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映画「スラムダンク」中国で応援上映続々開催~有志企画型の応援上映

2023年07月19日 | エンタメの日記
映画は静かに観賞するものとされていますが、一方で「応援上演」という楽しみ方が広まっています。応援上映では発声、手拍子、掛け声、サイリウム使用がOKで、オタクの絶妙な掛け声に感動するライブエンタメです。私が初めて日本で応援上演を観たのは2017年「HiGH&LOW」劇場版2でしたが、その頃には「応援上演」はかなり定着していたように思います。

中国でも「応援上映」が流行り始めており、そのきっかけを作ったのが映画版スラムダンク『THE FIRST SLAM DUNK』です。
映画「スラムダンク」は2023年4月20日に中国で劇場公開され、それ以来、中国全体でカウントすると100回近く「応援上映」が行われているのではと思います。

上海大光明電影院で行われた「湘北VS山王工業の千人対抗応援上映」。


左側の客席は「湘北応援席」右側の客席は「山王工業応援席」とされており、ひいきのチームを応援しながら映画を鑑賞します。
鳴り物を鳴らしながら試合の展開に合わせて「ディーフェンス!!ディーフェンス!!」「いいぞいいぞ河田、いいぞいいぞ河田!」など観客が賑やかに発声するので、試合シーンのセリフはほとんど聞こえません。セリフが聞こえなくても中国語字幕があるので話の展開は分かります。


配布された応援グッズ。ファンアートです。実際に手にしてみると明らかにファンアートであることが分かるものです。


中国の「応援上映」は配給元や劇場が主催するのではなく、有志の企画により開催されます
なぜ有志が「応援上映」開催することができるかというと、中国では個人が比較的簡単にスクリーンを貸し切ることができるからです。チケット購入アプリに「スクリーン貸切」を申し込む機能がついているくらいです。
中国では2013年以降シネコンが急増し、2018年に国の政策として「映画スクリーンの建設加速」が実施されたこともあり、10年間でスクリーンの数が10倍に増加し、中国全土には8万以上のスクリーンがあり、いまも増え続けています。
しかし、劇場に観客をどんどん呼べるようなヒット作が常時あるわけではなく、映画スクリーン自体は全体的に供給過剰の状態にあります。このことが、個人がスクリーンを貸し切るハードルを大きく引き下げています。
日本の場合、全国のスクリーン数は2022年時点で3,634と発表されており、人口に対してスクリーン数は少なく、スクリーンがフル稼働している状態なのではと思います。
また、中国の映画チケット料金は日本のように一律ではなく、劇場、作品、時間帯によってチケットの値段はバラバラです。
貸切りのための値段も統一料金があるわけではなく、劇場側が採算が取れると判断するラインの金額で貸し切りが可能となります。
劇場側は、はっきりいってスクリーンが余っているので、貸し切りに協力的で色々な便宜をはかってくれます。

上海影城で開催された「宮城リョータ千人応援上映」。1000席規模のスクリーンを貸切り、ホールの天井モニターに応援上映の映像が映し出されました。


「宮城リョータ応援上映」なので、客席は、沖縄、神奈川、広島、カリフォルニアにエリア分けされています。


これらのイラストは公式の素材ではなく、有志提供のファンアートです。


これまでも、中国ではファンがスクリーンを貸し切って上映会を企画することはちょくちょくありました。
例えば、2022年に映画『花束みたいな恋をした』が中国公開されたときは、菅田将暉のファングループがスクリーンを貸し切ってファン交流上演会を企画していました。
映画スラムダンクの「応援上映」は文字通り応援上演で、映画の中の試合展開に合わせてチームや選手を応援します。
例えば「宮城リョータ千人応援上映」では、湘北高校の宮城リョータを応援するものです。5月22日は人気キャラクター三井寿の誕生日だったので、各地で「三井寿誕生祝い応援上映」が開催されました。

「応援上映」は個人・有志が企画するもので、中国ローカルのSNSアプリ(Weibo、小紅書、抖音)などで情報を告知し、参加希望者はWeChatグループに招待され、WeChat内のミニプログラムでチケット購入し、WeChatペイ(スマホ決済)で支払うという流れが一般的です。

大規模な応援上映では、1000席規模のスクリーンを使用するので、劇場をほぼ丸ごと貸し切るような形になります。
劇場の空きスペースではグッズの交換会が行われています。






これは有志が同人グッズ(ファンアート)を作って劇場に持ち込んでいるのですが、販売しているわけではありません。無料で配布するか、交換しています。何と交換するかというと、ファンアート同士の交換です。
「グッズとグッズとの交換」という非常に原始的な物々交換によってファン同士の交流が行われているのです。(自作のグッズでなくても、他人が作ったグッズでも交換に出していいです)
中国の有志による「応援上映」は、手探りながら秩序と法律を守ろうとしています。
日本では、「公式」と「同人」をはっきりと線引するのがマナーであり、ルールとされているので、映画の応援上映に同人の要素を持ち込むことに違和感を持つ人もいるかもしれません。ですが、これを禁止するとなると、同人活動そのものを禁止するのと同じになってしまいます。

中国の「応援上映」は劇場側の同意を得て正規のルートで映画を上映しています。つまり、劇場側から正規チケットが発券され、興行収入は公式に計上されます。
関連グッズはすべてファンアートで自費制作、ファンアートの売買は行わず無償か物々交換のみ、となると禁止する理由はないように思います。
実際には、正規のチケット料金に数十元(約400円程度)の経費が上乗せされた値段で販売されていますが、ファンアート宣伝物の制作費などで相殺されるレベルの金額だと思います。

公式かと見まごう山王工業のポスター。このイラストは有志(同人作家)が描いたもので、左端に日本語と英語で「このイラストはファンアートです。」と注意書きがあります。


・中国では映画館のスクリーンを貸し切ることが比較的容易。
・SNSとスマホ決済が普及しており、無料または手数料は僅かのアプリが多く、個人間での金銭決済が簡単。
・中国国内には各種工場が豊富に存在するので、ファンアートのグッズを比較的安く制作できる。
上記の背景があるため、中国型の「応援上映」が可能となっています。

「応援上映」に参加しているのは8割以上が女性です。学生と20代が主流で、平均としては25~26歳、基本的に35歳以下のように見えます。
こんなに若い人たちがスラムダンクを応援しているということに驚きです
彼ら(彼女たち)は自分が生まれて間もない若しくは生まれる前に制作されたTV版アニメ「スタムダンク」も視聴しており、当時流行った同人カップリングにも詳しいです。
世代・国を超えて愛される「スラムダンク」という作品のすごさを見せつけられました。

中国での映画『THE FIRST SLAM DUNK』(灌篮高手)の興行収入は7月18日時点で6.5億(約130億円)です。中国メディアの予想ではもっと伸びると思われていました。
一方、同時期に公開された新海誠監督の『すずめの戸締り』(铃芽之旅)は8億元(約160億円)で、『すずめの戸締り』の方が数字的に上となりました。
両作ともに日本国内での興行収入に匹敵あるいは上回る成績を上げており、数字的にいうと、中国は最大の海外市場です。
累計動員数についていうと、中国での映画「スラムダンク」動員数は上映90日で1800万人を超えており、日本を大きく上回っています。
なお、中国で歴代興行収入TOPの映画は朝鮮戦争を描いた『長津湖/1950 鋼の第7中隊』(2021年公開)という作品で、累計動員数は約1億2500万人で日本の総人口よりも多いです。
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