alternativemedicine

Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

肩痛の講義7:野球肩

2019-04-08 | 肩痛

「リトルリーグ肩(Little League Shoulder)」では、「上腕骨骨端線離開(Proximal Humeral Epiphysiolysis)」が起こります。現在は、投球制限がはじまっています。

2019年2月14日『日刊スポーツ』
「学童野球で球数制限導入 投手の投球数は1日70球」
https://www.nikkansports.com/baseball/news/201902140000801.html


「腱板疎部損傷(rotator interval lesion)」は、信原克哉(Katsuya Nobuhara)先生が1986年に提唱されました。

"Rotator interval" lesionについて
信原 克哉『日本リウマチ・関節外科学会雑誌』 5(1), 5-10, 1986
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsjd1982/5/1/5_1_5/_pdf/-char/ja


 「上方肩関節唇損傷(SLAP lesion)」は、1985年に整形外科医のジェームズ・アンドリュース(James Andrews, M.D.:1942ー) が提唱しました。ちょうど、この年に、アンドリュースは、大リーグのロジャー・クレメンス(Roger Clemens)投手の関節唇損傷を診断・治療したことで、有名になりました。

1985年「上腕二頭筋長頭に関連した関節唇損傷」
Glenoid labrum tears related to the long head of the biceps

James R. Andrews, MD
Am J Sports Med. 1985 Sep-Oct;13(5):337-41.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4051091

 


1947年にベネットが野球を報告しています。ここから野球の歴史が本格的に始まります。

Shoulder and Elbow Lesions Distinctive of Baseball Players.
Bennett GE.
Ann Surg. 1947 Jul;126(1):107-10.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17858969


 


肩痛の講義6:野球肩

2019-04-04 | 肩痛
 「腱板断裂」Rotator Cuff Tearは、ドロップ・アーム・テストで鑑別できます。ドロップ・アーム・テストは1934年にアメリカ・ボストンの外科医アーネスト・アモリー・コッドマン(Ernest Amory Codman:1869ー1940)によって創案されました。コッドマンは棘上筋の研究で有名です。
 
   同じ1930年代にヤーガソンが「上腕ニ頭筋長頭腱炎のヤーガソンテストを創案しています。
1931年ヤーガソン著『回外サイン』
SUPINATION SIGN 
R. M. YERGASON
 J Bone Joint Surg Am, 1931 Jan; 13 (1): 160 -160 
http://jbjs.org/content/13/1/160  
 
《ベネット損傷》Bennet lesion
1947年にベネットが野球野球肘を報告しています。ここから野球の歴史が本格的に始まります。
Shoulder and Elbow Lesions Distinctive of Baseball Players.
Bennett GE.
Ann Surg. 1947 Jul;126(1):107-10.
 
《リトルリーグ(Little leaguer's shoulder)》
 1953年にドッター(Dotter)が「上腕骨近位骨端線離開(Epiphyseal Separation in the Proximal Humerus )」を「リトルリーグ」として報告しました。

《腱板炎・インピンジメント症候群》
 腱板炎は回旋筋腱板炎や棘上筋症候群とも言います。歴史的には、1972年にチャールズ・ニアー2世が「インピンジメント症候群」は回旋筋腱板と烏口肩峰靱帯の衝突であることを提唱して、「ニアー・サイン(インピンジメント・テスト)」を提唱しました。

 1974年にホーキンズとケネディが「水泳(Swimmer's shoulder)」を提唱し、「ホーキンス・ケネディ・テスト(Hawkins and Kennedy test)」というインピンジメントテストを提唱しました。
 1977年にリップマンが、「有痛弧症候群(Painful arc syndrome)」を提唱し、「有痛弧徴候(painful arc sign)」を提唱しました。

《上方関節唇損傷》SLAP lesion
1985年にアンドリューが「SLAP lesion(スラップ・リージョン)」を報告します。
Arthroscopy of the shoulder in the management of partial tears of the rotator cuff: a preliminary report. Andrews JR, et al. 
Arthroscopy. 1985.

