alternativemedicine

Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

円鍼と円利鍼

2019-03-04 | メモ
【円鍼(えんしん:员针:yuán zhēn)を円利鍼(えんりしん:圆利针:yuán lì zhēn)と呼ぶのは、業界として、恥ずかしいから止めませんか?】
 
これは本当のはなしで、きちんと名称と使い方を教えたにも関わらず、
「円鍼(えんしん:员针:yuán zhēn:英語でround-pionted needle)」を
「円利鍼(えんりしん:圆利针:yuán lì zhēn:英語でround-sharp needle)」と言い続けるヒトがいます。聞いてみると、それを売っているヒトに、名称も使い方も聞かずに、買っているそうです・・・。本当に信じられない・・・。売っているヒトも買っているヒトも、道具の名称も使い方も分からないまま売買しているのです。
 これ、外科医の道具で考えてみたら、大変なことです。普通に考えたら、そんな連中に絶対に手術してほしくないです。ヒトの健康や生命に関わる仕事に、そういう人間は関わるべきではないと思います。

教育

2018-09-07 | メモ

 『医道の日本』2018年9月号の「あはき臨床 わたしの学び方 伝え方」はとても良い内容で、自分のSNSでも紹介し、さらに学生にも、ぜったいに読んだほうが良いと薦めています。

 しかし、同時に思うことがあります。これほどまでに教えることに情熱をもち、教える方法論も素晴らしい先生方がいるのに、自分がみている「鍼灸業界の惨状」はギャップがあり過ぎるのではないか? 
 みんな、本当に「やっていることと言っていることは一致しているのか?」

 しばらく、考え、分析してみたのですが、わたしが感心した「あはき臨床 わたしの学び方 伝え方」の先生方は、いずれも徒弟制度の中で、「人間が人間に学ぶ」という伝統的な教育を受けたことが共通点でした。学校の教育ではけっしてなかったのです。分析してみれば、わたしがみている「惨状」というのは、近代教育の結果なのです。鍼灸の世界のよいところは、まだ、「人間が人間に学ぶ」という形式が活きていることです。

 「学び方を学ぶ」、「考え方を学ぶ」というのが一番の早道なのです。衝撃を受けて、自分を変えようと決心しないかぎり、変わらないと思います。

 昔の人たちは人生50年だとしたら、40歳の名人の大工に弟子入りしても、10年しか学べない。その名人が結核になったり、徴兵されたり、戦争にまきこまれたら、その技術は伝承されるのだろうか?昔のほうが、動乱の時代で、30歳で結核で死んだり、戦争で死んだりするのは普通だった。技術をそのまま伝承というのは、ありえるのか?

 実は、技術というのは、時代にあわせていかないと、時代遅れの技術になります。ゼロの状態から自分で考えて工夫して、技術を創れるヒトを造る、以外に伝承はないと自分は思っています。


体育

2018-07-13 | メモ
「研究資料:「体操の糸」を紐解く―我が国の体操事情―」
 佐原 龍誌『体操研究』 Vol. 6 (2009) P 1-9
 
 「スポーツ医学」をリサーチしていくと、驚愕することがあまりに多かったです。まずは、「スポーツ」という概念と定義です。2010年のアジア大会では、「知恵の輪ジャパン」が出場したことで話題になったように、囲碁が公式競技となりました。囲碁やチェスはオリンピック委員会も認めている「スポーツ」です。中国の囲碁選手は「スポーツ省」の管轄です。だから、中国や韓国の囲碁選手がアタマに鍼をしているのが「ドーピング」ではないか?という議論が起こりました。「スポーツ」はラテン語の‘Deportere(心の重い、いやな、ふさいだ状態を元の状態に戻す)’がフランス語の‘Desport’となり、イギリスに伝わって‘Disport’となり、さらに「気晴らし」「楽しみ」「遊び」を意味する英語‘Sport’になったという歴史があります。だから、スポーツは「プレイ(遊ぶ)」します。スポーツとは、暇つぶし、遊びが本来の意味です。日本語の「スポーツ」と、“sports”がかなり違う概念であることが、わかってきました。
 
