alternativemedicine

Studies about acupuncture and moxibustion and Massage.

腰痛のEBM最前線:アメリカ内科医師会(ACP)のガイドライン

2018-05-11 | 腰痛

2017年2月13日『ABCニュース』
「新しいガイドラインによれば、エクササイズ・ヨガ・鍼は、鎮痛剤より腰痛に効く」
New guidelines say exercise, yoga, acupuncture beat painkillers for back pain

 アメリカで2番目に大きい医学会である「アメリカ内科医師会(ACP:American College of Physicians)」が出版した腰痛ガイドラインについてです。「アメリカ内科医師会(ACP)」は、世界五大医学雑誌である『アナルス・オブ・インターナル・メディスン(Annals of Internal Medicine)』を発行しています。アメリカで一番大きな医学会は、『JAMA(アメリカ医師会雑誌)』を発行している「アメリカ医師会(AMA:American Medical Association)」です。

以下、引用。
「アメリカ内科医師会は、腰痛治療の最新版のガイドラインをアップデートしたが、それは、驚くべき点がいくつもある」
The American College of Physicians has updated their current guidelines on treating low back pain – and there are some surprises.

「『アナルス・オブ・インターナル・メディスン』において、アメリカ内科医師会は、薬に基づく治療を第1選択枝にしていない!!! そして、代わりに、非=薬物療法として、エクササイズ、リハビリ、鍼、マインドフルネス瞑想、太極拳、ヨガ、バイオフィードバック、脊椎マニピュレーション(カイロプラクティック手技)、認知行動療法を勧めているのだ」
Published in Annals of Internal Medicine, the ACP’s primary recommendation is to avoid using any drug-based treatment as a first option, and instead opt for non-drug approaches: exercise, rehab, acupuncture, mindfulness meditation, tai chi, yoga, biofeedback, spinal manipulation and cognitive behavioral therapy.

「これらのガイドラインの著者たちは、システマティックレビューから、これらの結論を導き出した。システマティックレビューでは、薬局でのOTC薬や処方薬(アセトアミノフェン、タイレノール、NSAID、アドビル=イブプロフェン、アリーブ=ナプロキセン、デュロキセチン、サインバルタ、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、ステロイド)を注視している」
The authors of these guidelines looked to a systematic review, conducted by the ACP, that looked at those treatments and over-the-counter and prescription painkillers (acetaminophen –Tylenol– NSAIDs — Advil and Aleve– duloxetine –Cymbalta– tricyclic antidepressants, benzodiazepines and steroids).

「著者たちは、短期的・長期的鎮痛、機能、気分の改善として、手術が必要な患者においては、いかにこれらの薬物が助けに成るかを試験している」
The authors examined how well all helped with short-term and long-term pain relief, function, and improvement in mood, as well as whether these patients would eventually need surgery.

「著者たちは、アセトアミノフェンとステロイドは両方が腰痛に効果が無いことを発見したNSAID(非ステロイド系鎮痛剤)は、慢性腰痛には、プラセボよりも少ない効果しかない。デュロキセチンはプラセボよりは効果があった。『三環系抗うつ薬(TCAs:Tri-Cyclic Antidepressants)』は、プラセボと同じ程度のみ効果があった」
They found acetaminophen and steroids were each ineffective for low back pain, NSAIDs had smaller benefit than a placebo for chronic low back pain, duloxetine was more effective than placebo, and TCAs were only as effective as placebo.

「患者は、非薬物治療で反応が無いものだけが、初期治療としてNSAID(非ステロイド系鎮痛剤)を第1選択枝とすることができるし、弱オピオイドのトラマドールやSNRI抗うつ薬のデュロキセチンが第2選択枝であると、ガイドラインの著者たちは述べている」
The authors also said that patients who don’t have an effective response to non-pharmacological therapy can then be told to use NSAIDs as first line therapy, with tramadol or duloxetine as second-line therapy.
以上、引用終わり。

 『腰痛のEBM』の最新知識を、アップデートのために調べて、メモとしてアップしてきました。その結果と、ほとんど一致したガイドラインがアメリカ内科医師会(ACP)『アナルス・オブ・インターナル・メディスン』で2017年に出版されました。腰痛に対しては、エクササイズ、ヨガ、鍼、マインドフルネス瞑想、太極拳、カイロプラクティック、認知行動療法のほうが合理的なのです。
 世界のEBMと、『日本のEBM(笑)』の乖離は、恐ろしいことになってきました。2017年版アメリカ内科医師会の腰痛ガイドラインの内容は、日本語圏に届く日があるんでしょうか?(笑)。