《腱板疎部損傷》
Rotator Interval Lesion
1987年に日本の兵庫県龍野市の信原克哉先生が、「腱板疎部損傷(ローテーター・インターバル・リージョン)」を報告しました。信原克哉先生は、「広背筋症候群」や「第二関節」も提唱され、世界的な関節学者です。

肩痛の講義5:水泳肩(Swimmer's shoulder)

2019-04-04 | 肩痛
1972年にオクラホマの医師、チャールズ・ニアー2世(Charles S. Neer, II:1917–2011)が、回旋筋腱板(rotator cuff)と、烏口肩峰靱帯(coraco-acromial ligament)の衝突が、『慢性インピンジメント症候群』の原因であると論じ、外科手術法を論じました。
1972年「肩の慢性インピンジメント症候群の前方形成術:予備的研究」
Anterior acromioplasty for the chronic impingement syndrome in the shoulder: a preliminary report.
Neer CS 2nd.
Bone Joint Surg Am. 1972 Jan;54(1):41-50.
 
Neer Sign – Shoulder Rotator Cuff Impingement Special Test
1974年にケネディとホーキンスが「水泳肩(Swimmer's shoulder)」を提唱しました。
1974年「水泳肩」
Swimmers shoulder.
Kennedy JC, Hawkins R.
Phys Sports Med 1974;2:34–38.
https://ci.nii.ac.jp/naid/10019235261/

1980年にホーキンスとケネディが「アスリートの衝突症候群(インピンジメント・シンドローム)」で、「ホーキンス・ケネディ・テスト(Hawkins-Kennedy test)」を提唱しました。
1980年「アスリートのインピンジメント症候群」
Impingement syndrome in athletes.
Hawkins RJ, Kennedy JC.
Am J Sports Med. 1980 May-Jun;8(3):151-8. 


肩の講義4

2019-04-04 | 肩痛

4月3日水曜日の講義内容。
肩痛(Shoulder pain)で、
レッドフラッグスは、肩こりの際に再度、講義する。
鍼灸不適応疾患として5つの徴候を暗記する。
1.化膿性肩関節炎
2.骨折・脱臼(ピアノキーサイン)
3.腱板断裂(ドロップ・アームテスト)
4.石灰沈着性腱板炎
5.肩峰下滑液包炎(プッシュボタン徴候、ダウバーン徴候)

上腕二頭筋長頭腱炎と腱板炎を分類する。
上腕二頭筋長頭腱炎は、
結節間溝の圧痛、
ヤーガソンテスト、
スピードテスト、
ストレッチテストを実技として行う。
※最新情報としてアッパーカットテストを紹介する。

腱板炎として、
ペインフルアークサインの機序を講義し、棘状筋への刺鍼部位として曲垣(SI13)、秉風(SI12)、巨骨(LI16)、肩ぐう(LI15)を触診する。
最後に、肩の触診として、
骨の触診、
胸鎖関節、鎖骨、肩鎖関節。
肩甲棘、肩峰。
上腕骨の大結節、結節間溝、小結節、烏口突起をおこなう。

三角筋、
回旋筋腱板(回旋筋腱板)として、棘状筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋、
大円筋、広背筋、
上腕二頭筋、上腕筋、烏口腕筋、
大胸筋、小胸筋、鎖骨下筋を触診する。

これで、80分。


肩痛の講義3:回旋筋腱板炎(Rotator cuff tendiinitis)の理学検査法

2019-04-02 | 肩痛
【肩痛のアップデート:回旋筋腱板炎(Rotator cuff tendiinitis)の理学検査法】  
2018年「アスリートの肩の包括的検査」
Comprehensive Examination of the Athlete’s Shoulder
Eric J. Cotter, et al.
Sports Health. 2018 Jul-Aug; 10(4): 366–375.
Published online 2018 Feb 14. 
 
以下、引用。
「『ニヤーサイン(Neer sign)』は肩峰下滑液包インピンジメントに対する『感度』は75パーセントで、『ホーキンス・ケネディテスト』は『感度』80パーセントだった」
Results:The Neer sign has a 75% sensitivity for subacromial impingement (SAI), while the Hawkins-Kennedy test has an 80% sensitivity. 
以上、引用終わり。
『ニヤーサイン(Neer sign)』  
 
『ホーキンス・ケネディテスト』
 Hawkins-Kennedy test   
 
以下、引用。
「『ペインフルアーク(有痛弧)テスト』は肩峰下インピンジメント徴候への『感度』は80パーセントだった。」
The painful arc test has an 80% specificity for SAI.
以上、引用終わり。
『ペインフルアーク(有痛弧)テスト』
 