 さらに、日本では、「体育」と「スポーツ」が混同されています。しかし、「体育」というのがまた、難物でした。アメリカやイギリスには「身体教育(Physical Education)」、「身体運動(Physical Exercise)」、「身体訓練(Phycical Training)」などの授業はありますが、日本の「体育」とは似ても似つかないものでした。ドイツなどは、学校の授業中に、地元のスポーツクラブに行くのが「体育」の授業のようなのです。文化が違いすぎるわ!
 
以下、引用。
「アメリカに転校した日本人の子どもたち(やその親)が一番にショックを受けるのが、実は“体育”の授業だった、というのはよく耳にする話です。アメリカの体育(PE:Physical Educationの略)の授業は、日本のように各種目・競技を掘り下げて目標達成のために“練習”するのではなく、ひたすらゲームやかけっこ、ダンスといった“遊び”のような内容であることが多く、また特別に体操着に着替えることもなく授業は毎日あるので、まるで休み時間の延長のようなもの。日本の小学校で“カリキュラム”を経験した子どもにとっては、アメリカの体育の授業はまるでゲーム大会のように感じる、というのもうなずけます。 しかしその一方で、子どもたちにとっては「○○できなければいけない」という強迫観念から解放され、苦手意識にさいなまれることなく自由にのびのびと好きなことができるところが、アメリカの体育の利点だといえます。 」
以上、引用終わり。
 
 日本は明治期に「軍事教練(Military Drill)」が体育の教育に入り、現在でも日本中の小学生が「気をつけ(At attention)」や「休め(Stand at Ease)」や「回れ、右(Right Turn)」などが出来るようになりました。アフリカのリベリアの少年兵たちが、日本の小学生とまったく同じ「休め」や「回れ右」をしている光景にはメガシラが熱くなりました。アフリカの子ども兵士との違いはアサルトライフルAK-47を担いでいるか、どうかだけなので、日本の小学生は即戦力です。ちなみに、メキシコの徴兵制度は期間1年で、自宅から兵舎に通い、夕ご飯の時間には自宅に帰ります。たぶん、「回れ右」とか行進とか「軍事教練(Military Drill)」に関しては、日本の小学生のほうがメキシコの初年兵より上手です。日本の小学校の先生、凄え!だから、世界中の子どもたちは「回れ、右」はできないです。代わりに徴兵制度のなかで学びます。
 
 「スポーツ」と軍事は、海外でも密接です。オリンピックの「近代五種競技」は、射撃・馬術・水泳・フェンシング・ランニングですが、これはナポレオン時代の軍事訓練で、馬で敵陣に乗り込み、泳いで敵陣に浸入し、銃で撃ち合い、剣できりあい、走り回るというものです。
 冬季オリンピックの「バイアスロン」も、クロスカントリーと射撃ですが、これも軍事訓練から始まり、冬季オリンピックでは世界中の軍人と国境警備隊員が鍛えられた技を競っています。
 このリンク先の論文『「体操の糸」を紐解く―我が国の体操事情―」 』を読むと、4ページに、1941年~1945年の日本の体育の授業では「手榴弾投げ」とか「土嚢積み」をやっていたと書かれていて、コケました。
 
 さらなる驚きは、バレエやダンスを知った際のことです。40万人のバレエ人口と1万5,000教室のバレエ教室の数は現代日本が世界最大で、最近の国際バレエ・コンクールで日本人が優秀な成績を出しているのもうなづけます。バレエの本場ロシアやフランスでは、バレエは物凄い競争で、幼少期からエリート教育を受けて、競争に勝ち残った子どものみが続けます。だから、ロシアやフランスでバレエは「見るもの」であって、エリート・ダンサー以外は「踊るもの」ではないようです。ぜったい、日本のバレエのほうがエエわ! 英語圏の論文を読むと、「エリート・ダンサー」や「エリート・アスリート」、「エリート・ミュージシャン」という表現が普通に出てきて、ビビります。こういった「エリート・~~」の「使いすぎ症候群(オーバー・ユース・シンドローム)」が海外のスポーツ医学で大きな話題になっています。練習を休まないから、治らないし、競争を止めたら、人生ハメツなので症例を読むと、本当に悲惨です。
 