アメリカ内科医師会のガイドラインと、日本の『腰痛ガイドライン2012』との乖離は、恐ろしい状態になっています。

原著論文
2017年2月14日『アナルス・オブ・インターナル・メディスン』
「急性、亜急性、慢性の腰痛の非侵襲的治療:アメリカ内科医師会によるクリニカル臨床ガイドライン」
Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians
Amir Qaseem, et al.
Annals of Internal Medicine
CLINICAL GUIDELINES |14 FEBRUARY 2017
http://annals.org/aim/article/2603228/noninvasive-treatments-acute-subacute-chronic-low-back-pain-clinical-practice


腰痛EBM最前線:認知行動療法

2018-05-11 | 腰痛

2015年6月3日『MEDLEY』
腰痛が認知行動療法で改善した:イギリスの研究チームがランダム化比較試験により検証

以下、引用。
「今回の研究では、腰痛に対する集団認知行動療法により、痛みの程度や腰痛により障害される日常生活が改善すると報告されました。」

「集団認知行動療法を行うことで、腰痛の程度や腰痛により障害されていた日常生活動作が統計的に有意に改善するという結果でした。」

「筆者らは、『集団認知行動療法により、腰痛に対する持続的な効果が認められた』とまとめています。」
以上、引用終わり。

2010年『ランセット』原著論文
「腰痛のプライマリケアにおける集団・認知行動療法:ランダム化比較試験とコスト・エフェクティブネス分析」
Group cognitive behavioural treatment for low-back pain in primary care: a randomised controlled trial and cost-effectiveness analysis.
Lamb SE et al.
Lancet. 2010 Mar 13;375(9718):916-23. Epub 2010 Feb 25.

2010年に『コクラン・システマティックレビュー』では、『慢性腰痛に対する行動療法』が発表されました。

2010年コクランシステマティックレビュー
慢性腰痛に対する行動療法
Behavioural treatment for chronic low-back pain.
Henschke N et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2010 Jul 7;(7):CD002014.
http://www.cochrane.org/ja/CD002014/man_xing_yao_tong_nidui_suruxing_dong_liao_fa_
※「【著者の結論】慢性腰痛患者に対して、短期では行動療法は(無治療の)待機者よりも有効であり、疼痛緩和に行動療法は通常ケアよりも有効であるが、ある特定のタイプの行動療法が別のタイプの行動療法よりも有効であることはないという中程度の質のエビデンスがある。中期~長期では、疼痛やうつ症状に対して行動療法とグループ運動の間にほとんど差がない、またはまったく差がない。」
AUTHORS' CONCLUSIONS:For patients with CLBP, there is moderate quality evidence that in the short-term, operant therapy is more effective than waiting list and behavioural therapy is more effective than usual care for pain relief, but no specific type of behavioural therapy is more effective than another.

2010年のコクランの結論は、臨床心理士が言っているほどの効果ではないと感じます。慢性腰痛患者さんは、無治療よりは、認知行動療法を、やったほうが良いです。

2014年のコクランでは、慢性腰痛への「マルチ・ディシプリナリー・アプローチ(Multidisciplinary approach)」、「生物・精神・社会的アプローチ(バイオ・サイコ・ソーシャル:Bio-Psycho-Social)」が推奨されています。

2014年コクラン・システマティックレビュー
慢性腰痛へのマルチディシプリナリー・生物精神社会的リハビリテーション
Multidisciplinary biopsychosocial rehabilitation for chronic low back pain.
Kamper SJ,et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2014 Sep 2;(9):CD000963.
※「【著者の結論】慢性腰痛で、学際的・生物精神社会的なリハビリを受けている患者は、通常ケアや理学療法(physical treatment)を受けている患者よりも、痛みや機能障害を少なく経験していた
AUTHORS' CONCLUSIONS:Patients with chronic LBP receiving MBR are likely to experience less pain and disability than those receiving usual care or a physical treatment.