以下引用。
「『スピードテスト』は感度54パーセントで、特異度は81パーセントだった」
The Speed test has a sensitivity of 54% and specificity of 81% for biceps pathology.
以上、引用終わり。
『スピードテスト』 
 
※「感度(Sensitivity:センシティヴィティ)」:「疾患を有するもののうち、検査が陽性となる割合」 
※「特異度(Specificity:スペシフィシティ)」:「疾患の無いものが検査で陰性となる割合」 
※ 「尤度比(ゆうどひ:Likelihood Ratio)」:
「陽性尤度比(Positive likelihood ratio)=感度/(100-特異度)」
「陰性尤度比(Negative Likelihood Ratio)=(100-感度)/特異度」

肩痛の講義2:上腕二頭筋長頭腱炎(Biceps tendiinitis)の理学検査法

2019-04-02 | 肩痛
肩痛のアップデート:上腕二頭筋長頭腱炎(Biceps tendiinitis)の理学検査法
2017年「プラクティカル・エビデンス・ベースド・コンプレヘンシブ(PEC)理学検査による上腕二頭筋長頭腱の病変の診断」
A practical, evidence-based, comprehensive (PEC) physical examination for diagnosing pathology of the long head of the biceps
Samuel Rosas, MS
J Shoulder Elbow Surg. 2017 Aug; 26(8): 1484–1492.
Published online 2017 May 4.
 
「上腕二頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)」の理学検査法でもっとも妥当なのは、「アッパーカットテスト(uppercut test)」のようです。 
「アッパーカットテスト(uppercut test)」 の動画 
 
以下、引用。
「一連の2つの理学検査法を同時に行うアセスメントは、単独の理学検査法よりも、テストパフォーマンスを向上させた。2つより多くの理学検査法を行うことは、診断の正確性を低下させる。」
In series and in parallel assessments determined 2 physical examination tests improved test performance over any single test. Performing more than 2 physical examination tests decreased diagnostic accuracy. 
 
「上腕二頭筋の圧痛の触診とアッパーカットテストの組み合わせは、上腕二頭筋近位における病変の診断で高い正確性があった。」
The uppercut test combined with the tenderness to palpation of the LHB test provided the highest physical examination accuracy for diagnosing pathology at the proximal biceps. 
 
「この組み合わせは、『感度(Sensitivity:センシティヴィティ)』が88.3%で、
『特異度(Specificity:スペシフィシティ)』が99.3%であった。」
This combination has a parallel testing sensitivity of 88.3% and a series specificity of 93.3%. 
 
「アッパーカットテストと超音波イメージング診断の組み合わせは、最も高い感度97%であった。スピードテスト、ヤーガソンテスト、アッパーカットテストと超音波イメージングの組み合わせは、いずれも高い特異度100%であった。」
The uppercut test and diagnostic ultrasound imaging in parallel revealed the highest sensitivity (97%). Each of the Speed’s, Yergason’s, and upper cut tests paired with diagnostic ultrasound imaging all achieved the highest specificity (100%).
以上、引用終わり。
 超音波検査と理学検査法の組み合わせで、感度97%、特異度100%なら、使う価値があります。
 
単独では、以下の論文が参考になります。
2015年「肩痛の超音波検査による臨床的発見の関連」
Correlation of findings in clinical and high resolution ultrasonography examinations of the painful shoulder
Raphael Micheroli,J Ultrason. 2015 Mar; 15(60): 29–44.
Published online 2015 Mar 30. doi: 10.15557/JoU.2015.0003
以下、引用。
「棘状筋テスト(ジョーブテスト、ペインフルアークサイン有痛弧徴候、ホーキンス・ケネディ・インピンジメントテスト)はいずれも高い感度で、低い特異度だった。反対にドロップアームテストは、ローテーターカフ回旋筋腱板のいかなる病変にも特異度100%で、低い感度だった」
The m. supraspinatus tests (Jobe supraspinatus testg, painful arc Ih and Hawkins and Kennedy impingement testi) show high sensitivities (g0.81, h0.83, and i0.86) and low specificities (g0.55, h0.35, and i0.45) for any pathology. As opposed to this, the drop arm testj has a specificity of 1 and a low sensitivity (0.12) for any pathology of the rotator cuff. 
以上、引用終わり。
 