 こういった事例を学んでいくうちに、日本の「体育」って、良い悪いではなくて、ものすごく「珍しい」ものだと気づきました。自分が受けてきたものは、外の世界を知らないと、特殊事例とはわからないものです。
 
 じゃあ、「体育」は、歴史的にどのように形成されたのか?
 
 まず、ドイツで「体育の父」ヨハン・クリストフ・グーツムーツ(Johann Christoph Friedrich GutsMuths:1759-1839)」が「身体教育=略して体育(Bildung des Körpers)」、「体操(ジムナスティーク:Gymnastik)」を提案しました。これは「平均台・水平はしご・ボールや棍棒、輪などの軽手具が使用される学校で行われる体育運動」です。ただ、「ジムナスティークGymnastik」とは、もともとギリシャ語であり、ヒポクラテス以来の言葉で「運動だけでなく、塗油・入浴・マッサージなど身体の手入れ」を意味する言葉でした。
 
 次に、フリードリヒ・ルートヴィヒ・ヤーン(Friedrich Ludwig Jahn:1778-1852)」が、「体操の父(独:Turnvater英:father of gymnastics」と呼ばれました。ヤーンはグーツムーツのギリシャ語由来の「ジムナスティーク」をドイツ語の「トゥルネン(Turnen)」と言い換え、「ドイツ体操術(トゥルンクンスト:Turnkunst)」という本を書き、1811年に体操場をつくりました。ここに懸垂横木、平行棒、登坂台、水平棒、レスリング場、跳躍台(跳び箱)などが出来ました。これは日本の体育やオリンピックの体操(Gymnastic)の起源です。
 
 次に、パー・ヘンリック・リング(Pehr Henrik Ling:1776-1839)は、フェンシングのマスターでスウェーデン軍の体操指導者でしたが、弟子たちがスウェーデン医療体操(Swedish medical gymnastics)を含む「スウェーデン体操(Swedish gymnastics)」を発展させました。この時期に日本の体育館にある「肋木(ろくぼく)」が開発されました。デンマークでもドイツ体操やスウェーデン体操が導入されて「デンマーク体操」となります。このパー・ヘンリック・リングが「スウェーデン・マッサージ」をつくったというヒドイ誤解がアメリカと日本であります。
 
 さらに、1862年頃、チェコで「ソコール(The Sokol movement)」というナショナリズム運動が始まります。ここでドイツ語の「トゥルネン(Turnen)」を集団でやる「マッセン・トゥルネン(Massenturnen)」が「マス・ゲーム」として発達しました。日本でも1925年に明治神宮の体育大会で初めて「マスゲーム」とスポーツの祭典が行われ、これが「国体(国民体育大会)」となります。だから、日本の運動会では、マスゲームをやるようです。
 こういった、19世紀の「ドイツ体操」、「スウェーデン体操」、「デンマーク体操」やチェコのソコールから発達した「マス・ゲーム」と軍事教練(ミリタリー・ドリル)と日本の伝統武術、柔道や剣道が結びついて、独自の「体育」ができたようです。
 
 「体育」は、一度、「身体教育(Physical Education)」という基礎理念に戻って、考え直す必要があるように思います。

西式触手療法

2018-07-03 | メモ

1922年(大正11年)に、臼井 甕男(うすい・みかお:1865- 1926)が57歳のときに、鞍馬山にこもって断食して、「臼井気療法」、「レイキ(気)」を開発しました。

1928年(昭和3年) 手のひら療治(一) / 三井甲之 『日本及日本人』 p93~96
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1597092 