 ここで、重要なのは、コクランの言っているのは、理学療法士の先生方の「プロパガンダ」と全く異なり「マルチディシプリナリー・生物精神社会的リハビリ(MBR)」は、「理学療法(physical treatment)」よりも、効果があったという結論であることです(笑)。

 理学療法士の先生方は、たぶん、「マルチ・ディシプリナリー(Multi-Disciplinary)」とか、「生物・精神・社会的(Bio-Psycho-Social)」というコトバの意味を理解できていないし、説明できないと思います。
 「学問分野」のことを、「ディシプリン(Discipline)」と言います。もともとは「弟子・門人・使徒(ディサイプル:disciple)」という単語が起源であり、門人の教育という語源から、「学問分野(Field of study)」や「学者コミュニティー」を意味します。
 「学問領域(ディシプリン)」が異なると、常識が異なってきます。

 もともとは、クリエイティブで問題解決指向のアプローチをするために、アメリカ軍産複合体が、軍事プロジェクトで始めました。また、イギリスで、都市計画を創るさいに、建築家だけでなく、社会学者、心理学者、経済学者、エンジニアなど、まったく異なる分野の専門家たちに共同作業をさせることで、クリエイティブな問題解決法が出てきます。

 腰痛は、社会的背景や、精神医学的背景や、生物学的背景が複雑にからみあった複雑な病態であり、多面的アプローチが必要になるというだけのことだと思うんです。

 けっして、シンプルじゃないですよー。

2015年『プロス・ワン』
「非特異的腰痛への認知行動療法の効果:システマティックレビューとメタ・アナリシス」
The Effectiveness of Cognitive Behavioural Treatment for Non-Specific Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Richmond H,et al.
PLoS One. 2015 Aug 5;10(8):e0134192.
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0134192


腰痛EBM最前線:マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)

2018-05-11 | 腰痛

2016年3月31日『ケアネット』
マインドフルネス・ストレス低減療法は腰痛の治療選択肢/JAMA

以下、引用。
「慢性腰痛に対し、瞑想とヨガによるマインドフルネス・ベースのストレス低減療法(MBSR)は、26週間後の痛みや機能的制限の改善について、通常ケアよりも有効で、認知行動療法(CBT)と同程度の効果があることが示された。米国・ワシントン大学のDaniel C. Cherkin氏らが、342例を対象に行った無作為化比較試験で明らかにし、JAMA誌2016年3月22・29日号で発表した。MBSRの効果についての試験はこれまで大規模だが1試験のみで高齢者のみを対象としたものしか行われていなかった。」

「26週時点での自己申告による腰痛症状の評価について臨床的に意味のある改善がみられたのは、MBSR群が43.6%、CBT群が44.9%、対照群が26.6%だった」

「これらの結果を踏まえて著者は、『MBSRは、慢性腰痛患者にとって有効な治療選択肢になりうることが示された』とまとめている。」
以上、引用終わり。

 マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)は、342例を対象にした研究1個で、すごく報道されました。鍼の慢性疼痛の効果は、1万7千922症例(17,922 patients)を対象にしたシステマティックレビューで、効果ありという結果が出たのに、いまだに「インチキ治療」と呼ばれることと比較すると、うらやましい限りです(笑)。

 マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR:Mindfulness-based stress reduction)は、マサチューセッツ大学医学部教授ジョン・カバット・ジン(Jon Kabat-Zinn)が開発しました。

もともと1960年代にベトナム反戦運動で知られたベトナム禅僧ティク・ナット・ハン(Thich Nhat Hanh)が仏教の教えから「マインドフルネス瞑想」を始めました。
 ジョン・カバット・ジンは、分子生物学を学びながら、1966年からティク・ナット・ハンの教えを受け、ウィパッサナー瞑想を行い、マサチューセッツ大学医学部教授となると「マインドフルネス・ストレス低減法」を病院で実践し始めました。

現在は、イギリスの国立医療技術評価機構(NiCE:National Institute for Health and Clinical Excellence)がうつ病の治療の選択肢として、マインドフルネス認知療法(Mindfulness-based cognitive therapy:MBCT)を推奨しています。

今の西洋世界の代替医療は、ヒッピー文化、カウンター・カルチャーから生まれたのですが、現在の日本の代替医療関係の大学人はヒッピー文化の対極にいる人ばかりなので、海外の動きが全く分析できていないです。