ペインフルアークサイン(有痛弧徴候)
Painful arc sign
感度 83%
特異度35%
 
ホーキンス・ケネディ・インピンジメントテスト
Hawkins and Kennedy impingement test
感度 86%
特異度45%
 
ヤーガソンテスト
Yergason test
感度 32%
特異度88%
 
※「感度(Sensitivity:センシティヴィティ)」:「疾患を有するもののうち、検査が陽性となる割合」 
※「特異度(Specificity:スペシフィシティ)」:「疾患の無いものが検査で陰性となる割合」 
※ 「尤度比(ゆうどひ:Likelihood Ratio)」:
「陽性尤度比(Positive likelihood ratio)=感度/(100-特異度)」
「陰性尤度比(Negative Likelihood Ratio)=(100-感度)/特異度」

肩痛の講義1

2019-04-01 | 肩痛

肩痛(Shoulder pain)の患者さんが来られた場合、まずは、「レッドフラッグ徴候(Red Flags)」、「鍼灸不適応疾患であるか、どうか」を鑑別します。もちろん、心筋梗塞や脾臓破裂、パンコースト腫瘍や肝胆疾患、胃潰瘍、膵臓がんなどの可能性は知っておくべきですが、これは、肩こりの際に、再度、講義します。

鍼灸不適応疾患の5徴候を丸暗記しましょう。

【化膿性肩関節炎】

まず、(1)全身発熱、局所熱感、腫張、自発痛です。これは化膿性肩関節炎の可能性があります。

これは野球をやっている12歳の子どもの「化膿性肩関節炎」という鍼灸師にとっては、悪夢になりそうな症例です。

小児野球選手の化膿関節炎の1例
『中部日本整形外科災害外科学会雑誌 』Vol. 50 (2007) No. 3 495-496  


 上記の例は外傷歴も注射歴もないです・・・。
 「肩関節痛」の場合の鍼灸不適応疾患として「化膿性肩関節炎」があり、上気道感染からの血行性のものもありますが、ほとんどは3歳以下であり、「医原性」の原因が日本ではほとんどです。問診でステロイド注射や検査後に「発熱・局所熱感・腫脹・自発痛」があることが判明すれば、私なら指一本触りません。


化膿性肩関節炎の臨床像および治療成績
『肩関節 』Vol. 12 (1988) No. 2 p. 259-263
https://www.jstage.jst.go.jp/article/katakansetsu1977/12/2/12_259/_pdf

1997年のニューヨーク大学の症例報告は鍼治療の後で、細菌感染を起こし、「化膿性肩関節炎」になった症例です。
肩関節を外科手術で開けて、排膿して膿を出して洗い、抗生物質=抗菌薬を注射します。詳細が書かれていて参考になります。

1997年「鍼治療の後の肩関節の関節膿症
GLENOHUMERAL PYARTHROSIS FOLLOWING ACUPUNCTURE TREATMENT
Abram E Kirschenbaum, MD; Charles Rizzo, MD
Orthopedics. 1997;20(12):1184-
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9415915

https://www.healio.com/orthopedics/journals/ortho/1997-12-20-12/%7B968d0048-876a-47bd-b009-7a4208a80d3b%7D/glenohumeral-pyarthrosis-following-acupuncture-treatment


「肩関節脱臼」では、「バンカート損傷(Bankart lesion)」や「反復性肩関節脱臼(Recurrent dislocatin of the shoulder)」を理解する必要があります。「バンカート損傷(Bankart lesion)」は、イギリスの整形外科医アーサー・バンカートが提唱しました。「反復性肩関節脱臼」は、バンカート法などの外科手術が勧められます。
鍼灸師の場合は「ピアノ・キー・サイン」のチェックや胸鎖関節から肩鎖関節まで触診し、靭帯結合をチェックします。

2018年マケドニア「反復性脱臼で肩に関節鏡を入れたあとの鍼治療
Acupuncture Treatment after Shoulder Arthroscopy after Recurrent Dislocations.
Zhu J,et al.