1930年(昭和5年) 江口俊博, 三井甲之 編『手のひら療治入門』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1050307

1932年(昭和7年) 西勝造(にし・かつぞう:1884-1959)『西式触手療法と保健治療法 : 理論応用』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1050607


岡田式静座法、 調和道丹田呼吸法、二木式腹式呼吸法

2018-07-02 | メモ
「1910年代における呼吸健康の流行と体育界の反応 : 「呼吸運動」に関する記述の分析より」
佐々木 浩雄
『 龍谷紀要』
 34(2), 177-192, 2013-03-15 
https://ci.nii.ac.jp/naid/110009557014
1910年代に流行した「三大健康」である
岡田虎二郎の「岡田静座」、
藤田霊斎の「調和道丹田呼吸」、
二木兼三の「二木呼吸」に関する紹介が簡潔で秀逸です。

呼吸法と丹田

2018-06-30 | メモ
「近世養生思想における呼吸法と丹田
片渕 美穂子
『和歌山大学教育学部紀要. 人文科学』
64, 111-119, 2014-02-20
https://ci.nii.ac.jp/naid/110009794465
1.導引術と丹田
 
2.近世前期養生書における丹田
曲直瀬玄朔(1549-1631)の『延寿撮要』における丹田
 
3.貝原益軒『養生訓』における丹田
 
4.武芸思想と丹田
 
5.理想の丹田
 
 面白いのは、「肩があがり、胸がそった姿勢」は、欲からきており、「臍下の気が抜けている状態」であり、背中が丸く下腹部が膨らんだ男性の絵が「精神的な強さ」と「熟達した技芸の持ち主」として描かれていることです。
 これは、呼吸法や丹田の研究者にとって、面白い論文だと思います。

岡田式静座法研究の最前線

2018-06-30 | メモ
「霊動をめぐるポリティクス : 大正期日本の霊概念と身体」
栗田英彦
『東北アジア研究センター報告, 8号ー身体的実践としてのシャマニズムー』2013年
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024659420-00
これは、明治期・大正期の日本の精神療法のナゾを解き明かす論文です。

野口晴哉の「野口整体」に不随意運動を起こさせる「活元運動」があります。私も西宮市で行われた「活元運動」の集まりに参加してビックリしました。人間の身体が勝手に動き、ピョンピョン飛び跳ねます。

おそらく、その起源となった岡田虎二郎(1872-1920)の「岡田式静座法」の「振動」、
田中守平(1884-1929)の太霊道・霊子術の「霊動」、
大本教の浅野和三郎(1874-1937)の「鎮魂帰神」、を、この論文は詳しく解説しながら、その3者がお互いにどのような影響を与えたのかを解き明かしていきます。

 著者の日本学術振興会特別研究員・栗田英彦先生は、2016年3月18日に中外日報社の第12回「涙骨賞」を「岡田虎二郎の思想と実践―越境する歴史のなかで」で受賞しました。
 
 栗田英彦先生は、岡田虎二郎(1872-1920)を現在まで伝える団体である「静座社」の資料を発掘し、研究した「岡田式静座法」研究の第一人者です。

  岡田虎二郎(1872-1920)の「岡田式静座法」は、中国の「気功」をはじめとして、後世に多大な影響を与えたのですが、岡田虎二郎の生涯や普及の過程が謎でした。
   実際には1900年代のアメリカ遊学から帰国して、岡田虎二郎は「岡田式静坐法」を普及し始めます。栗田英彦先生の研究により、戦前の日本で流行した「霊術」「療術」の歴史の研究の視界が一気に広がりました。

Fasciaとフォームローラー

2018-06-29 | メモ
2015年7月8日『メドスケープ』
「筋肉マッサージの『フォームローラー』はほんとうに効果あるの?」
Are Foam Rollers for Muscle Massage Really Beneficial?

