柳谷素霊著『鍼灸医術の門』(医道の日本社、81ページ)に上記の表がある。
肝虚証は、陰谷・曲泉に補法。経渠・中封に瀉法。
肝実証は、少府・行間に瀉法。経渠・中封の補法。
胆虚証(陽木虚)は、
通谷(火経の水穴)・侠渓(木経の水穴)の補法:虚すれば其の母を補う。
商陽(金経の金穴)・足竅陰(木経の金穴)の瀉法:相克関係を瀉す。
胆実証(陽木実)は、
商陽(金経の金穴)・足竅陰(木経の金穴)の補法:相克関係を補す。
陽谷(火経の火穴)・陽輔(木経の火穴)の瀉法:実すれば其の子を瀉す。
自分の拙い知識では、オーソドックスな経絡治療では四大証(肝虚・脾虚・肺虚・腎虚)となっており、このようなバリエーションでは使われていない。ただ、わたしが最初に経絡治療を教わったU先生は、心虚に大敦・少衝の補法や陽経の治療もおこなわれていた・・・。
自分の拙い知識では、明代、高武の『鍼灸聚英』に、子午流注鍼法の納支法として、肺虚なら、肺の時刻である寅刻に母穴である太淵を補し、子穴である尺沢を瀉すという形式で掲載されており、『鍼灸大成』にも掲載されているはずだ。ただ、こういった4穴の補瀉を用いるというのは、それ以前の古典に掲載されていた記憶が無いし、後世の経絡治療でも4大証なので、いまいちスッキリしない。
【舎岩鍼法】
《正格》
肝虚証:陰谷と曲泉補法。経渠と中封の瀉法。
肝実証:
中封(木経の金穴)を補す。肝実の相克関係の金を補す。
抄訳【太極鍼(Taegeuk acupuncture)】
四象医学は、太陽・太陰・少陽・少陰であるが、主要臓器とは矛盾している。
太陽:悲しみ:肺/肝臓(weekest organ):創造的、ポジティブ、カリスマ的、英雄的
少陽:怒り :脾/腎臓 (weekest organ):落ち着かない、飽きっぽい、すぐ怒る
太陰:喜び :肝/肺臓 (weekest organ):優しく、商業的でユーモアがあり、臆病、怖がり
少陰:楽しみ:腎/脾臓 (weekest organ):きちんとした、ネガティブ、自己中心、賢い、
李済馬(Lee Jae Ma)が四象医学の創始者であるが、鍼の理論は欠落していた。
Dr.Byeong Haeng Leeが太極鍼(Taegeuk acupuncture) を発展させた。
途中。
http://www.youtube.com/watch?v=guGnnlkxgDg
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松田博公先生の『日本鍼灸のまなざし』に紹介されていた一鍼療法の金廣浩先生の動画。金廣浩先生のはなしには本当に感動した。尊敬する坂本豊次先生が学ばれているというだけで信頼できる。
以下は、Korean acupuncture: the individualized and practical acupunctureの抄訳。
Saam Acupunctureは、韓国の代表的な鍼の流派で、17世紀の仏教僧、『舎岩道人(saam)』が鍼の基礎をつくったとされている。五行論、十二経絡と五兪穴、五行の『Saeng(相生)』と『Geuk(相克)』のサイクルと不調和を基礎としている。
『舎岩道人(saam)』の鍼は、Dr. Hong Gyeong Kimによって、1980年代に発展させられた。
六つのエネルギーは陰陽で分類される。
厥陰(Gwoleum:Jueyin:absolute Yin)
少陰(Soeum:Shaoyin:lesser Yin)
太陰(Taiyin:Greater Yin)
少陽(Soyong:Shayoyang:lesser Yang)
陽明(Yangmyeong:Yangming:brilliant Yang)
太陽(Taiyang:greater Yang)
これらの六つのエネルギーは、12経絡にコントロールされる12の気に分類され、5行と結びつけられる。
例えば、胆経と肝経のエネルギーは『木(Wood)』であり、胆経は少陽で、肝経は厥陰である。肝経のエネルギーは、木と結び付いているが、心包経のエネルギーは厥陰で『相火(Premier Fire)』と結び付いている。