Open Access Maced J Med Sci. 2018 Nov 17;6(11):2133-2135. doi: 10.3889/oamjms.2018.476. eCollection 2018 Nov 25.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6290407/

【腱板断裂】

「腱板断裂」は、「ドロップ・アーム・テスト」で鑑別します。陽性なら病院の精密検査に送ります。

石灰沈着性腱板炎(Calcific tendinitis:カルシフィック・テンディニティス)】

「石灰沈着性腱板炎(Tendinitis calarea:テンディナイティス・カルカレア)」は、「夜も眠れないほどの激痛」「痛みのため上肢を動かすことができない」「大結節にかるく触れただけで激痛」などがサインと成ります。以下の論文は、詳しいです。

「石灰沈着性腱板炎の組織学的研究」
『肩関節 』Vol. 15 (1991) No. 2 p. 219-222
https://www.jstage.jst.go.jp/article/katakansetsu1977/15/2/15_219/_pdf

2018年ミラノ大学「肩の石灰沈着性腱障害:メカニズム・病理学・治療からの臨床パースペクティブ」
Calcific tendinopathy of the shoulder: clinical perspectives into the mechanisms, pathogenesis, and treatment.
Sansone V

Orthop Res Rev. 2018 Oct 3;10:63-72. doi: 10.2147/ORR.S138225. eCollection 2018.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6209365/

2018年4月ギリシャ・イオアニア大学

 

「石灰沈着性腱板炎の電気鍼:パイロット研究」 
Electroacupuncture for the Treatment of Calcific Tendonitis. A Pilot Study
GeorgiosPapadopoulos
Journal of Acupuncture and Meridian Studies
Volume 11, Issue 2, April 2018, Pages 47-53
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2005290117300493 


また、「肩峰下滑液包炎(Subacromial bursitis:サバクロミアル・バーサイティス)」は、関節リウマチによる「リウマチ性肩峰下滑液包炎」、注射針の穿刺による「化膿性肩峰下滑液包炎」、「結核性肩峰下滑液包炎」などは鍼灸不適応と思われます。

「ダウバーン徴候」で鑑別します。アメリカの外科医ロバート・ヒュー・マッケイ・ダウバーン(1860ー1915)が創案しました。
「肩峰下滑液包炎」については、以下の論文が詳しいです。この研究では、肩峰下滑液包炎の92パーセントの確率で棘上筋腱と肩峰下滑液包の面に炎症が著名であり、「いわゆる五十肩」の機序についても示唆に富む必読文献です。

「肩峰下滑液包造影および肩峰下滑液包鏡視による有痛性肩関節疾患の病因, 病態の研究」
安楽 岩嗣
『日本リウマチ・関節外科学会雑誌』Vol. 9 (1990) No. 2 P 211-226
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsjd1982/9/2/9_2_211/_pdf 


インピンジメント症候群

2019-03-05 | 肩痛

「肩峰下滑液包インピンジメント症候群:マネージメント・チャレンジ」
Subacromial impingement syndrome: management challenges

Paolo Consigliere et al.
Orthop Res Rev. 2018; 10: 83–91.
Published online 2018 Oct 23. doi: 10.2147/ORR.S157864

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6376459/


これは、文句なしに素晴らしい論文です。「インピンジメント症候群」の病名を前外側肩痛(anterolateral shoulder pain)」に変えるべきという御意見はその通り!と思いました。

1852年に概念が提唱され、ニアー・テスト(Neer sign)を提唱したチャールズ・サムナー・ニアー2世(Charles S. Neer, II, M.D. :1917-2011)が1972年に「インピンジメント症候群(impingement syndrome)」の論文を書きました。

1972年
Anterior acromioplasty for the chronic impingement syndrome in the shoulder: a preliminary report.
Neer CS 2nd.
Bone Joint Surg Am. 1972 Jan;54(1):41-50.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/5054450

 


肩の痛みへの徒手療法の効果

2016-04-20 | 肩痛
肩の痛みへの徒手療法の効果
Effectiveness of manual physical therapy for painful shoulder conditions: a systematic review.
Camarinos J, et al.
J Man Manip Ther. 2009.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/20140151/

メイトランド・コンセプトやノルディック・システムなどの流派による効果の違いは無いようです。

メイトランド・コンセプト(Maitland concept)】
オーストラリアのジェフリー・メイトランド(Geofferey Maitland:1924–2010)の「関節モビリゼーション(Joint mobilization)」