以下、引用。
「セルフ・マイオフェイシャル・リリース(筋膜リリース)は、効果があるの?」
Self-Myofascial Release Beneficial?

「アメリカのスポーツジムでは、近年、『フォームローラー』が春の花のように満開である」
Over recent years in gyms in the United States, foam rollers have sprouted like flowers in spring.

「メディアは、『フォームローラー』の使用を祝福し、自己管理マッサージ治療の方式を『セルフ筋膜リリース』と呼んで使用することを助けている」
 Media reports have celebrated the use of these rollers and other aids for promoting a type of self-administered massage therapy called "self-myofascial release."

「筋骨格の軟部組織治療は、可動域や痛みや筋肉の硬さを柔らかくすると称しており、関節可動域を拡げて、アスレティック・パフォーマンスさえ向上させると言う」
This soft tissue therapy for the treatment of skeletal muscle immobility and pain purportedly soothes muscle soreness, increases range of motion, and even improves athletic performance.

「現在、科学者たちは、比較試験が始まったばかりであると、述べている」
Now scientists have begun to test these claims with controlled trials.

「最近、『アメリカン・カレッジ・オブ・スポーツ・メディスン(ACSM)』で出版された文献レビュー(※1)では、セルフ筋膜リリースには、パフォーマンス向上があり、関節可動域を改善させると断言している。」
A recent review of the published literature and studies presented at the American College of Sports Medicine (ACSM) 62nd Annual Meeting in May challenge assertions about the increased performance benefits of self-myofascial release. But they do support self-myofascial release as way of improving range of motion.
以上、引用終わり。

※1:2015年5月
「セルフ筋膜リリースは、運動前と運動からの回復戦略として有効なのか?文献レビュー」
Is self myofascial release an effective pre-exercise and recovery strategy? A literature review.
Schroeder AN, Best TM.
Curr Sports Med Rep. 2015 May-Jun;14(3):200-8.

以下、記事からの引用。
「セルフ筋膜リリースVSマッサージ治療」
Self-Myofascial Release vs Massage Therapy

「セルフ筋膜リリースでは、人々が自分の軟部組織に自分でマッサージを行う。研究者たちは、このテクニックは専門家である理学療法士による『筋膜リリース』と同じ効果があるということを支持している。」
In self-myofascial release, people massage their own soft tissue. Researchers have supposed that this technique might produce some of the same benefits shown in myofascial release that is administered by physical therapists.

「一つの理論として、『フェイシア(筋膜)』は、外傷への防御反応として固くなる。時間がたつと、コラーゲンは密集して線維化する。そして、結合織における高い弾力性のあるタンパクであるエラスチンは、弾力を失う。これが、筋肉が機能を失って、痛みを引き起こす原因である。『筋膜リリース(マイオフェイシャル・リリース)』の理論によれば、『筋膜リリース』は、このプロセスを逆転させる」
One theory is that fasciae tighten as a protective mechanism in response to trauma. Over time, collagen becomes more dense and fibrous, and elastin—a highly elastic protein in connective tissue—becomes less resilient. This can reduce muscle functioning and cause pain. Myofascial release, in this theory, whether self-administered or administered by someone trained in the technique, might reverse this process.

「付け加えると、いくつかの研究は、障害、疾病、非活動性、炎症は、筋肉組織における繊維の粘着化(fibrous adhesions)を形成し、また、通常の機能を制限させる。『筋膜リリース(マイオフェイシャル・リリース)』は、この粘着化を破壊することが出来る」
In addition, some research suggests that injury, disease, inactivity, and inflammation may cause fibrous adhesions to form in muscle tissue, also limiting its normal functioning. Myofascial release could break these adhesions.
以上、引用終わり。
「筋膜リリース(マイオフェイシャル・リリース)」は、多くの源流があり、ややこしいです(笑)。

一つは、「オステオパシー」の創始者アンドリュー・テイラー・スティルです。
もう一つは、ジャネット・トラベルの「トリガーポイント療法」です。
もう一つは、「ロルフィング」のアイダ・ロルフです。
もう一つは、ドイツの「結合織マッサージ」のエリザベート・ディッケです。

「マイオフェーシャル・リリース®」は、ジョン・F・バーンズ(John F Barns)という、アリゾナ州セドナ在住のカリスマ的理学療法士が1990年代に提唱しました。
John F. Barnes, myofascial release approach®

DVD「マイオファッシャル・リリース(筋膜リリース法)」
ジョンF.バーンズ,P.T全3枚DVD36,000円(←高いわ!)

