院の神経内科で2週間の検査入院後、「脊髄性進行性筋萎縮症」と診断される。ビタミンB12の注射を受けながら、1週間に3回のリハビリを受けるが、31歳の時に装具をつけないと歩けなくなる。
 別の病院で再検査の結果、「封入体筋炎」と診断される。6ヶ月間副腎皮質ステロイドホルモンのパルス療法。治療直後はつま先が動かせるようになり、若干の筋力が戻る。しかし、その後は筋力が戻ることはなく、ステロイドホルモンの副作用の鬱症状に苦しむ。
 40歳で自力歩行ができなくなり、車椅子が必要となる。42歳で自宅で寝たきりとなり、全ての治療を中止した。
身長186cm 体重65kg. 最高血圧は90mmHg。下肢は軽度の伸展運動のみで歩行、自立はできない。上肢は筋力低下し、車椅子を動かせない。背筋や頸部の筋力も低下し、体をかがめたら自分で元に戻せない。寝返りもうてない。食事や排便も介護が必要。
 あまり期待せずに日中友好病院を受診。

四診
望診:顔色は青白い
   舌診:薄白苔、舌質は暗紫色。
   皮膚は乾燥し、筋肉が萎縮している
聞診:声の調子が固い。足は冷感がある。
問診:便は軟便。
切診:細脈、弦脈、手足が冷たい
弁証:脾気血虚、肝腎陰陽虚
治則:補脾気、補血、肝腎補陰、補陽
処方:12種類の生薬を配合して処方

経過:治療3日目より足の冷感が軽減。足の冷感は1週間で消失。自覚症状でも「以前よりもからだがポカポカと温かい感じがする」と言う。2週間で便が3日に1回の下痢便から毎日、普通の便が排便できるようになった。治療2ヵ月後、「車椅子に乗っても体が傾かなくなった」。3ヵ月後「身体を起こせるようになった」。背筋力が回復し、自分で食事ができるようになった。寝返りがうてるようになった。左手の握力が強くなった。ビザの関係で帰国。

 さらに自己体験。

 論文などの書き物をすると、口の周りにニキビが出る。診察や手術で忙しくても出ない。さらに夜中に胃痛。
舌診で内臓の熱、胃熱のほかに肝脾の熱と弁証される。顔色が赤く目も充血し、ニキビのような吹き出物が口周りに出ている。紅舌で黄苔。目の充血から肝熱、口の周りのニキビから脾熱と弁証、防風通経丸と竜胆潟肝丸を同仁堂で処方される。数日で便通がスムーズとなり、1週間でニキビのような吹き出物が治る。薬をやめると再発する。

 それ以降は、ストレス病と判断したら、中国伝統医学の外来に送るようにした。

 一流の西洋医学者の酒谷薫先生が、懐疑しながらも、中国伝統医学に魅了されるまでを書かれている。日中友好病院の様子もうかがえて、自分としては、とても面白く読めた。中国伝統医学の利点は、陰陽のバランスの調整や五行(五臓)のバランスの調整、全体としての調整によって、原因がわからなくても治療ができる部分だとあらためて感じた。中国伝統医学のルポルタージュとしては、すごく良い本だと思う。

『中国針灸』のYNSA紹介

2012-04-20 | 頭皮鍼
中国の針灸雑誌『中国針灸』の文献調査をしていて、YNSAの紹介を発見しました。

日本山元式新頭針療法簡介
『中国針灸』VOL.9 NO.5:33-34、1989年5月
中国中医研究院針灸研究所 王本

「日本の宮崎県日南市の山元医院の山元敏勝院長は、中国の頭針を応用する過程で、経験を蓄積して、新しい『山元式新頭針療法』を創造した。簡単に紹介する」

以下の内容は、1980年に『東洋医学とペインクリニック』に発表された山元敏勝「新しい頭針療法」(『東洋医学とペインクリニック』VOL.10 NO.3 126-134)を翻訳しつつ、ダイジェストした内容となっている。

 最初にA点、B点、C点、D点、E点の紹介、さらに陰点と陽点の紹介。次にA点+B点を350例に使用して有効率81.5%などの統計の紹介。さらに典型例として脳血管障害の症例を挙げている。

 参考文献もしっかりしているし、非常に好意を持った紹介の仕方だった。最後の英文のABSTRACTでは、‘The new scalp acupuncture treatment of Yamamoto mode is economical, simple, safe, and effective.(山元氏の新しい頭針は経済的で、シンプルで、安全で効果がある)’と結んでいるが、これが全体のトーンを反映している。

焦氏頭皮鍼の症例(『中国針灸』1989年3月)

2012-04-20 | 頭皮鍼
頭針治療脳血管障害後遺症113例
『中国針灸』VOL.9 NO.3:36-36 1989年3月
河南省 孟仄良

「近年、筆者は頭針を用いて脳血管障害後遺症113例を治療し、好結果を得たので以下に報告する。
113例中、男性79名、女性34名、年齢は33歳ー87歳。50歳以上のものが多かった。
病歴は最短が1日、最長が7年、3ヶ月以内の者が73例。3ヶ月以上の者が40例。

治療方法は健側の頭部の運動区感覚区、両側の足運感区、言語障害があるものは言語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ区
1.5-2.0寸の毫鍼で皮下に快速刺入し、運針1-1.5寸。
毎分200回の速度で捻転5分後、休憩10分。
再度捻鍼5分。これを3回繰り返す。毎日1回で、10回を1クールとした。

治療結果
言語が正常で思考も正常、麻痺側の四肢の筋力が正常、一般労働が可能なものを『全癒』とした。
113例中、全癒43例(38.0%)、著効31例(27.4%)、好転33例(29.2%)、無効6例(5.3%)であった。総有効率94.7%であった。

臨床的には3ヶ月以内の者は、3ヶ月以上の者よりも明らかに効果があった。
一部の患者では、低血圧によって脳血栓を引き起こし、頭針は慎重に用いるべきである。」

コメント:上記の研究でも毎分200回の捻転を行っている。著効例65.4%であり、これは日本の論文や以前の中国の論文とほぼ同じで、信頼できると思う。