『メイトランド四肢関節マニピュレーション』 
http://www.amazon.co.jp/dp/4862433553
 
『メイトランド 脊椎マニピュレーション 原著第7版』
Geoffrey D Maitland
http://www.amazon.co.jp/dp/486034894X
 
整形理学療法の評価
安藤 正志
『理学療法科学』 Vol. 12 (1997)  No. 3  P 135-139
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika1996/12/3/12_3_135/_pdf
※メイトランドの評価を解説。

ノルディック・システム(Kaltenborn – Evjenth Orthopedic Manipulative Therapy)】
ノルウェーのカルテンボーン(Freddy Kaltenbone)とOlaf Evjenth。

『背椎マニピュレーション』
FreddyM. Kaltenborn 医歯薬出版 (1997/06)
http://www.amazon.co.jp/dp/4263219066

『四肢関節のマニュアルモビリゼーション』
Freddy M.Kaltenborn 医歯薬出版 (1988/05)
http://www.amazon.co.jp/dp/4263211928
 
Orthopaedic-Manual Therapy Nordic Systemによる腰部・下肢軟部組織に対するアプローチ
大嶽 昇弘
『理学療法科学』 Vol. 20 (2005)  No. 3 August P 245-248
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/20/3/20_3_245/_pdf
 
パリス・コンセプト(Paris concept)】
ニュージーランドのスタンレー・パリス(Staney Paris)
「パリス・アプローチ 実践編―徒手理学療法の試み」
佐藤 友紀 
http://www.amazon.co.jp/dp/4830643773
「パリス・アプローチ 腰,骨盤編―評価と適応」
http://www.amazon.co.jp/dp/4830643560
 
【ニュージーランドのロビン・マッケンジー(Robin Makenzie)】
急性腰痛患者の初診時腰椎運動時痛の方向とマッケンジー法の治療効果の検討
穴吹 弘毅
『日本腰痛学会雑誌』 Vol. 14 (2008)  No. 1  P 112-114
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yotsu/14/1/14_1_112/_article/-char/ja/
 
急性腰痛症に対するマッケンジー法による早期運動療法介入について
豊田 耕一郎
『整形外科と災害外科』 Vol. 63 (2014)  No. 4  p. 753-755
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/63/4/63_753/_article/-char/ja/
 
ジョン・マックミラン・メンネル(John McMillan Mennell)】
『関節の痛み―手技による診断と治療法』
John McMillan Mennell 科学新聞社出版局 (1986/07)
http://www.amazon.co.jp/dp/4905577144
『背中の痛み』
J.M.メンネル著/古賀正秀監訳
http://t-shoten.com/BASE/SYUGI/80.HTM
 
徒手療法の歴史
A History of Manipulative Therapy
Erland Pettman,
J Man Manip Ther. 2007; 15(3): 165–174.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2565620/
 
以下、引用。
「1912年から1935年に、メンネルは、医学官僚として、聖トマス病院のトレーニングスクールでマッサージをレクチャーした。疑いなく、パゲットやホッド、ジョーンズに影響を与えた。メンネルは、筋骨格系障害に徒手療法を用いることに夢中になっていた」
Between 1912 and 1935, Mennell served as the medical officer lecturing on massage therapy at the Training School of St Thomas's Hospital. Undoubtedly influenced by his medical predecessors Paget, Hood, and Jones, Mennell was engrossed in the use of physical means, including manual therapy, in the treatment of musculoskeletal dysfunctions.
 
「1917年にリトルジョン(イギリス・オステオパシーの祖)は、イギリスオステオパシー学派を開いた。メンネルは、ムーブメント・マニピュレーション・マッサージについての教科書を書いた。それは、テキスト出版よりも、治療家たちに彼の保護を与えるかのように見えた」
In 1917, the same year Littlejohn was opening the British School of Osteopathy, Mennell published his text Physical Treatment by Movement, Manipulation and Massage. It seems more than likely that the therapists under his tutelage would have been instructed in his methods even prior to the text's publication.