「Myofascial Release(筋膜リリース)」
竹井 仁(東京都立保健科学大学理学療法学科)
『理学療法科学』Vol. 16 (2001) No. 2 P 103-107
理学療法士の先生方は「®登録商標マーク」のついた治療法が好き過ぎです・・・(笑)。
以下は、「筋膜リリース(マイオフェーシャル・リリース)」のEBMはどうなっているのか?の調査です。

2013年『ジャーナル・オブ・アスレティック・トレーニング』
「整形外科領域での『筋膜リリース(マイオフェーシャル・リリース)』:システマティックレビュー」
Myofascial release as a treatment for orthopaedic conditions: a systematic review.
McKenney K, Elder AS, Elder C, Hutchins A.
J Athl Train. 2013 Jul-Aug;48(4):522-7.
「『筋膜リリース(マイオフェーシャル・リリース)』は、徒手療法として広く行われるようになっている。そのルーツは、1940年代にまでさかのぼり、『マイオフェーシャル・リリース』というコトバが使われたのは、1981年にオステオパスのアンソニー・チラ、キャロル・マンハイム医師によるミシガン大学の講義『マイオフェーシャル・リリース』が最初である。徒手療法の世界で、マイオフェーシャル・リリースは広汎に行われているにも関わらず、その効果は客観的に評価されていない」
Myofascial release (MFR) is one example of a manual therapy that has become widely used. Although its roots can be tracked to the 1940s, the term myofascial release was first coined in 1981 by Anthony Chila, DO; John Peckham, DO; and Carol Manheim, MEd, in a course titled “Myofascial Release” at Michigan State University. Despite the pervasiveness of MFR as a manual therapy, its effectiveness has not been objectively evaluated.

2015年『ジャーナル・オブ・ボディワーク・アンド・ムーブメント・セラピー』
「『筋膜リリース(マイオフェーシャル・リリース)』の効果:ランダム化比較試験のシステマティックレビュー」
Effectiveness of myofascial release: systematic review of randomized controlled trials.
Ajimsha MS et al.
J Bodyw Mov Ther. 2015 Jan;19(1):102-12.
 2015年と2013年のシステマティックレビューを読んだ限りでは、『筋膜リリース(マイオフェーシャル・リリース)』の有効性の科学的根拠については、まだ、何も言えないというのが現状だと思います。
 以下の2015年のシステマティックレビューの記述は、「Fascia(膜・筋膜)」の研究の記述として面白いです。
以下、引用。
「最近のファッシャ・リサーチ・コングレス(筋膜研究会)は、ファッシア(膜・筋膜)を結合組織システムの軟部組織コンポーネントであり、人間のからだのすみずみにあると定義している。ファッシア(膜・筋膜)の線維性コラーゲン組織は、人体の張力のトランスミッションシステムであると描写されている。」
Recent Fascia Research Congresses (FRC) define fascia as a ‘soft tissue component of the connective tissue system that permeates the human body’ (Huijing and Langevin, 2009). One could also describe them as fibrous collagenous tissues that are part of a body-wide tensional force transmission system (Schleip et al., 2012). 