腰痛EBM最前線:ロキソニン

2018-05-11 | 腰痛

ロキソニンは腰痛を悪循環させる! 米国の最新ガイドラインは<腰痛に薬はほぼ効果ナシ>』
2017.03.02『ヘルスプレス』

以下、引用。
『先月、「The American College of Physicians(米国内科医師会)」で最新の腰痛ガイドラインが発表された。そのなかで注目されたのは、「腰痛に投薬はほとんど効果がない」と明記されたことである。
 これまでにも、<腰痛の約85%は「非特異的腰痛」。外科的に原因がはっきりと特定できない>ことを述べてきた。
 つまり、腰痛の多くは、手術ではなく保存療法を行う必要性がある。この<腰痛の8割超が原因不明>なのは、実にさまざまな原因が絡み合って生じているからである。
 たとえば、肥満、喫煙、うつ、悲観的な考え方などは、慢性化した腰痛と関係があることが、論文で報告されている。腰痛の原因が、<構造的なもの>だけではなく、ライフスタイルや思考がその一部とすることを「生物心理社会的思考モデル」という。』
以上、引用終わり。

生物=心理=社会的思考モデルBio-Psycho-Social approach)』は、2017年以降の世界の腰痛の臨床のキーワードだと思います。

以下、引用。
『【鎮痛剤の投与の繰り返しが腰痛を<国民病>にした】
 そのような複雑な原因で成り立っている腰痛に対して、一昔前までは積極的に「投薬(鎮痛剤)」が処方されていた。
 実際には、現在も多くの医療機関で処方されていたり、あるいは自分自身で「痛み止め」を腰痛に対して使っている人も多い。しかしながら、鎮痛剤はあくまで一時的な対処療法であり、実際に薬の効果が切れてしまうと再び痛くなってしまう。そのため、再び投薬という悪循環に陥る。実際にそのような治療を続けてきた結果、腰痛は多くの国で国民病のひとつとなっているのだ。腰痛に関しては、さまざまな研究が行われている。そして、導き出されたひとつの答えが、米国内科医師会が最新ガイドラインで示された「腰痛には鎮痛剤の投与をなるべく避け、痛みが強いときの最終手段として用いる」というものだ。』
以上、引用終わり。

 腰痛に、薬物療法は、効果が無いです。それだけじゃなくて、『慢性疼痛(クローニック・ペイン:Chronic Pain)』全般に対しても、薬物療法は全く効果が無く、副作用や有害事象のほうが多いのです。それで、いまアメリカでは鍼やカイロプラクティックやヨガや運動療法、認知行動療法などを推奨しています。日本整形外科学会の『腰痛ガイドライン2012』とあまりに違いすぎます。
わたしはガイドラインが出る前から、世界の潮流を予測して、腰痛の「マルチ・ディシプリナリー・生物=心理=社会的アプローチ(Multidisciplinary Bio-Psycho-Social approach)」を研究してきました。

世界の潮流の視点から、日本の『腰痛界』をリサーチすると、『腰痛のゴッドハンド』さん達が、いかに科学的根拠のないデタラメをしゃべってきたか、本当に怖くなります。
いま一番ベストセラーで売れている『筋膜リリース』もPNFストレッチも全部、科学的根拠は無いです。
腰痛の薬物療法も、ロキソニンやボルタレンが一番効くとか、ぜんぶ科学的根拠の無い、デタラメなんですよ・・・。


腰痛EBM最前線:レッドフラッグス2018年4月英国スポーツ医学雑誌

2018-05-10 | 腰痛
2018年4月『イギリス・スポーツ医学雑誌』
腰痛レッドフラッグ・スクリーニング:ここには何もないので、立ち去ろう:ナラティブ・レビュー」
Red flag screening for low back pain: nothing to see here, move along: a narrative review.
Cook CE
Br J Sports Med. 2018 Apr;52(8):493-496. doi: 10.1136/bjsports-2017-098352. Epub 2017 Sep 18.
2018年4月 『イギリス・スポーツ医学雑誌』は、ついに「腰痛レッドフラッグ」という考え方自体を捨て去るべきだと論じました。
 
以下、引用。
「アンダーウッドとブフビンダーは、患者の腰痛レッドフラッグでスクリーニングするというのは人気があるアイディアであるけど、役に立たないので、ガイドラインから削除すべきだと主張している」
Underwood and Buchbinder suggest that screening for red flags in patients with LBP is ‘a popular idea that didn’t work and should be removed from guidelines’.
以上、引用終わり。
わたしは2016年度までは、自分の担当する講義で、「鍼灸不適応疾患の鑑別」「レッドフラッグ」を講義していました。2016年度の終わりである2017年3月には研究会でも講義しました。そして2017年に、恒例(笑)の科目総換えがあり、整形外科関係の科目から外れました。
ところが、この2017年から2018年に腰痛の「レッドフラッグ」でパラダイムシフトが起こっていたようです・・・。