典型的な舎岩鍼法の診断は、四つの経絡のエネルギーの『虚』『実』『寒』『熱』のアンバランスによるものである。
少陽のエネルギーは胆経と三焦経で表現される。少陽が過剰なら独断的で過敏な性格となり、他人にいろいろアドバイスしがちである。少陽のエネルギーが虚なら、冷たくて劣等感のある残忍な性格かも知れない。胆経のエネルギーは中心のエネルギーで聡明さや攻撃性や活動性や勇気や尊厳、傲慢な態度で構成されており、エネルギーはしばしば風や雷鳴と比べられる。
12経絡は4つのタイプ、48の基礎類型に分類され、五兪穴を選ぶのと対応している。
例えば、従来、心経の虚は、心経の木穴:少衝(HT9)の補法であるが、舎岩鍼法では五行の相克関係もを用いる。水は火を相克し、火は金を相克する。火の虚には火の経絡である心経の水穴:少海(HT3)の瀉法する。
舎岩鍼法では、全身のバランスから、相生・相克関係の理論から調整する経絡を選択する。
上記の例では、肝経の木穴:大敦(LR1)補法と腎経の水穴:陰谷(KI10)の瀉法されるべきである。
これは、さらに森洋平先生や坂本豊次先生の論文などを読まないと・・・。
坂本豊次「韓国一鍼療法による巨刺法への挑戦」
『医道の日本』 66(9): 112-117, 2007.
坂本豊次「韓国一鍼療法による巨刺法への挑戦(2)」
『医道の日本』 66(11): 120-127, 2007.
坂本豊次「韓国式巨刺法を応用した頚肩腕痛の症例」
『医道の日本』 68(9): 28-34, 2009.
森洋平「五行論の配穴原理と舎岩鍼法(その1)」
『東洋医学鍼灸ジャーナル』 28, 84-89, 2012
森洋平「五行論の配穴原理と舎岩鍼法(その2)」
『東洋医学鍼灸ジャーナル』 29, 90-98, 2012-11-00
【三国時代:高句麗(BC37-AD668)】
564年 知聡 呉国のひと、『明堂図』を伝来→日本で帰化。
※984年 日本の『医心方』に百済新修方と新羅法師方が引用。百済は346-660。
【新羅(356-935)】
『三国史記』職官史:医学博士
【高麗(918-1392)】
1092年 宋朝中国から高句麗に『黄帝内経』が贈られる。
『郷薬救急方』『済衆立効方』『診脈図訣』
1226年 崔宗峻(チェ・ジョンジュン)『郷薬救急方』
1389年 鄭道傳(チョン・ドジョン)『診脈図訣』
【李氏朝鮮(1392-1910)】
1445年 『医方類聚』
1613年 許俊(ホ・ジュン)『東医宝鑑』
1894年 李済馬(イ・ジェマ)『東医寿世保元』※四象医学
1905年 乙巳保護条約によって日本式医療行政(西洋医学中心)がはじまる。
同済医学校(東医学)の設立。
1909年 大韓医士会設立(翌年東西医学の設立)
【日本統治時代(1910-1945)】
1914年 朝鮮にて按摩、鍼、灸経営業取り締まり規則
1922年
(大正11年) 沢田健45歳、朝鮮より日本に帰国。
【連合軍軍政期(1945-1948)】
1946年 米軍政庁:類似医療業者規則効力停止。
【大韓民国(1948-)】
1951年 「漢医師」制度成立:国民医療法:按摩士、鍼士、灸士制度。
1952年 東洋大学館が「ソウル漢医科大学」へ
1952年 大韓韓医師協会
(The Association of Korean Oriental Medicine:AKOM)
1962年 鍼士、灸士制度廃止。
1963年 6年生の東洋医科大学。
1963年 鞠明雄「純金注入鍼法の理論と実際」
1963年 金鳳漢「ボンハン小体」
1963年 大韓漢医学会
(Korean Oriental Medical Society:KOMS)
1965年 權度沅が四象体質医学に基づいた「体質鍼に関する研究」
1967年 南相千「水鍼法」
1973年 大韓鍼灸学会
(Korean Acupuncture & Moxibustion Society:KAMS)
1977年 韓医学の研修医制度。インターン1年。レジデント4年。
1986年 医療法改正。「漢医学」が「韓医学」へ。
1991年 大韓薬鍼学会
(Korean Institute of Herbal Acupuncture:KIHA)