「ファッシア(膜・筋膜)ネットは、靱帯、腱、筋外膜、最も深い筋内膜の層に含まれる。ファッシア(膜・筋膜)というコトバは、硬膜、骨膜、神経周膜、椎間板の線維性カプセル層、呼吸器の結合組織のカプセル組織、腹部の腸間膜も含んでいる。」
The complete fascial net includes dense planar tissue sheets, ligaments, tendons, superficial fascia and even the innermost intramuscular layer of the endomysium. The term fascia now includes the dura mater, the periosteum, perineurium, the fibrous capsular layer of vertebral discs, organ capsules as well as bronchial connective tissue and the mesentery of the abdomen (Schleip et al., 2012). 

「ファッシア(膜・筋膜)は、繊維の配列や密度に適した張力ネットワークとつながっている」
Fascial tissues are seen as one interconnected tensional network that adapts its fiber arrangement and density, according to local tensional demands (Schleip et al., 2012).

「2009年のデイや2013年のステッコらの著者、あるいは2011年のヘレン・ランジュバンらは、結合組織が、オーバーユースシンドロームや外傷後に、より固く緊密になることを示唆している。しかし、これはコラーゲン繊維の構成の変化なのか、線維芽細胞によるものなのか、骨基質によるものなのかは不明である。」
Authors such as Day et al., 2009, Stecco et al., 2013) and Langevin et al. (2011)) and colleagues, have suggested that connective tissue could become tighter/denser in overuse syndromes, or after traumatic injuries, but it is unclear if this is due to an alteration of collagen fiber composition, of fibroblasts, or of ground substance.

「同じ著者らは、ファッシア(膜・筋膜)の柔軟性の変化が、緊張や運動器のコーディネーションが弱まることにつながる身体の誤ったアラインメントや貧弱な筋肉のバイオメカにクスとなる可能性を示唆している」
 The same authors suggest that the alteration of fascial pliability could be a source of body misalignment, potentially leading to poor muscular biomechanics, altered structural alignment, and decreased strength and motor coordination. 
以上、引用終わり。

Fasciaとローリング療法と擽感(りゃっかん)

2018-06-29 | メモ

痛みが消える速効ローリング法―腰痛、ひざ痛から慢性病まで…
蓑原 右欣
河出書房新社 (1997/06)

「ローリング療法」の蓑原右欣(みのはら・すけよし:1926-)先生です。「ローラーベッド」は蓑原先生の発明です。

 
 蓑原(みのはら)先生は、1948年に22歳で柔道整復師の資格を取得し、28歳のときに交通事故に会い、頭部打撲・脊髄損傷の重症と後遺症に苦しみます。その過程でローラーベッドを発明し、「ローリング療法」を創案しました。1966年に「ローリングベッド」を発売します。
 
 「ローリング療法」では、シコリやうっ血が体じゅうに発生すると考えて、硬質ゴムで出来た「ローラー」で、うっ血をとり、血行を改善します。特徴的なのは、擽感(りゃっかん)といって「くすぐったい所」や「硬結」をローラーでつぶしていくことです。
 最初は手足の末梢部分からローラー刺激をはじめて、体幹部にローラー刺激をしていきます。
 
 蓑原(みのはら)先生は、自分が交通事故の後遺症で苦しんだ際に、丸太やボール、サイダーのビンを並べて置いた上を仰向けでゴロゴロと転がしているうちに、痛みが和らいで、ローラーベッドを発明したそうです。これは、アメリカのスポーツジムで流行している「フォーム・ローラー」、「セルフ筋膜リリース」と同じです!
 「筋膜リリース」でも、筋膜が硬くなって機能を失ったのをローラーでゴロゴロさせることで、癒着をリリースします。

Fasciaとロバート・マイグネのセルラルジア(Cellulalgia)

2018-06-28 | メモ
フランスの医師ロバート・マイグネは、椎間関節に問題が起こると、対応する神経根に支配された皮膚デルマトームに、このような蜂の巣状の変化「セルラジア(cellulagia:蜂巣痛)」が起こることを報告しました。
 