「聖トマスでの彼のコースを援助したのは、エドガー・サイリュアックスだった。サイリュアックスは、スウェーデンからきて、彼の法的な父はヘンリック・ケルグレンで、スウェーデン体操の研究をしていた」
Assisting him in his courses at St Thomas's was a physiotherapist named Edgar Cyriax. Cyriax was of Swedish origin and had studied under his (future) father-in-law Henrik Kellgren, a major figure in the Institute of Swedish Remedial Gymnastics and Massage.
 
「サイリュアックス自身がスウェーデン体操をロンドンで講義した。彼はのちに、エジンバラ大学で医学の学位を取得した。サイリュアックスは明らかに徒手療法を実践して文献を収集していた」
Cyriax himself, lectured at the Central Institute for Swedish Gymnastics in London. He would later go on to obtain his medical degree from Edinburgh University. It is obvious from his collection of documents that Cyriax also studied and practised manipulative therapy.
 
「彼は、1903年に徒手療法について出版した。それは、彼の法的な父の哲学に基づいていた。このような家族的バックグラウンドから、容易に若きジェームズ・サイリュアックスが医学を学ぶときに、同じ哲学に影響されていたことを創造できる。」
In 1903 he published his own text on manual therapy, based primarily on his father-in-law's philosophies. With such a familial background, it is easy to imagine that a young man like James Cyriax, while studying to be a physician, would be heavily influenced by similar philosophies.
 
 
【イギリスのサイリュアックス(James Cyriax)のディープ・トランスヴァース・フリクション・マッサージ
2012年の『ジャーナル・オブ・スポーツ・リハビリテーション』に掲載された論文。
 「腱障害(tendinopathy)を治療するためのディープ・フリクション・マッサージ:新しいパラダイム理解のための古典的治療のシステマティックレビュー
Deep friction massage to treat tendinopathy: a systematic review of a classic treatment in the face of a new paradigm of understanding.
Joseph MF
 J Sport Rehabil.
2012 Nov;21(4):343-53. Epub 2011 Dec 30.
http://www.researchgate.net/profile/Craig_Denegar/publication/232765947_Deep_friction_massage_to_treat_tendinopathy_a_systematic_review_of_a_classic_treatment_in_the_face_of_a_new_paradigm_of_understanding/links/54887b710cf2ef3447909c00.pdf 

 「ディープ・トランスヴァース・フリクション・マッサージ」は、イギリスの整形外科医ジェームズ・サイリュアックス(James Cyriax:1904 - 1985)が1940年代前半に提唱して、海外では、「サイリュアックス・マッサージ」とか「ディープ・マッサージ」の名前で有名です。「トランスヴァース(transverse)」は「横切る」「横断する」の意味があります。
 国家資格の「あん摩マッサージ指圧師」の教育課程では、「サイリュアックス・マッサージ(ディープ・トランスヴァース・フリクション・マッサージ)」を習いません。だから、この分野は、日本ではマッサージ師は知らない無人の荒野です・・・。スポーツ医学における「上腕骨外側上顆炎」や「腸脛靱帯炎」などの「腱障害(tendinopathy)」のEBMをリサーチする際に、やたらと出てきたので、マッサージ専門家としてリサーチしました。
 
   ドイツのエリザベート・ディッケは1920年代から1950年代に「結合織マッサージ」を創りました。そして、イギリスのジェームズ・サイリュアックスは1930年ー1940年代に「サイリュアックス・マッサージ(ディープ・トランスヴァース・フリクション・マッサージ)」を創ったわけです。

 以下の『ジャーナル・オブ・オーソペディック・スポーツ・フィジカル・セラピー(整形外科スポーツ理学療法雑誌)』に1982年に発表された「サイリュアックス・フリクション・マッサージ:レビュー」という論文は、「結合組織(コネクティブ・ティシュ)」と「サイリュアックス・マッサージ」の関係を論じています。
 ↓
 「サイリュアックス・フリクション・マッサージ:レビュー
Cyriax's Friction Massage: A Review.
Chamberlain GJ.
J Orthop Sports Phys Ther.1982;4(1):16-22.
http://www.jospt.org/doi/pdf/10.2519/jospt.1982.4.1.16
 サイリュアックスの「深部・横断・摩擦マッサージ」の手技は、筋肉を弾いておらず、むしろ「結合組織(コネクティブ・ティシュ)」を動かすことに集中しています。これは、「結合組織」を構成する、コラーゲン繊維やエラスチン繊維の再生を促すことが目的だったようです。   
 