そして、「レッドフラッグ徴候」の代替手段として開発されているのはOSPRO(Optimal Screening for Prediction of Referral and Outcome)または「イエロー・フラッグ・アセスメント(Yellow Flag Assessment)」です。
2016年「イエロー・フラッグ・アセスメントの整形外科理学療法セラピストのための開発:OSPROコホートによる結果」
Development of a Yellow Flag Assessment Tool for Orthopaedic Physical Therapists: Results From the Optimal Screening for Prediction of Referral and Outcome (OSPRO) Cohort.
Lentz TA et al.
J Orthop Sports Phys Ther. 2016 May;46(5):327-43. doi: 10.2519/jospt.2016.6487. Epub 2016 Mar 21. 

2017年7月に『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に『OSPRO』や『イエロー・フラッグ・アセスメント』の開発の途中経過の論文が発表されました。
「筋骨格系疼痛状況の患者の専門医への照会と結果を予測するための最適スクリーニング(OSPRO):アメリカにおける長期的検証コホート」
The Optimal Screening for Prediction of Referral and Outcome (OSPRO) in patients with musculoskeletal pain conditions: a longitudinal validation cohort from the USA
Steven Z George et al.
BMJ Open. 2017; 7(6): e015188.
Published online 2017 Jun 8. doi:  10.1136/bmjopen-2016-015188

腰痛EBM最前線:レッドフラッグス2018年3月

2018-05-10 | 腰痛

2018年3月『骨と関節外科雑誌』
「腰痛のレッドフラッグスは、いつも本当にレッドとは限らない:腰痛のスクリーニングに用いられている臨床評価の予測」
Red Flags for Low Back Pain Are Not Always Really Red: A Prospective Evaluation of the Clinical Utility of Commonly Used Screening Questions for Low Back Pain.
Premkumar A,et al.
J Bone Joint Surg Am. 2018 Mar 7;100(5):368-374. doi: 10.2106/JBJS.17.00134.

例えば、50歳以上と外傷歴は、脊椎骨折の有力なレッドフラッグであるが、夜間痛は、特に疾患と結びつかないということです。


腰痛EBM最前線:レッドフラッグス2017年10月ペインのレビュー

2018-05-10 | 腰痛

2017年10月『ペイン』
「腰痛ガイドラインの悪性レッドフラッグのほとんどは、経験的証拠に欠けている:システマティックレビュー」
Most red flags for malignancy in low back pain guidelines lack empirical support: a systematic review.
Verhagen AP,et al.
Pain. 2017 Oct;158(10):1860-1868. doi: 10.1097/j.pain.0000000000000998.
https://journals.lww.com/pain/Abstract/2017/10000/Most_red_flags_for_malignancy_in_low_back_pain.6.aspx

2017年から2018年に腰痛の「レッドフラッグ」でパラダイムシフトが起こっていたようです・・・。

2017年10月の一流医学雑誌『ペイン』では、 「腰痛ガイドラインの悪性レッドフラッグのほとんどは、経験的証拠に欠けている:システマティックレビュー」が発表され、
悪性疾患(がん)の病歴」"history of malignancy"
強い臨床的疑い」 "strong clinical suspicion"
の2つだけが妥当とされましたが、それ以外のレッドフラッグスに関しては、不明瞭であるという結論が出されました。

つまり、腰痛の「レッドフラッグス」の科学的根拠は「怪しい」のです。


腰痛EBM最前線:レッドフラッグス2016年ヨーロッパ脊椎学会レビュー

2018-05-10 | 腰痛
2016年『ヨーロッパ脊椎ジャーナル』
「現在の腰痛ガイドラインにおけるレッドフラッグ:レビュー」
Red flags presented in current low back pain guidelines: a review
European Spine Journal
Arianne P. Verhagen
September 2016, Volume 25, Issue 9, pp 2788–2802
2016年度までは、自分の担当する授業で、「鍼灸不適応疾患の鑑別」「レッドフラッグ」を講義していました。2016年度の終わりである2017年3月には関西中医鍼灸研究会でも講義しました。そして2017年に、恒例(笑)の科目総換えがあり、整形外科関係の科目から外れました。ところが、この2017年から2018年に腰痛の「レッドフラッグ」でパラダイムシフトが起こっていたようです・・・。
まずは、ヨーロッパ脊椎ジャーナルで、ヨーロッパ15カ国の腰痛ガイドラインを調査したが、レッドフラッグについて、コンセンサスが欠けており、診断精度の根拠となる記述や調査もないという調査が発表されました。
 