下記のリンク先は、『アナルス・オブ・フィジカル・アンド・リハビリテーション・メディスン』2012年10月号収録の論文「ロバート・マイグネ(1923–2012)」です。2012年に亡くなったロバート・マイグネ医師の経歴が説明してあります。
「ロバート・マイグネ(1923–2012)」
Robert Maigne (1923–2012)
Annals of Physical and Rehabilitation Medicine
Volume 55, n° 7 page 451 (octobre 2012)
 
「ロバート・マイグネ(1923–2012)」は、フランスを代表する整形外科医です。カナダのケベック州はフランス語圏であり、ケベック州頭痛研究グループは、ロバート・マイグネの「セルラジア(cellulagia)」を診断治療に活かしています
「椎間関節機能不全の痛み:ロバート・マイグネの頸椎性頭痛へのオリジナルな貢献:ケベック頭痛研究グループ」
Painful intervertebral dysfunction: Robert Maigne's original contribution to headache of cervical origin. The Quebec Headache Study Group.
Meloche JP et al.
Headache. 1993 Jun;33(6):328-34.
この論文での「頭痛」の分析は素晴らしいです。
 
以下、引用。
「ロバート・マイグネ教授は、フランス人整形外科医で機能リハビリテーションの専門家であり、脊椎由来の痛みの理解をよりよくするための新しい概念を送り出した」
Professor Robert Maigne, a French Orthopedic Medicine and Functional Rehabilitation specialist, has put forward new concepts leading to a better understanding of common pain of spinal origin.
 
「マイグネは、脊椎の痛みは、椎間板、椎間関節の靱帯、椎間関節から成り立った可動式のセグメントの機能障害であると説明している。」
Maigne explains that pain in the spine is due to an intervertebral dysfunction of the mobile segment which consists of the intervertebral disc, ligaments and the facet joints. 
 
「良性の機械的な機能障害は、その脊椎の問題と同じ高さのデルマトームに放散する」
Any benign mechanical dysfunction of the mobile segment can induce a pain radiating in the dermatome at the same level as the vertebral problem.
 
「マイグネは、皮膚では『セルラジア(cellulalgia)』、筋肉では『ミアルジック・バンド(myalgic bands筋痛バンド)』そして、骨と腱の付着部では『テナルジア(tenalgia)』を発見した。これらのサインは、脊椎の問題と同じ高さのデルマトーム(皮膚分節)、ミオトーム(筋分節)、スクレロトーム(骨分節)で発見できる」
Maigne also described signs found in the skin (cellulalgia), in the muscles (myalgic bands) and in the bony insertions of tendons (tenalgia). These signs are to be found in the same dermatome, myotome and sclerotome as the spinal dysfunction. 
 
「頸椎由来の頭痛は、椎間関節の機能障害に由来しており、もっとも見られるのはC2-C3のレベルである」
For headache of cervical origin due to painful intervertebral dysfunction, the most frequent dysfunctional mobile segment is located at the C2-C3 level. 
 
「これは、ほとんどの場合、C2-C3のデルマトーム、後頭部に『セルラジアcellulagia(蜂巣痛)』を形成する」
This induces pain mostly in the posterior parts of the head and cellulalgia in the C2 and C3 dermatomes.
 
「有痛性の腫れは、このレベルの椎間関節の後方で発見できる」
Painful tumefaction is also found over the posterior aspects of the facet joints on palpation at this level. 
 
「これらは、有痛性椎間関節機能障害の診断のキー・エレメントである」
These findings are key elements for the diagnosis of painful intervertebral dysfunction. 
 
「このサインの認識は、頭痛における頸椎の理解を変化させる。有痛性の椎間関節機能障害は、非常に頻繁に慢性頭痛で見られる」
The recognition of these signs is changing our understanding of the role of the cervical spine in headaches. Painful intervertebral dysfunction is very frequently found in chronic daily headaches.
以上、引用終わり。
 これは、事実上、兵頭正義先生が提唱し、間中信也先生など日本の頭痛専門医たちが提唱している『天柱シンドローム』と同じものを言っているのだと思います。