   2012年の『ジャーナル・オブ・スポーツ・リハビリテーション』に掲載された論文「腱障害(tendinopathy)を治療するためのディープ・フリクション・マッサージ:新しいパラダイム理解のための古典的治療のシステマティックレビュー」は、まさに、「サイリュアックス・フリクション・マッサージ」が、「細胞外マトリックス(Extraceller Matrix)」を構成するフィブロブラスト(線維芽細胞)やフィブロネクチンの産生、コラーゲンの産生などの再生を促すというラットの研究に言及しています。これらの研究は、2015年現在の「フィブロブラストの活性化、新生血管の増加」などのマッサージの科学的研究を先取りしていた部分があります。
 1985年に亡くなったサイリュアックス先生は「マッサージで結合組織・フェイシア(Fascia)にアプローチする」という方法論で、時代を先取りしていたのですが、その手技が、臨床的に効果的であるか、どうかは別の話になります。2014年のコクランシステマティック・レビュー「上腕骨外側上顆炎や膝外側腱炎(腸脛靱帯炎)の治療におけるディープ・トランスヴァース・フリクション・マッサージ」(※1)では、サンプルサイズが小さすぎて、いかなる結論も導くことができないとしています。
※1:2014年のコクランシステマティック・レビュー
上腕骨外側上顆炎や膝外側腱炎(腸脛靱帯炎)の治療におけるディープ・トランスヴァース・フリクション・マッサージ
Deep transverse friction massage for treating lateral elbow or lateral knee tendinitis.
Loew LM et al.
Cochrane Database Syst Rev.
2014 Nov 8;11:CD003528.

フローズン・ショルダーと理学療法のエビデンス

2016-04-20 | 肩痛
1993年「フローズン・ショルダー
Frozen shoulder.
Anton HA
Can Fam Physician. 1993 Aug;39:1773-8.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2379805/
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2379805/pdf/canfamphys00114-0081.pdf
 
2003年「肩痛への理学療法の介入
Physiotherapy interventions for shoulder pain.
Green S, et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2003.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/12804509/
以下、引用。
「回旋筋腱板損傷へのコルチコステロイド注射は、理学療法よりも優れており、理学療法単独では、『癒着性肩関節炎(五十肩)』には効果が無かった。」
There is some evidence that for rotator cuff disease, corticosteroid injections are superior to physiotherapy and no evidence that physiotherapy alone is of benefit for Adhesive Capsulitis
 
2010年「癒着性関節包炎:あなたの治療を統合するためにエビデンスを使おう
Adhesive capsulitis: use the evidence to integrate your interventions.
Page P, Labbe A.
N Am J Sports Phys Ther. 2010 Dec;5(4):266-73.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21655385
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3096148/pdf/najspt-05-266.pdf
※最も使いやすく参考になる。
 
2013年「フローズン・ショルダー:神話と現実
The frozen shoulder: myths and realities.
Nagy MT,al.
Open Orthop J. 2013 Sep 6;7:352-5.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24082974
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3785028/pdf/TOORTHJ-7-352.pdf
 
2013年「肩関節拘縮の理学療法効果:システマティック・レビューによる検討
村田 健児,et al.
『理学療法 - 臨床・研究・教育』 Vol. 20 (2013)  No. 1  p. 51-56
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ptcse/20/1/20_51/_article/-char/ja/
 
2015年「フローズン・ショルダー:治療オプションのシステマティック・レビュー
Frozen shoulder: A systematic review of therapeutic options.
Uppal HS, Evans JP, Smith C.
World J Orthop. 2015 Mar 18;6(2):263-8.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25793166
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4363808/pdf/WJO-6-263.pdf
以下、引用。
「【理学療法】
コクランレビューは、現在の文献に基づいて、コントロール・グループと比較して、理学療法は、全く、または、ほとんど効果は無い」
Physiotherapy
Cochrane reviews have demonstrated that the current literature base shows that physiotherapy alone has little to no benefit as compared to control groups
 
2016年「肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン
 村木 孝行
『理学療法学』 Vol. 43 (2016)  No. 1  p. 67-72
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/43/1/43_43-1kikaku_Muraki_Takayuki/_article/-char/ja/