 これが「腰痛レッドフラッグのパラダイムシフト」の始まりでした。
 
 
 
 

腰痛EBM最前線:レッドフラッグス2013年コクランレビュー

2018-05-10 | 腰痛
2013年コクラン・システマティックレビュー
腰痛の患者の悪性度をスクリーニングするための『レッド・フラッグス(Red flags)』」
Red flags to screen for malignancy in patients with low-back pain.
Henschke N et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2013 Feb 28;(2):CD008686.
 
 
以下、引用。
「プライマリケア医のものを訪れる新しい腰痛患者のうち、腫瘍を原因とするものは約1パーセントである」
Tumors are rare, being the cause of back pain in approximately 1% of new back pain visits to family doctors.  
 
「その1パーセントのうちで、新しいガンによるものは10パーセントであり、90パーセントは他に出来たガンからの転移である」
Only about 10% of these cancers are new cases; 90% are recurrences of cancers from other parts of the body (metastases).
 
「6,600人の腰痛患者を含む6つのプライマリケア研究では、21の腫瘍(全体の0.3%)が発見された」
Six family practice studies including over 6,600 back pain patients found 21 tumors (0.3%).
 
「低いクオリティの『レッドフラッグス』によるスクリーニングは、過剰治療や過少治療につながる最悪の結果となります。もし、テストが不正確なら、腫瘍をもたない患者に必要ではないX線やMRIやCTスキャンを受けさせることなり、不必要なX線被ばくを患者にさせて、不必要なコストを負担させる事に成る」
The worst effects of low quality red flag screening are overtreatment and undertreatment.  If the tests are not accurate, patients without a tumor may get an x-ray, MRI, bone scan or CT scan that they don’t need—unnecessary exposure to x-rays, extra worry for the patient and extra cost. 
以上、引用終わり。
コクラン・レビューで、もっとも『レッドフラッグス』として陽性度が高かったのは、
ガンの病歴(previous history of cancer)」でした。

腰痛EBM最前線:早期の画像診断は有害無益

2018-05-10 | 腰痛

2012年06月11日
腰痛へのX線やCTなどの検査は有害、早期の場合―米解析

以下、引用。
『米コネチカット大学のShubha V. Srinivas氏らは、早期の腰痛に対するX(エックス)線やコンピューター断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)などの画像検査は経過を改善しないだけでなく、有害とする最新の分析結果を、6月4日付の米医学誌「Archives of Internal Medicine」(電子版)に発表した。』

『全米医師連盟(NPA)は、症状が深刻な場合や進行する神経障害がある場合を除き、発症から6週間以内の腰痛には画像検査を行わないことを推奨しているが、今回の結果はこれを支持することとなった。さらに、早期腰痛の画像診断やめることによって、年間約3億ドル(約238億9,000万円)の医療費が削減されるとも報告している。』

『画像検査は放射線の被ばくリスクをはらむ。2007年には220万件の腰部CT検査が実施されているが、これによって将来のがんが1,200例増えるという推算も報告されている。』
以上、引用終わり。

 腰痛の90%は原因不明であり、生命に関わる深刻な疾患は0.1%程度です。1,000人に1人以下です。
だから、「レッド・フラッグス(Red flags)」という要注意徴候である「進行性の症状」や「膀胱直腸障害」などが無ければ、発症して6週間以内の腰痛に、画像診断をすることを全米医師連盟は推奨していません。放射線被ばくによって、発がんリスクが高くなるからです。

 外国の医学を知ると、日本でやっていることが全てでないことがわかります。

 2012年に、この論文が載った「アーカイブス・オブ・インターナル・メディスン」という医学雑誌は1908年に創刊された老舗医学雑誌ですが、2013年に『JAMA内科学(JAMA Internal Medicine)』と名前が変わりました。現代の一流医学雑誌の一つです。

 学問の意味は、多様性に触れることだと思います。

2012年論文
「『より少ないことは十分なことだ(less is more)』を腰痛に応用する」
Application of “less is more” to low back pain.
Srinivas SV et al.
Arch Intern Med. 2012 Jul 9;172(13):1016-20.